弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人小原栄の上告理由について。
 原審において確定された事実は次のとおりである。すなわち、上告人は、かねて
知合の訴外Dから、「訴外E某が、家の権利証と実印とを預りさえすれば、金五万
円貸してやる、といつているから、二、三日間だけ権利証と実印とを貸してくれ、
その五万円ができれば銀行との取引もできて前に上告人から借りた金十五万円も返
せる」旨上告人の本件建物に関する登記済証と実印の貸与方を依頼されてこれを承
諾し、これらの物を同訴外人に預けたところ、同人は上告人に無断で、被上告人か
ら金員を借り受けるにつき、その借受債務を担保するため上告人の代理人として被
上告会社との間で本件建物につき根抵当権設定契約をなし、その頃、上告人の前記
実印を用いて同人名義の根抵当権設定契約証と白紙委任状を作成しかつ印鑑証明書
の下附を受け、これらを右登記済証とともに被上告会社支店長に交付した。その結
果被上告会社は、右委任状に委任事項と受任者Fの氏名を補充した上、右Fが登記
義務者たる上告人の代理人となつて判示根抵当権設定登記がなされたというのであ
る。そして原判決は、以上の事実関係に基き、なお右登記済証と実印の交付がDの
金員借入のためであり、これらの物が本件建物につき抵当権設定登記をするに必要
なものであることをも考慮に入れて、他に特段の事情のない本件においては、上告
人からDに対し、少くとも上告人の代理人としてEとの間にDの債務を担保するた
め本件建物に抵当権を設定しかつその登記のために適宜の処置をとる権限を与えた
ものと解した上、前記根抵当権設定契約につき表見代理の成立を認め、更に判示根
抵当権設定登記を少くとも上告人の意思に源を発しこれに由来したもので有効であ
ると判断して、本件根抵当権不存在確認および根抵当権設定登記抹消の各請求を排
斥したのである。
 しかし、以上の事実関係、とくにDに前記登記済証と実印とを交付するに際し上
告人において了承した前示Dの依頼の内容によると、右登記済証と実印が同人の金
員借入に関して交付されかつそれらの物が抵当権設定登記に必要なものであるから
といつて、ただちに、上告人からDに対し、本件建物につきDの債務を担保するた
め抵当権設定の権限を与えたものとは解しがたいところであり、いわんや抵当権設
定登記のために適宜の処置をとる権限を与えたものとはとうてい解しがたく、した
がつてまた判示登記が上告人の意思に源を発しこれに由来したものと断ずることも
できない筋合である。
 されば、原審として判示代理権の授与を認めて表見代理の成立を肯定しかつ根抵
当権設定登記を有効とするためには、上告人において前記のような経緯で登記済証
および実印をDに交付するに至つたのは、はたして本件建物を担保に供するにつき
いかなる代理権を同人に与える趣旨であつたかについて、更に審理を尽くしその間
の事情を明らかにするを要するものというべく、かゝる事情を明らかにすることな
くたやすく前示のとおり判断した点において、原判決には審理不尽ひいては理由そ
ごまたは理由不備の違法があることに帰し、第二前段の論旨は理由があるから、そ
の余の論旨に対する判断をまつまでもなく、原判決は破棄を免れない。
 よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   橋       潔
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一

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