弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決(但し無罪を言渡した部分を除く)中被告人に関
する部分を破棄する。
     被告人を懲役三月に処する。
     但し三年間右懲役刑の執行を猶予する。
     第一審判決判示第三の公職選挙法違反の罪につき被告人を免訴する。
     訴訟費用中第一審において証人Aに支給した分は被告人と当審における
分離前の相被告人B、同C、同D、同Eの連帯負担、証人F、同G、同H、同I、
同J、同K、同L、同Mに各支給した分を除くその余の各証人に支給した分は被告
人と右相被告人B、同D、同Eの連帯負担、証人N、同Oに支給した分は被告人の
単独負担、原審における訴訟費用は被告人と右相被告人四名の連帯負担、当審にお
ける訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人小林為太郎の上告趣意について。
 原判決の判示した趣旨は、本件控訴趣意第一点並びに第一審判決の判示第一の(
一)乃至(三)及び第二の(一)の事実と右控訴趣意第一点に対する原判決の説明
とを対照して読めば、原判決は、本件第一審判決の判示第一事実のように、被告人
P、共同被告人B、同D、同Eの四名が犯意を共通し共同して判示上京税務署員Q、
同R、同A、同S、同T、同U、同Vの七名に対し各別にそれぞれ暴力行為等処罰
に関する法律一条一項の違反行為を為し因て右署員中Q、U、Vの三名に対し各別
にそれぞれ傷害を与えたような場合には、右三名を除いた他の四名の被害者に対す
る暴力行為等処罰に関する法律一条一項違反の犯罪が成立するのは勿論、そのほか、
右三名の被害者に対するそれぞれの暴力行為の結果たる傷害は、その原因たる違反
罪の構成要件の外にあつて、他の罪名たる傷害罪に触れ右違反罪に吸収されないか
ら、被告人P、共同被告人B、同D、同Eに対し右四名の被害者に対する暴力行為
等処罰に関する法律一条一項の外右三名の被害者に対する刑法二〇四条に問擬した
のは正当であると判示した趣旨と解することができる。そして、第一審判決の判示
第一事実の場合には、右各被告人に対しそれぞれ四個の暴力行為等処罰に関する法
律違反と三個の傷害罪が成立すること明らかであるから、原判決の説示は、結局正
当である。所論判例は、一個の暴力行為等処罰に関する法律違反の行為が傷害の結
果を生じた場合の両者の関係についての判例であつて、本件とその場合を異にし本
件には適切でなく、従つて、所論は採用できない。
 しかし、職権を以て調査すると、原判決の是認した第一審判決が被告人Pに対し
判示第一の罪と併合罪の関係あるものとして認定処断した判示第三の公職選挙法違
反の罪については、その後昭和二七年政令一一七号大赦令一条五号により大赦があ
つたので、原判決及び第一審判決は、被告人Pに関しては、刑訴四一一条五号によ
り破棄を免れない。
 よつて、被告人Pに対しては、同四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三七条
三号により主文一項、四項のとおり破棄、免訴し、第一審判決の判示第一の事実に
つき法令を適用するに、前記四名の被害者に対する暴力行為の点は、暴力行為等処
罰に関する法律一条一項に、前記三名の被害者に対する傷害の点は刑法二〇四条、
六〇条に各該当するところ各懲役刑を選択し、右は、同法四五条前段の併合罪であ
るから同法四七条、一〇条に則り犯情最も重しと認めるUに対する傷害罪につき定
めた懲役刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を主文二項の刑に処し、情状に
より同法二五条を適用て主文三項のとおりその刑の執行を猶予し、なお訴訟費用に
ついては、刑訴一八一条、一八二条に従い主文五項のとおり負担させるものとし、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 安平政吉出席
  昭和三一年一二月二〇日
     最高裁判所第一小法廷
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
 裁判長裁判官 岩松三郎は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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