弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
3訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の骨子,訴訟経緯
本件は,原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)の近隣に。
居住する控訴人ら全事件以下特記しない限り同じが同土地の開発行為以(。。),(
下「本件開発行為」という)に対して都市計画法(以下,単に「法」という)。。
(「」。),29条1項に基づく開発許可処分以下本件開発許可というをすることは
法33条1項2号等に違反すると主張して,本件開発許可の差止めを求めた事案
(甲事件,丙事件)と本件開発行為に用いる車両に対し車両制限令12条に基づ
く特殊車両認定処分(以下「本件認定処分」という)をすることは違法であると。
主張して,本件認定処分の差止めを求めた事案(乙事件)である。
2前提事実(争いがないか,掲記証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる
事実。以下特記しない限り枝番を含む)。
()当事者等1
ア控訴人らは,大阪府豊中市αに居住する者である(争いのない事実。)
イA株式会社(以下「A」という)は,本件土地を購入して分譲マンショ。
ンの建設を計画している者である(争いのない事実。)
ウ控訴人らの居住地と本件土地との位置関係は,原判決別紙位置関係図記載
のとおりであり,本件土地は,その東側部分が市道β線(以下「本件道路」
という)に接している(甲17。。)
()事前相談等2
ア豊中市において法29条1項の規定による許可を要する開発行為を行う者
は,豊中市土地利用の調整に関する条例(以下「調整条例」という)23条。
1項により,当該開発行為等に係る計画について市長と協議を行わなければ
ならず,さらに,協議の申出に先立って,当該開発行為等に係る計画の内容
について市長と相談しなければならないこととされている(調整条例23条
1項及び3項(乙1。))
イAは,平成18年10月2日,豊中市長に対し,以下のとおり,本件土地
を開発区域(以下「本件開発区域」という)とする開発行為等事前相談書を。
提出した。
(ア)開発区域に含まれる地域の名称本件土地
(イ)開発区域の面積2999.01㎡
(ウ)予定される建築物等
a用途共同住宅(分譲)
b棟数・戸数1棟57戸
c階数地上3階・地下2階
d高さ9.95m
(エ)開発行為等の目的と工事種別共同住宅(分譲)の新築のため
(オ)設計・代理者株式会社B(以下「B」という)。
(以上につき,甲5)
ウ豊中市長は,同月25日,Aに対し,以下のとおりの開発行為等事前相談
返答書を交付した。
(ア)事前相談受付番号○○−○○
(イ)開発行為者A
(ウ)区域に含まれる地域の名称本件土地
(エ)設計・代理者B
(オ)一定の事項について関係各課と協議を行うこと
(以上につき,甲6)
エA及びB等は,平成19年3月23日,本件土地周辺の住民らに対し,本
件土地上に建築予定の共同住宅の計画についての住民説明会を開催し,その
後も,平成19年8月11日までに同様の説明会を3回開催した(甲10,
28。)
オAは,平成19年7月19日,豊中市長に対し,以下のとおり,本件開発
区域についての開発行為等事前相談書を提出した。
(ア)開発区域に含まれる地域の名称本件土地
(イ)開発区域の面積2999.00㎡
(ウ)予定される建築物等
a用途共同住宅(分譲)
b棟数・戸数1棟55戸
c階数地上3階・地下2階
d高さ9.97m
(エ)開発行為等の目的と工事種別共同住宅(分譲)の新築のため
(オ)設計・代理者B
(以上につき,甲38)
カ豊中市長は,平成19年8月7日,Aに対し,以下のとおりの開発行為等
事前相談返答書を交付した。
(ア)事前相談受付番号△△−△△
(イ)開発行為者A
(ウ)区域に含まれる地域の名称本件土地
(エ)設計・代理者B
(オ)一定の事項について関係各課と協議を行うこと
(以上につき,甲39)
()控訴人ら(甲事件,乙事件)は,平成19年5月7日,本件開発許可及び本3
件認定処分の差止めを求める訴えを提起し,控訴人ら(丙事件)は,平成20
年5月12日,本件開発許可の差止めを求める訴えを提起した。
()原審は,控訴人らには本件開発許可及び本件認定処分の差止めを求める原告4
適格がいずれも認められないとして,本件訴えをいずれも却下した。
控訴人ら(甲,丙事件)は,原判決中,本件開発許可の差止請求に係る部分
を不服として,本件控訴を提起した。
3争点及び争点に対する当事者の主張の要旨
後記4のとおり当審における当事者の主張の要旨を付加するほか原判決事,,「
実及び理由」中の「第2事案の概要」2,3欄記載のとおりであるから,これ
を引用する。ただし,次のとおり改める。
()原判決11頁15行目の「原告適格」を「本件認定処分の原告適格」と改め1
る。
()原判決14頁22行目の「法33条1項2号」を「法33条1項3号」と改2
める。
()原判決15頁13行目の「本件道路のうち本件開発区域に接している部分の3
幅員は4m以上あり」を「本件開発区域周辺においては,本件道路の幅員は4
m以上あり」と,同21行目の「本件道路の幅員は4.35m以上あるから」
を「本件道路のうち本件開発区域に接する部分の幅員は4.35m以上あるか
ら」と各改める。
4当審における当事者の主張の要旨
()控訴人ら1
ア①行訴法9条2項の立法経緯,近時の複数の最高裁判決からしても,原告
適格拡大の流れがあること,②開発許可に関する多くの規定が,開発区域内
だけの判断ではなく,周辺の地域における環境等を考慮して開発許可の判断
を行うことを求めており,開発区域の周辺居住者には開発許可による影響が
想定される限り「法律上の利益」があると解すべきであること,③控訴人ら
は,本件開発許可の対象地である里山に対し,その周辺住民として「緑豊か,
なβをつくる」という自然環境享有利益(自然享有権・景観利益及びまちづ)
くりの利益を有しており,これらの利益は一般的公益ではなく個人的利益で
あること,以上などからすると,控訴人らには,本件開発許可について「法
律上の利益」が認められるべきである。
,,イ原判決は軟弱地盤と崖崩れの関係について科学的な考察に欠けている上
控訴人ら宅と開発区域との位置関係,軟弱地盤(地層)の位置及び軟弱地盤
(地層)と崖崩れの関係についての事実認定を誤っており,控訴人らは,崖
崩れ等による直接の被害を受ける蓋然性がある。
また,本件開発区域の敷地境界線付近のデータによれば,控訴人Cの自宅
敷地の地中部分には地耐力の低い地質があり,少なくとも,同控訴人は圧密
沈下の被害を受ける蓋然性がある。
したがって,控訴人らは本件開発処分について原告適格が認められる。
ウ後記被控訴人の主張イ(訴えの利益の消滅)について
差止訴訟は取消訴訟よりも要件が厳しいところ,単に訴えの利益(狭義)
が消滅したとして控訴棄却の判決がされて1審判決が確定するならば,原告
適格を否定した1審判決の既判力によって,控訴人らは控訴審において原告
適格の有無についての判断を受けることなく,差止訴訟と比較して要件の緩
やかな取消訴訟を提起する権利までも奪われてしまうことになってしまう。
そして,このように,審級の利益を受けることなく取消訴訟を提起する権利
が奪われることは,国民の権利保護手段の拡大のために差止訴訟を規定した
行訴法改正の立法趣旨には反する結果となるので,本件差止請求の対象とな
っている開発行為に対して開発許可処分がされたことをもって,訴えの利益
(狭義)なしとして控訴棄却の判決をするべきではない。
()被控訴人2
ア控訴人らの上記ア,イの主張は否認ないし争う。
イ本件訴訟提起後の平成20年8月27日,本件請求に係る開発行為につい
て,開発許可処分がされた。したがって,本件訴えのうち,同請求に係る部
分は,訴えの利益が消滅したものとして不適法であるから,却下されるべき
である。
第3当裁判所の判断
1争点()ア(本件開発許可の原告適格)について1
行政庁の一定の処分を対象とする差止めの訴え係属中に当該処分が行われたと
きは,訴えの利益が消滅すると解すべきところ(行訴法9条1項かっこ書参照,)
証拠(乙13の1・2)によると,豊中市長は,本件請求に係る,原判決別紙物
件目録記載の土地の事前相談受付番号第△△−△△号に係る開発行為に対して,
本件訴訟係属後の平成20年8月27日法29条1項に基づく開発許可処分本,(
件開発許可)をしたことが認められる。
そうすると,本件訴えのうち,本件開発許可の差止請求に係る部分は,訴えの
利益が消滅したものとして不適法なものであるから,却下されるべきである。
控訴人らは,上記第2の4()ウのとおり,訴えの利益は消滅していないと主張1
するが,本件開発許可処分がなされたことにより本件開発許可の差止請求に係る
部分の訴えの利益が消滅したとの上記判断からして,控訴人らが提起予定の本件
開発許可処分の取消訴訟の原告適格に既判力が及ぶことはないから,控訴人らの
上記主張は採用できない。
2争点()ア(本件認定処分の原告適格)について2
控訴人ら(乙事件)は,原判決中,本件認定処分の差止請求に係る部分につい
て不服を申し立てていないので,同部分については,判断を要しないが,当裁判
所も,控訴人ら(乙事件)には本件認定処分の差止めを求める原告適格(法律上
の利益)が認められないから,本件訴えのうち,本件認定処分の差止請求に係る
部分は不適法なものとして,却下されるべきものと判断する。その理由は,原判
決「事実及び理由」中の「第3争点に対する判断」3欄に記載のとおりである
から,これを引用する。
第4結論
よって,本件訴えをいずれも却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由が
ないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官横田勝年
裁判官塚本伊平
裁判官植屋伸一

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