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平成18年(行ケ)第10080号審決取消請求事件
平成18年6月22日口頭弁論終結
判決
原告ラッキー工業株式会社
訴訟代理人弁護士鎌田邦彦
訴訟代理人弁理士清水久義
同清水義仁
Y被告
訴訟代理人弁理士佐藤勝
同長坂剛人
主文
1特許庁が取消2005-30290号事件について平成18年1月
19日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
主文と同旨
2被告
()原告の請求を棄却する。1
()訴訟費用は原告の負担とする。2
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,別紙商標目録記載の構成よりなり,昭和56年2月6日に登録出願
され,同60年8月29日に設定登録された後,平成7年8月30日及び同1
7年3月22日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされた登録第1
802596号商標(以下「本件商標」という)の商標権者である。本件商。
標は,第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属する
)()」,,ものを除く寝具類寝台を除くを指定商品として設定登録されその後
平成17年7月27日に,第5類,第9類,第10類,第16類,第17類,
第20類,第21類,第22類,第24類に属する商標登録原簿に記載のとお
りの商品及び第25類「被服」に書換登録されたものである。
被告は,本件商標の指定商品中の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ
類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャ
ップ,ヘルメット,帽子」につき,その商標登録を取り消すことについて審判
を請求し,平成17年4月6日,同審判請求の登録がされた(以下,この登録
を「本件審判請求登録」という。。)
特許庁は,上記審判請求を取消2005-30290号事件として審理し,
その結果,平成18年1月19日「登録第1802596号商標の指定商品に
中『洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水
泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子』につい
ては,その登録は取り消す」との審決をし,その謄本は同月31日に原告に。
送達された。
2審決の概要
審決の内容は,別紙審決書写しのとおりである。その概要は,原告(被請求
人)は,本件商標を,その設定登録日以降平成17年1月18日(本件商標の
商標権の原告への移転登録日)までは通常使用権者として,同日以降は商標権
者として使用しているもので,本件取消審判請求に係る指定商品中の「洋服,
コート,セーター類」に属する「ママコート」につき,昭和60年代から現在
に至るまで継続して本件商標を使用していると主張するところ,原告が上記期
間本件商標をその指定商品に使用する通常使用権を有していたことは認められ
,(,,るが原告が審判手続において提出した証拠審判における乙第1第2号証
,,(。,,第9号証第10号証第16ないし第18号証枝番号を省略なお以下
同様に枝番号を省略することがある。本件訴訟における甲第1ないし第4。)
号証,第7ないし第9号証)によっては,本件商標を本件審判請求登録前に上
記商品について使用していたものとは認め難く,また,原告(被請求人)は,
本件商標を取消審判請求に係る指定商品に使用したことについて上記証拠のほ
か何ら立証していないから,結局,本件商標は,本件審判請求登録前3年以内
に商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が取消審判請求に係る指定商品に
ついて使用したことの証明がないことに帰する,というものである。
第3原告主張の審決の取消事由の要旨
審決は,本件商標について,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者な
いし商標権者である原告により,取消審判請求に係る指定商品につき,商標法
2条3項2号に掲げられた商標の使用がされていたにもかかわらず,証拠の評
価を誤って当該事実が認められないとしたものであり,この誤りが審決の結論
に影響することは明らかであるから,違法として取消しを免れない。
1本件商標の使用主体等
,,原告は子守帯やママコート等の製造販売を業とする株式会社であるところ
平成17年1月18日に本件商標の商標権者であった原告代表者から譲渡A
を受けて商標権者となったが,それ以前は本件商標をその指定商品に使用する
通常使用権の許諾を受けていた(甲6号証。原告は,本件商標を取消審判請)
求に係る指定商品中「洋服」及び「コート」に該当するママコートに以前から
継続して使用していたものであり,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権
者ないし商標権者である原告によって本件商標が使用されていた事実は,関係
証拠から優に認めることができる。
なお,ママコートとは,母親が子供を抱いたまま或いは背負ったまま子供ご
と覆うこともできるコートで,袖のある典型的なコートタイプのものだけでは
なく袖のないベストタイプのものも含まれる。
22002年秋冬における本件商標の使用
原告は平成14年2002年6月頃別紙標章目録1の標章以下標,(),(「
章1」という)を付したママコートの下げタグを大日本印刷株式会社に委託。
して製造し,さらに当該下げタグを付したママコートを同年秋冬にかけて販売
し,本件商標を使用した(甲第29号証。)
32004年秋冬シーズン用ママコートの品番T2061,T2062,T2
063及びT2364についての本件商標の使用
原告は,平成16年(2004年)に企画開発した秋冬シーズン用ママコー
トの品番T2061,T2062,T2063及びT2364を株式会社ヤギ
に委託して製造していた。株式会社ヤギは,その製造を,さらに中国の湖北美
春服装有限公司に再委託していた。
ママコートには,下げタグ(下げ札)に標章1が,襟ぐりの織りネーム(衿
ネーム)に別紙標章目録2の標章(以下「標章2」という)が付されていた。
が,これらはいずれも社会通念上,本件商標と同一というべきである。
織りネーム(衿ネーム)は原告の指示により株式会社ヤギがYKKファスニ
ングプロダクツ販売株式会社から仕入れたものであり,下げタグ(下げ札)は
原告が笹徳印刷株式会社に製造させて株式会社ヤギに支給したものである。
原告は,株式会社ヤギを介して,中国で製造され,上記のとおり本件商標が
付されたママコートを平成16年8月から10月にかけて我が国へ輸入し,同
年9月から12月にかけて我が国で譲渡した。
,(),上記の事実は甲第15号証2004AWシーズンママコート企画書
第16号証(2004AWママコート資材明細表,第17号証(請求書及び)
パッキングリスト,第18号証(納品書,第19号証(納品書等,第20)))
号証(納品書,売上伝票等,第23号証(ママコートの写真)及び第34号)
証(事実実験公正証書)により,明らかに認められるところである。
42004年秋冬シーズン用ママコートの品番S5960についての本件商標
の使用
2004年秋冬シーズン用ママコートの品番S5960は,袖のないベスト
タイプのママコートであるが,その製造関係や本件商標の使用状況は上記の品
番T2061等のママコートと同様で,原告は,平成16年に株式会社ヤギを
介して本件商標が付されたママコート品番S5906を中国から輸入し,同年
9月から平成17年1月にかけて我が国で譲渡した。
上記の事実は,甲第4号証(売上伝票,第15号証(2004AWシーズ)
ンママコート企画書,第24号証(2004AWママコート資材明細表))
及び第25号証(請求書及びパッキングリスト)により,明らかに認められる
ところである。
5ママコートの品番S2071についての平成16年における本件商標の使用
原告は,平成15年に株式会社ヤギに委託して製造し,下げタグ(下げ札)
に標章1が,織りネーム(衿ネーム)に標章2が付されたママコートの品番S
2071の在庫品を,平成16年9月に譲渡した。
上記の事実は,甲第9号証(売上伝票及び売上台帳,第26号証(200)
3AWシーズンママコート企画書,第27号証(2003AWママコート)
資材明細表)及び第28号証(請求書及び受領書)により,明らかに認められ
るところである。
6標章1,2と本件商標との同一性について
標章1,2は,いずれも本件商標と社会通念上同一というべきものである。
標章2について,被告は,商標法50条1項にいう「書体のみに変更を加え
た同一の文字からなる商標」とは到底いえず「モンビービー」のような「モ,
ンベベ」以外の称呼も生ずることになるので,本件商標とは社会通念上同一と
はいえない旨主張する。
しかし商標法50条1項は社会通念上同一と認められる商標として書,,,「
体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標「平仮名,片仮名及びロー」,
マ字の文字の表示を相互に変換するものであって同一の称呼及び観念を生ずる
商標」及び「外観において同視される図形からなる商標」を例示しているとこ
ろ,一般人からみてアクサンテギュの有無によって同一性が失われることはな
く,標章2は「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ないしそれ
に準ずるものとして本件商標と社会通念上同一というべきである。また,一般
人からみて標章2から生ずる称呼は「モンベベ」のみであり(なお,織りネー
ムの製造会社も「モンベベ」と呼んでいる。甲第32,第33号証参照,標)
章2は本件商標と同一の称呼及び観念を生ずるというべきである。標章2は,
商標法の例示する「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変換す
るものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」より以上に本件商標に近似
するものであり,本件商標と社会通念上同一であることは明らかである。
なお,標章1については,被告も,審判手続及び本件訴訟を通じて,本件商
標と社会通念上同一であることを争っていない。
7ママコートと指定商品「洋服「コート」について」
()原告の販売に係るママコートは取消審判請求に係る指定商品中の洋1「」,「
服「コート」に属するものである。」
()「ママコート」一般と指定商品「洋服「コート」2」
被告は「ママコート」は,指定商品「洋服「コート」に含まれない特,」
殊な商品である旨主張する。
しかし「ママコート」は,母親が子供を抱いたり背負ったりしたまま着,
ることができるコートの一般的な名称であり,コートの一種であるから一般
に「ママコート」と呼ばれているのであって「ママコート」が「コート」,
に該当することは明らかである。また「コート」が「洋服」の一種類であ,
ることも明らかであるから「ママコート」が「洋服」に該当することも明,
らかである。
「ママコート」という名称が日本の取引者や需要者が一般的に使用する少
なくとも通称であることは,本件訴訟に証拠として提出された各種取引書類
等(甲第9号証,第15ないし第17号証,第19号証,第20号証,第2
6号証,第27号証,乙第4号証等)に「ママコート」という名称が使用さ
れていることなどに照らし,明らかである。
()原告製品と「洋服「コート」3」
原告の販売に係るママコートには袖のあるコートタイプ(たとえば品番T
2061,T2062,T2063,T2364,S2071)と袖のない
ベストタイプ(たとえば品番S5960)がある。
このうち袖のあるコートタイプのものは,付属する別体のダッカーを付け
ることにより子供を抱いたり背負ったりしたまま着ることができるものであ
り(甲第3号証の3等の下げタグの内面の商品説明,甲第40号証添付の写
真等参照,上記のような一般的な「ママコート」に該当し「洋服「コー),」
ト」に該当することは明らかである。
さらに,原告製品は,別体の付属のダッカーを取り付けない場合は,何ら
一般のコートと変わらない。しかも,ダッカーは別体である上に原告製品を
掛けるハンガーのズボン吊るしに掛けられ外から見えない状態で販売されて
おり,商品の外見上はコートとしか見えない(甲第23号証,第26号証等
参照。このように原告製品は一般のコートとしての性格を有するものであ)
り「洋服「コート」に該当することは明らかである。なお,原告製品に,」
おいて一般のコートとしての使用が通常の使用態様の一つであることは,下
げタグの内面甲第3号証の3第29号証第37号証の1等参照に3(,,)「
通りの着用方法があります「ダッカーを取り外しコートとして着用でき」,
ます」との使用方法の説明がされていることからも明らかである。
次に,原告製品のうち袖のないベストタイプのものは,コートタイプのも
のと同様に,付属する別体のダッカーを付けることにより子供を抱いたり背
負ったりしたまま着ることができるものであり(甲第3号証の3等の下げタ
グの内面の商品説明,甲第14号証添付の写真等参照。なお,審決(審決書
9頁34行~38行)も「該商品も,ダッカーと呼ばれる着脱が可能なよう
にファスナーが取り付けられた供布を本体に取り付けることによって見頃の
幅を大きくして着用することができるものであり,主として赤ちゃんをおぶ
ったり抱いたりする際に赤ちゃんの上から羽織って着用するための防寒用の
衣服と認められる」と認定している,ダッカーを取り付けない場合は一。)
般のベストと変わりはなく,一方,ダッカーを取り付けた場合も身頃が拡が
,「」るだけでベストであることに変わりはなく少なくともベストとして洋服
に該当することは明らかである。
以上のとおり,原告製品が「洋服」及び「コート」に該当することは明,
らかである。
第4被告の反論の要旨
審決の認定判断に誤りはなく,審決を取り消すべき理由はない。
1商標法2条3項2号の使用の事実について
()原告は,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者ないし商標権者であ1
る原告によってママコートに本件商標が使用されていたと主張する。
しかし,原告が平成17年1月18日以前に本件商標についての通常使用
権者であったことは認めるにしても,本件訴訟において追加提出された証拠
を含めても,本件審判請求登録前3年以内に原告によって本件商標が使用さ
れていた事実を認めることはできない。
()原告提出の写真(甲第3号証,第8号証,第23号証,第31号証)は,2
すべて本件審判請求登録の後に撮影されたものであり売上伝票・納品書甲,(
第4号証,第9号証,第20号証)には,本件商標が記載されていない。ま
た,事実実験公正証書(甲第34号証)において日付を確認できるものは,
段ボール箱の外側に押印されたゴム印の日付だけであり,ゴム印が押印され
たシール部分をはがして貼り直された痕跡がないか,あるいはテープをはが
して一度きれいにはがして梱包し直された痕跡がないか等につき,より慎重
な検証が必要であるところ,当該事実実験公正証書には外観を観察しての簡
単な状況しか説明されていない。
()本件訴訟では,本件審判請求登録前3年以内に撮影された売場の写真とい3
った客観的な証拠は提出されておらず,原告主張の本件商標の使用事実は認
められない。
2標章1,2と本件商標との同一性について
()標章1が本件商標と社会通念上同一であることは認めるが,標章2は,本1
件商標と社会通念上同一ということはできない。
,「」「」()本件商標はフランス語で私の赤ちゃんを意味するMONBEBE2
(Eにはアクサンテギュが付されている)の文字からなり「モンベベ」。,
の称呼しか生じないところ,標章2は「MonBebe」を筆記体英文字
により書したものであり「e」に「アクサンテギュ」が付されていない。,
標章2は,商標法50条1項にいう「書体のみに変更を加えた同一の文字か
らなる商標」に該当するとは到底いうことができず「モンビービー」のよ,
うな「モンベベ」以外の称呼も生ずることになる大きな変更を加えたもので
あることは明らかである。
また,標章2は衿ネームに係るものであるところ「アクサンテギュ」が,
刺繍できない事情はない。原告の別商品(乙第1号証参照)では,衿ネーム
及び台紙の双方とも「e」に「アクサンテギュ」を付して書体を統一させて
おり,下げタグに係る標章1の「e」から「アクサンテギュ」を削除し,か
つ,書体まで変更した標章2を衿ネームに刺繍しなければならない事情は存
在しない。
上記によれば,標章2を本件商標と社会通念上同一の商標と認めることは
できない。
3ママコートと指定商品「洋服「コート」について」
()原告の商品「ママコート」は,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」1
「コート」に属さない,特殊な商品である。
審決においては,原告の商品「ママコート」は,ダッカーと呼ばれる着脱
が可能なようにファスナーが取り付けられた供布を本体に取り付けることに
より見頃の幅を大きくして着用することができるものであり,主として赤ち
ゃんをおぶったり抱いたりする際に赤ちゃんの上から羽織って着用するため
の防寒用の衣服であると認定されている(審決書9頁34行~38行。)
特に「下げタグ(甲第3号証の3)において「ママコートの下に必ず,」
子守帯をご着用下さい」との注意書きが付されるほど「子守帯」と密接不可
分な関係にあるものであり,背中部分に配置された供布を取り付けるための
ファスナーをはずせばばらばらに分解される「子守帯」だけでは冬場の外出
に適さないために案出された「子守帯」の付属品ともいうべき特殊な商品で
ある。
()原告は「ママコート」を昭和60年から販売していると主張しているとこ2
ろ,仮に「ママコート」が「洋服,コート」に含まれる商品として把握され
ているのであれば,1998年発行の「新・田中千代服飾事典(乙第2号」
証)のような服飾に関する専門書には当然掲載されているはずであるが,同
事典には「マ」行の項目はもちろん「コート」の項目にも掲載されてお,,
らず,他に関連ページも見当たらない。
また,甲第9号証の納品書(乙第3号証参照,甲第20号証の納品伝票)
からもうかがえるように,販売ルートも「ベビー用品」を取り扱っている部
署に限られている。
原告が複数の百貨店に電話で問い合わせた結果でも,ベビー用品売場で取
り扱っている百貨店はあるものの,婦人服売場で取り扱っている百貨店はな
かった。ウェブサイト(乙第4号証)においても,一般の「コート」が「フ
ァッション」の「アパレル」に分類されるのに対し「ママコート」は「ベ,
ビー用品」の「外出,移動用品」に分類されている。
すなわち,一般の「洋服,コート」の需要者が「ベービー用品専門店」あ
るいは「ベビー用品売り場」に一般の「洋服,コート」を買い求めることは
あり得ず,また一般の「洋服,コート」は「子守帯」をした上から着用でき
るような性質のものではなく「ママコート」を購入するのは「子守帯」を,
したまま冬場に外出を希望する特殊事情を有する少数の需要者層である。
上記のとおり販売部門用途需要者を異にするママコートが洋,,,「」,「
服,コート」に含まれないことは明らかである。
()仮に,一般に「ママコート」と呼ばれる商品が「洋服,コート」に含まれ3
るとしても,原告の「ママコート」は,明らかに「下げタグ(甲第3号証」
の3)で「ママコートの下に必ず子守帯をご着用下さい」との注意書きが付
され,背中部分に配置された供布を取り付けるためのファスナーをはずせば
ばらばらに分解される極めて特殊な商品であり「子守帯」の付属品として,
分類されることはあっても「洋服,コート」に分類されないことは明らか,
である。
第5当裁判所の判断
原告は,本件商標については,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者
ないし商標権者である原告により,取消審判請求に係る指定商品中の「洋服」
「コート」に属する商品につき,商標法2条3項2号に掲げられた商標の使用
がされていたものであり,当該事実が認められないとした審決には,事実認定
を誤った違法があると主張する。そこで,以下,順次,検討する。
1商標法2条3項2号の使用について
()甲第6号証及び弁論の全趣旨によれば,本件商標については,当初,原告1
の代表者を務めるが商標権者であったが,同人は,本件商標の商標権をA
原告に譲渡し,平成17年1月18日にその旨の登録がされたこと,同日以
前においては,原告は前記から本件商標をその指定商品に使用する通常A
使用権の許諾を受けていたことが認められる(このことは,審決も認定し,
被告も争っていない。。)
()原告は,本件審判請求登録前3年以内における本件商標の使用として,①2
2002年秋冬におけるママコートについての本件商標の使用,②2004
年秋冬シーズン用ママコートの品番T2061,T2062,T2063及
びT2364についての本件商標の使用,③2004年秋冬シーズン用ママ
コートの品番S5960についての本件商標の使用,④ママコートの品番S
2071についての平成16年における本件商標の使用を主張するところ,
事案にかんがみ,まず,2004年秋冬シーズン用ママコートの品番T20
61T2062T2063及びT2364についての本件商標の使用上,,(
記②)について検討する。
()甲第15号証は,原告従業員作成に係る「2004AWシーズンママコ3
ート企画書」と題する書面であるところ,これによれば,2004年秋冬シ
ーズン用「ママコート」のなかに,品番T2061,T2062,T206
3及びT2364の商品が含まれており,原告において,2004年秋冬シ
ーズン用商品として,品番T2061,T2062,T2063及びT23
64のママコートを企画したことが認められる。
甲第16号証は,原告従業員作成に係る「2004AWママコート資材明
細表」と題する書面であり,甲第18号証は,YKKファスニングプロダク
ツ販売株式会社から株式会社ヤギに宛てた織りネーム(衿ネーム)等の納品
書であるが,これらによれば,品番T2061の商品(商品名「マイクロピ
ーチママコートにつき合計446枚品番T2062の商品商品名ゾ」),(「
ゾテックダッフルママコートにつき422枚品番T2063の商品商」),(
品名「リオデダウンママコート)につき124枚,品番T2364の商品」
(「」),「」商品名ピンヘッドシャンブレーにつき84枚それぞれモンベベ
の織りネーム(衿ネーム)の作成がYKKファスニングプロダクツ販売株式
会社に発注され,これらの織りネーム(衿ネーム)が平成16年6月15日
から7月22日の間に納入されていることが認められる。
甲第19号証は,笹徳印刷株式会社から原告に宛てた納品書及び請求書で
あるが,これによれば,笹徳印刷株式会社から原告に,平成16年7月1日
に「ママコート下げ札」1万枚が納入されていることが認められる。
甲第17号証は,株式会社ヤギから原告宛ての請求書及びこれに対応した
湖北美春服装有限公司作成のパッキングリストの写しであるが,これによれ
ば,原告は株式会社ヤギに「ママコート」の製造を委託し,平成16年8月
から同年10月までの間に,品番T2061の商品合計427枚,品番T2
062の商品合計339枚,品番T2063の商品合計119枚,品番T2
364の商品合計78枚が,株式会社ヤギの再委託先(下請け)である中国
の製造会社(湖北美春服装有限公司)から我が国に出荷されたことが認めら
れる。
甲第20号証は,原告から販売会社宛ての納入書控え,売上伝票及び納品
,,,,書であるがこれらによれば平成16年9月から12月にかけて原告が
品番T2061,T2062,T2063及びT2364のママコートを各
地の販売会社に対して販売したことが認められる。
()甲第34号証は,岐阜地方法務局所属公証人鈴木規夫作成の平成18年54
月2日付け(平成18年第199号)事実実験公正証書(以下「本件公正証
書」という)であるが,同公正証書は「倉庫に保管中の在庫品の保管状。,
況と在庫品に商標が付されている事実の存否及びその状況に関する事実実験
公正証書」と題され,その第1条(嘱託の趣旨)によれば,原告において,
その倉庫に平成16年(2004年)製造のママコートが中国から輸入され
てきた状態のまま未開包の段ボール箱に入った状態で一部在庫として残って
いることが判明したことから,同公証人に,本件訴訟における本件商標の使
用の事実の立証に資するため,同倉庫に立会いの上,同段ボール箱が未開包
である状況,同段ボール箱に付されている契約番号及び日付の入った中国工
場の検品・検針済みシール等の状況及び同段ボール箱を開包して在中のママ
コートの織りネーム(衿ネーム)と下げタグ(下げ札)に本件商標が付され
ている状況等を目撃してもらい,その事実を実験した状況について,これを
録取した公正証書の作成を嘱託したものである。
本件公正証書によれば,①倉庫には,品番T2061,T2062,T2
063及びT2364のママコートの入った段ボール箱が通常の在庫商品と
して保管されていたところ,T2062以外の段ボール箱は,その梱包の状
況,帯及び段ボール箱に印字された文字,記入された文字の状況に照らし,
梱包時のまま保管されていたもので,梱包後何らかの作為を加えた可能性は
認められず,T2062の段ボール箱についても,上部の一部が開口してい
たが,その開口部からママコートの出し入れをすることは困難なものであっ
,「」,たこと②上記各段ボール箱にはいずれもYAGIの印字がされており
そのなかに収納されていた品番T2061,T2062,T2063及びT
2364のママコートには,いずれも標章2の織りネーム(衿ネーム)が付
され,標章1の付された下げタグ(下げ札)が下げられていたこと,③上記
各段ボール箱には,いずれも「上海愛恩M&N倉儲有限公司SHAN
GHAIM&NTOTALLOGISTICCO,LTD.検.
品・検針済責任者」と印字のある青色ラベルが貼付され,これには赤色の
押印があるところこのうち品番T2061の段ボール箱の押印は上段に検,「
査済,中段に「2004.9.04,下段に「上海」等の文字が読み取」」
ることができ,品番T2062の段ボール箱の押印は上段に「検査済,中」
段に「2004.9.01,下段に「上海」等の文字が読み取ることがで」
き,品番T2364の段ボール箱の押印は上段に「検査済,中段に一部不」
明文字と末尾「4」及び「8.13,下段に「上海」等の文字が読み取る」
ことができ,品番T2063の段ボール箱の押印は上段に「検査済,中段」
に判読不能の文字に挟まれて中央部に「8,下段に「上海」等の文字が読」
み取ることができたこと,が認められる。
,()()上記()()記載の各認定事実によれば甲第34号証事実実験公正証書534
に記載されている原告倉庫に保管されていた段ボール箱は,株式会社ヤギの
再委託先の中国の製造会社から平成16年8月ないし9月に我が国に出荷さ
れた原告の2004年秋冬シーズン用「ママコート」の一部と認められるか
ら,2004年秋冬シーズン用「ママコート」として,原告が平成16年9
月から同年12月にかけて我が国において販売した,2004年秋冬シーズ
ン用「ママコート」品番T2061,T2062,T2063及びT236
4の各商品には,標章2の織りネーム(衿ネーム)が付され,標章1の付さ
れた下げタグ(下げ札)が下げられていたものと認めるのが相当である。
2標章1,2と本件商標との同一性について
()標章1,2のうち,標章1は,本件商標と比較すると「書体のみに変更1,
を加えた同一の文字からなる商標」と認められるから,本件商標と社会通念
上同一というべきである(このことは,審決も認定しており,被告も争って
いない。。)
()そうすると,標章2を本件商標と社会通念上同一ということができるかど2
うかはひとまずおくとして,原告は,上記各商品に本件商標と社会通念上同
一の商標である標章1を付して販売したものと認められる。
3ママコートと指定商品「洋服「コート」について」
()被告は原告の販売した上記各商品が取消審判請求に係る指定商品中の洋1,「
服「コート」に属するものであることを争っているので,この点につき検」
討する。
()原告の販売に係るママコートには袖のあるタイプと袖のないタイプがある2
ところ,上記の品番T2061,T2062,T2063及びT2364の
各商品は,いずれも袖のあるタイプである。
これらの商品に付された下げタグ(下げ札)の内面(甲第3号証の3,第
29号証,第37号証の1)には,使用方法の説明がされており,そこには
「3通りの着用方法があります「ダッカーを取り外しコートとして着用」,
できます」との記載がある。また,これらの商品の形状をみるに,甲第15
号証,第23号証及び第40号証によれば,これらの商品にはダッカーが付
属するものであり,ダッカーをファスナーでコート本体の前又は後ろに取り
付けた場合にはコート本体の身頃が拡がるが,ダッカーを取り付けない場合
には通常の身頃となり,普通のコートとして着用することができるものであ
る。
()上記によれば,原告の販売に係る品番T2061,T2062,T2063
3及びT2364の各ママコートは,取消審判請求に係る指定商品中の「洋
服「コート」に属するものと認めるのが相当である。」
4結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件商標について
は,本件審判請求登録前3年以内に通常使用権者である原告により,取消審判
請求に係る指定商品中の「洋服「コート」に属する商品につき,商標法2条」
3項2号に掲げられた商標の使用がされていたものと認められる。
上記使用を認められないとした審決の判断には誤りがあり,この誤りが審決
の結論に影響することは明らかであるから,審決は取消しを免れない。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官佐藤久夫
裁判官三村量一
裁判官古閑裕二

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