弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成30年1月24日宣告
殺人被告事件
主文
被告人を懲役15年に処する。
未決勾留日数中360日をその刑に算入する。
理由
(犯行に至る経緯)
被告人は,夫との間に,長男であるA(以下「長男」ともいう。)及び次男である
B(以下「次男」ともいう。)をもうけ,山口県光市所在の自宅において家族4人で
暮らしていた。被告人は,野球のクラブチームに所属していた長男を試合や練習の
都度自動車で送り迎えし,摂食障害等を抱え食べ物を飲み込むことが困難で発語も
遅れていた次男の日常の世話をし,その障害改善のための医療機関等への通院や食
事の訓練等も行うなど,母親として愛情を持って献身的に長男及び次男を育てると
同時に,家事や家計の管理,夫が経営する会社の経理まで任されていたが,夫の関
心は専ら仕事や趣味の競馬等に向いており,家事や育児に関して夫の手助けはあま
り得られていなかった。
被告人は,平成20年暮れに交通事故で亡くなった両親から約8000万円の遺
産を相続し,その管理をしていたが,夫がみるべき収入もないのに競馬代や自動車
の購入費用などに遺産を浪費するのを止めることができないことに悩んでいた。平
成28年4月頃には遺産はほぼ底をつき,被告人は,両親の遺産を守れなかったこ
とに強い自責の念を抱くとともに,自分の存在には価値がないという思いにとらわ
れるようになった。このような事情に加えて,被告人は,1日の大半の時間を次男
の世話に費やしていたが,次男の障害に目立った改善の兆しは見られず,肉体的に
も精神的にも疲れ果てていたことや,義父と夫から,次男が障害を抱えているのは,
亡くなった被告人の両親に呪われているからではないかなどといった心無い言葉を
投げかけられたことなども重なって,この頃には,うつ状態となって自殺を考える
ようになり,インターネットで自殺の方法を検索するようにもなった。そして,被
告人は,その回避性の人格傾向(自分に自信がなく,人から責められないようにす
ることが大事と考え,不平不満は口にせず,誰かと言い争いになるくらいなら,自
分が我慢した方がましと思う,といったような特性を持つ性格傾向)も相まって,
周囲に頼れる人はいないとの思いを強める中で,夫や義理の両親に次男の養育を任
せられず,自分が自殺すれば次男の面倒を見てくれる人がいなくなってしまうとの
思いから次男の殺害を決意したが,残された長男もさみしい思いをすることになる
し,あの世でも一緒にいたいと考え,次男だけではなく長男も殺害することにした。
このようにして長男及び次男との無理心中を考えるようになった被告人は,殺害に
使用するためのベルトや荷造りロープを自動車に積み込むなどして,その準備を進
め,同年5月中旬から下旬にかけて2度無理心中をしようとしたものの,いずれの
際もたまたま長男が義理の両親の家に行っていたため,実行に移すには至らなかっ
た。
そうしたところ,被告人は,同年6月7日夕方頃,長男及び次男と無理心中する
ため,2人を自動車に乗せて自宅を出発した。
(罪となるべき事実)
被告人は,平成28年6月7日夜から同月8日未明までの間に,
第1熊本県山鹿市a町b番地c付近路上に駐車中の自動車内において,次男であ
るB(当時3歳)に対し,殺意をもって,その頚部をベルトで強く絞め付け,
よって,その頃,同所において,同人を頚部圧迫による窒息で死亡させて殺害
し,
第2引き続き,熊本市d区e町f番g付近路上に駐車中の同車内において,長男
であるA(当時11歳)に対し,殺意をもって,その頚部を荷造りロープで強
く絞め付け,よって,その頃,同所において,同人を頚部圧迫による窒息で死
亡させて殺害した。
(量刑の理由)
本件は,母親が実の子2人を絞殺の方法により殺害した事案であるところ,幼い
2人の尊い命が奪われたという結果は極めて重く,この点は量刑判断の根底に置か
れるべき事情である。
被告人は,本件のひと月ほど前から被害者らと無理心中することを考えて,事前
にベルトや荷造りロープといった凶器を準備するなどしており,周到とまではいえ
ないものの,それなりに計画された上で実行された犯行といえる。そして,被告人
は,自宅から遠く離れた熊本県内の路側帯に駐車中の自動車内において,ベルトを
用いて,抵抗するすべもないチャイルドシートに座っていた当時3歳の次男の首を
強く絞め付けて殺害し,その後,8キロほど移動した同県内の路側帯に駐車中の同
車内において,荷造りロープを用いて,寝入っていた当時11歳の長男の首を強く
絞め付けて殺害しているが,こうした状況からは,確実に2人を殺害しようとする
意思が見て取れる。本件犯行態様は,非情で残酷なものといわざるを得ない。
また,被告人が愛する2人の子どもの殺害を決意したのは,自分が自殺すれば次
男の面倒を見てくれる人がいなくなってしまい,残された長男もさみしい思いをす
ることになるのではないかなどと被告人なりに考えた結果であり,被害者らの首を
一定時間絞め続けたのも,2人が苦しまずに早く死ぬことができるようにとの被告
人の思いがあったことがうかがわれる。しかし,結局のところ,被害者らの命の重
さに思いを致すことなく,短絡的で身勝手な決断をしたものであって,この点に精
神障害の影響が認められない以上,厳しい非難を免れない。
一方で,犯行に至る経緯を見ると,本件当時,被告人は,夫による両親の遺産の
浪費に悩んでいたところ,これに加えて,長男や次男の世話に追われ肉体的・精神
的に疲れ果てていたことや,義父と夫から心無い言葉を投げかけられたことなど,
様々なストレスが耐えきれないほどに積み重なって,うつ状態に陥り,自殺を決意
するまでに至っていたのである。そうした状況下で,被告人の回避性の人格傾向も
相まって,孤立感を強める中で,被害者らの殺害という誤った決断をしてしまって
いることを考えると,本件に至る経緯には,被告人のために酌むことができる事情
が多く認められるというべきであり,これらは本件犯行に対する非難の程度を下げ
るものである。
そうすると,本件の犯情は,心中を動機として,処断罪と同一又は同種の罪の件
数が2件ないし4件の殺人の事案の中で,決して軽いものと見ることはできないも
のの,特に重いものと見ることもできない。
以上に加え,被告人が本件後,義姉との接見や手紙のやり取りなどを通じて,被
告人なりに犯した罪の重さと向き合い,自問自答しながら葛藤しており,反省の態
度が認められること,被告人の実兄及び義姉が当公判廷に出廷し,社会復帰後の被
告人に対するサポートを申し出ており,更生への協力が期待できること,これまで
社会人として真面目に生活してきており,犯罪歴がないことなど,刑の調整要素と
なる被告人に有利な一般情状も十分に考慮した結果,被告人を主文の刑に処するの
が相当であると判断した。
(検察官の求刑:懲役18年,弁護人の科刑意見:懲役12年)
平成30年2月2日
福岡地方裁判所第3刑事部
裁判長裁判官足立勉
裁判官太田寅彦
裁判官井隆一

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