弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差戻す。
         理    由
 上告代理人盛川康の上告理由第一点について。
 原判決は、本件当事者間に成立した浴場経営に関する契約は、浴場用建物並にこ
れに附属する物件の賃貸借契約と浴場経営による営業利益の分配契約とが不可分的
に混合した一種特別の契約であつて、対価を支払つて本件建物並にこれに附属する
物件の使用を目的とする趣旨においては賃貸借の色彩を多分に具有するものである
として、その解約申入に関しては借家法一条ノ二の適用を認めながら、上告人の本
件賃料の増額請求に関する主張に対しては、その増額は当事者協議の上これを決定
すべきものであつて、上告人の一方的意思によりこれをなすことをえないものとし
てその主張を排斥したのである。
 思うにいわゆる典型契約の混合する契約(混合契約)にいかなる法規を適用すべ
きかに関しては必ずしも議論がないわけではないけれども、その契約に或る典型契
約の包含するを認め、これにその典型契約に関する規定を適用するに当つては、他
に特段の事情の認むべきものがない限り右契約に関する規定全部の適用を肯定すべ
きであつて、その規定の一部の適用を認め他の一部の適用を否定しようとするため
には、これを首肯せしめるに足る合理的根拠を明らかにすることを必要とするもの
といわなければならない。けだしいわゆる混合契約は数種の契約をその構成分子と
するものであつて、その一つである契約の面においては当該契約に関する性質を帯
有するものであり、従つてこれにその契約に関する規定の適用ありとする以上原則
としその契約に関する規定全部の適用を肯定するを当然とするからである。ところ
で本件浴場経営に関する契約は前叙の如く賃貸借契約と浴場経営による営業利益の
分配契約と混合したものであつて、浴場用建物及び附属物件の使用を目的とする趣
旨において賃貸借の色彩を多分に具有するというのであるから、原判決がこれを一
種特別の契約であると判示するにかかわらず、なおこれを混合契約の一種と認めた
ものと解するを妥当とし、従つてこれに賃貸借契約の解約申入に関する借家法一条
ノ二の適用があるとする以上賃料増額請求に関する同法七条もまた特別の事情がな
い限りその適用を見るものとすべきであつて、右契約にその適用を否定しようとす
るにはその適用すべからざるゆえんを判示すべき必要があることは前段説明に徴し
明らかというべきである。尤も原判決の確定するところによれば、本件契約におい
ては、賃料名義の額については湯銭の騰落、経費の増減、浴客の多寡等に応じてこ
れを改訂するものとし、一年毎に両当事者協議の上これを決定すべき旨の約定があ
るというのであるが、かかる約定の存在は未だもつて借家法七条の適用を否定すべ
き特別の事情となすに足りない。けだし右約定によつては、賃料の増減につき当事
者間に協定が成立しない場合にもなお当事者の右法条による賃料の増減請求権を否
定すべきものとした趣旨が窺いえないのみならず、同条は契約の条件いかんにかか
わらず借家契約にこれを適用すべき強行法規であることは疑なく、右の如き約定に
よつてその適用を排除することをえないからである。原審は或いは上告人の賃料増
額に関する主張をもつて右法条による賃料増額請求と解しなかつたかの疑があるが
上告人は原審において本件浴場の賃料は他の浴場に比較し月五万円をもつて適正賃
料とする(実際は月八万円と主張する)として被上告人に対し屡々その請求をした
と主張するのであつて(昭和二六年一一月一二日附準備書面、同日の口頭弁論で陳
述)、その主張はもとよりこれを借家法七条による賃料増額請求に関する主張と解
すべきこと当然である。
 然らば上告人の右主張に対し前示約定の存在を唯一の根拠として、単に本件契約
においては、賃料の増額は当事者協議の上これを決定すべきであつて、上告人の一
方的意思による増額は許されないとし借家法七条不適用の理由について何ら判断を
示さなかつた原判決には理由不備の違法があり破棄を免れない(原判決は上告人の
立証によつては増額を相当とする額を判断し難いと判示しているが、引用の鑑定の
結果によれば一応客観的賃料額の立証があるのであり、もしその点の立証が不十分
なれば釈明権を行使してその立証を促すべきである)。
 よつて、その余の論旨に対する説明を省略し、民訴四〇七条を適用し裁判官の全
員一致で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛