弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人桑名邦雄の上告趣意は末尾添付の別紙書面記載のとおりである。
 第一点について。
 原審第二回及び第四回各公判調書に審判を公開した旨の記載がないことは所論の
通りである。しかし、旧刑訴法第六〇条第二項第四号は「公開ヲ禁シタルトキハ其
ノ旨及理由」を公判調書に記載すベき旨規定しているに止まり、公開したことをそ
の必要的記載事項とした規定は別に見当らない。そして、公判調書に公開しなかつ
た旨の記載がない限り、審判は公開されたものと認むべきこと当裁判所屡次の判例
が示す通りであつて(昭和二二年(れ)第二一九号、同二三年六月一四日大法廷判
決、判例集第二巻第七号六八〇頁、同年(れ)第三九七号、同年七月二九日大法廷
判決、同第二巻第九号一〇七六頁参照。)、所論各公判調書を閲しても、公開を禁
止した旨の記載はない。されは、同公判調書に公開した旨の記載がないからといつ
て、直ちに、原審の審判を以つて公開に関する規定に違反したものとすることはで
きない。論旨は採用し難い。
 第二点について。
 原判決はその判示犯罪事実を認定する証拠として幾多の証拠を掲げているが、被
告人等の強取した物件の品名及び数量認定の資料となつたものと考えられる証拠が、
右各証拠中、第一審第二回公判調書における被告人の供述記載と司法警察官のA(
論旨にBとあるは誤記と認める。)に対する聴取書の同人の陳述記載だけであるこ
とは所論の通りであつて、同判決が、最初、証拠として司法警察官のCに対する聴
取書中の同人の陳述記載をも挙示して置きながら、後に、不用意にも、これを削除
した為め、そ証拠説明が稍々精細を欠く憾みを来すに至つたことは否定し難いとこ
ろである。しかし、右の二つの証拠によつても、被告人等がC及びA等所有に係る
現金八千三百余円並びにズボン下、チヨツキ及びシヤツ各一枚、腕時計二個、金メ
ツキ懐中時計一個及び靴一足等衣類時計その他雑品合計十点(時価合計金一万二千
円相当)を強取した事実は優にこれを認定するに足り、これと原判示とを対照して
考えると、所論B所有懐中時計一個外衣類数点も亦右十点中に含まれていることが
明らかである。従つて、原判決を目して証拠説明を欠いた理由不備があるというこ
とはできない。論旨は結局理由がない。
 第三点について。
 論旨は、原判決が、被告人には幾多の酌むべき情状があるにも拘らず、実刑を科
し、執行猶予を与えなかつたことを非難するもので、畢竟、量刑不当の主張に過ぎ
ないから、適法な上告理由とならないものである。
 よつて、刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従い、裁判官全員一致の意見を
以つて主文のように判決する。
 検察官 竹内壽平関与
 昭和二六年六月一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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