弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人松本茂上告趣意第一点について。
 原判決が判示第三として、所論のごとく被告人A、同Bは、Cと共謀のうえ判示
日時(昭和二三年四月一六日午前一時頃)判示協会倉庫内において判示物品を窃収
した旨判示したことは所論のとおりである。そして右判示には単にCとのみあつて
「被告人」Cとは記載されていないから、一見すると同被告人の犯罪事実を判示し
たものでないようにも見られないことはない。しかし、原判決の証拠説明によれば、
判示第三の事実は、被告人B、同Cの当公廷における各自の関係部分について判示
同旨の供述、被告人Aの当公廷における判示第三の地下足袋、手拭の数量の点を除
き判示同旨の供述その他を綜合してこれを認める旨説示してあつて、しかも、原審
第一回公判調書によれば、原審相被告人A、同B並びに被告人Cは、いずれも判示
第三の物品は被告人Cの発議で同人等三名共謀の上窃取したもので、被告人Cに対
する第一審判決第三事実すなわち、「被告人Cは、A及Bの両名が判示協会倉庫か
ら窃取した贓物であることを知りながら昭和二三年四月一六日地下足袋五十足と作
業服上下七五着を判示協会附近から自宅迄運搬した公訴事実並びにその頃A、Bの
依頼により地下足袋二九四足、軍手二八七組、天幕一一枚、蚊帳一一張、ゴム靴二
足を高知市、高松市等で代金八万円で売却してやつた公訴事実」は、いずれもその
窃取後の事後行為である旨供述しており、なお、原判決は、その理由の末段におい
て、右の点について「右贓物は、いずれも前記第三認定の被告人Cが同A、同B等
と共謀して同記載の日時、場所において窃取した物件であることが認められるから
被告人Cの右贓物運搬、同牙保の各行為は、所謂右窃盗の事後行為となり贓物罪は、
いずれも成立の余地ないものといわなければならない。」と説明している。
従つて、原判決は、判示第三の窃盗については、被告人Cにおいて、原審相被告人
A、Bと共謀したものと認定判示すると共に被告人Cに対する贓物運搬、同牙保の
公訴事実(昭和二三年六月一一目附被告人に対する窃盗、贓物運搬、同牙保公判請
求書の公訴事実「意見書並びに添付事件一覧表記載の犯罪事実」に引用されてある
意見書(三)には「被疑者Cは、昭和二三年四月一六日窃盗被疑者A、B某両名が
高知市a町D協会建築部倉庫内に侵入し代表者Eの保管に係る地下足袋外七点を窃
取し来りたる事の情を知りながら同人等の依頼に応じ同日午前一時過頃現場附近よ
り自宅まで二回に亘り右盗品を運搬し、その売却周旋方の依頼を受くるやこれを承
諾し、その後数日間に亘り高松市古物商朝鮮人F外五名の者に情を告げず代金十四
万五千九百円にて買受けさしめ以て贓物の牙保を為した」旨記載されている)同一
物品を同一の日時、場所において共謀の上窃取し即時、同所より自宅までこれを運
搬しその後これを牙保した一連の同一犯罪事実と認定し、窃盗の部分を有罪とし、
窃盗成立以後の事後行為の部分を罪とならずとして無罪と判断したものであること
を窺い知ることができる。
 されば、原判決が判示第三の事実につき被告人Cに対し窃盗の法条を適用したの
は正当で判決の理由に所論のような齟齬はなく、また、窃盗の点に関し、審判の請
求を受けない事件につき判決を為した違法があるともいえない。論旨は、その理由
がない。
 同第二点について。
 しかし、刑法第四七条の併合罪における最も重き罪につき定めた刑を決定するに
は、法定刑中二個以上の有期の懲役刑又は禁錮刑(すなわち各本条に二個以上の刑
名あるときは、まず適用すべき有期の懲役刑又は禁錮刑を選択した上、これに再犯
加重、法律上の減軽を行つた処断刑のみを標準として同法第一〇条に従い決すべき
もので、各本条に併科的又は選択的に規定せられている死刑、無期刑又は罰金刑等
を比較の対照として定むべきでないこと同法第四六条乃至第四八条及び同第七二条
の規定に照し明らかなところである。此の点に関し、真野裁判官は、「併科刑の定
めある場合の刑を対照してその軽重を定めるについては、重点的にその中の重い刑
のみにつき対照をすべきであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二
二年(れ)第二二二号、同二三年四月八日第一小法廷判決、判例集二巻三〇七頁以
下)」としている。しかし、この判例は、刑法第五四条第一項の場合において法定
刑を比較するときの判例であつて、いわゆる処断刑の場合を包含しないことは同判
例の明言しているところである。従つて本件においてこの判例を引用することは全
然適切でないのみならず、既に法定刑を選択し、これを修正して処断刑を形成しな
がら、その後に至り遡つて更に法定刑を重点的に対照して刑の軽重を定めようとす
るがごときは理論上矛盾する見解であるばかりでなく、実際上においても例えば殺
人罪の有期懲役刑と強盗罪の有期懲役刑とを刑法第四七条第一〇条により併合加重
を為す場合にも殺人罪につき定めた懲役刑を重しとする不都合を生ずるであろう。
そして本件においては、被告人の判示各窃盗、贓物寄蔵、同故買は併合罪で窃盗罪
に対する各法定刑は十年以下の懲役であり、贓物寄蔵、同故買に対する各法定刑は
十年以下の懲役及び干円以下の罰金であるところ、被告人には、判示前科があるか
ら同法第五六条第一項第五七条により懲役刑についてはそれぞれ再犯加重を為すべ
きである。従つて刑法第四七条の有期の懲役刑についてはいずれも長期及び短期を
同じくする二十年以下の懲役に処すべき場合であるから、同法第一〇条第三項に従
い犯情によりその最も重しと認むべき罪につき定めた懲役刑に同法第一四条の制限
内において併合罪の加重を為し、罰金刑については同法第四八条に従い合算額以下
において併科すべきである。されば法律の適用において右と同一趣旨に出た原判決
が犯情により判示第三の窃盗につき定めた懲役刑を重しと認めたからといつて擬律
錯誤の違法があるとはいえない。論旨は採ることができない。
 同第二点についての裁判官真野毅の小数意見は次のとおりである。
 本件においては、被告人の判示各窃盗、贓物寄蔵、同故買は併合罪である。そう
して、窃盗罪に対する法定刑は十年以下の懲役であり、贓物寄蔵、同故買に対する
法定刑は十年以下の懲役及び千円以下の罰金である。その上本件は併合罪であると
共に判示前科があるから、同時に併合罪の加重と再犯加重を行うべき場合に該当す
る。それ故、その刑の加重の順序は、再犯加重を先にし併合罪の加重を後にすべき
ものである(刑法第七二条)。そこで先ず、前記犯罪に再犯加重をすると、窃盗罪
に対する刑は二十年以下の懲役となり、贓物寄蔵、同故買に対する刑は二十年以下
の懲役及び千円以下の罰金となる(刑法第五六条第一項、第五七条)。次に、前記
犯罪に併合罪の加重をするに当つては、刑法第四七条の「併合罪中二個以上の有期
の懲役、、、、に処すべき罪あるときは、其最も重き罪に付き定めたる刑の長期に
其半数を加えたるものを以て長期とす」との規定に従つて、先ず最も重い罪を選び
出さねばならぬ。そして、本件では二十年以下の懲役の単独刑と二十年以下の懲役
及び千円以下の罰金の併科刑とを対照すべきこととなる。論旨は、後者をもつて重
しとする。しかしながら、併科刑の定めある場合の刑を対照してその軽重を定める
については、重点的にその中の重い刑のみにつき対照をすべきであることは当裁判
所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第二二二号、同二三年四月八日第
一小法廷判決、判例集二巻四号三〇七頁以下)。従つて、本件では軽い罰金刑を度
外視して重い懲役刑のみについて対照すべきであり、その懲役刑は何れも二十年以
下で長期も短期も同じであるから、刑法第一〇条第三項により犯情により刑の軽重
を定むべきこととなるのである。それ故、原判決が「同法第四七条、第一〇条に則
り被告人等に対しては、各犯情最も重いと認める判示第三の窃盗罪」を選び出し法
定の加重をしたことは、もとより正当である。論旨は理由がない。
 よつて旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は、論旨第二点に対する真野裁判官の小数意見を除くの外裁判官全員一
致の意見によるものである。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二四年八月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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