弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     新潟地方検察庁高田支部の公訴提起にかかる再審請求者に対する昭和二
十六年二月二十四日附起訴状記載の公訴事実(末尾添附別紙記載の事実)につき再
審請求者を免訴する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人猿谷明提出の控訴趣意書に記載してあるとおりである
からこれをここに引用して次のとおり判断をする。
 昭和二十八年七月二十二日、最高裁判所が、その大法廷において、いわゆる「A
及びその後継紙、同類紙の発行停止に関する連合国最高司令官の指令」についての
昭和二十五年政令第三百二十五号違反被告事件は、講和条約発効後においては犯罪
後の法令により刑の廃止があつたものとして免訴せらるべきである旨判決したこと
は、一般公知の事実に属するところである。記録によれば、本件再審請求者Bは、
それより前の昭和二十七年三月二十九日新潟地方裁判所高田支部において前記政令
違反被告事件の被告人として有罪の判決を受け、これが判決は、同二十九年三月五
日の最高裁判所の上告棄却の決定により確定して今日に至つたこ<要旨>とが明瞭で
あるところ、刑事訴訟法第四百三十五条は、有罪の言渡を受けた者の利益のため、
これが有罪の確定判決に対する再審請求の理由ある場合として、その第六号
に「有罪の言渡を受けた者に対して免訴を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発
見した場合」を挙げているのであるが、前示有罪の言渡(新潟地方裁判所高田支部
における昭和二十七年三月二十九日附有罪の判決言渡)を受けたBと前示最高裁判
所の判決の存在との関係は、正に、右に挙げた刑事訴訟法第四百三十五条第六号所
定の場合に該当するものというべく、従つて、本件再審の請求は、その理由ある場
合に該当するものと言わなければならない。然るにそれにもかかわらず、原審が、
刑事訴訟法第四百三十五条が、有罪の確定判決に対し再審の請求を許しているの
は、原裁判所の事実認定を不当とする一定事由のある場合のみに限定しているもの
との前提に立ち、前示最高裁判所の判決の存在をもつて刑事訴訟法第四百三十五条
第六号にいわゆる原裁判所たる第一審の事実認定を不当とする新たなる証拠とは解
し難いとして、敢て、本件再審の請求を棄却したことは、畢寛法令の解釈を誤まつ
た結果訴訟手続における法令違反の過誤を冒したもので、而も、その過誤が判決に
影響を及ぼすべき場合に該当することも、また、自ずから明白であるから、原判決
は到底その破棄を免かれない。論旨は理由がある。
 よつて、本件控訴の趣意は、その理由があるから、刑事訴訟法第三百九十七条第
一項、第三百七十九条に則り、原判決を破棄し、同法第四百条但書の規定に従い再
審請求者が有罪の言渡を受けた前示政令被告事件について更に判決をするのに、刑
事訴訟法第四百四条、第三百三十七条第二号に則り、本件再審請求者に対する昭和
二十六年二月二十四日附起訴状記載の公訴事実(末尾添附別紙記載の事実)につい
ては、同人を免訴すべきものとする。
 よつて主文のとおり判決をする。
 (裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦)

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