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判決言渡平成19年3月29日
平成18年(行ケ)第10441号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成19年3月1日
判決
原告株式会社アルファックス
訴訟代理人弁理士倉内義朗
被告特許庁長官
中嶋誠
指定代理人久我敬史
同内山進
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2004−19394号事件について平成18年8月21日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が後記商標出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを
不服として審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたので,その取
消しを求めた事案である。
第3当事者の主張
1請求の原因
(1)特許庁における手続の経緯
原告は,平成15年9月3日,下記商標(以下「本願商標」という。)に
ついて商標登録出願(商願2003−76035号)をしたところ,平成1
6年8月6日付けで特許庁から拒絶査定を受けたので,不服の審判請求をし
た。
特許庁は,同請求を不服2004−19394号事件として審理した上,
平成18年8月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決
(以下「本件審決」ということがある。)を行い,その謄本は平成18年9
月1日原告に送達された。

ア商標(標準文字)イ指定商品
「お医者さんのひざベルト」第25類
「保温用サポーター」
(2)審決の内容
審決の内容は,別紙審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商
標は,これをその指定商品に使用しても,単に商品の品質を表示するにすぎ
ないもので,自他商品の識別標識としての機能を有するものとは認められな
いから,商標法3条1項3号に該当する,というものである。
(3)審決の取消事由
しかしながら,審決の判断には,次のとおり誤りがあるから,審決は違法
として取り消されるべきである。
ア取消事由1(本願商標が商標法3条1項3号に該当すると判断したこと
の誤り)
(ア)格助詞「の」により結合された語句からなる商標と商標の識別性に
かかわる審決の誤認
審決は,本願商標の「構成中の『の』は格助詞であって,各種の意味
合いを表す用法の一つとして,所有者を示す用法であり(岩波書店発行
「広辞苑」参照)…全体として,その商品が『お医者さんが作ったひざ
用のベルト』程度の意味合いを容易に理解・認識させるものということ
ができる。」と認定した(2頁2行∼6行)。
しかし,この認定は,次のとおり誤りである。
a特許庁は,以下に例示するとおり,「の」の格助詞により商標が表
示している商品名を含む名詞が結合された商標に識別性を認め,その
登録を認めている。
①登録第4933176号「お医者さんの低反発円座クッション」
(甲2の1)
②登録第4715560号「お医者さんのコルセット」(甲2の
2)
③登録第4702680号「ふとんのお医者さん」(甲3の1)
指定商品第20類「クッション,座布団,まくら,マットレ
ス」
④登録第4716168号「ふとんのお医者さん」(甲3の2)
指定商品第24類「布団」
⑤登録第4795043号「八百屋さんのフルーツゼリー」(甲4
の1)
⑥登録第4689409号「くだもの屋さんのプルーン」(甲4の
2)
⑦登録第4526012号「牛乳屋さんの珈琲」(甲4の3)
指定商品第29類「コーヒー入りの牛乳,コーヒー入りの豆
乳」
⑧登録第4529750号「牛乳屋さんの珈琲」(甲4の4)
指定商品第32類「コーヒー入りの清涼飲料等」
⑨登録第4351001号「牛乳屋さんの珈琲」(甲4の5)
指定商品第30類「コーヒー,コーヒー豆等」
⑩登録第4287749号「牛乳屋さんのミルクココア」(甲4の
6)
⑪登録第4287750号「牛乳屋さんのあじわいココア」(甲4
の7)
⑫登録第4287747号「牛乳屋さんのミルク紅茶」(甲4の
8)
⑬登録第4287748号「牛乳屋さんのカフェ・オ・レ」(甲4
の9)
⑭商公平8−113897号「牛乳屋さんのミルクセーキ」(甲4
の10)
⑮登録第4868259号「農家の梅」(甲6の1)
⑯商公平7−33471号「ドクターの赤汁」(甲6の2)
b審決が判断するように,「の」の語を「製造した」「販売した」
「推薦した」という記述的なものに置き換え,その上で,当該商標が
全体として記述的なものであるか否かという観点から判断をし,その
ことのみをもって,当該商標が品質を表す商標であると結論付けると
すれば,上記「の」の語により結合された商品名を含む商標は,品質
を表すものとしてすべて識別性が存しないとの結論に至る。すなわ
ち,審決が採用した手法により識別性の判定をするとすれば,上記⑤
は,青果業を営む「八百屋さん」が製造するフルーツゼリーを意味
し,上記⑥は,青果業を営む「くだもの屋さん」が生産するプルーン
を意味し,上記⑦∼⑭は,牛乳配達業を営む「牛乳屋さん」が製造販
売する各商品を意味し,上記⑮は,農業を営む「農家」が生産,採
取,販売する梅・梅干し等を意味し,上記⑯は,医師である「ドクタ
ー」が薦めるトマト,アセロラ,赤ピーマン等の天然の野菜・果物を
加工した健康飲料「赤汁」を意味するものとして理解されるべきこと
となる。したがって,上記商標はすべて識別性を有しない商標として
登録が拒絶されるべきこととなる。
さらに,審決のような判断手法で識別性を判定する場合,「の」の
格助詞が,商品又は役務名を含む二つの名詞を結合するものとして使
用されている商標(甲7参照)のすべてについて,その識別性が否定
されることとなる。
c以上から明らかなとおり,商品名を含む二つの名詞を結合する
「の」を含む商標において,「の」の部分を「製造した,販売した,
又は,推薦した」という意味での記述的なものに置換し,そのことの
みで,当該商標が品質を表し,商標法3条1項3号に違反するという
審決のような立場は,従前の特許庁の実務においても採用されていな
いものであり,そのもたらす結論からしても,非常識なものであっ
て,いたずらに商標審査の秩序を乱し,法的安定性を損うものであ
る。
(イ)審決の誤認の遠因
a審決は,「近年,専門家である医者が製作したり,あるいは関与し
た製品であることを謳い文句にしている商品が数多く販売されている
実情にある。」(2頁19行∼20行)として,インターネットに見
られる例を挙げている。
b仮に,本願商標の指定商品を扱う取引者において,「お医者さん」
という語が,日常的かつ頻繁に商品と結合されて使用され,かつ,そ
れが製作及び開発に医師の関与を表すという用法が一意的に確立され
ているということであれば,「お医者さんの」という語は,「医師が
製作した」又は「医師が開発した」という語と同義に解され得る可能
性があるかも知れない。しかし,そのような用法についての業界慣行
等は一切存しない。
審決に表れたインターネットのホームページ情報はわずか4件にす
ぎない点で,そのような語句に対する一般的な用法を基礎付ける資料
として不足していることは明らかである。
そのうえ,これら審決が指摘した4件のうち,3件は,いずれもA
医学博士,A式との記載があることから明らかなように,株式会社メ
イダイ(以下「メイダイ」という。)の製品に関する広告としてのホ
ームページである(甲8の1∼3)。
しかし,メイダイは,原告が平成14年5月ころから順次販売を始
め,同年6月ころから順次商標登録を開始した「お医者さんの」シリ
ーズ商品(コルセット,ひざベルト,円座クッション等)の販売実績
が好調であったことから,「お医者さんの」シリーズ商標の著名性に
フリーライドし,平成16年10月13日に,「お医者さんの低反発
円座クッション」(商願2004−093731号),「お医者さん
の体圧分散枕」(商願2004−093732号)の商標登録を申請
し(甲10の1,2),「お医者さんの」文言を含む商標の使用を開
始した業者である。原告は,メイダイに対し,「お医者さんの低反発
円座クッション」の商標の使用について,その当時原告が登録を得て
いた「お医者さんの」登録商標を侵害する商標権侵害及び周知となっ
た「お医者さんの」表示を侵害する不正競争防止法違反を理由とする
警告を行った(甲11の1,2)。これに対し,メイダイは,「お医
者さんの」という文言の使用を停止し,「医学博士の」という文言に
変更している(甲12の1∼3)。メイダイの当該変更は,「お医者さ
んの低反発円座クッション」の商標使用が原告の商標権の侵害となり
得ることを自認した上で,侵害を構成しない商品の品質表示用語であ
る「医学博士のひざベルト」の文字を採択したものといえる。仮に,
「お医者さんの」という語が,取引者において,「医師の開発した」
又は「医師の製造した」という記述的な語を意味するということが明
らかであれば,同社が,そのような対応をとることはあり得ない。な
お,メイダイが出願した上記2商標については,原告が有する登録商
標と同一又は類似であることを理由として商標法4条1項11号に基
づき拒絶査定がなされている。
審決が業界の一般的な用法として依拠した事実関係は,上記のよう
に原告の本願商標等にフリーライドをしようとした業者の用例である
から,一般的な用法を基礎付ける資料とはならない。
cしたがって,審決には,本願商標の識別性を否定する判断の前提と
なっている事実認識に誤りがある。
(ウ)本願商標における格助詞「の」の多義性
審決は,「お医者さん『の』ひざベルト」の格助詞「の」を「製造し
た」という記述的な意義に解釈をして結論を導き出している。
しかし,格助詞「の」については,次のとおり,各種用法があり,職
業を表す名詞と商品を表す名詞を「の」で接続した語について,直ち
に,当該職業の人が作った商品であると理解認識されるものとは認めら
れないから,審決の認定は合理性がない。
a広辞苑第五版(甲13の1)2078頁に説明された格助詞「の」
の用法は,前の語句の内容を後の体言に付け加え,その体言の内容を
限定する用法として,①場所を示す,②時を示す,等に並立して,所
有者を示す用法が紹介されている。
例えば,
(a)東京のおじさん
(b)昨日の出来事
(c)毛糸のセーター
(d)本校の生徒
(e)私の本
(f)先生の本
(g)子どもの本
以上の例を考察すると,ここで,修飾限定する語が(a)「東京」の
ように場所を表すならば,おじさんが住んでいる地域が東京であるこ
とが,(b)「昨日」のように時を表すならば,出来事が起きたのが昨
日であることが,(c)「毛糸」のように原料・品質を表すならば,セ
ーターの素材が毛であることが,(d)「本校」のように所属を表すな
らば,生徒の所属が本校であることが,それぞれ意味される。
bこのように,格助詞「の」は,修飾する語によって,それぞれの用
法が特定されるが,(e)∼(g)の「私」「先生」「子ども」のように
人を表す場合は,本の持ち主が私であるといった,所有を表す助詞と
して理解される場合の外,修飾される名詞の意味合いとの関係で,(
f)「先生が執筆した本」,(g)「子ども向けの本」といった,所有
以外の語義となる意味合いが生じ得るから,必ずしも一義的ではな
い。
この事実について更に文法的な解釈をすすめると,助詞「の」の用
法は,「名詞+の+名詞」という形で用いられ,名詞句を作る連体助
詞として機能する。二つの一般名詞を「の」で連結する構成で,主と
従の関係や,特徴やありかによる特定や,動詞を名詞に変えたときの
用法に実例が見られ,「の」は直前の名詞と結合することで,連体修
飾語を作る働きがある。そして,人物等を表す名詞の後に「の」が付
属すると,所有者と所有物,帰属者と帰属先,生産者と生産物のよう
な,主と従の関係を成立させる役割を果たし(村田美穂子編「文法の
時間」至文堂[甲13の2]92頁参照),修飾限定される名詞の字
義によって,様々な意味合いが生じることになる。
c以上のことからすれば,職業を表す名詞である「お医者さん」と商
品を表す名詞である「ひざベルト」が「の」で接続された場合は,
「お医者さん」が所有する「ひざベルト」あるいは「お医者さん」が
用いる「ひざベルト」という観念も導き得るものであって,当該語か
ら一義的に「お医者さん」が「ひざベルト」を考案した製作者である
がごとき意味合いを補充して語句全体の観念を想起させると認定する
ことは不自然である。
特に,「ひざベルト」という商品は,一般的には医師が作るもので
はないことからすれば,「お医者さん」と「ひざベルト」を「の」で
接続した場合に,当然に「お医者さんが作ったひざ用のベルト」と理
解・認識させるとの審決の認定は,不当である。
d審決においては,本願商標の格助詞の「の」の用法について,「所
有者」を示す用法であるとしながら,本願商標「お医者さんのひざベ
ルト」の解釈としては,「お医者さんが『作った』ひざ用のベルト」
として理解・認識されると認定しており,審決自身,「の」の多義性
について混乱している。
e以上のとおり,本願商標の構成から直ちに「お医者さんが作ったひ
ざ用のベルト」という意味合いが導き出されるものではない。
(エ)審決が引用するインターネット広告の記載等
a審決は,「原審において引用したインターネット情報に記載されて
いる『お医者さんのひざベルト』は,BクリニックのB院長の考案に
係るひざベルトであり,『医者の私が考案しました』と記載されてい
るように,正に『お医者さんが作ったひざ用のベルト』であることを
示しているものということができる。」と認定した(2頁7行∼11
行)。
bしかし,当該引用されたホームページの商品広告から明らかなよう
に,「お医者さんのひざベルト」の語自体は商標として機能する商品
の出所を示す語句であり,「医者の私が考案しました」と記載されて
いる部分は,商品の説明として,B院長が考案したことが補足的に説
明されたものにすぎない。これらのインターネットのホームページ
は,商品名「お医者さんのひざベルト」に係る保温用サポーターの内
容を図や写真・文章等で説明していることが容易に理解できるもので
ある。
これに対し,本願商標は,抽象的かつ漠然とした表現であり,商品
のどのような性能を示しているかが具体化せず,単なる造語として認
識されるとするのが,様々なアイディア商品が案出されその特徴を表
した名称が商品の識別標識として頻繁に用いられているひざ用ベルト
をはじめとする,この種の商品における取引の実情である。
cなお,被告提出の証拠(乙1∼21)において,商品の紹介広告,
説明記事等に商品名と共に,その製品は,医師や他の特定の製造者が
製造したものであることが記載されているとしても,「お医者さんの
∼」という商品名が品質表示として理解されることはあり得ない。
(オ)本願商標の識別性の判断基準
a「品質」の具体性の欠如
(a)商標法3条1項3号は「品質」に関する表示の登録を規制して
いるが,そこでいう「品質」の表示は具体的な商品内容としての特
徴に結び付けられたものを表示するものに限定されるべきである。
このことは,上記(ア)a⑧「牛乳屋さんの珈琲」に関する審判に
おいて,「『「牛乳屋さんの珈琲』の文字よりなり,『牛乳販売店
で売られている珈琲』の如き意味合いを看取させる場合があるとし
ても,商品の品質を具体的に表したものとはいい得ない」と認定さ
れたこと(甲5)や,原告が商標権を有する登録第4839578
号「お医者さんの」商標に関する異議の決定(異議2005−90
186号)において,「本件商標は,…『お医者さん』と格助詞『
の』とを連綴して『お医者さんの』の文字を表示してなるものであ
るところ,その構成に係る文字からは,登録異議申立人が主張する
ような商品の品質を具体的に表示したものとして,把握し認識され
るものということはできない。」と認定されたこと(甲14)から
も明らかである。
(b)本願の指定商品の「品質」は,素材,機能,原産地等といった
ことにかかわるものであり,そのような商品自体のもつ性質に関す
る特徴が客観的視できる用語で正確に表示されたもののみが商品の
「品質」の表示として捉えられるべきである。
「誰」が製造するかということは,具体的な商品の性質に関連づ
けられた客観的な特徴を示すものではなく,当該「人物」の技能そ
の他の個別的な信頼性に依拠したものにすぎず,その結果製造され
ている商品が,客観的に優れた商品としての品質を有するものとの
保証はない。
(c)したがって,仮に,本願商標の格助詞「の」を「製造した」と
いう記述的な語句に置換したとしても,当該語句は具体的な品質を
表示するものではない。
審決は「お医者さん『の』」をもって,「製造した」という記述
的な語として認定するが,実際の「製造者」が医師であることはあ
りえない想定であり,医師という職業に関する親しみをこめた表現
である「お医者さん」が「製造した」ことが「品質」に関する表示
であると認めることは不可能である。
b「普通に用いられる方法」の非該当性
商標法3条1項3号は,品質等を「普通に用いられる方法」で表示
する標章のみからなる商標であることを,登録不許可事由としてい
る。
本願商標は,「医師」や「医学博士」といった語句は使用しておら
ず,医師を親しみを込めて呼びかける愛称と理解される「お医者さ
ん」という単語を使用している。製造者にしろ,開発者にしろ,推薦
者にしろ,商品等について,その「者」の権威を利用しようとする場
合には,「医師」や「医学博士」といった正式の用語を用いるのが一
般的である。
したがって,本願商標は,「普通に用いられる方法」で表示する標
章ではない。
(カ)現実に広く使用されたことにより,他社製品を識別できるだけの機
能を有するに至った商標について,商標法3条1項3号又は6号に該当
しないとする審決例が,特許庁において顕著に見られる(甲18∼2
1)。
(キ)以上のとおり,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとの審決
の判断は誤りである。
イ取消事由2(本願商標は商標法3条2項により商標登録を受けられるこ
と)
仮に,本願商標の「お医者さんのひざベルト」が商品の品質を表示する
として商標法3条1項3号に該当するとしても,「お医者さんのひざベル
ト」の商標については,次のとおり,その使用により,需要者は原告の業
務に係る商品であることを認識することができるようになっており,その
ような使用を通じた識別力が獲得されていることから,商標法3条2項に
より商標登録を受けることができるものである。
(ア)原告による「お医者さんの」シリーズ商標の展開
原告は,必ずしも医師が開発に携わることがなかったコルセットをは
じめとする健康関連商品につき,スポーツ医学等の分野でアスリートの
治療を行う当業界の第一人者である医師に対し商品の開発を依頼し,
「お医者さんの」シリーズとして広告宣伝し,販売することとした。
原告は,平成14年6月に腰保護用コルセットを指定商品とする商標
「お医者さんのコルセット」の登録申請を行ない,その登録を受けて,
同商標を使用した商品販売を開始した。
原告は,同年6月ころから,全国のテレビ放送局で放送されるショッ
ピング番組における広告,全国的に配布される大手通信販売業者,大手
百貨店等のカタログや,毎日,読売,朝日,産経等の全国紙及び地方紙
等の新聞に「お医者さんのコルセット」の商標を使用した商品の広告宣
伝を継続して多数回にわたり掲載している(甲15の2の1∼156,
甲16,17)。なお,新聞広告は,平成15年6月より前から掲載し
ているが,リスト作成者である「いいもの王国株式会社」において同月
より以前のデータを廃棄してしまっていたため,同月以降のリスト(甲
17)のみを提出する。
次に,原告は,平成15年9月に保温用サポーターを指定商品とする
本願商標の登録申請を行い,同月ころから,同商標を使用した商品販売
を開始した。原告は,平成15年秋ころから,全国的に配布される大手
通信販売業者,大手百貨店等のカタログや,毎日,読売,朝日,産経等
の全国紙及び地方紙等の新聞に「お医者さんのひざベルト」の商標を使
用した商品の広告宣伝を継続して多数回にわたり掲載し,テレビ放送に
よる商品広告も行っている(甲15の1の1∼117,甲16,1
7)。
さらに,原告は,平成16年11月に,低反発素材を使用した円座ク
ッションを指定商品とする「お医者さんの低反発円座クッション」の商
標登録申請を行い,平成16年秋ころから同商標を使用した商品販売を
開始した。原告は,平成16年冬ころから,全国的に配布される大手通
信販売業者,大手百貨店等のカタログや,朝日,日経等の全国紙及び地
方紙等の新聞に「お医者さんの低反発円座クッション」の商標を使用し
た商品の広告宣伝を継続して多数回にわたり掲載している(甲15の3
の2∼5,8∼19,甲17)。
以上のとおり,原告は,平成14年5月ころより,「お医者さんのコ
ルセット」,「お医者さんのひざベルト」,「お医者さんの低反発円座
クッション」の「お医者さんの」シリーズ商標を付した商品を継続して
販売している。このような原告の,当該商標を全国的に継続して多数回
にわたり広告掲載するという営業努力によって,本願商標を含む「お医
者さんの」シリーズ商標は,一般需要者の広く知るところとなってお
り,北海道から沖縄まで広く周知になっている。
(イ)「お医者さんの」シリーズ商品の売上実績
原告の営業努力及び宣伝広告の成果並びにその取扱商品の優秀さによ
り,「お医者さんの」シリーズ商品は,例年多額の売上げを記録するに
至っている。商品の売上高は,「お医者さんのひざベルト」について,
平成15年9月から平成18年5月までで5億4000万円を超え,そ
の他「お医者さんの」シリーズ商品の平成14年5月から平成18年5
月までの売上げの総合計は約21億円となっている(甲9)。原告の製
造に係る保温用サポーター,コルセット,クッション等は「お医者さん
の」ではじまる統一された一連のブランドとして業界及び一般顧客に知
られ,多種多様の販路によって販売されている。
また,本願商標の指定商品である「保温用サポーター」は,いわゆる
アイディア雑貨であり,購入者の趣味が著しく反映される特徴にあり,
商品の流行性が極めて早く,販売サイクルの短い商品が多い。この中
で,商品に付される商標は需要者の商品採択において重要な働きをな
し,特に構成文字の特異性によって商品の認知度が高まるので,各社ア
イディアを凝らした商品名が採択される傾向にある。このような,種々
雑多な商品が短い商品サイクルで販売されるアイディア商品としては,
「お医者さんの」シリーズ商品は,異例のロングセラーとなっている。
(ウ)「お医者さんの」シリーズ商標の著名性にフリーライドする者が出
現したこと
前記のとおり,メイダイは,原告の獲得した「お医者さんの」シリー
ズ商標の識別力にフリーライドして,平成16年10月ころから,「お
医者さんの低反発円座クッション」という商標を使用し,その商標の登
録申請まで行った。
メイダイが,原告の警告により「医学博士」という表現に改めている
ことは,「お医者さんの」シリーズ商標が取引者において原告の業務に
かかる商品であることが識別されていることを示しており,「お医者さ
んのひざベルト」商品が原告に係る名称として理解されていることが認
められる。
(エ)以上の各事実を総合すると,本願商標は原告の商品を示す商標とし
て広く知られるに至っていて,一般消費者間においても極めて著名であ
るということができる。
2請求原因に対する認否
請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3被告の反論
(1)取消事由1に対し
ア本願商標
本願商標は,「お医者さんのひざベルト」の文字を標準文字で書してな
るところ,本願商標の構成中,「お医者さん」の文字部分は,「医者」の
文字に,相手に対する敬意を表す接頭語「お」及び接尾語「さん」の各文
字を付したものであり,医師を表す語として普通に使用されている。
また,同じく「ひざベルト」の文字部分は,「ひざ」の文字と「ベル
ト」(belt)の文字とを組み合わせたものであり,「ひざ用のベル
ト」ほどの意味合いを理解・認識させるものであって,本願の指定商品
「保温用サポーター」との関係においては,商品の名称を表す語とみて差
し支えないものである。
そして,本願商標は,前記各文字部分を格助詞「の」で結合してなると
ころ,該格助詞「の」は,「連体格を示す。前の語句の内容を後の体言に
付け加え,その体言の内容を限定する。」「所有者を示す。」「所属を示
す。」(広辞苑第五版[甲13の1]2078頁)ものであり,また,
「主と従の関係」を表し,例えば,「生産者と生産物の関係を『AのB』
という形で表す。」(村田美穂子編「文法の時間」至文堂[甲13の2]
92頁)ものであって,実際に,「夏目漱石の小説」「エジソンの電球」
「母の料理」などのように使用されるものである。そうすると,「Aの
B」のように格助詞「の」を使用した場合,「の」の文字は,「∼が作っ
た」(「∼が考案した」,「∼が開発した」等を含む。)の意味合いを有
するものというべきである。
したがって,「お医者さんのひざベルト」の語は,格助詞「の」の用法
からして,構成全体として,これに接する取引者・需要者に「お医者さん
が作ったひざ用のベルト」の意味合いを理解・認識させる語であることは
否定できない。
イ商標法3条1項3号の趣旨
商標は,自他商品又は自他役務を識別する標識になり得ることをその本
質的機能とするものであるから,商標法は,3条1項において,商標の登
録要件として,1号ないし5号に該当する標章の他,6号において包括的
に需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することが
できないものについては登録を受けることができない旨規定している。
そして,商標登録の要件を具備しない商標として,3号に「その商品の
産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含
む。),価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期…を普通に用
いられる方法で表示する標章のみからなる商標」が規定されているとこ
ろ,ここに列挙されたものを不登録とするのは,これらは通常,商取引に
際し必要な表示であり,何人もその使用を欲するものであるから,特定人
による,その独占使用をするのを認めるのを公益上適当としないものであ
るとともに,一般に使用される標章であるから,これらのものに自他商品
等の識別力を認めることはできないという理由による。
そうとすれば,商標登録出願に係る商標が,商品の品質等を表示させる
ものは,商品流通過程に置く場合に必要適切な表示として何人もその使用
を欲するものであり,これを特定人に独占使用させることを不適当とする
公益上の理由があるから,当該商標は商標法3条1項3号に該当し,商標
登録の要件を具備しないものというべきである。
ウ健康に関する商品分野において,医者等が商品を考案したり,開発した
り,関与したりして,そのことを宣伝していること
本願の指定商品である「保温用サポーター」は,健康を維持するための
商品と考えられるが,このような健康に関する分野は,医師,整骨医等が
専門とするところであり,関連する商品について,専門家である医師等が
考案したり,開発したり,あるいは,それらに関与して,より有効な商品
として製品化することがしばしば行われており,さらに,そのような商品
の販売に際し,専門の医師等が関わった商品であることを商品の重要な販
売戦略の特徴とし,購買意欲をそそる手法の一つとして宣伝,広告するこ
とが広く行われている商取引の実情がある。
原告商品の宣伝,広告においても,原告の提出する「Dr.Departureお医
者さんのひざベルト」,「Dr.Departureお医者さんのコルセット」及び
「Dr.Departureお医者さんの円座クッション」の宣伝広告(甲15の1の
1∼甲15の3の19)には,「日本スポーツ医学の第一人者が考案」と
大きく記載されている(甲15の1の58)のを始め,ほとんどすべての
宣伝広告において,それらの商品がB医師によって開発・考案されたもの
であることを謳っている。
原告以外の者による宣伝広告も同様である(甲15の1の1∼甲15の
3の19,乙1∼11)。
エ格助詞「の」を「∼が作った」の意味合いで使用していること
格助詞「の」は,上記アで述べたとおり,「∼が作った」「∼が考案し
た」「∼が開発した」等のような意味合いをも有するものであり,実際の
商取引において,健康に関する商品分野で「お医者さんの…」と使用され
ている事実(乙12∼16)があるほか,その他の商品について,格助詞
「の」が「∼が作った」の意味で使用されている事実(乙17∼21)が
ある。
オ上記ア∼エの実情等を総合勘案すると,本願商標は,普通に使用されて
いる「お医者さん」の文字と,商品名を表すものとしての「ひざベルト」
の文字とを,上記の如く使用されている格助詞「の」で結合して,「お医
者さんのひざベルト」と書してなるものであるから,本願商標がその指定
商品「保温用サポーター」について使用された場合,取引者・需要者は,
これにより「お医者さんが作ったひざ用のベルト」の如き記述的な意味合
いを容易に理解し,認識するにすぎないものである。
そうすると,本願商標は,これをその指定商品について使用しても,単
にその商品の品質を表示するというべきであり,自他商品の識別標識とし
ての機能を果たし得ないものである。
したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。
カ原告の主張に対する反論
(ア)原告は,格助詞「の」を含む登録例を挙げて,本願商標が商標法3
条1項3号に該当しない旨を主張する。
しかし,登録出願された商標が登録され得るものであるか否かの判断
は,個々の商標ごとに個別具体的に検討判断されるものであり,本願商
標が商標法3条1項3号に該当するか否かの判断が,他の登録例に拘束
されるものではない。また,原告が主張する「お医者さんの低反発円座
クッション」「お医者さんのコルセット」の登録例は法的な最終判断を
経ているものでなく,その他の登録例は,本願商標とは商標の構成を異
にするものであって,事案を異にするから,原告の挙げた登録例によっ
て本願商標における判断が左右されるものではない。
(イ)原告は,本願商標の指定商品を扱う取引者において,「お医者さ
ん」という語が,日常的かつ頻繁に商品と結合されて使用され,かつ,
それが製作及び開発に医師の関与を表すという用法が一意的に確立され
ているという業界慣行等は一切存しない,と主張する。
しかし,本願の指定商品「保温用サポーター」に関連する健康に関す
る分野の商品の開発等に当たっては,医師,接骨医等の専門家がかかわ
ることにより有効な商品作りがされているものであり,また,そのよう
に製品化された商品の販売に当たり,専門の医師等がかかわったことを
商品の重要な販売戦略の特徴として宣伝広告することが,この種業界に
おいて,広く行われていること,及び,その際,「お医者さん」の語の
使用の事実もあることは,上記ウ,エで述べたとおりである。
(ウ)原告は,審決が「お医者さん」の語の使用態様についての事実評価
の基礎としているホームページの使用例はわずか4件にすぎないもので
あり,しかも,使用例のうち,メイダイのホームページによる使用例
は,原告の商標にフリーライドをしようとした業者の使用例であるなど
と主張する。
審決は,例として4件を挙げたが,本願商標は,上記のとおり,「お
医者さんが作ったひざ用のベルト」の如き記述的な意味合いを認識させ
る自他商品の識別標識としての機能を有しないものであり,本願の指定
商品等の健康に関する商品の取引者が使用を欲する可能性が高いもので
あると考えられるし,上記エのとおり,実際に複数の取引者によって
「お医者さんの〇〇」の用例をもって使用されている。
したがって,「お医者さんの〇〇」の商標が自他商品の識別力を有す
ることを前提として,メイダイによる使用例が原告の商標にフリーライ
ドしようとした業者の使用例であるとする原告の主張は,失当である。
メイダイが原告の警告の後に「医学博士」と変更したとしても,それ
は,メイダイの経営戦略としてなされたものであって,そのことによ
り,メイダイが原告の「お医者さんの〇〇」のみからなる商標が自他商
品の識別標識としての機能を有するものと認めたとか,「お医者さん
の」に係る商標にフリーライドしたということはできない。
(エ)原告は,格助詞「の」については,各種用法があり,職業を表す名
詞と商品を表す名詞を「の」で接続した語について,直ちに,当該職業
の人が作った商品であると理解認識されるものとはいえない,と主張す
る。
しかし,上記のとおり,格助詞「の」は,主と従の関係を表し,「△
△が作った○○」の如き語義をもって用いられることは不自然ではない
し,「お医者さん」と健康に関する商品名ともいえる「ひざベルト」を
格助詞「の」で接続した場合に考えられる語義は,お医者さんが「作っ
た」「所有する」など語義が限られるものではなく,本願の指定商品の
分野における取引の実情からすると,「作った」の語義を一義的に認識
するというべきであるから,格助詞「の」に複数の用法があることを根
拠にする原告の上記主張は,理由がないというべきである。
(オ)原告は,商標法3条1項3号でいう「品質」の表示は具体的な商品
内容としての特徴に結び付けられたものを表示するものに限定されるべ
きであるところ,「誰」が製造するかということは,具体的な商品の性
質に関連づけられた客観的な特徴を示すものではなく,客観的に優れた
商品としての品質を有するものとの保証はないなどと主張する。
しかし,同号にいう「品質」には,「スーパー」・「BEST」・
「プロフェッショナル」等のように,その商品の品質について具体的に
特定するものばかりではなく,取引者・需要者が,品質・性能等の特性
を誇示するようなものであると認識するような場合も含まれると解され
る。
そして,本願商標については,本願の指定商品に係る分野の取引の実
情からすると,「お医者さんが作ったひざ用のベルト」の意味合いを認
識させ,しかも専門家である医師が作ったものであることにより,その
商品が高品質・高性能であることを誇示したものと認識させるというべ
きであるから,自他商品の識別標識としての機能を有するものというこ
とができない。
(カ)原告は,「ひざベルト」の実際の「製造者」が医師であることはあ
り得ないと主張する。しかし,実際に販売する個々の商品を当該医師が
製造したということではなく,その商品の開発に当たって,当該医師が
関与した(考案した,開発した)と考えるのが自然であり,需要者も当
然にそのように認識するものであって,原告のこの点についての主張
は,需要者・取引者の認識を考慮していない,独自の見解といわざるを
得ない。
(キ)原告は,本願商標は,医師を親しみを込めて呼びかける愛称と理解
される「お医者さん」という単語を使用しているから,「普通に用いら
れる方法」で表示する標章ではない,と主張する。
しかし,「お医者さん」の語は,「医師」を親しみを持って表す場合
に日常的に広く用いられているものであって,「お医者さん」といえ
ば,直ちに「医師」を認識するといっても差し支えない同義語の如き語
であるから,商品の宣伝・広告に「医師」・「医学博士」等の語が用い
られることがあるとしても,それにより,本願商標に接する需要者が,
構成中の「お医者さん」の文字が「医師」であること以上に特別の意味
合いを認識するということはできない。したがって,「医師」を「お医
者さん」と表したことをもって,自他商品の識別標識としての機能を果
たし得るものはいえないというべきである。
(2)取消事由2に対し
ア原告は,本願商標は,商標法3条2項により商標登録を受けることがで
きるものである,と主張する。
しかし,この主張は,審判段階においては全く主張されず,訴訟段階に
至って,初めて新たに主張されたものである。
審決取消訴訟は,審決の違法性について争うものであって,当該審判手
続において現実に争われ,審理判断された事由を審決の違法事由として主
張し,裁判所の判断を求めるものであるから,当審において新たな主張を
行うことは許されない。
したがって,本願商標が商標法3条2項の要件を具備するとの上記主張
は,許されないものである。
イ仮に,本件について,商標法3条2項の要件を具備するとの主張をする
ことができるとしても,以下に述べるとおり,原告の提出に係る証拠によ
っては,使用により識別力を有したものということはできない。
(ア)商標法3条2項の趣旨
商標法3条2項は,いわゆる使用による特別顕著性(識別力)の取得
の規定である。3条1項各号に掲げる商標は,自他商品又は自他役務の
識別力がないものとされて商標登録を受けられないのであるが,同条同
項3号から5号までのものは特定の者が長年その業務に係る商品又は役
務について使用した結果,その商標がその商品又は役務と密接に結びつ
いて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので,このよ
うな場合には特別顕著性(識別力)が発生したと考えて商標登録をし得
ることにしたのである。
その趣旨は,同条1項3号から5号までに該当する商標であっても,
特定人がその業務に係る商品の自他商品識別標識として他人に使用され
ることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,その
商品の取引界において特定人の独占使用を容認したことを証することに
もなり,一般取引者に対してこれを開放しておかなければならない公益
性も薄れたものということができるから,当該商標の登録を認めようと
いうものであると解される。
以上のような商標法3条2項の趣旨に照らすと,同条項によって商標
登録が認められるためには,①使用に係る商標及び商品,使用開始時期
及び使用期間,使用地域,当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法
及び回数等を総合考慮して,判断時である審決時において,商標が使用
された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するこ
とができるものと認められること,②登録出願された商標と使用に係る
商標の同一性が認められることが必要であると解され,商標法3条2項
の適用に当たっては,使用による識別性の取得という観点から,その使
用の状況,使用の結果による著名性の獲得など厳格に解釈し,適用され
るべきである。
(イ)本願商標が商標法3条2項の要件を具備しないこと
a原告は,「お医者さんの」シリーズの商標展開,「お医者さんの」
シリーズの売上げ実績,「お医者さんの」シリーズの著名性にフリー
ライドする者が出現したことの事実を挙げて,本願商標は,原告の一
連の「お医者さん」シリーズ商標として識別力を獲得していると主張
する。
しかし,本願商標は「お医者さんのひざベルト」であり,これとは
異なる「お医者さんのコルセット」「お医者さんの低反発円座クッシ
ョン」等の商標が使用され,仮に著名であるとしても,本願商標が使
用され,自他商品の識別力を獲得するか否かとは,何ら関係のないこ
とである。
前記(1)カ(ウ)のとおり,メイダイの使用は必ずしもフリーライド
とはいえないし,メイダイによって使用されたとする商標は,「お医
者さんの低反発円座クッション」であって,本願商標「お医者さんの
ひざベルト」ではない。
したがって,「お医者さんのコルセット」及び「お医者さんの低反
発円座クッション」に係る宣伝広告及び売上げ実績並びにフリーライ
ドに関する原告の主張は,失当である。
b原告は,平成15年9月ころから,本願商標を使用した商品の販売
を開始し,同年秋ころから,全国的に配布される大手通信販売業者,
大手百貨店等のカタログや全国紙及び地方紙等の新聞に本願商標を使
用した商品の広告宣伝を継続して多数回にわたり掲載し,テレビ放送
による商品広告も行っている,と主張する。
原告の提出に係る甲15の1の1∼117において,原告が商品
「ひざ用のサポーター」に「お医者さんのひざベルト」の商標を使用
していることが認められるとしても,本願商標「お医者さんのひざベ
ルト」の文字は,常に「Dr.Departure」,「<Dr.Departure>」,
「Dr.Departure(ドクター・ディパーチャー)」又は「ドクター・デ
ィパーチャー」等の文字(以下,これらをまとめて「Dr.Departure」
という。)が併記又は隣接された態様で使用されているものである。
そして,「お医者さんのひざベルト」は,前記のとおり,本願の指
定商品に使用された場合には,「お医者さんが作ったひざ用のベル
ト」の意味合いを認識させるものであるから,当該商品「ひざ用のサ
ポーター」に接した需要者は,自他商品の識別力を有し顕著に書され
た「Dr.Departure」の文字に着目し,「Dr.Departure(ドクター・デ
ィパーチャー)のお医者さんが作ったひざ用のベルト」と認識するの
が自然であって,使用の結果,「お医者さんのひざベルト」の文字単
独で,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるほど
自他商品識別標識としての機能を発揮し,商品の出所を表示するもの
として広く知られるに至ったものとはいえない。
また,原告の「お医者さんのひざベルト」に係る売上げ実績(甲
9)が事実であるとしても,平成15年9月から平成18年5月の2
年9か月間で約5億4000万円の販売にすぎず,販売数も合計約1
7万5000個,月間販売個数が1万を超えたのはわずか1月で最近
1年間の月刊販売個数は,2000∼4000個にすぎないものであ
る。
さらに,テレビコマーシャルについての原告主張が事実であるとし
ても,CS放送のテレビショッピングで1回放映(2006年2月1
7日)されたにすぎず(甲16),しかも原告提出の他のカタログ・
新聞等の宣伝広告の内容からすると,「Dr.Departure」とともに「お
医者さんのひざベルト」を使用している可能性が高いと考えられる
し,カタログ誌も,その多くは,原告の「ひざ用のサポーター」を採
り上げ,特集しているというようなものではなく,広く日常的に使用
される様々な商品を百数十頁以上に掲載されている多数の商品の一つ
として掲載されているにすぎないものが多いから,仮にこれらカタロ
グの発行部数が一定程度あるとしても,需要者に原告の「ひざ用のサ
ポーター」が広く知られているとまでいうことはできない。
c以上のとおり,原告提出の各証拠によっては,本願商標「お医者さ
んのひざベルト」の文字が使用されていることは認められるとして
も,本願商標が原告の業務に係る商品であることを,需要者・取引者
において認識することができたとまでいうことはできないから,商標
法3条2項の要件を具備するものではない。
第4当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実
は,当事者間に争いがない。
2原告主張の取消事由について
(1)取消事由1(本願商標が商標法3条1項3号に該当すると判断したこと
の誤り)につき
ア商標法3条1項3号の趣旨
商標法3条1項3号が,「その商品の産地,販売地,品質,原材料…を
普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は商標登録を受
けることができない旨を規定する趣旨は,このような商標は,「商品の産
地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適
切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によ
るその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一
般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標
としての機能を果たし得ないものであることによる」と解される(最高裁
昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔判
例時報927号233頁〕)。
この点につき原告は,商標法3条1項3号の「品質」の表示は具体的な
商品内容としての特徴に結び付けられたものを表示するものに限定される
べきであり,「誰」が製造するかということは,具体的な商品の性質に関
連づけられた客観的な特徴を示すものではなく,「品質」に関する表示で
あると認めることは不可能である,と主張する。しかし,商標法3条1項
3号の「品質」を原告が主張するように限定的に解すべき理由はない。
「誰」が製造するかということが商品の品質と密接な関連を有する場合に
は,「誰」が製造するかということも,商品の「品質」に当たるというべ
きである。
そこで,以上の見解に立って,本願商標が商標法3条1項3号に当たる
かどうかについて検討する。
イ本願商標の構成
本願商標は,「お医者さんのひざベルト」の文字を標準文字で書してな
るものである。
本願商標の構成のうち「お医者さん」の文字部分は,「医者」の文字
に,相手に対する敬意を表す接頭語「お」及び接尾語「さん」の各文字を
付したものであり,医師を表す語として認識されるものである。また,
「ひざベルト」の文字部分は,「ひざ」の文字と「ベルト」(belt)
の文字とを組み合わせたものであり,「ひざに使用するベルト」として認
識されるものである。
そして,本願商標は,上記の「お医者さん」の文字部分と「ひざベル
ト」の文字部分を格助詞「の」で結合したものである。
該格助詞「の」は,「連体格を示す。前の語句の内容を後の体言に付け
加え,その体言の内容を限定する」ものであり(広辞苑第五版[甲13の
1]2078頁),「生産者と生産物の関係を『AのB』という形で表
す」ことがある(村田美穂子編「文法の時間」至文堂[甲13の2]92
頁)。したがって,「AのB」という形で格助詞「の」を使用した場合,
「の」の文字は,「∼が作った」の意味を有することがあるものと認めら
れる。
ウ本願の指定商品との関係等
本願の指定商品である「保温用サポーター」は,健康に関連する商品で
あるから,それを医師が開発・考案することがあるものと考えられるとこ
ろ,次のとおり,健康に関連する商品について医師等の専門家が開発・考
案したことを宣伝広告することによって,商品への信頼性を高めることが
行われているものと認められる。また,これらの中には,本願指定商品以
外の商品について,「お医者さんの…」という商品名が用いられる例(後
記(ク)並びに(ス)のl,m,n,o及びp)がある。
(ア)原告は,後記(2)ウ(ア)のとおり,「お医者さんのひざベルト」の
広告を行っているが,それらの広告の多くに,「お医者さんのひざベル
ト」はB医師が開発・考案したものである旨の記載がある(甲15の1
の1∼117)。また,原告は,「お医者さんのひざベルト」と同様
に,「お医者さんのコルセット」についても広告を行っているが,それ
らの広告の多くには,B医師が開発・考案したものである旨の記載があ
る(甲15の2の1∼156)。さらに,原告は,これらの商品と同様
に,「お医者さんの円座クッション」についても広告を行っているが,
それらの広告の多くには,B医師が開発・考案したものである旨の記載
がある(甲15の3の2∼5,8∼19)。
(イ)株式会社プライムが発行する「PrimeBox」という名称の
カタログショッピング誌の2004年(平成16年)10周年謝恩号
に,骨盤用のサポートベルトの広告が掲載されており,そこでは,「開
発者の声」として,C接骨院院長Cのことばと顔写真が掲載されている
(甲15の1の17)。また,資生堂ショッパーズクラブ株式会社が発
行する「ヘルス&ビューティーグッズエスカタログ」という名称のカタ
ログショッピング誌(カタログ有効期限2004年[平成16年]9月
30日のもの及び2005年[平成17年]7月29日のもの)に,ひ
ざベルトの広告が掲載されており,そこでは,C接骨院院長C柔道整復
師の写真と同人が考案したことが記載されている(甲15の1の34,
75)。
(ウ)株式会社ジェイオーディが発行する「アクセス」という名称のカタ
ログショッピング誌の2004年(平成16年)春号に,外反母趾・内
反小指サポーターの広告が掲載されており,そこでは,「考案者柔道
整復師D」の記載とともに,同人の写真が掲載されている(甲15の
1の18)。また,株式会社ファミリー・ライフが発行する「ファミリ
ー・ライフの通信販売」という名称のカタログショッピング誌の200
5年(平成17年)新年号には,外反母趾・内反小指サポーター及び膝
サポーターの広告が掲載されており,そこでは,「D式サポーター」の
文字とともに,「柔道整復師D接骨院院長D」の写真と経歴が掲載
されている(甲15の1の63)。
(エ)株式会社ファミリー・ライフが発行する「ファミリー・ライフの通
信販売」という名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16
年)春号には,骨盤矯正ベルトの広告が掲載されており,そこでは,
「専門医E先生考案。話題の腰痛予防サポーター!」と記載され,
「発明者」として,E治療院院長Eの写真が掲載されている(甲15の
1の20)。また,東急百貨店が発行する「しまい上手」という名称の
カタログショッピング誌の2004年(平成16年)夏号(甲15の1
の25),浜口通販株式会社が発行する「花もめん」という名称のカタ
ログショッピング誌の2005年(平成17年)初夏号(甲15の1の
77)及び株式会社ベルーナが発行する「雑貨くらぶ」という名称のカ
タログショッピング誌の2004年(平成16年)春号(甲15の2の
33)にも,骨盤矯正ベルトの広告が掲載されており,そこでは,E治
療院院長Eが考案者又は開発者として記載されている。
(オ)STEILARC.K.M株式会社が発行する「元気の処方箋
第九集」という名称のカタログショッピング誌(2004年[平成16
年]10月2日発行)には,関節や腰の痛みを軽減する靴の広告が掲載
されており,そこでは,「Dr.Fプロデュース」の記載とともに「バ
イオメカニクスDr.F」の写真が掲載されている(甲15の1の3
6)。また,東急百貨店が発行する「しまい上手」という名称のカタロ
グショッピング誌の2005年(平成17年)新春号にも,同様の靴の
広告が掲載されており,そこでは,「バイオメカニクストレーナーF氏
監修」の記載とともに同人の写真が掲載されている(甲15の1の6
2)。
(カ)インペリアル・エンタープライズ株式会社が発行する「使ってヨカ
ッタ」という名称のカタログショッピング誌の2005年(平成17
年)早春特別号に体圧分散抱き枕の広告が掲載されており,そこでは,
「開発者理学療法士G先生」と記載され,同人の写真が掲載されて
いる(甲15の1の47)。また,株式会社いいもの王国が発行する
「いいもの王国BESTHIT」という名称のカタログショッピン
グ誌(注文承り期間2006年[平成18年]3月31日)に,ひざサ
ポーターの広告が掲載されており,そこでは,「この商品を考案した『
赤ひげ先生』」として,「理学療法士G先生」と記載され,同人の写
真が掲載されている(甲15の1の107)。
(キ)株式会社ファミリー・ライフが発行する「ファミリー・ライフの通
信販売」という名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16
年)冬号には,腰用テーピングサポーターの広告が掲載されており,そ
こでは,「鍼灸の第一人者H…考案…テーピングサポーター」の記載と
ともに同人の写真が掲載されている(甲15の1の52)。
(ク)藤久株式会社が発行する「BESTGALLERY」という名称
のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)12月号,20
05年(平成17年)2月号,4月号及び5月号には,「お医者さんの
円座クッション」という商品名の円座クッションの広告が掲載されてお
り,そこでは,「医師が考案した」の記載とともにA医師の名前が記載
され,同人の写真が掲載されている(甲15の1の73,78,甲15
の3の1,6,7)。
(ケ)株式会社テレマートが発行する「テレマート」という名称のカタロ
グショッピング誌の2003年(平成15年)春号には,エナジーテー
プの広告が掲載されており,そこでは,「I先生が開発した体に優しい
テープです。」の記載とともに同人の写真が掲載されている(甲15の
2の4)。
(コ)ロイヤルステージ株式会社が発行する「ROYALselect
ion」(ロイヤルセレクション)という名称のカタログショッピング
誌の2003年(平成15年)新年号には,シェイプスリッパの広告が
掲載されており,そこでは,「東洋医学の権威,J先生が考案。」の記
載があり,同人の写真が掲載されている(甲15の2の11)。
(サ)インペリアル・エンタープライズ株式会社が発行する「使ってヨカ
ッタ」という名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16
年)秋・冬号に外反母趾補正靴の広告が掲載されており,そこでは,
「足の構造を知り尽くした専門医が開発」の記載があり,「開発者」と
してK医師の写真が掲載されている(甲15の2の30)。
(シ)大阪通販株式会社が発行する「ナースカタログ」という名称のカタ
ログショッピング誌(カタログ有効期限2005年[平成17年]9月
30日のもの,2005年11月30日のもの及び2006年[平成1
8年]3月31日のもの)に股関節&骨盤補整サポートガードルの広告
の広告が掲載されており,そこでは,「各業界第一人者共同企画商品
D先生L先生」の記載とともに,それぞれの者の写真が掲載されてい
る(甲15の2の121,129,148)。
(ス)一方,インターネットにおいては,次のような記載が見られる。
a「お医者さんが作ったサンダル☆A式進化したアーチケアサンダ
ル」の見出しの下に「…A整形クリニック院長である医学博士・A先
生が監修した『A式進化したアーチケアサンダル』を試してみて
!」の記載がある(乙1)。
b「楽しくむし歯予防!歯医者さんが作ったチョコレート」の見出
しの下に「『歯医者さんが作ったチョコレート』は,『子どもたちの
大好きなチョコレートで楽しくむし歯を予防したい』と願う歯科医師
の発案で生まれました。」の記載がある(乙2)。
c「歯医者さんが作ったハブラシ」の見出しの下に「弾力性,跳ね返
りのある,ブラシの素材を考え,口腔内の隅々までブラシが届くよう
使い捨てしやすい価格ということで考案しました。」の記載がある
(乙3)。
d「犬用食事療法食」の見出しの下に「動物のお医者さんが作った
食事療法食」「動物のお医者さんが作ったシャンプー」の記載がある
(乙4)。
e「お医者さんが考えたメディカルサロンのサプリメントです。」の
記載の下にサプリメント(イチョウ葉&テアニン)が紹介されている
(乙5)。
f「お医者さんが作ったスキンケア化粧品」の見出しの下に各商品が
記載され,その説明中に「デリケートなお肌のために医師が開発した
…」「お医者さんが作った化粧品」の記載がある(乙6)。
g「ドクターズコスメとは。」として,「ドクターズコスメとは,商
品の開発に美容や皮膚科のお医者さんが関わって出来た化粧品のこと
です。ドクターズコスメは,もともとお肌の敏感な方のために開発さ
れたコスメですが,ドクター(医師)が開発したということで,より
多くの方が効果,効能,信頼性ということで支持しています。『お医
者さんが作った化粧品だったら安心』という口コミで一般の人に広が
りました。」と記載されているほか,各商品の説明に,医師が開発し
た旨の記載がある(乙7)。
h「お医者さんが作った画期的パック。炭酸ガスパック『エンチボー
テ901』!!」の記載がある(乙8)。
i「お医者さんが作り出したドクターズコスメWHITEOUT
【ホワイトアウト】」の記載がある(乙9)。
j「ドクターズコスメ『キャタリクア』e.コンシーラー」の見出し
の下に「お医者さんが作ったメイクしながらスキンケアするドクター
ズコスメです。」の記載がある(乙10)。
k「お医者さんが考えたダイエットおからパン」の見出しの下に「実
は…この商品はお医者さんが開発しました!!」と記載され,さら
に,「内科医M先生」と記載され,同人の写真が掲載されている
(乙11)。
l「お医者さんが考えた,こだわり素材とこだわり形状の快適安眠
枕」の見出しの下に,「A式お医者さんの体圧分散枕」の記載があ
り,さらに,「A整形クリニック院長医学博士A先生」と記載
され,同人の写真が掲載されている(乙12)。
m「A式『お医者さんの低反発円座クッション』」の見出しの下に
「これは人間工学に基づき,スポーツドクターのA先生が考案したも
のなんです。」の記載がある(乙13)。
n「履くだけでポッコリお腹解消!?お医者さんの姿勢美人スリムサ
ンダル」の見出しの下に「なんとこのサンダル,あのドーナツ形低反
発クッションを生み出した,人気のお医者さんシリーズ。その名のと
おりお医者さんが開発しただけあって,真面目に作られている優秀グ
ッズなんです。」の記載がある(乙14)。
o「新発売!!お医者さんの★セラミド100%原液★特にアトピー
・敏感肌の方,お薦めです!¥300から」の見出しの下に「お医者
さんの開発した天然セラミド」の記載がある(乙15)。
p「お医者さんのメディカル骨盤マクラ」「整形外科医グループが開
発した《腰の枕」の見出しの下に,「現役整形外科医グループが開発
したこの《骨盤枕》は,最新医学に基づいた形状が最大の特長で
す。」の記載がある(乙16)。
エ商品名において格助詞「の」が「∼が作った」の意味で使用されている
他の事例
インターネットには,次のとおり,商品名において格助詞「の」が「∼
が作った」の意味で使用されている事例が見られる。
(ア)「お豆腐屋さんの『豆乳石鹸』盛田屋せっけん」「あの有名豆腐屋
さんの石鹸!」の見出しの下に「椎葉村の"豆腐職人"Nさんが研究を重
ねて作り上げた『豆乳石鹸』。」の記載がある(乙17)。
(イ)「全国70余店,ほくほくの『お肉屋さんの和牛コロッケ』を創っ
ている25歳女性」の見出しの下に「うちの店の場合,お客様はお肉の
専門店としての品揃えと安さをもとめて来店されますが,お惣菜の場合
は,それに加えて家でも簡単に作れるものではなくて,なかなか真似の
できない味とか,家で作るにはあまりにも手間ひまがかかりすぎるも
の,たくさんの種類の食材を使っているものなどが売れます。」の記載
がある(乙18)。
(ウ)「県内組合産品紹介コーナーお肉屋さんの”ジューシー”肉ま
ん」「お肉のプロが造った豚肉タップリボリュームタップリ」の記
載がある(乙19)。
(エ)「お魚屋さんの寿司…鮮度の良い切りたての生ネタとしゃりにこ
だわった“魚屋さん”の寿司を提供します。」の記載がある(乙2
0)。
(オ)「【お魚屋さんのおかず】夏セット」の見出しの下に「魚屋さんが
自信を持って選び抜いた,新鮮な素材を調理したおかずセットです。」
の記載がある(乙21)。
オ以上のイ∼エを総合すると,本願商標は「お医者さん」が開発・考案し
た「ひざベルト」の意味に理解されるものと認められるところ,「お医者
さん」が開発・考案したことによって,その「ひざベルト」が,高品質の
信頼性が高いものという認識が生ずるということができるから,誰が製造
したかが商品の品質と密接に関連しており,本願商標を本願の指定商品で
ある「保温用サポーター」に使用した場合は,商品の「品質」を表したも
のと理解されるにとどまるものというべきである。
そして,「お医者さん」は,医師を表示する用語として普通に用いられ
るものであるから,本願商標は,その品質を普通に用いられる方法で表示
したものということができる。この点につき原告は,製造者にしろ,開発
者にしろ,推薦者にしろ,商品等について,その「者」の権威を利用しよ
うとする場合には,「医師」や「医学博士」といった正式の用語を用いる
のが一般的であると主張するが,そのような経験則が存在するとは認めら
れない。
したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に当たるというべきであ
る。
カ原告の主張に対する判断
(ア)原告は,他の事例において特許庁は,「の」の格助詞により商標が
表示している商品名を含む名詞が結合された商標に識別性を認め,その
登録を認めているとして,前記第3の1(3)ア(ア)aの①∼⑯の16件
(甲2の1,2,甲3の1,2,甲4の1∼10,甲6の1,2)をそ
の例として挙げる。
しかし,これらのうち,③登録第4702680号「ふとんのお医
者さん」(甲3の1)と④登録第4716168号「ふとんのお医者
さん」(甲3の2)は,「お医者さん」が格助詞「の」の後に付いてい
るものであって,本願商標とは異なる。
また,⑤登録第4795043号「八百屋さんのフルーツゼリー」
(甲4の1),⑥登録第4689409号「くだもの屋さんのプルー
ン」(甲4の2),⑦登録第4526012号「牛乳屋さんの珈琲」
(甲4の3),⑧登録第4529750号「牛乳屋さんの珈琲」(甲
4の4),⑨登録第4351001号「牛乳屋さんの珈琲」(甲4の
5),⑩登録第4287749号「牛乳屋さんのミルクココア」(甲
4の6),⑪登録第4287750号「牛乳屋さんのあじわいココ
ア」(甲4の7),⑫登録第4287747号「牛乳屋さんのミルク
紅茶」(甲4の8),⑬登録第4287748号「牛乳屋さんのカフ
ェ・オ・レ」(甲4の9),⑭商公平8−113897号「牛乳屋さ
んのミルクセーキ」(甲4の10)は,職業に「さん」を付けたものと
商品名を「の」で結合した点において本願商標と共通するが,本願商標
とは,職業も商品名も異になる。
さらに,⑮登録第4868259号「農家の梅」(甲6の1),⑯
商公平7−33471号「ドクターの赤汁」(甲6の2)は,「の」
の前後の言葉が本願商標とは異なる。
したがって,本願商標が商品の品質を表したものと理解されるからと
いって,直ちに上記③∼⑯の商標が商品の品質を表したものと理解され
るということはできない。まして,本願商標が商品の品質を表したもの
と理解されるからといって,「の」の格助詞が,商品又は役務名を含む
二つの名詞を結合するものとして使用されている商標(甲7参照)のす
べてについて,その識別性が否定されることとなるということはない。
なお,①登録第4933176号「お医者さんの低反発円座クッシ
ョン」(甲2の1),②登録第4715560号「お医者さんのコル
セット」(甲2の2)は,「お医者さん」と商品名を,格助詞の「の」
で結合した点において,本願商標と共通する。そして,仮に,そのこと
により,上記①,②の登録商標が商品の品質を表したものと理解される
としても,そのことは,上記①,②の登録商標とは異なる本願商標につ
いて商品の品質を表したものと理解されるとの上記判断を左右すべき理
由にはならない。
(イ)原告は,審決に表れたインターネットのホームページ情報はわずか
4件にすぎないから,一般的な用法を基礎付ける資料として不足してい
る上,これら審決が指摘した4件のうち,3件は,原告の「お医者さん
の」シリーズ商標の著名性にフリーライドしたメイダイの製品に関する
広告としてのホームページであり,メイダイは,原告の警告によって
「お医者さんの」という文言の使用を停止した,と主張する。
しかし,健康に関連する商品について医師等の専門家が開発・考案し
たことを宣伝広告することによって,商品への信頼性を高めることが行
われており,それらの中には,原告以外の商品について,「お医者さん
の…」という商品名が用いられる例があること,その他にも商品名にお
いて格助詞「の」が「∼が作った」の意味で使用されている事例がある
ことは,前記ウ,エのとおりであって,審決が認定した事例に限られな
い。
また,原告以外の商品について「お医者さんの…」という商品名が用
いられる例(前記ウ(ク)並びに(ス)のl,m,n,o及びp)のうち,
前記ウ(ク)及び(ス)のl,m,nの広告は,原告の主張によると,メイ
ダイの製品である可能性があるが,前記ウ(ス)のo,pについては,そ
のような事情はない。そして,メイダイが,原告が主張するように,原
告より後から「お医者さんの…」という商品名の使用を始めたとして
も,もともと本願商標は,前記のとおり識別力に乏しいことからする
と,必ずしもフリーライドということはできない。また,メイダイが,
原告の警告によって,「お医者さんの」という文言の使用を停止し,
「医学博士の」という文言に変更しているとしても,メイダイが原告と
の紛争を避けるために変更したとも考えられ,本願商標が,単に商品の
品質を表したものと理解されることはなく識別性を有することの根拠と
なるものではない。
(ウ)原告は,格助詞「の」については,各種用法があり,職業を表す名
詞と商品を表す名詞を「の」で接続した語について,直ちに,当該職業
の人が作った商品であると理解認識されるものとは認められない,と主
張する。
格助詞「の」について,各種用法があることは,原告が主張するとお
りである(広辞苑第五版[甲13の1]2078頁)が,前記イ∼エの
とおり,格助詞「の」の用法に,本願の指定商品にかかわる取引の実情
等を考慮すると,本願商標は,「お医者さん」が開発・考案した「ひざ
ベルト」の意味に理解されるものと認められ,商品の品質を表したもの
と理解されるのであって,格助詞「の」について各種用法があること
は,この認定を左右するものではない。
原告は,「ひざベルト」という商品は医師が作るものではないとも主
張するが,前記ウのとおり,本願の指定商品である「保温用サポータ
ー」は,健康に関連する商品であるから,それを医師が開発・考案する
ことがあるものと考えられるのであり,そのような意味で原告の主張は
採用することができない。
(エ)原告は,「お医者さんのひざベルト」の語自体は商標として機能す
る商品の出所を示す語句であり,広告中でB医師が考案したことが記載
されている部分は商品の補足的な説明にすぎない,と主張する。
しかし,前記ウ(ア)のとおり,原告が行っている「お医者さんのひざ
ベルト」の広告の多くに,「お医者さんのひざベルト」は,B医師が開
発・考案したものである旨の記載があることは,本願商標について「お
医者さん」が開発・考案したものであると理解されることを示す事情と
いうことができるのであり,前記イ∼エのその他の事情も総合すると,
前記のとおり,本願商標は商品の品質を表したものと理解されるという
べきである。
(オ)原告は,現実に広く使用されたことにより,他社製品を識別できる
だけの機能を有するに至った商標について,商標法3条1項3号又は6
号に該当しないとする審決例(甲18∼21)が存する旨主張するが,
甲18∼21は,本件とは異なる商標についての特許庁の判断であるか
ら,本願商標が商標法3条1項3号に当たるとの判断を左右するもので
はない。
(カ)以上のとおり,原告の主張はいずれも採用することができない。
キよって,原告主張に係る取消事由1は理由がない。
(2)取消事由2(本願商標は商標法3条2項により商標登録を受けられるこ
と)につき
ア商標法3条2項の趣旨
商標法3条2項は,商標法3条1項3号等に対する例外として,「使用
をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識
することができるもの」は商標登録を受けることができる旨を規定してい
る。その趣旨は,特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識
として長期間継続的かつ独占的に使用し,宣伝もしてきたような場合に
は,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができ
る上に,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければなら
ない公益上の要請は乏しいということができるから,当該商標の登録を認
めるというものであると解される。
そして,このような商標法3条2項の趣旨からすると,商標法3条2項
の要件を具備し,登録が認められるための要件は,①実際に使用している
商標が,判断時である審決時において,取引者・需要者において何人の業
務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること,②
出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること,であると
解される。
そこで,以上の見解に立って,本件について検討する。
イ原告が商標法3条2項該当性を主張することの可否
被告は,本願商標は商標法3条2項により商標登録を受けることができ
るものであるとの原告の主張は,審判段階においては全く主張されず,訴
訟段階に至って,初めて新たに主張されたものであるから,当審において
このような主張を行うことは許されない,と主張する。
しかし,本件審決及びそれに先立つ審判手続においては,商標法3条1
項3号によって本願が拒絶されるかどうかが審理判断の対象となったので
あるから,原告は,本件審決の取消訴訟においては,商標法3条1項3号
によって本願が拒絶されるべきでないことについて主張立証して,審決の
取消しを求めることができるところ,商標法3条2項は上記のとおり商標
法3条1項3号を前提としてこれに対する例外を規定したものであるか
ら,審判手続段階において商標法3条2項のいわゆる特別顕著性に該当す
る事実について主張立証がなされていなかったとしても,その後の審決取
消訴訟段階において,原告は,商標法3条1項3号によって本願が拒絶さ
れるべきでないことについての主張立証として,商標法3条2項に該当す
ることを主張立証することができると解するのが相当である。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
ウ原告による「お医者さんのひざベルト」等の広告
(ア)カタログショッピング誌等による広告
a(a)原告は,株式会社エヌ・ジー・シーが発行する「いいもの王
国」という名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16
年)春号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15
の1の3)。
(b)原告は,株式会社エヌ・ジー・シーから商号変更した株式会社
いいもの王国が発行する「いいもの王国毎日が元気」という名称
のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)盛夏号及び
秋号,2005年(平成17年)盛夏号及び秋号並びに2006年
(平成18年)新春号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載
した(甲15の1の1,2,43,44,96)。
(c)原告は,株式会社いいもの王国が発行する「いいもの王国」と
いう名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)夏
号,増刊号2005年(平成17年)保存版,増刊号2005年改
訂版,増刊号2006年(平成18年)最新版,増刊号2006年
改訂版及び2006年新春号に「お医者さんのひざベルト」の広告
を掲載した(甲15の1の4,41,42,94,95,10
8)。
(d)原告は,株式会社いいもの王国が発行する「いいもの王国暖
房特集」という名称のカタログショッピング誌の「2004年(平
成16年)∼2005年(平成17年)冬号」に「お医者さんのひ
ざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の5)。
(e)原告は,株式会社いいもの王国が発行する「いいもの王国涼
夏特集」という名称のカタログショッピング誌の2005年(平成
17年)夏号及び2006年(平成18年)夏号に「お医者さんの
ひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の45,97)。
(f)原告は,株式会社いいもの王国が発行する「いいもの王国B
ESTHIT」という名称のカタログショッピング誌(注文承り
期間2005年[平成17年]3月31日までのもの[2誌],2
005年5月31日までのもの,2005年8月31日までのも
の,2006年[平成18年]3月31日までのもの及び2006
年9月30日までのもの)に「お医者さんのひざベルト」の広告を
掲載した(甲15の1の60,61,65,81,107,11
5)。
(g)原告は,株式会社いいもの王国が発行する「いいもの王国B
estHits」という名称のカタログショッピング誌(注文承
り期間2005年[平成17年]7月31日まで)に「お医者さん
のひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の76)。
(h)原告は,株式会社いいもの王国が発行する「いいもの王国冬
の快適生活」という名称のカタログショッピング誌(注文承り期間
2006年[平成18年]3月31日まで)に「お医者さんのひざ
ベルト」の広告を掲載した(甲15の1の109)。
b原告は,株式会社テレマートが発行する「テレマート」という名称
のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)早春号及び冬
号,2005年(平成17年)冬号並びに2006年(平成18年)
早春号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1
の6,7,46,98)。
c原告は,インペリアル・エンタープライズ株式会社が発行する「使
ってヨカッタ」という名称のカタログショッピング誌の2004年
(平成16年)新春特大号及び2005年(平成17年)早春特別号
に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の8,
47)。
d原告は,株式会社スタープライスが発行する「はぴねすくらぶ」と
いう名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)新年
号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の
9)。
e原告は,株式会社サントリーショッピングクラブが発行する「通販
ヘルス」という名称のカタログショッピング誌の2004年(平成1
6年)春号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15
の1の10)。
f原告は,株式会社ファミリー・ライフが発行する「ファミリー・ラ
イフの通信販売」という名称のカタログショッピング誌の2003年
(平成15年)冬号,2004年(平成16年)春号,盛夏号,秋号
及び冬号並びに2005年(平成17年)新年号に「お医者さんのひ
ざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の11,20,33,3
9,52,63)。
g原告は,EH株式会社が発行する「ExcelClub」という
名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)2月号,
9月号及び10月号並びに2005年(平成17年)6月号及び9月
号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の1
2,27,35,68,84)。
h(a)原告は,株式会社ベルーナが発行する「雑貨くらぶ」という名
称のカタログショッピング誌の2003年(平成15年)冬号並び
に2004年(平成16年)夏号及び秋号に「お医者さんのひざベ
ルト」の広告を掲載した(甲15の1の13,31,54)。
(b)原告は,株式会社ベルーナが発行する「こだわり」という名称
のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)冬号に「お
医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の55)。
(c)原告は,株式会社ベルーナが発行する「おしゃれ生活百科」と
いう名称のカタログショッピング誌の2005年(平成17年)春
号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の
72)。
(d)原告は,株式会社ベルーナが発行する「ハナマルクラブ」とい
う名称のカタログショッピング誌の2005年(平成17年)夏号
に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の8
6)。
i原告は,藤久株式会社が発行する「BESTGALLERY」と
いう名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)4月
号,5月号及び7月号,2005年(平成17年)3月号,4月号,
5月号,6月号,9月号及び11月号並びに2006年(平成18
年)6月号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15
の1の14,16,23,57,73,78,83,93,101,
114)。
j原告は,フットワークインターナショナル株式会社が発行する「T
HENEXTONE」という名称のカタログショッピング誌の2
004年(平成16年)5月号及び9月号並びに2006年(平成1
8年)春号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15
の1の15,29,103)。
k原告は,株式会社プライムが発行する「PrimeBox」とい
う名称のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)10周
年謝恩号及び10周年謝恩号第2弾に「お医者さんのひざベルト」の
広告を掲載した(甲15の1の17,28)。
l原告は,株式会社ジェイオーディが発行する「アクセス」という名
称のカタログショッピング誌の2004年(平成16年)春号及び2
005年(平成17年)保存版に「お医者さんのひざベルト」の広告
を掲載した(甲15の1の18,64)。
m原告は,株式会社ジャパンホームショッピングサービスが発行する
「花まる工房」という名称のカタログショッピング誌の2004年
(平成16年)春号及び2005年(平成17年)盛夏号に「お医者
さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の19,85)。
n原告は,壮快美健館が発行する「壮快美健館」という名称の雑誌の
2004年(平成16年)夏号及び秋号のカタログショッピングの部
分に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の2
1,26)。
o原告は,東急百貨店が発行する「しまい上手」という名称のカタロ
グショッピング誌の2004年(平成16年)春号及び夏号,200
5年(平成17年)新春号,春号及び夏号並びに2006年(平成1
8年)夏号及び秋号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した
(甲15の1の22,25,62,71,82,113,117)。
p原告は,株式会社ジャパンホームショッピングサービスが発行する
「ナイスミセス」という名称のカタログショッピング誌の平成16年
初夏号及び盛夏号並びに平成17年初春号及び初秋号に「お医者さん
のひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の24,30,59,
89)。
q(a)原告は,浜口通販株式会社が発行する「花もめん」という名称
のカタログショッピング誌の別冊カタログ(カタログ有効期限20
04年[平成16年]9月30日),2004年秋冬号,2005
年(平成17年)春号,初夏号,盛夏号,初秋号,秋冬号及び冬号
並びに2006年(平成18年)初夏号及び盛夏号に「お医者さん
のひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の32,51,6
7,77,87,92,100,105,112,116)。
(b)原告は,浜口通販株式会社が発行する「花もめんベストセレ
クション」という名称のカタログショッピング誌の2005年(平
成17年)盛夏号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した
(甲15の1の88)。
(c)原告は,浜口通販株式会社が発行する「ピアセラン」という名
称のカタログショッピング誌の2005年(平成17年)春号に
「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の6
6)。
r原告は,資生堂ショッパーズクラブ株式会社が発行する「ヘルス&
ビューティーグッズエスカタログ」という名称のカタログショッピン
グ誌(カタログ有効期限2004年[平成16年]9月30日のもの
及び2005年[平成17年]7月29日のもの)に「お医者さんの
ひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の34,75)。
s(a)原告は,STEILARC.K.M株式会社が発行する「元
気の処方箋第九集」という名称のカタログショッピング誌(20
04年[平成16年]10月2日発行)に「お医者さんのひざベル
ト」の広告を掲載した(甲15の1の36)。
(b)原告は,STEILARC.K.M株式会社が発行する「夢
みつけ隊」という名称のカタログショッピング誌の2005年(平
成17年)春号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した
(甲15の1の74)。
t原告は,株式会社JALUXが発行する「JALWorldS
hoppingClub」という名称のカタログショッピング誌
(カタログ有効期限2004年[平成16年]10月31日)に「お
医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の37)。
u原告は,株式会社総通(日本直販)が発行する「夢運便」(ゆめは
こびん)という名称のカタログショッピング誌の2004年(平成1
6年)冬号及び2005年(平成17年)冬号並びに2005年第1
0号便,第11号便及び第12号便に「お医者さんのひざベルト」の
広告を掲載した(甲15の1の38,50,70,79,90)。
v原告は,大阪通販株式会社が発行する「ナースカタログ」という名
称のカタログショッピング誌(カタログ有効期限2004年[平成1
6年]12月31日のもの及び2006年[平成18年]1月31日
のもの)に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の
1の40,99)。
w原告は,株式会社全通が発行する「ほっと生活倶楽部」という名称
のカタログショッピング誌の2005年(平成17年)秋冬号及び冬
号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の4
8,49)。
x原告は,株式会社大丸ホームショッピングが発行する「大丸カタロ
グ」という名称のカタログショッピング誌の2005年(平成17
年)初夏号に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した(甲15
の1の56)。
y原告は,シャディ株式会社が発行する「良品生活」という名称のカ
タログショッピング誌の2005年(平成17年)冬号に「お医者さ
んのひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の104)。
z(a)原告は,平成17年2月20日,3月13日,6月5日,8月
24日,11月27日,平成18年2月5日,3月5日及び5月21
日発行の朝日新聞に「お医者さんのひざベルト」の広告を掲載した
(甲15の1の53,58,69,80,91,102,106,1
11)。
(b)原告は,平成18年5月8日発行の産経新聞に「お医者さんの
ひざベルト」の広告を掲載した(甲15の1の110)。
(イ)テレビ放送による広告
原告は,平成18年2月17日,CS放送で,「お医者さんのひざベ
ルト」の広告をした(甲16)。
(ウ)新聞による広告
原告は,上記(ア)z以外にも,平成15年11月から平成18年6月
にかけて,読売,朝日,産経,毎日の各新聞及び地方紙において,「お
医者さんのひざベルト」の広告をした(甲17)。
(エ)原告は,「お医者さんのひざベルト」と同様に,「お医者さんのコ
ルセット」及び「お医者さんの円座クッション」についても,カタログ
ショッピング誌,新聞等において,広告を行っている(甲15の2の1
∼156,甲15の3の2∼5及び8∼19,甲16,17)。
エ「お医者さんのひざベルト」等の売上実績(甲9)
「お医者さんのひざベルト」の売上げは,平成15年9月から平成18
年5月までで,個数17万5439個,売上額5億4363億2562円
である。
「お医者さんのひざベルト」,「お医者さんのコルセット」及び「お医
者さんの円座クッション」を併せた売上げは,平成14年5月から平成1
8年5月までで,個数59万5248個,売上額21億0493万899
6円である。
オ上記ウ及びエ認定の事実によると,次のようにいうことができる。
(ア)上記ウのとおり,原告は,「お医者さんのひざベルト」の広告をし
たものと認められるが,それは平成15年11月以降であって長期間に
わたるとはいえない。そして,上記ウ(ア)の広告のうち,z以外の広告
は,多数の商品が掲載されているカタログショッピングにおける1商品
としての広告であり,(ア)zの新聞広告も,複数の商品の広告が掲載さ
れている紙面において1商品として掲載されたものである。テレビ放送
は,上記ウ(イ)のとおり,CS放送で1回放送されたのみであり,上記
ウ(ウ)の新聞広告については,その態様が証拠上明らかでない。
(イ)上記ウ(ア)の広告の多くに,B医師が開発・考案したものである旨
の記載があり(甲15の1の1∼117),このことは,「お医者さん
のひざベルト」のうち「お医者さんの」の部分が単にB医師が開発・考
案したものであることを示すとの印象を与えるということができる。ま
た,上記ウ(ア)の広告の多くは,「お医者さんのひざベルト」に
「Dr.Departure」の文字が併記された態様で使用されている(甲15の
1の1∼117)。このことは,「Dr.Departure」という,「お医者さ
んのひざベルト」よりも識別力が高い自他識別標識が付されていること
を意味する。
(ウ)「お医者さんのコルセット」及び「お医者さんの円座クッション」
の広告についても,「お医者さんのひざベルト」について上記(ア),(
イ)で述べたのと同様のことをいうことができる(甲15の2の1∼1
56,甲甲15の3の2∼5,8∼19,甲16,17)。
(エ)前記(1)ウ認定のとおり,本願指定商品以外の商品について,「お
医者さんの…」という商品名が用いられる例(前記(1)ウ(ク)並びに(ス
)のl,m,n,o及びp)がある。このうち,メイダイによる「お医
者さんの…」という商品名の使用については,前記(1)カ(イ)のとお
り,メイダイが原告より後から「お医者さんの…」という商品名の使用
を始めたとしても,必ずしもフリーライドということはできず,また,
メイダイが,原告の警告によって,「お医者さんの」という文言の使用
を停止し「医学博士の」という文言に変更しているとしても,本願商標
が,単に商品の品質を表したものと理解されることはなく識別性を有す
ることの根拠となるものではない。
(オ)「お医者さんのひざベルト」の売上げは,平成15年9月から平成
18年5月までの33か月間で,個数17万5439個,売上額5億4
363億2562円であり,1か月平均にすると,5300個,164
7万3714円であり,「お医者さんのコルセット」及び「お医者さん
の円座クッション」を併せても,総額で約21億円である。
(カ)以上の(ア)∼(オ)のような事情からすると,いまだ,本願商標につ
いて,例外的に自他商品識別力を獲得したものであり,他の事業者に対
してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請が乏
しいとまで認めることはできない。
したがって,本願商標について,商標法3条2項に該当するというこ
とはできない。
カよって,原告主張に係る取消事由2は理由がない。
3結語
以上のとおり,原告主張に係る取消事由はいずれも理由がないから,原告の
請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官森義之
裁判官田中孝一

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