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         主    文
     一、 昭和四一年(ネ)第一、一九六号事件について
     第一審被告の控訴を棄却する。
     二、 昭和四一年(ネ)第一、二〇六号事件について
     (一)原判決を次のとおり変更する。
     第一審原告Aの第一審被告に対する昭和三三年四月一四日付第一番抵当
権設定金銭借用契約に基づく金額金六〇万円、弁済期同年五月一四日、利息年一割
八分支払期期間中一括後払、遅延損害金日歩金九銭八厘六毛の債務、および第一審
原告Bの第一審被告に対するみぎ債務についての保証債務は、元金四五万五、〇六
四円および金五〇万円に対する利息と損害金の限度で存在しないことを確認する。
     (二) 第一審原告らのその余の請求を棄却する。
     三、 訴訟費用は第一、二審を通じて六分し、その四を第一審原告B同
Aの、その一を同Cの、その一を第一審被告の各負担とする。
         事    実
 第一、 当事者の求めた裁判
 昭和四一年(ネ)第一、二〇六号事件について。
 一、 第一審原告ら代理人
 (一) 原判決中第一審原告ら敗訴部分を取り消す。
 (二) 第一審被告は第一審原告Bに対し原判決添付第一目録記載の土地(以下
第一物件と略称)について、(イ)大阪法務局北出張所昭和三三年八月七日受付第
一七、五〇〇号でされた所有権移転請求権保全仮登記(ロ)同出張所同日受付第一
七、五〇一号でされた所有権移転請求権保全仮登記(ハ)同出張所同年一一月二八
日受付第二六、九三七号でされた所有権移転登記の各抹消登記手続をせよ。
 (三) 第一審原告Bが、第一審被告に対し、左記(四)の第一審原告Aの債務
についての保証債務を負担していないことを確認する。
 (四) 第一審原告Aが、第一審被告に対し、昭和三三年四月一四日第一番抵当
権設定金銭借用契約に基づく金六〇万円、弁済期日同年五月一四日、利息年一割八
分、支払期間中一括後払、遅延損害金日歩金九銭八厘六毛という債務のうち元傘三
一万二、四四二円六〇銭およびこれに対する利息損害金の限度で存在しないことを
確認する。
 (五) 第一審被告は第一審原告Aに対し、原判決添付第三目録記載の建物(以
下第三物件と略称)について(ワ)同出張所昭和三三年五月二日受付第九、二三一
号でされた抵当権設定登記(カ)同出張所同日受付第九、二三二号でされた所有権
移転請求権保全仮登記の各抹消登記手続をせよ。
 (六) 第一審被告の第一審原告C対する原判決添付第四目録記載の建物の収去
を求める請求を棄却する。
 (七) 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。
 (予備的請求の趣旨)
 第一審原告Bの予備的請求の趣旨
 第一審被告は、同第一審原告に対し、第一物件について、(イ)大阪法務局北出
張所昭和三三年八月七日受付第一七、五〇〇号でされた所有権移転請求権保全仮登
記(ロ)同出張所同日受付第一七、五〇一号でされた所有権移転請求権保全仮登記
(ハ)同出張所同年一一月二八日受付第二六、九三七号でされた所有権移転登記
(ニ)同出張所昭和三一年九月一八日受付第一九、一二〇号でされた抵当権設定登
記(ホ)同出張所同日受付第一九、一二二号でされた停止条件付賃借権設定請求権
保全仮登記の各抹消登記手続をせよ。
 二、 第一審被告代理人
 (一) 第一審原告らの控訴を棄却する。
 (二) 控訴費用は控訴人の負担とする。
 昭和四一年(ネ)第一、一九六号事件について。
 一、 第一審被告代理人
 (一) 原判決中第一審被告敗訴部分を取り消す。
 (二) 第一審原告C請求を棄却する。
 (三) 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告Cあ負担とする。
 二、 第一審原告C代理人
 (一) 第一審被告の控訴を棄却する。
 (二) 控訴費用は第一審被告の負担とする。
 第二、 当事者の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否。
 次に記載するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、ここに引用する。
 (事実関係)
 一、 第一審原告ら代理人
 (一) 甲第四号証(鑑定書)によると、第一物件の昭和三一年当時の更地価格
は金五七八万八、〇〇〇円であるが、地上に建物があるからその半額である金二八
九万四、〇〇〇円がその時価であるとしているが、第一物件上にある第一審原告C
所有の原判決添付第二目録記載の建物(以下第二物件と略称)と第一審原告A所有
の第三物件は、いずれも第一物件上に事実上建在するものにすぎず、その所有者で
ある第一審原告Bからの賃借地上に建在するものではない。したがつて、第一物件
の取得者(第一審被告)は、第一物件を容易に更地にできるわけで、このような場
合には、第一物件の時価は更地価格によるべく、適法な借地権のあることを考慮し
てこれを半額に評価する場合に当らない。
 この更地価格を基準に昭和三一年九月当時及び昭和三三年八月当時の本件の金六
〇万円、金九〇万円あるいは金一五〇万円の元本と対比したとき、原判決八枚目表
掲記の一覧表とおりとなり、第一審被告のした代物弁済予約は暴利行為であるとい
わなければならない。
 (二) 第一審原告Bが、第一審被告からの本件二口の借金のため第一物件につ
いて、代物弁済の予約をしたが、これは窮迫浅慮無経験によるものである。第一審
原告Bは、ただ金融を受けるには担保が必要であることは判つていたが、代物弁済
予約の意味を理解せず、債権者のいうままに登記に必要な書類に押印したもので、
本件より以前である昭和二七年に訴外株式会社近畿相互銀行から金二〇〇万円の金
融を受けたとき、第一物件に代物弁済予約の仮登記手続をしたが、そのときもそう
であつた。本件でも、第一審原告Bは、経済的に行きづまり、これから逃れるた
め、浅慮にも第一物件に代物弁済予約を締結したものである。
 (三) 第三物件について第一審被告のため抵当権設定代物弁済予約が締結され
ているが、これは、第一審原告Aの不知の間に、第一審原告Bが印鑑を冒用してし
たもので、第一審原告Aが同Bに代理権を与えた事実は全然ない。これに使用され
た印鑑も、第一審原告Bが勝手に作成してこれを区役所に届出でたもので、この印
鑑を利用し、第一審原告Bは、以前にもみぎ相互銀行や訴外Dから金借し、これを
担保するために第三物件に抵当権設定登記や代物弁済予約の仮登記をしたのであつ
て、みぎ相互銀行やDに対し、みぎのような登記がなされていることからして、本
件でも、第一審原告Aがこれを承知し第一審原告Bに代理権を与えたものといえな
いことは明らかである。
 本件即日和解に、第一審原告Aの代理人として、弁護士田中貞蔵が出頭して和解
をしたことになつているが、第一審原告Aが同人にそのような代理権を与えたこと
はない。
 (四) 第一審原告Bは、訴外大柴某から金三五〇万円を借りたうえ、昭和三三
年一〇月八日ころ、第一審被告方を訪れ、約束の金二五八万円を受領するよう懇願
したが、第一審被告はこれを拒んだ。そこで、同第一審原告は同年一〇月二四日金
一一万五、〇〇〇円を支払つて、買戻金支払期日を、同年一二月一五日まで猶予し
て貰つた。同第一審原告は、訴外Eから同年一一月一〇日再び金三五〇万円の融通
を受け、おそくとも同月一五日ころまでに、第一審被告方を訪れ、支払いの準備が
できたから大阪市a区b町cの司法書士L方で支払うから受領するよう懇請した
が、第一審被告はこの受領を拒絶した。同第一審原告は、仕方なくEにみぎ借受金
を返えしたが、同月二〇日ころ、もう一度同人から同額の金員を借り受け、第一審
被告に、その受領を促したが拒絶された。そこで、同第一審原告は、そのころ、E
にみぎ借受金を返済したうえ、このようにEから金借して準備したことの証拠を残
すためEとの間で作成された不動産買戻条件付売買契約書(甲第二号証)に確定日
付(同月二七日付)をえたものである。このように同第一審原告は、猶予期間内に
金二五八万円を第一審被告に支払うべく履行の提供をしたが、第一審被告は、これ
を受領拒絶したもので、第一審被告にこの責があるといわなければならない。
 (五) 第一審原告Aの仮定的抗弁
 第一審被告の第一物件第二物件に対する代物弁済予約完結の意思表示が有効であ
るとするなら、これによつて、第一審原告Aの金六〇万円の債務のうち金五〇万円
の債務は、本件の六〇万円と九〇万円の貸金の利息を準消費貸借にしたものである
から、この金五〇万円は、消滅したわけである。もつとも、第一審被告は、第一物
件第二物件の引渡しまで必要であると主張しているが、代物弁済予約完結の意思表
示があり、その旨の登記手続をすませれば、それによつて、債務は終局的に消滅す
ると解すべきである。第一物件について、昭和三三年一一月二八日第二物件につい
て、昭和三四年一月七日それぞれ第一審被告のため所有権移転登記手続をへてい
る。
 二、 第一審被告代理人
 (一) 原判決添付別紙一の一の最終欄中「期間三三年五月一四日から三三年六
月一五日まで(一ヶ月と二日)第一審原告Bが支払つた利息損害金(月五分)三
二、〇〇〇円」の金額と同別表二の一の最終欄中「期間三三年五月一四日から三三
年六月一五日まで(一ケ月と二日)同第一審原告が支払つた利息損害金(月五分)
四八、〇〇〇円」の金額は、第一審被告としては、金一万円しか受け取つていない
から争う。第一審被告は、昭和三三年七月一四日、本件の六〇万円の貸金の昭和三
三年五月一六日から同年六月一五日までの損害金三万円、本件の九〇万円の貸金の
みぎ期間の損害金四万五、〇〇〇円第一審原告Bに対する別途貸金一〇万円(第一
審原告Aが引き受けた貸金以外の分)の貸金の同期間の損害金五、〇〇〇円合計金
八万円の一部としてみぎ金一万円を受け取つた。
 (二) (1)第一審原告Cは、第一審原告Bの本件六〇万円と九〇万円の債務
の連帯債務者となつたものではなく、みぎ第一審原告両名が本件六〇万円と九〇万
円の債務の連帯債務者である。第一審原告Cのこの債務について、第二物件に代物
弁済予約を締結することは、親子間に利益相反とはならないし、第一審原告Bの債
務のため、同Cの第二物件が代物弁済に供されることを理由に、第二物件に代物弁
済予約をすることを目して親子間の利益相反行為であるとするのは間違いである。
第一審原告Cあ債務が代物弁済によつて消滅すれば、第一審原告Bの債務も消滅す
ることは当然のことであつて、この場合第一審原告Cの代物弁済が、同Bの債務の
代物弁済となつたわけではないし、同Bの債務が履行された場合、同Cあ債務も消
滅し、代物弁済の問題は生じないのは勿論のこと、同Bの債務が不履行の場合、同
Cの債務が履行されれば、代物弁済の問題は生じない。同Cの債務が不履行であつ
ても、同Bの債務が履行されれば、この場合も代物弁済の問題は生じない。とする
と、同Bと同Cの利害が相反することはありえない。
 (2) 本件即決和解で、もし訴訟上の和解として無効であつても私法上の和解
として有効で、みぎ第一審原告らは、第一、第二の各物件が第一審被告により代物
弁済によつて取得されたことを確認しているのであるから、第一審原告Cに特別代
理人を必要としない場合に当る。
 (3) 大阪家庭裁判所は、昭和三一年一二月一三日第一審原告Bが第一審被告
から金一五〇万円を借り入れるについて、第一審原告C所有の第二物件に抵当権を
設定するため訴外Fを特別代理人に選任した。そして、Fが、本件の九〇万円の貸
金について、第一審原告Cの代理人として第一審被告と契約したが、同Fは本件の
六〇万円の貸金についても、第二物件に抵当権を設定する代理権があるわけで、こ
の家庭裁判所の特別代理人選任許可によつて、親子利益相反行為による瑕疵は治癒
された。
 (4) 第一審原告B同A同Cと第一審被告間に即決和解および私法上の和解が
成立した以上、民法六九六条の適用によつて、同第一審原告らは、和解当時の本件
債権額や、代物弁済予約の目的物件の所有権が第一審被告に帰属したことを争うこ
とはできない。
 (三) 第一審被告は、昭和三三年八月一日到達した書面で、第一審原告Aに対
し第三物件について代物弁済予約完結の意思表示をした。第一審被告は、これによ
り第三物件の所有権を取得したと思つたが、第一審被告に優先する先順位権利者が
所有権を取得したため、みぎ代物弁済予約完結の意思表示は無効に帰し、結局第一
審被告は、第一審原告Aに対し昭和三三年四月一四日付第一番抵当権設定金銭借用
契約に基づく元金六〇万円の債権がそのまま存在している。
 もつとも、元金六〇万円のうち金五〇万円は、本件六〇万円と九〇万円の貸金の
利息(昭和三二年九月二五日から昭和三三年四月一三日までの月五分の利息)を第
一審原告Aの債務にしたものである。本件六〇万円と九〇万円の貸金について、第
一物件と第二物件について代物弁済の予約がなされていたところ、第一審被告は、
昭和三三年八月一日第一審原告らに到達した書面で代物弁済予約完結の意思表示を
し、第一物件と第二物件について本件六〇万円と九〇万円の貸金の担保のためされ
た請求権保全仮登記の本登記手続をすませた。したがつて、みぎ代物弁済予約完結
の意思表示が有効なかぎり、第一審原告Aの債務も、これによつて消滅したとする
のが妥当であろう。しかし、第一審被告は、代物弁済によつて、債務が消滅する時
期は、みぎのような登記があるだけでは足らず、第一物件と第二物件の引渡しまで
必要であると考える。
 したがつて、第一審原告B同Cが、第一物件と第二物件を引き渡したとき、同A
の債務のうち金五〇万円は、みぎ代物弁済によつて消滅するわけである。しかし、
第一審原告Bと同Cは、その引渡しを拒否している。
 (四) 本件の六〇万円と九〇万円の貸金について前記代物弁済の予約と、その
ための仮登記手続がとられたが、この予約は、債務者が弁済期日までに元利金の支
払いをしなかつたときは、第一審被告の方で、一方的に元利金の弁済に代え、これ
ら物件を代物弁済として取得できる完結権のあるものであつた。
 (訂正)
 (一) 原判決三枚目裏末行(二)とあるを(ニ)と訂正。
 (二) 原判決一五枚目裏末行の「原告Bは被告に対し」以下一六枚目表三行目
の「求める。」までを削除し、そこに、「第一審原告Bは第一審被告に対し予備的
請求の趣旨記載の各登記の抹消登記手続を求めるものである。」と書き加える。
 (三) 原判決二三枚目裏二行目に、「金二五八円」とあるのを、「金二五八万
円」に訂正。
 (四) 原判決添付別表一の一、二の一の各最上欄中「原告が支払つた利息損害
金(月五分)」とあるのを、「第一審原告Bが支払つた利息損害金(月五分)」と
訂正。
 (五) 同別表一の二に「三三年六月一六日より三三年八月三〇日までの三一
七、四〇五円に対する日歩八銭の未払損害金」とあるのを、「三三年六月一六日よ
り三三年八月八日までの三一七、四〇五円に対する日歩入銭の未払損害金」と訂
正。
 (証拠関係)
 一、 第一審原告ら代理人
 当審証人G、同Hの各証言と当審での第一審原告Aの本人尋問の結果を各援用、
乙第四二号証の成立を認める。なお原審でした乙第二九号証の四、五、同第三〇号
証の認否を、いずれも「Aの署名捺印の部分の成立を否認しその余の部分の成立は
認める。」と訂正する。
 二、 第一審被告代理人
 乙第四二号証を提出し当審証人Iの証言と当審での第一審被告の本人尋問の結果
を各援用。
         理    由
 (本訴の主たる請求について)
 一、 第一審原告Bの抹消登記手続請求について
 (一) 第一審被告は申立人を同被告とし、相手方を第一審原告ら三名として、
昭和三三年九月一六日、大阪簡易裁判所で、同被告が同年八月九日代物弁済により
第一ないし第三物件の所有権を取得したことを確認する旨の和解が成立したことに
より、第一審原告Bは、本件代物弁済の効力を争うことはできないと主張するの
で、まずこの点について判断する。
 (1) 第一物件がもと第一審原告B、第二物件がもと第一審原告Cの各所有で
あつたこと、第一物件に(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)、第二物件に
(ト)(チ)(リ)(ヌ)(ル)(ヲ)の各登記があること、および、第一審被告
主張の和解が当事者間に成立したことは争いがない。
 (2) 第一審原告Bは、みぎ和解をするについて要素の錯誤があつたから、和
解は無効であると主張するけれども、みぎ主張にそら原審における同原告本人尋問
の結果(第一回)はたやすく措信し難く、却つて成立に争いのない乙第二八号証に
よれば、みぎ和解の際、係裁判官から和解条項の読聞けをうけ、同原告はこれに異
議のなかつたことが認められるし、また成立に争いがない乙第二四号証および弁論
の全趣旨によると、代物弁済の効力が争いの対象となりこれについて和解の成立し
たことが認められるので、同原告に錯誤があつたとしてみぎ和解を無効とすること
はできない。
 (二) つぎに、同原告は、本件代物弁済の予約およびみぎ予約完結の意思表示
は、いずれも公序良俗に反し無効であるからみぎ和解も無効であり、代物弁済の効
力を争いうるものであると主張するのでこの点について判断する。
 (1) みぎ代物弁済予約および代物弁済成立の経緯はつぎのとおりである。
 第一審被告が同原告との間で、同被告を貸主として(イ)昭和三一年九月一七日
元金六〇万円、弁済期同年一二月一六日、利息、損害金ともに月五分とする消費貸
借契約、(ロ)同年一二月二二日元金九〇万円、弁済期昭和三二年二月一五日、利
息、損害金ともにみぎと同率とする消費貸借契約を締結したことは当事者間に争い
がない。
 成立に争いがない甲第一号証の九、乙第一、二、五、七、一二ないし一五、二
七、二八号証第一審原告A作成部分についてはみぎ乙第二八号証によりその名下の
印影が同原告の印章によるものと認められるから真正に成立したものと推定すべ
く、その余の部分については成立に争いがない乙第四、六、八ないし一〇号証、原
審における第一審原告Bの本人尋問の結果(第二回)によつて成立が認められる同
第三五、三六号証、原審および当審証人I(原審第一、二回)の証書、原審におけ
る第一審原告B、第一審被告(いずれも第一回)当審における第一審原告A、第一
審被告各尋問の結果の一部を総合すると、第一審被告は、昭和三一年九月一七日、
扇屋の商号で金融業を営んでいた訴外Iの仲介により、第一審原告Bに対し、同C
を連帯債務者として、金六〇万円を弁済期同年一二月一六日、利息月五分、利息支
払期毎月末日、遅延損害金月五分の約定で貸与し、その際、利息の前払いとして金
三万円を天引きし、第一、第二物件について抵当権設定契約、みぎ債務の不履行を
停止条件とする賃貸借設定契約、代物弁済予約を締結し、その旨の登記手続をとる
ことを司法書士に依頼したところ、第一物件に対する所有権移転請求権保全仮登記
の登記原因を代物弁済予約とすべきところを、司法書士の過誤によつて売買予約と
してみぎ仮登記を経由したほかは、みぎ契約どおり(二)(ホ)(ト)(チ)
(ル)の各登記を経由し、続いて昭和三一年一二月二二日、第一審原告Bに対し、
同Cを連帯債務者としたうえ、金九〇万円を弁済期昭和三二年二月一五日としたほ
かは、前記貸金と同一内容の約定のもとに貸与し、その際、利息の前払いとして金
四万五、〇〇〇円を天引きし、第一、第二物件について抵当権設定契約、代物弁済
の予約を締結し、(ヘ)(ヲ)(リ)(ヌ)の各登記を経由したこと、爾来、第一
審原告Bは、月五分の割合により昭和三三年五月一三日までの間に、金六〇万円口
に対し金三九万八、〇〇〇円、金九〇万円口に対し金四五万六、〇〇〇円、同年六
月一五日までに両口に対し金一万円の利息、損害金を支払つてきたが、同年六月一
六日以降は元金の弁済は勿論遅延損害金の支払いも滞らせていたこと、第一審被告
は、第一物件に対する所有権移転請求権保全仮登記の登記原因について前記の誤り
を発見し、第一審原告Bに対し登記原因を代物弁済予約とする所有権移転請求権保
全の仮登記を経由することについての了解を得、同登記手続をするのに必要な一切
の書類の交付を受け、昭和三三年八月七日(イ)の登記をすると共に、さきに手続
の過誤によつてされた売買予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記の抹消登
記手続を併せてしたことが認められ、原審における第一審原告B、原、当審におけ
る同A(原審は各一、二回)当審における第一審被告各本人尋問の結果中みぎ認定
に反する部分は措信できないし、他にみぎ認定に反する証拠はない。そして第一審
被告が第一審原告B本人および同Cの親権者としての第一審原告B、同Aに対し、
昭和三三年七月三一日付翌八月一日到達の内容証明郵便によつて、郵便到達の日か
ら七日以内に第一審原告Bおよび同C第一審被告に負担する貸金債務およびこれに
対する利息、損害金の支払いをすることを求め、みぎ期間内に支払いのないことを
停止条件として、みぎ第一審原告ら所有の第一、第二物件に対して代物弁済予約完
結の意思表示をしたが、みぎ支払期間内に第一審原告らが前記各債務の支払いをし
なかつたことは当事者間に争いがない。
 (2) そこでみぎ代物弁済予約の効力について検討する。
 成立に争いがない甲第四号証によると、第一物件の昭和三年九月ころの価額の鑑
定をした訴外Jは、更地の場合は金五七八万八、〇〇〇円(坪八万円)、建物のあ
る場合はその五〇%としており、また成立に争いがない乙第三七号証によると、同
様の鑑定をした訴外Kは、更地の場合は金四六三万〇、四〇〇円(坪六万四、〇〇
〇円)、適法な借地権に基づく建物のある場合はその五〇%としていること、当時
第一物件上には、第一審原告C所有の第二物件のほか、木造スレート葺平家建工場
一棟建坪二九坪四七附属木造枌葺平家建倉庫一棟建坪三坪木造枌葺平家建下屋一棟
建坪五坪一一と、第一審原告A所有の第三物件があつた(この事実は成立に争いが
ない乙第二、第三号証によつて認める)ことが認められ、この認定に反する成立に
争いのない甲第三号証(佃順蔵の鑑定書)と原審における第一審原告B本人尋問の
結果(同原告は当時の時価が金一、五〇〇万円であつたと供述している)は採用し
ない。成立に争いのない乙第二七号証も同様採用しない。
 さて、みぎJの評価とKの評価のいずれが正確であるかはにわかに判定し難い
が、第一物件の更地価額が金五〇〇万円前後のものであつたことは間違いのないと
ころであり、そして第一物件上に建在していたみぎ建物の敷地使用について、第一
審原告Bが同Aと同Cに対し、賃借権を設定したのではなく事実上使用させている
にすぎないことは第一審原告らの自認するところであるから、時価算定について、
更地価額の五〇%との評価を直ちに採用することはできないが、これを二〇%減と
しても、第一物件は当時約金四〇〇万円位の価値はあつたものである。
 第一審被告は、昭和三一年九月一七日、第一審原告Bに対し、同Cを連帯債務者
として、金六〇万円を弁済期同年一二月一六日利息、損害金とも月五分の約束で貸
与したが、この元利金の支払いを担保するため、第一物件について(もつとも第二
物件もともに代物弁済予約の目的としたものであるが、これは後に説明するように
無権限者によつて締結された契約に基づくもので無効であるから、価額の均衡を考
える上からは第二物件は除外して差支えない)代物弁済予約をしたもので、この予
約は、借主がみぎ期日に弁済しないとき、第一審被告において一方的に予約完結の
意思表示をすることにより、第一物件の完全な所有権を取得できる性質のものであ
ることは、第一審被告の自認するところである。
 そうしてみると、第一審被告は、この予約により元利金六二万七、〇〇〇円(年
一割八分の制限利息を計算)の支払いに代えて、時価約金四〇〇万円位の第一物件
の所有権を代物弁済によつて取得することができるわけで、これは著しく均衡を失
しているといつて妨げない。しかし、このように債権額に比し代物弁済に供せられ
る物件の価額が六倍以上になることから直ちに、暴利行為として公序良俗に違反
し、みぎ代物弁済予約が無効になると結論づけることは早計であつて、「貸主が巨
利を博すべくはじめからみぎ不動産を処分する意図をもつて、借主側の窮迫、無経
験ないし軽卒に乗じこれを提供させたものと認め難いときは、」(最判昭和三五年
六月二日民集一四巻一、一九二頁)みぎ代物弁済予約は公序良俗に反せず無効では
ないと解するのが相当である。
 更に第一審被告は、昭和三一年一二月二二日、第一審原告Bに対し同Cを連帯債
務者として、金九〇万円を、利息、損害金前同率、弁済期昭和三二年二月一五日の
約束で貸与し、この元利金の支払いを担保するため代物弁済予約をしたもので、こ
の予約の性質も、前記金六〇万円の貸金の場合と同様であることは第一審被告の自
認するところである。
 そうしてみると、第一審被告は、この予約により元利金約金九四万円(年一割八
分の制限利息を計算)の支払いに代えて、時価にして約金四〇〇万円位の第一物件
の所有権を代物弁済によつて取得することができるわけで、これも著しく均衡を失
しているといつて妨げない。しかしながらこの予約も前述した特別の事情の認め難
い限り、公序良俗に反せず有効であるとの法理があてはまるとしなければならな
い。
 そこで、本件においてみぎ特別の事情の有無を考究すると、第一審被告が、巨利
を博する目的で第一審原告Bの窮迫、浅慮ないし無経験、軽卒に乗じ、みぎ各代物
弁済予約を締結したことを認めるに足りる証拠がない。却つて前掲乙第一、二七、
二八号証、原、当審における証人Iの証言(原審一、二回)、原審における第一審
原告B、同被告(いずれも第一回)各本人尋問の結果の一部によると、第一審原告
Bは粟おこし等食料品の製造販売を業とする商人であつて、昭和二七年六月一七
日、訴外株式会社近畿相互銀行から金二〇〇万円の金融を受けるため、同銀行との
間で、第一物件について債権極度額金二〇〇万円の根抵当権設定契約、および代物
弁済予約を締結し、同銀行のため根抵当権設定登記および所有権移転請求権保全仮
登記を経由したことがあること(この代物弁済予約が第一審原告Bにおいて、債権
者銀行のいうままに必要書類に捺印したことにより成立したことを認めるに足りる
証拠はない)、昭和三一年九月ころから同年一二月ころまでの同原告の営業状態
は、従業員の金員横領のため蹉跌をきたしていたが、なお三〇名程の従業員を雇傭
して営業を続けていたもので、窮迫という程の程度には至つていなかつたこと、同
原告は事業の経営状態を立て直そうとして第一審被告から金借したものであり、同
被告がいわゆる町の隠れた高利金融業者であることを熟知していたのであつて、み
ぎ借受けに当つては、約定どおりの利息や元金の支払いができる見通しであつたこ
とが認められ、事実、同原告は昭和三三年五月一三日までに、六〇万円口について
金三九万八、〇〇〇円、九〇万円口について金四五万六、〇〇〇円計金八五万四、
〇〇〇円もの金員を利息、遅延損害金名義で支払つたことは当事者間に争いがない
から、以上の事実によると、みぎ各代物弁済の予約は到底同原告の窮迫、軽卒、無
経験に乗じて締結されたものとすることはできない。しかも、第一審被告は六〇万
円口の貸金の弁済期が経過しても、直ちに代物弁済の予約完結権を行使しないで、
重ねて金九〇万円を貸与し、さらに後者の弁済期経過後も、同原告が一応遅延損害
金を支払つている間は予約完結権を行使せず、その行使に当つても一週間の猶予期
間をおいたことは前記のとおりであり、以上の点を考慮すると、第一審被告が月五
分の利息、損害金を取得することによつて利息制限法に違反する不当の利益をむさ
ぼる意図であつたことは疑いないけれども、貸借の当初から担保物を取得すること
によつて巨利を博する意図があつたものとはたやすく断じがたい。したがつてみぎ
代物弁済予約を公序良俗に反する無効なものとすることはできない。もつとも、み
ぎ第一回目の代物弁済予約は、その債権額と物件価額との著しい不均衡により暴利
行為として無効となる疑いがあるとしても、第二回目の代物弁済予約を同一物件に
ついてした結果、元利金も金一五〇万円以上となり、この双方を併せて行使する場
合には、みぎ不均衡は著しく緩和されるのであるから当初の瑕疵は治癒されて有効
となつたものと解することができる。
 また、債権が一部でも残存している以上、反対の特約または権利の濫用と認めら
れるような特段の事由のない限り、代物弁済の予約完結権を行使することができる
ものであるところ(最判昭和四〇年一二月三日民集一九巻二、〇七一頁)、第一審
原告Bは、予約完結権濫用の事由として僅少の債権額で不均衡な価値のある第一物
件を取得する点を指摘する。なるほど残存貸金債権額と第一物件の価額との間に不
均衡のあつたことは前記甲第四号証、乙第三七号証によつて認められるが、これが
ために直ちに予約完結権の行使が権利の濫用として無効となるものとすることはで
きない。けだし、「代物弁済予約完結権を行使した債権者は、特段の事由のない限
り、一部弁済として既に受領した金員を債務者に返す義務を負うものと解するのが
相当である」(前掲昭和四〇年の最判)から、みぎ特段の事由がない限り、目的物
件は、残存債権のため代物弁済されるのではなく、貸付日以後完結時までの元利損
害金全額について代物弁済されるのであるから、前記不均衡はこの点において緩和
されるのである。ところで本件においてみぎ特段の事由は認められない。第一審原
告Bは第一審被告が予約完結の意思表示をするにあたり、差額返還債務のないこと
を明示したと主張し、これを特段の事由とするようであるが、成立に争いのない乙
第一二、一三号証によつてもそのような事実は認められないし、他に特段の事由と
して認められる点もない本件では、同原告が第一審被告に支払つた利息、損害金
(元金の内入となつた部分を含む)は総て不当利得として返還さるべきものである
ことを併せ考えると、なおさら第一審被告のみぎ予約完結権行使は権利濫用となる
ものではない。そのうえ、一部弁済の場合、予約完結権を行使した債権者に生ずる
弁済金返還義務は、予約完結によつて当然生じるのであつて、予約完結権の行使に
あたり、債務者にこれを返還する意思のあることを表示する必要もなく、本件では
返還義務を負わないと表示したわけでもないから、予約完結権の行使が無効となる
ものでもない。
 (三) そうしてみると、みぎ代物弁済予約、予約完結による代物弁済の無効で
あることを前提として本件和解が無効である旨の第一審原告Bの主張は採用でき
ず、したがつて、同原告は代物弁済や和解の効力を争うことによつて、(ハ)の所
有権移転登記の抹消登記手続を第一審被告に請求することはできない。
 (四) なお、念のため附言すると、本件の場合、代物弁済予約時において目的
物件と債権額に著しい不均衡があり、そのうえ代物弁済予約のほか抵当権設定もさ
れていて、当事者は債権担保を目的として代物弁済予約をしたものであることが明
らかであるから、このような場合はいわゆる清算的代物弁済予約すなわち、債権者
において目的物件の所有権をとりきりにするのではなく清算の必要な範囲でその所
有権を取得するにすぎない(最判昭和四二年一一月一六日裁判所時報四八六号一
頁)と解する余地がないわけではないが、本件において、第一審被告は完全な所有
権を取得し清算不要と主張するのに対し、第一審原告Bは、代物弁済予約ないしそ
の完結の無効を主張するのみで、清算を要する趣旨の代物弁済予約である旨の主張
をしないばかりか、理由冒頭に説示したとおり、当事者は大阪簡易裁判所で和解
し、第一審被告の主張するとおり、同被告が代物弁済予約完結により第一物件につ
いて完全な所有権を取得したことを、同原告が任意に認めてしまつたものであるか
らもはや清算を残す趣旨の主張はすることができないものと解する。
 (五) みぎに述べたとおり、本件代物弁済予約を無効であるということはでき
ないから、(イ)(ロ)の各登記の抹消登記手続を求める同原告の請求は失当であ
る。
 二、 第一審原告Aの抹消登記手続請求について、
 (一) 第三物件がもと同原告の所有であつたこと、みぎ物件に(ワ)(カ)の
各登記があることは当事者間に争いがない。
 (二) 前掲乙第一ないし四、六、二七号証および原、当審における証人Iの証
言(原審一、二回)、原審における第一審原告B、同被告(いずれも第一回)各本
人尋問の結果の一部を総合すると、第一審原告Aは、同Cが昭和二七年六月一七
日、株式会社近畿相互銀行との間でした債権極度額金二〇〇万円の給付金債務手形
債務当座借越債務を担保するため、第一、第二物件とともに第一審原告A所有の第
三物件を共同担保として提供し、根抵当権設定登記、代物弁済予約による所有権移
転請求権保全仮登記を経由しており、さらに昭和三二年一〇月二八日、第一審原告
Bと連帯して訴外Dから金四〇万円を借用し、その債務の担保として第三物件を担
保に提供し、抵当権設定登記、代物弁済予約による所有権移転請求権保全仮登記を
経由していること、さらに第一審原告Aは、同Bが昭和三一年九月一七日自己の親
権に服する第一審原告Cと連帯して第一審被告から金六〇万円を借用するに際して
は、同Cの親権者として同Bとともに同Cを代理して第一審被告との間に消費貸借
契約、抵当権設定契約、代物弁済の予約を締結していることが認められる。
 第一審原告Aは、同人不知の間に同Bが近畿相互銀行やDから金借して第三物件
に抵当権設定登記や代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全仮登記をした旨主
張しているが、本件の全証拠を仔細に検討してもそのような事実を認めることがで
きる的確な証拠は見当らない。
 みぎ認定事実と前掲乙第二八号証によつて第一審原告A名下の印影が同人の印章
によるものと認められるから同人作成部分は真正に成立したものと推定すべく、そ
の余の部分は成立に争いがない乙第一一号証、前掲乙第二七、二八号証、原審にお
ける第一審原告B、第一審被告(いずれも第一回)当審における第一審原告A各本
人尋問の結果の一部を総合すると、第一審原告Aは、同Bの妻であつて、同Bが事
業資金調達の必要上同Aの代理人として同人の名義を使用し、第三物件に抵当権の
設定、代物弁済の予約などをして他から金員を借用することを許諾していたので、
同Bは、第一審被告から(イ)昭和三一年九月一七日借用の金六〇万円および同年
一二月二二日借用の金九〇万円の元金に対する昭和三二年九月二五日から同三三年
四月一三日までの月五分の遅延損害金五〇万円と(ロ)みぎ以外に事業資金として
借用した金員の残額金一〇万円の支払いを求められたことから、昭和三三年四月一
四日、第一審被告との間で、同Aを代理して、債務者を同Aとするみぎ(イ)
(ロ)の合計金六〇万円を準消費貸借に改めその弁済期同年五月一四日、利息年一
割八分、支払期期間中一括後払い、遅延損害金日歩九銭八厘六毛とし、その担保と
して第三物件について抵当権設定代物弁済の予約をし、同Bが同債務の連帯保証を
して、第一審被告からみぎ金員の支払猶予をえたことが認められる。原審における
第一審原告B、原、当審における第一審原告A(原審はいずれも第一、二回)各本
人尋問の結果中以上の認定に反する部分はにわかに措信できないし他にみぎ認定を
覆えすに足りる証拠はない。
 (三) 第一審原告Aはみぎ代物弁済予約が代理人である第一審原告Bの浅慮に
乗じ締結された暴利行為であるから公序良俗に反し無効であると主張するが、前掲
乙第三号証によると、みぎ予約締結当時すでに第三物件にはDのため代物弁済予約
を原因とする所有権移転請求権保全仮登記がざれていたのであつて、この点を考慮
したうえでの第三物件の価額を明らかにする資料がない(甲第三号証が真正に成立
したものであるとしても、佃順蔵が昭和三三年八月ころの第三物件の時価を金一〇
五万〇、二八〇円と評価するについてみぎの事情を加味したかどうか不明である
し、ほかにこの評価が適正かどうかを比較対照するものは何もない)から、それが
債権額(準消費貸借の目的とした遅延損害金中利息制限法所定の制限を超過する部
分については準消費貸借契約は無効であり、超過部分を控除した残額についてのみ
有効である)と著しく均衡を失するものであるかどうか不明であり、しかも、代物
弁済の予約が第一審原告Bの浅慮に乗じて締結されたことを認めるに足りる証拠も
ない。したがつてみぎ主張は採用しない。
 (四) そらしてみると(ワ)の抵当権設定登記(カ)の所有権移転請求権保全
仮登記の各抹消登記手続を求める第一審原告Aの請求は理由がない。
 三、 第一審原告Bおよび同Aの債務不存在確認の請求について、
 (一)前記二において判断したとおり、昭和三三年四月一四日第一審被告に対し
第一審原告Aは前記一において述べた元金六〇万円と九〇万円との二口の債務に対
する遅延損害金五〇万円と他の貸金債務一〇万円を目的とし、金額六〇万円、弁済
期同年五月一四日、利息年一割八分、支払期期間中一括後払い、遅延損害金日歩九
銭八厘六毛なる準消費貸借上の債務を負担し、第一審原告Bは同Aのみぎ債務を連
帯保証した。
 (二) ところで遅延損害金債務を準消費貸借の目的としたときは、そのうち利
息制限法所定の制限を超過する部分についてはみぎ準消費貸借は無効であると解す
るべきところ、みぎ元金六〇万円と九〇万円の二口の債務について同Bが第一審被
告に支払つた利息および損害金(ただし昭和三二年九月二四日まで)の額が、原判
決末尾添付別表一、二記載のとおりであることは当事者間に争いがなく、そのうち
利息制限法所定の制限超過部分を残存元本に充当し、みぎ準消費貸借の目的となつ
た遅延損害金算出の始期である昭和三二年九月二五日当時における残存元本に対す
る同日から回三三年四月一三日までの間のみぎ制限による遅延損害金の合計額が前
同別表三、四記載のとおり金二一万二、四四二円六〇銭であることは計数上明かで
ある。
 (三) 第一審原告Aは仮定的抗弁として、第一審被告の第一、第二物件に対す
る代物弁済予約完結が有効にされたとすれば、これによつて、同原告の六〇万円の
債務中五〇万円の債務は、元来本件六〇万円と九〇万円の二口の債務の遅延損害金
を準消費貸借に改められたものであるからその性質を帯有し消滅した筈である旨主
張するので考究する。
 (1) 第一審被告が第一、第二物件について代物弁済予約完結の意思表示をし
たのは、昭和三三年八月一日第一審原告B、同Cに到達した書面によつてであり、
第一物件については同年一一月二八日、第二物件については昭和三四年一月七日、
第一審被告のため所有権移転本登記がされたことは当事者間に争いがない。ところ
で後に説示するとおり、第一審原告Cに対する代物弁済予約完結の意思表示は、代
物弁済予約自体無効であると判断するから、第二物件については第一審被告におい
て所有権を取得しておらないことに帰着する。そこで第二物件を除外し第一物件だ
けについて考察を進める。
 第一物件について、代物弁済の予約、これを担保するための所有権移転請求権保
全の仮登記、第一審被告のみぎ予約完結権の行使、みぎ仮登記の本登記はいずれも
有効であることは前に判示したとおりである。
 そうすると、これによつて、第一審原告Bの負担する債務すなわち本件六〇万円
と九〇万円の二口の元本とこれに対する未払損害金債務は消滅し、第一審被告は既
に同原告から受領した金員を不当利得として返還する法律関係にあるわけである。
 <要旨第一>(2) さて第一審原告Aのみぎ債務も、同原告の債務として準消費
貸借にしなければ、第一審原告BBの遅延損害金債務として消滅したの
に、たまたま同Aの債務としたため別個の債務として存続することは不衡平のそし
りを免れない。
 よつてもとの元本と遅延損害金のすべてが消滅する関係にあるときは、みぎのよ
うな遅延損害金を改めた準消費貸借上の債務も、これと異なる契約をするなど特段
の事由のない限り、遅延損害金としての同一性を失なわず、みぎ代物弁済によつて
消滅すると解するもので、このことは、本件のように遅延損害金の債務者と準消費
貸借の債務者とが異なつていても、準消費貸借が引き受けられた遅延損害金債務を
目的として成立した以上、変ることがないのは当然である。このように解しない
と、債権者は準消費貸借という法理を利用していともたやすく不当な利益を収める
ことになり失当である。
 本件において、そのような特段の事由のあることは窺知できないし、第一審原告
Aの債務が代物弁済によつて消滅し、なお第一審被告の手もとに差額益の生じるこ
とは計算上明らかである。
 <要旨第二>(3) ところで不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合の
債務消滅の効力は、所有権移転登記の時と解するのが相当である(最判
昭和四〇年四月三〇日民集一九巻七六八頁)。そのわけは、単に所有権移転の意思
表示をするだけで足りるとすると、債務者がその後第三者にこれを二重譲渡し、そ
ちらへ移転登記をしてしまえば、債権者は第三者に対する対抗要件をそなえないの
に代物弁済は有効として取り扱われ、債務が消滅してしまうという不利益を受ける
からである。したがつて、所有権移転本登記手続(仮登記をもつて足りるとの見解
もある)をすますと、そのような不利益を受けることはないから、その時点をとら
えて代物弁済による債務消滅の効力が発生するとするのが最も妥当な解釈といえ
る。
 第一審被告は、さらに不動産の場合に、引渡しをも必要とすると主張している
が、そのような引渡しまでをも要求する必要は、みぎに説示したところから、ない
ものと解する(最判昭和三九年一一月二六日民集一八巻一、九八四頁は、「登記そ
の他引渡行為を終了し」との文言を使用しているが、このことから第一審被告が主
張するように引渡しをも必要とすると解するべきではなく、「不動産について登
記、引渡行為が第三者対抗要件となる物件について引渡し」を必要とする趣旨に理
解するべきである。したがつてこの判例は前記昭和四〇年の判例とていしよくしな
い)。
 (4) そうしてみると、第一物件について第一審被告のため所有権移転登記を
経ている以上、代物弁済によつて、第一審原告Bの元本と遅延損害金債務はすべて
消滅に帰し、したがつてこれを目的とした第一審原告Aの前記金二一万二、四四二
円六〇銭の準消費貸借債務も消滅したとしなければならない。
 このようにして第一審原告Aの負担する債務はみぎ金二一万二、四四二円六〇銭
について準消費貸借契約を締結した昭和三三年四月一四日から弁済期日である同年
五月一四日まで年一割八分の割合による利息、同月一五日から第一物件の代物弁済
により債務の消滅した同年一一月二八日まで日歩九銭入厘六毛の割合による遅延損
害金の合計金四万四、九三六円(三、四六二円+四万一、四七四円)と、これとは
別に第一審原告Bが第一審被告に負担した金一〇万円の債務を第一審原告Aが準消
費貸借により同人の債務にした金一〇万円との合計金一四万四、九三六円の債務を
負担していることになる。
 (5) なお、前述のとおり元本金二一万二、四四二円六〇銭の債務は、第一物
件についての代物弁済によつて消滅したわけであるが、みぎ元本に対する前記金
三、四六二円の利息と金四万一、四七四円の損害金の債務は、旧債務(第一審原告
Bの第一審被告に対する本件二口の元本債務の損害金債務)ではなく、準消費貸借
債務について発生したもので、準消費貸借債務は直接みぎ損害金債務を目的とした
ことにより損害金の帯有した属性を引き継ぐが、間接の関係になるその利息、損害
金にまで旧債務の帯有した属性の承継を認めるべきではあるまい。
 さらに本件におけるように、第一、第二物件が共同して六〇万円と九〇万円の二
口の元利金債務の代物弁済に供せられ、第二物件についての代物弁済契約が無効で
予約完結が発効しない場合、被担保債権の消滅は第一、第二各物件の価額に按分さ
れ第一物件負担部分のみが消滅し、第二物件負担部分は消滅しないのではないかと
いう疑いがある。しかしこのような考慮は、第一物件だけでは債権の元利金を満足
するに足りない場合にこそ、必要となるのであつて債権者としては本来は債権の元
利金の満足をうれば何も文句はない筈のものであり、本件で、第一物件の所有権を
取得して元利金を満足し、なお差額益を残すことは前記のとおりであるから、この
ような場合にまでそのような考慮を払ら必要はないものと解する。
 (四) 以上の次第で、第一審被告と第一審原告Aとの間における準消費貸借契
約、第一審原告Bとの間の保証契約上の債務は、みぎ合計額金一四万四、九三六円
の限度でのみ残存し、これを超える部分は消滅に帰したものである。
 (五) 第三物件による代物弁済について、
 (1) 第一審被告は第一審原告Aが、その債務を弁済しないときは、弁済にか
えて第三物件を取得することができる旨の契約が締結されたことは前記のとおりで
あり、第一審被告は、昭和三三年八月一日同原告に到達した書面で七日以内にみぎ
債務を弁済すべく、その弁済のないときは代物弁済として第三物件を取得する旨の
意思表示をしたことは当事者間に争いがなく、みぎ期間内に弁済のあつたことが認
められる証拠がないから、同年八月八日の経過とともにみぎ代物弁済の予約は完結
されたことになる。
 (2) ところで第一審被告は、このようにして第三物件について予約完結権を
行使したが、これより先順位の仮登記権利者が、第一審被告に優先して権利を行使
したため、第三物件についての第一審被告のみき完結権行使は無効に帰したと主張
するのに対し、第一審原告Aはこの主張事実を明らかに争わないから自白したもの
とみなす。そうすると、第一審被告に対する同Aの債務はみぎ代物弁済にもかかわ
らず存続しているわけである。
 (3) 同原告は、第一審被告のみぎ予約完結権の行使が権利の濫用てあつて無
効てあると主張しているが、前記のとおり第一審被告のした予約完結の意思表示
は、法律上の効果を生じなかつたのであるから、それが権利の濫用であるかどうか
を判断する必要はないとしなければならない。
 (六) 第一審被告の民法六九六条に関する主張について、
 (1) 第一審原告Aと第一審被告間で、昭和三三年九月一六日付で大阪簡易裁
判所の即決和解調書が作成されている事実は当事者間に争いがない。
 (2) この和解期日には同原告の代理人として弁護士田中貞蔵が出頭したこと
は成立に争いのない乙第二四号証によつて認められる。しかし、本件の全証拠を精
査しても、同原告が自らの意思によつて同弁護士にみぎ代理権を与えたことはもと
より、第一審原告Bにみぎ代理人選任権を授権したことが認められる的確な証拠は
なく(原審(第一回)と当審における第一審被告の本人尋問の結果中これにそう供
述は後記認定と対比して採用しない。)、却つて前記二において認定した事実や、
乙第二三、三〇号証の各外形的存在、前掲乙第二七、二八号証、原審における第一
審原告Bの本人尋問の結果(第一、二回)および弁論の全趣旨によると、第一審原
告Aから、同Bの他より借り受ける事業資金債務を担保するため、第三物件につい
て抵当権の設定、代物弁済の予約をすることの代理権を与えられていた同Bは、こ
の権限を超えて同Aの承諾なしに、みぎ田中弁護士に本件即決和解についての同A
を代理すべき権限を授与し、同AのAの氏名を冒用し、印鑑を冒捺したうえそのた
めの委任状(乙第三〇号証)を作成したことが認められるから、第一審原告Aが田
中弁護士の無権代理行為を追認しない限り、本件和解は同Aに関する限り無効であ
るとしなければならない。
 (3) 第一審被告は本件即決和解は無効でも、私法上の和解の効力を生ずると
も主張しているが、田中弁護士への代理権授与に瑕疵があり、その代理権限が認め
られない限り私法上の和解としての効力を生ずる余地はないから、この主張も採用
しない。
 (4) したがつて第一審被告が主張する民法六九六条による効力を判断する必
要はない。
 四、 第一審原告Cの請求について、
 (一) 第一審被告は同原告に対しても第一審原告Bに対すると同様前記一
(一)記載と同旨の主張をするので、まずこの点について判断する。
 第一審被告主張の和解が第一審原告Cとの間に成立したことは当事者間に争いが
ないところ、成立に争いがない乙第二四号証や弁論の全趣旨を総合すると、第一審
被告は第一審原告らが所有する第一ないし第三物件について第一審被告のためにさ
れた代物弁済予約完結権を行使し、これによりみぎ各物件の所有権を取得したと主
張し、第一審原告Bに対し第一物件の引渡し、同Cに対し第二物件、同Aに対し第
三物件の各明渡しを求めたが、同原告らが応じないところから、同原告らを相手と
して、大阪簡易裁判所に土地引渡し家屋明渡し等請求即決和解の申立てをし、昭和
三三年九月一六日の和解期日に同B木人と第一審原告ら三名の訴訟代理人として弁
護士田中貞蔵が出頭のうえ、第一審被告の代理人弁護士丸山郁三との間において第
一審被告主張のとおり第一、第二物件の所有権が同B、同Cを連帯債務者とする前
記金六〇万円および金九〇万円の二口の貸金の代物弁済として第一審被告に譲渡さ
れたことを確認することなどを内容とする和解が成立したことが認められるけれど
も、みぎ即決和解の同C関係部分は、同原告所有の第二物件を、同B、同Cが連帯
して負担するみぎ債務の弁済に代えて、第一審被告にその所有権を譲渡したことを
確認するものであつて、みぎ行為は親権者である同Bと子である同Cとの利益が相
反する行為といわなければならないのに、みぎ和解にあたり同Cの特別代理人が選
任されなかつたことは弁論の全趣旨により明らかであるから、みぎ和解中第二物件
がみぎ代物弁済により第一審被告に譲渡されたことの確認部分は私法上無効であ
り、したがつて訴訟上の和解としての効力を有しないものといわねばならない。
 したがつて第一審被告のみぎ主張は理由がない。
 (二) 第一審原告Bが昭和三一年九月一七日、第一審被告から金六〇万円を借
り受けた際、第一審原告Cが連帯債務者となり、その担保のため同C所有の第二物
件について抵当権設定契約、代物弁済の予約、債務の不履行を停止条件とする賃貸
借契約が締結され、これを原因として(ル)の抵当権設定登記、(ト)の所有権移
転請求権保全仮登記、(チ)の停止条件付賃借権設定請求権保全仮登記を経由した
こと、第一審原告Bが同年一二月二二日、第一審被告から金九〇万円を借り受けた
際、同C連帯債務者となり、その担保のため第二物件について抵当権設定契約、代
物弁済の予約が締結され、これを原因として(ヲ)の抵当権設定登記(リ)の所有
権移転請求権保全仮登記を経由したこと、さらに(リ)の所有権移転請求権保全仮
登記原因である代物弁済予約の完結による代物弁済を原因とする(ヌ)の所有権移
転登記のあることは前記のとおりである。そして同Cはみぎ各登記のうち(ル)
(ヲ)の各抵当権設定登記を除くその余の各登記の抹消登記手続を求めるものであ
る。
 (1) みぎ金六〇万円口の貸借についての連帯債務者第一審原告Cの消費貸借
契約、代物弁済の予約、停止条件付賃貸借契約は、いずれも同原告の親権者である
第一審原告B、同Aが代理して第一審被告と締結したものであることも前記のとお
りである。
 ところで親権者が未成年の子を代理して自己の債務のため子を連帯債務者にする
行為、自己の債務の担保として子の不動産に抵当権を設定する行為、自己の債務の
弁済に代えて子の不動産を他へ譲渡することを予約する行為は親権者と子の利益が
相反するものである。
 第一審被告は、みぎ代物弁済の予約は第一審原告Cの債務の担保のためにされた
ものであるから、利益相反行為に当らないと主張するが、同原告の連帯債務の負担
が有効である場合でも、本件代物弁済の予約は、同原告所有のみぎ物件が同原告の
債務の弁済に代えて第一審被告に譲渡されることを予約すると同時に、第一審原告
Bの債務の弁済に代えて譲渡されることを予約することにもなるのであるから、同
Bと同Cの利益は相反するものというべきである。
 第一審被告は、当審で、これが民法八二六条にいう親子間利益相反行為に当らな
いことをるる主張しているが、同Bと同Cの第一審被告に対する債務が連帯債務で
あるところがら、同Bの第一審被告に対する債務のため、同C所有の第二物件が代
物弁済として譲渡されることを予約する点で同条にいう利益相反行為に当るとしな
ければならない(大判大正三年九月二人日民録二〇輯六九〇頁、なお最判昭和三七
年一〇月二日民集一六巻二、〇五九頁は、親権者が法定代理人として未成年者の子
とともに共同債務を負担し、未成年の子所有の不動産持分に抵当権を設定したが、
未成年者の分担率はその持分率を超過している事案であつて、未成年者が親権者と
連帯債務を負担した場合ではないからこの判例の結論をそのまま本件に持ち込むわ
けにはいかないばかりか、本件のように連帯債務の場合は利益相反行為になるとす
るのがこの判例の趣旨を生かすことになる。)から、この主張は採用できない。
 またみぎ停止条件付賃貸借契約は、みぎ抵当権を実行する場合にいわゆる短期賃
借権者を排除して抵当物件を有利に換価することを企図するものであることは弁論
の全趣旨によつて明らかであつて、みき契約は抵当権設定契約と相合して第一審原
告Bの債務の担保のためみぎ物件に負担を設定し、第一審原告Cに不利益を課すも
のというべきであるから、これも利益相反行為にあたる。
 したがつて特別代理人によらないで、第一審原告B、同Aが同Cを代理してした
代物弁済の予約、停止条件付賃貸借契約はいずれも同Cに対しその効力を生じな
い。
 (2) 昭和三一年一二月一三日大阪家庭裁判所において同Bが第一審被告から
金一五〇万円を借り入れるについてその債務の担保としてみぎ第二物件に抵当権を
設定するについての特別代理人に、訴外Fが選任されたことは当事者間に争いがな
い。第一審被告はこれによつてみぎ代物弁済の予約について特別代理人を選任しな
いで親権者が締結した瑕疵は補正されたと主張するが、抵当権設定についての特別
代理人の選任によつて当然に代物弁済の予約についての瑕疵が補正されると解すべ
き根拠はない。また第一審被告は特別代理人林が同Bのみぎ代物弁済予約について
の無権代理行為を追認したと主張するが、これを認めるに足りる証拠がないばかり
か、仮に追認したとしても、林には同Cを代理して抵当権を設定する権限しか与え
られておらず、代物弁済予約および停止条件付賃貸借契約の締結権限は与えられて
いなかつたから、みぎ追認はなんらの効力もない。
 (3) つぎに、金九〇万円口の貸借にあたつて、同Cを連帯債務者とする消費
貸借契約、第二物件についての代物弁済予約が、同Cの親権者である第一審原告
B、同Aによつて締結されたのであるから前記と同一の理由により、みぎ契約は同
Cに対しその効力を生じない。
 (4) 第一審被告は抵当権の設定も代物弁済の予約も担保の供与という点で同
一であるから、抵当権設定のために選任された特別代理人林には代物弁済予約締結
の権限もあると主張するが、債務者が債務の履行をしないとき、抵当権設定(物上
保証)の場合には担保物件が換価され、債権者に支払われた残余金が設定者に返還
されるのに反し、代物弁済予約の場合にはその所有権が債権者に移転することにな
るのであつて、物件所有者にとつては一般に後者の方が不利であるから、前者の代
理権を有するからといつて当然に後者の代理権をも有するものであるとはいえな
い。
 (5) また第一審被告は、林が第一審原告Cに代り代物弁済の予約を締結する
権限があると信じていたと主張するが、たとえそのように信じたとしてもそれにつ
いて正当の事由のあつたことを認めるに足りる証拠がないばかりか、成立に争いの
ない乙第二九号証の一によると、特別代理人選任の審判書には抵当権設定について
林を特別代理人に選任する旨明瞭に記載されているのであるから、金融業者である
第一審被告が林に代物弁済予約締結の代理権があると信じたとしても、それは第一
審被告の過失によるものであり、正当の事由があつたものということはできず、第
一審被告の表見代理の主張は採用できない。
 (6) また、第一審被告は、昭和三三年八月七日みぎ即決和解と同一内容の私
法上の和解契約によつて第二物件の所有権を取得したものであると主張するけれど
も、前記と同様親権者と子の利益相反行為であるその和解契約の締結にあたり、第
一審原告Cのために特別代理人が選任されていないことは弁論の全趣旨により明ら
かであるから、第一審被告主張の私法上の和解契約は代理権のないものがしたもの
として無効であるといわなければならない。
 (三) したがつて第一審原告Cの本訴請求は正当である。
 (第一審原告Bの予備的請求について)
 前記即決和解において同原告は第一審被告から第一ないし第三物件を代金二五八
万円で買い受け、みぎ代金を昭和三三年一〇月一五日第一審被告方へ持参して支払
うものとし、みぎ期日にその支払をしないときは、みぎ売買契約は催告などの手続
を要しないで当然解除されるものと定めたことは当事者間に争いがなく、みぎ期日
が同年一一月一五日に延期されたことは第一審被告の認めるところである。同原告
はみぎ期日が同年一二月一五日に延期されたと主張するが、これを認めるに足りる
証拠はない。
 そして本件に顕われたすべての証拠によつても、同原告が同年一一月一五日まで
にみぎ売買代金を和解条項の約旨にしたがつて、第一審被告方で第一審被告に提供
したことを認めることができない(同原告はおそくても、同年一一月一五日までに
代金を提供した旨主張しながら、同年一二月一五日まで弁済期の猶予をえたとも主
張する。おそくとも一一月一五日までに提供しながら何故に猶予をえたのであろう
か)。却つて、原審における同原告の第一回本人尋問の結果により真正に成立した
と認められる甲第二号証、原審における同原告、第一審被告(いずれも第一回)各
本人尋問の結果によると、同原告は和解条項所定のとおり、第一審被告方に売買代
金を持参したことはないのであつて、期限徒過後の同年一一月二七日になつてよう
やく訴外Eから融資を受け、これをL司法書士方に預けたうえ、第一審被告にその
受領方を求めたが、第一審被告はこれを拒否したことが認められる(前掲乙第二八
号証、原、当審における証人Gの証言、当審における証人Hの証言、原審における
同原告の第二回本人尋問の結果中みぎ認定に反する部分は、前掲各証拠に比照しに
わかに措信しない。)。
 上記事実によると、みぎ売買契約は、昭和三三年一一月一五日の経過とともに当
然解除されたものといわなければならないから、同原告の予備的請求は失当であ
る。
 (第一審被告の反訴請求について)
 第一番被告が代物弁済により第一物件の所有権を取得したことは前記のとおりで
ある。成立に争いのない乙第三二号証と弁論の全趣旨とを総合すると、第一物件の
地上に原判決末尾添付目録第四物件が建築され、これを第一審原告Cが所有してい
ることが認められ、みぎ認定に反する証拠はない。そして同原告は第一物件の土地
を占有する権原についてなんらの主張立証をしない。したがつて第一審被告のみぎ
建物収去の請求は正当である。
 (むすび)
 以上によれば、第一審原告B、同Aの債務不存在確認請求は、主文掲記の範囲で
正当であるから、これと異なる原判決はその限度で変更を免れないが、原判決のそ
の余の判断すなわち同第一審原告らのその余の請求(予備的請求を含む)を失当と
し、第一審原告Cの請求を認容し、第一審被告の第一審原告Cに対する請求を認容
した部分はいずれも正当である。
 そこで、民訴法三八六条、三八四条、九六条、八九条、九二条、九三条を適用し
主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 宅間達彦 判事 長瀬清澄 判事 古崎慶長)

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