弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人銭坂喜雄の上告理由第一点について。
 所論は、要するに原判決は遺言者の真意を無視して遺言の趣旨を専断的に解釈し
た違法があり、また遺言の文言が原判決のように解しうるとすれば、相異なる二様
の解釈が生ずることとなり、遺言の真意が不明確であることに帰するから無効とし
なければならないのに、原審がこれを有効と認定したのは違法であるというに帰す
る。しかし意思表示の内容は当事者の真意を合理的に探究し、できるかぎり適法有
効なものとして解釈すべきを本旨とし、遺言についてもこれと異なる解釈をとるべ
き理由は認められない。この趣旨にかんがみるときは、原審が本件遺言書中の「後
相続はBにさせるつもりなり」「一切の財産はBにゆずる」の文言をBに対する遺
贈の趣旨と解し、養女Dに「後を継す事は出来ないから離縁をしたい」の文言を相
続人廃除の趣旨と解したのは相当であつて、誤りがあるとは認められず、また遺言
の真意が不明確であるともいえないから、所論は理由がない。
 同第二点について。
 所論は、被上告人は本件仮処分を請求する権利がないと主張する。しかし仮処分
は、裁判所が申請人の請求権が本案の訴訟で確定する以前に予じめこれを保全する
必要ありと認めた場合に許されるのであるから、たとい上告人に対する相続人廃除
の審判が確定せず、また被上告人に対する遺贈の効力がなお争いうる状態にあると
しても、被上告人において遺贈により本件建物の所有権を取得した旨主張し、その
権利保全のため仮処分を申請することが許されない道理はない。所論の援用する民
法八九五条は、相続人廃除の手続進行中における相続財産の保全を図るため、家庭
裁判所に必要な処分を命ずる権限を認めた規定であつて、これあるがため、受遺者
がその財産を相続人から買い受けた第三者に対し、自己の請求権を保全する仮処分
を申請することを禁ぜられるものとは解されない。また本件遺言の趣旨が原判示の
とおりであつても、上告人に対する相続人廃除の請求が棄却されれば、上告人の遺
留分減殺請求権との関係において、必しも本件建物が被上告人に帰属するといえな
いことは所論のとおりであるが、そのことの確定しない現在において、被上告人が
本件建物について仮処分の申請をなし得ないという理由は認められない。
 同第三点について。
 遺言執行者が所論のような権利義務を有することは民法一〇一二条一項の規定か
ら明らかであり、従つて本件の遺言執行者が所論摘示のような行為をなし得ること
も認められるが、このことは本件被上告人が受遺者としての権利に基いて自ら仮処
分の申請をなすことを妨げるものと解することはできない。
 同第四点について。
 遺言執行者の任務は、遺言者の真実の意思を実現するにあるから、民法一〇一五
条が、遺言執行者は相続人の代理人とみなす旨規定しているからといつて、必ずし
も相続人の利益のためにのみ行為すべき責務を負うものとは解されない。そして本
件仮処分の相手方たる上告人は、相続人から本件建物を買い受けた第三者であつて
相続人その人ではないから、遺言執行者であるEが受遺者たる被上告人の代理人と
して上告人に対し、仮処分申請の手続をすることを許されないと解することはでき
ない。
 同第五点について。
 民法九八二条が九七六条の遺言に九七三条を準用する旨を定めたのは、九七六条
のいわゆる特別方式による遺言を禁治産者がなす場合には、九七三条を準用し医師
の立会等を必要とするとの趣旨であつて、禁治産者でない通常人が九七六条の遺言
をする場合についても、禁治産者の遺言の場合と同じく、九七三条に定める医師の
立会等を必要とするとの趣旨ではないと解するを相当とする。このことは、九八二
条が九七七条ないし九七九条の遺言にも九七三条を準用する旨規定した法意と比照
してみれば明らかであつて、これと同趣旨に出た原判決の解釈に誤りはなく、所論
は採用することはできない。
 同第六点ないし第九点について。
 所論第六点は、原審が証拠によつて正当に認定した「本件遺言書は証人の一人F
が遺言者のいうままに一口一口宛筆記した上、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、
各証人がその筆記の正確なことを承認した後これに署名捺印した」という事実を争
うに過ぎず、また所論第七点は、右事実認定と異なる見解を前提とする主張である
から、採用のかぎりでなく、仮りに原審が所論準備書面の趣意を誤解したふしがあ
つたとしても、判決主文には全く影響がなく、結論においてなんら変りはない。所
論第八点は、原審が証拠によつて正当に判断した遺言書の真意を、遺言書の語句と
対比して非難するに過ぎず、原判決になんら違法はない。所論第九点は、原審口頭
弁論において陳述しない準備書面の記載に基づいて判断遺脱を主張するのであつて
採用のかぎりでない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛