弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人山本隆夫,同根岸隆,同久利雅宣,同増田英男の上告受理申立て理由
第一について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 上告人A1防水株式会社は,被上告人らとの間で,第1審判決別紙第一事
件保険契約及び同第二事件保険契約記載のとおり被保険者をいずれも甲,保険金受
取人を同上告人あるいは被保険者の法定相続人(上告人A2,同A3,同A4及び
同A5)とする普通傷害保険契約(以下「本件各保険契約」という。)をそれぞれ
締結した。
(2) 本件各保険契約に適用される各保険約款(以下「本件各約款」という。)に
は,いずれも被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に被った傷害
に対して約款に従い保険金(死亡保険金を含む。)を支払うこと及び被保険者の故
意,自殺行為によって生じた傷害に対しては保険金を支払わないことがそれぞれ定
められている。
 (3) 本件各保険契約の被保険者である甲は,平成7年10月31日午後2時3
0分ころ埼玉県北足立郡a町所在の5階建て建物の屋上から転落し,脊髄損傷等に
より死亡した(以下,これを「本件転落」という。)。
 2 上記事実関係に基づいて検討する。
 【要旨】本件各約款に基づき,保険者に対して死亡保険金の支払を請求する者は
,発生した事故が偶然な事故であることについて主張,立証すべき責任を負うもの
と解するのが相当である。けだし,本件各約款中の死亡保険金の支払事由は,急激
かつ偶然な外来の事故とされているのであるから,発生した事故が偶然な事故であ
ることが保険金請求権の成立要件であるというべきであるのみならず,そのように
解さなければ,保険金の不正請求が容易となるおそれが増大する結果,保険制度の
健全性を阻害し,ひいては誠実な保険加入者の利益を損なうおそれがあるからであ
る。本件各約款のうち,被保険者の故意等によって生じた傷害に対しては保険金を
支払わない旨の定めは,保険金が支払われない場合を確認的注意的に規定したもの
にとどまり,被保険者の故意等によって生じた傷害であることの主張立証責任を保
険者に負わせたものではないと解すべきである。
 3 以上によれば,本件転落が偶然な事故であると認めることができず,したが
って上告人らの本件各保険契約に基づく各保険金請求をいずれも棄却すべきものと
した原審の判断は,正当として是認することができる。上記判断は,所論引用の判
例に抵触するものではない。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することがで
きない。
 よって,裁判官亀山継夫の補足意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文
のとおり判決する。
 裁判官亀山継夫の補足意見は,次のとおりである。
 私は,法廷意見に賛成するものであるが,次のことを付言しておきたい。
 本件各約款の合理的解釈としては,法廷意見のいうとおり,保険金請求者の側に
おいて偶然な事故であることの主張立証責任を負うべきものと解するのが相当であ
る。しかしながら,本件各約款が,保険契約と保険事故一般に関する知識と経験に
おいて圧倒的に優位に立つ保険者側において一方的に作成された上,保険契約者側
に提供される性質のものであることを考えると,約款の解釈に疑義がある場合には
,作成者の責任を重視して解釈する方が当事者間の衡平に資するとの考えもあり得
よう。そして,かねてから本件のように被保険者の死亡が自殺によるものか否かが
不明な場合の主張立証責任の所在について判例学説上解釈が分かれ,そのため紛争
を生じていることは,保険者側は十分認識していたはずであり,保険者側において
,疑義のないような条項を作成し,保険契約者側に提供することは決して困難なこ
ととは考えられないのであるから,一般人の誤解を招きやすい約款規定をそのまま
放置してきた点は問題であるというべきである。もちろん,このような約款がこれ
まで使用されてきた背景には,解釈上の疑義が明確に解消されないため,かえって
改正が困難であったという事情があるのかもしれないが,本判決によって疑義が解
消された後もなおこのような状況が改善されないとすれば,法廷意見の法理を適用
することが信義則ないし当事者間の衡平の理念に照らして適切を欠くと判断すべき
場合も出てくると考えるものである。
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川
弘治 裁判官 亀山継夫)

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