弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 本件抗告理由の要旨は抗告人と相手方間の広島簡易裁判所昭和二十六年新(二)
第一六号建物収去土地明渡事件の調停調書の執行力ある正本に基く強制執行につき
相手方は広島地方裁判所に対し、請求異議の訴を提起し且つその執行の停止を申立
て、同裁判所はその理由ありとして昭和二十八年八月二十日該強制執行の停止決定
をなした。ところが簡易裁判所の調停調書についての請求異議の訴は民事訴訟法第
五百四十五条の規定を準用すべきもので、その訴は訴訟物の価格如何に拘らず第一
審の受訴裁判所である当該簡易裁判所の専属管轄に属する。従つて原審は右請求異
議の訴につき管轄権なくこれに基いてなした本件強制執行停止決定も亦不適法で<要
旨>あるから、本件抗告に及んだと謂うのである。然しながら、民事訴訟法第五百四
十七条第二項所定の強制執行停止決定をなす管轄裁判所は、受訴裁判所即
ち、異議の訴訟が現に係属する裁判所の謂であるから該訴訟係属後は仮令受訴裁判
所に右訴訟につき管轄権がないとしても管轄裁判所に移送される迄の間は右係属中
の裁判所が強制執行停止決定をなし得るものと解するのが相当である。右は急迫な
る場合は裁判長がこれをなし執行裁判所も亦此の権利を行使することが出来ると云
う同条第三項第四項の規定の法意からも首肯できることである。而して本件請求異
議の訴訟が原審に提起され係属していることは抗告人の申立自体に徴して明かであ
るから原審がなした本件強制執行停止決定は適法であり、本件抗告は尓余の点を判
断する迄もなく理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条
を適用して主文のように決定した。
 (裁判長裁判官 植山日二 裁判官 佐伯欽治 裁判官 松本冬樹)

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