弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     各被告人に対する原判決を破毀する。
     本件を東京高等裁判所に差戻す。
         理    由
 被告人G、同B、弁護人野町康正、同小泉英一の上告趣旨は末尾添附別紙記載の
通りである。
 同第一点について。
 記録によつて見ると本件公訴提起は公判請求書に基いて公判請求がなされている
のであるが右公判請求書の記載は論旨摘録の通りであつて、その記載においては被
告人等が欺罔手段を用いたのは被害者を誘い出す為あだけであり財物の交付を受け
る手段としてこれを用いたことは少しも記載されていない、換言すれば財物を騙取
せんとした行為は少しも書いてないのであるそれ故詐欺については審判の請求が無
かつたものというの外なく、従つて原審は審判の請求を受けない事件について判決
した違法あるものといわざるを得ない、起訴状に「喝取した」と書いてあつてもそ
の同一事実について裁判所が調べた結果喝取ではなく詐欺であつたという様な場合
には詐欺を認定して恐喝の規定を適用せず詐欺の規定を適用して所罰しても、基礎
事実の同一性を失わない限り固より差支ないが本件の場合の様に起訴状において強
取の事実が起訴され裁判所で調べた結果正に起訴状記載の強取の事実が認められた
場合、裁判所はその事実に強盗の規定を適用して所罰した上、その事実の外に更に
起訴状に書いてない詐欺の事実について審理し、その事実を認定してこれに詐欺の
規定を適用し二罪として併合罪の加重をするのは不告不理の原則に反するものとい
わなければならない、尤も牽連犯の場合の様に結局一罪になる場合ならば、起訴状
記載の事実と一連の行為で起訴状に記載されない行為を認定して、(例えば強盗が
起訴された場合、その強盗の手段として為された住居侵入を認定する如き)牽連犯
の規定を適用して一罪として所罰する如きは差支ないであろうが一個の犯罪だけが
起訴されて居るのに二個の犯罪を認定して併合罪の加重をすることは許されないも
のと解すべきである。
 以上の理由により論旨は理由あり被告人G、同Bに対する原判決はこの点におい
て破毀を免れない、しかして右破毀の理由は適法に上告をした共同被告人Eに共通
であるから原判決は旧刑訴法第西五一条によりお被告人の為にも亦これを破毀すべ
きものである。
 よつて爾余の論点及び被告人E、弁護入長野国助、同滝沢国雄提出の上告趣意に
対する説明を省略し旧刑訴法第四西七条第四四八条ノ二に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二六年一月二三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保

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