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平成14年(ネ)第1614号商号使用差止請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所川崎
支部平成13年(ワ)第606号)
平成14年11月28日口頭弁論終結
判決
 控訴人  株式会社河原コンクリート工業所
    訴訟代理人弁護士  吉川晋平
同   三 品篤
 被控訴人  有限会社カワコン
  訴訟代理人弁護士  渡部朋広
主文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、「有限会社カワコン」の商号を使用してはならない。
3 被控訴人は、被控訴人の商業登記中の「有限会社カワコン」の商号の
抹消登記手続をせよ。
4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 主文同旨 
2 被控訴人
 控訴人の本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,不正競争防止法2条1項1号,3条1
項に基づき,被控訴人の商号の使用の中止及び商号の抹消登記手続を求めた事案で
ある。
 当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の
「第2 事案の概要等」欄記載のとおりであるから,これを引用する(以下,「本
件略称」との語を,原判決の用法に従って用いる。)。
1 控訴人らの当審における主張の要点
 控訴人は,川崎市を中心として,コンクリート製品の製造・販売業と土木業
を営んでおり,本件略称は,川崎市の土木業者等の間で周知である。このことは,
控訴人の営業規模,売上高等から明らかである。
2 被控訴人の当審における反論の要点
 控訴人のコンクリート2次製品の売上高の川崎市内におけるシェアは,約5
ないし10%にすぎず,本件略称は,川崎市内において,周知とはいえない。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所は,控訴人の請求は理由がある,と判断する。その理由は,次のと
おりである。
1 本件略称の周知性について
(1)証拠(甲第1,第3号証の1ないし14,第57ないし第59号証)及び
弁論の全趣旨)によれば,次の事実が認められる。
(ア)控訴人は,昭和26年12月29日に,土木事業の請負,コンクリート
加工業等を目的として,現在の代表者の祖父により設立登記された会社である。控
訴人は,その設立以来現在まで,砂利・砂,セメントその他の補助材料を仕入れ,
コンクリート2次製品を製造して,これを川崎市内の土木業者等に販売し,また,
自らも川崎市指名業者として,土木業を営んできたものである。控訴人の売上げ
は,およそ,平成10年度で9億6428万円,平成11年度で7億8301万
円,平成12年度で7億9720万円である。
(イ)控訴人は,川崎市内の土木業者の間で,「河コン」(かわこん)という
略称,すなわち本件略称で呼ばれており,本件略称は,上記土木業者の間では,よ
く知られている。
(ウ)被控訴人は,平成13年2月21日に,本店を川崎市高津区,目的をコ
ンクリート製品の製造及び販売,砂利の販売,造園工事の設計・管理・請負,土木
工事の設計・管理・請負等として設立された会社である。
(2)不正競争防止法2条1項1号における「他人の商品等表示(…)として需
要者の間に広く認識されているもの」とは,一定の地域における取引者・需要者,
すなわち,相手方が営業活動ないし経済的活動をしている地域的範囲と重なった地
域的範囲における,相手方と共通の取引者・需要者の間において広く認識されてい
るものであれば足りるというべきである。
  上記(1)認定の事実によれば,本件略称は,控訴人及び被控訴人が共に活動
の拠点を有する川崎市内における,共通の取引者・需要者である土木業者の間にお
いて,控訴人の営業表示として広く認識されているものと認められる。すなわち,
被控訴人は,平成13年になって,控訴人の営業活動の中心となっている川崎市に
おいて,控訴人の営業活動とほぼ同様の営業活動をなすことを目的として設立され
た会社であるから,控訴人と被控訴人との共通の取引者・需要者と考えられる川崎
市内の土木業者の間において,控訴人の本件略称が周知であるかどうかを判断すれ
ば足りるのであり,本件においては,上記(1)に認定した程度の事実でも,その周知
性を肯定することができる,というべきである。
2 被控訴人の商号と本件略称との類似性及び控訴人の営業との混同のおそれに
ついて
(1)被控訴人の商号は,「有限会社カワコン」であり,本件略称すなわち「河
コン」(かわこん)と類似していることが明らかである。
(2)被控訴人は,控訴人の本店所在地と同じ行政区画(川崎市高津区)内に本
店を設け,平成13年2月に設立されたものである。そして,被控訴人は,その目
的を,コンクリート製品の製造及び販売,砂利の販売,造園工事の設計・管理・請
負等,土木工事の設計・管理・請負等として,設立された会社であるから,被控訴
人が「有限会社カワコン」の商号でその営業を行えば,これと同種の営業を営む控
訴人の取引者・需要者である土木業者等が,これを「河コン」(かわこん)の略称
を有する控訴人の営業と混同するおそれが生じることは,以上に認定したところか
ら明らかである。
3 結論
  以上によれば,控訴人の本訴請求は,理由がある。そこで,控訴人の本訴請
求を棄却した原判決を取り消し,控訴人の本訴請求を認容することとし,訴訟費用
の負担については,民事訴訟法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決
する。
  東京高等裁判所第6民事部
           裁判長裁判官    山  下  和  明
              裁判官     設  樂  隆  一
 
              裁判官    阿  部  正  幸

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