弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
本件上告を棄却する。
理由
検察官の上告趣意は,判例違反をいうが,事案を異にする判例を引用するもので
あって,本件に適切でない。
なお,所論にかんがみ,第1審判決がした未決勾留日数の算入の当否につき,職
権で判断する。
1被告人は,第1審判示第2の1の窃盗の事実により勾留のまま起訴され,次
いで,同第2の2の窃盗の事実により勾留のまま起訴され,さらに,同第1の不法
在留の事実により起訴されたが,同事実については勾留されていなかった。これら
の事件は併合審理されたが,第1審判決は,上記各事実を認定し,不法在留罪につ
いては懲役刑及び罰金刑を選択した上,これらを刑法45条前段の併合罪と認め
て,懲役刑につき同法47条本文,10条による処理をするととともに同法48条
1項によりこれに上記罰金刑を併科し,その刑期及び所定金額の範囲内で被告人を
懲役3年・5年間執行猶予及び罰金30万円に処し,同法21条を適用して未決勾
留日数のうち60日を1日5000円に換算し,上記罰金刑に算入した。そして,
原判決も,第1審判決の上記未決勾留日数の算入を是認した。
2所論は,刑法21条の解釈上,未決勾留日数は勾留事実に係る罪の刑を同条
にいう「本刑」としてこれに算入すべきものであって,本件では懲役刑が本刑に当
たるから,原判決が第1審判決のした罰金刑への未決勾留日数の算入を是認したの
は誤りであるという。
しかし,刑法は,併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,その
数罪を包括的に評価して,それに対し1個の主文による刑を言い渡すべきものとし
ているから,その刑が刑法21条にいう「本刑」に該当すると解すべきであり,こ
の理は,その刑が懲役刑と罰金刑を併科するものであるときでも異なるところはな
いというべきである。
以上によれば,勾留事実に係る罪を含む併合罪関係にある数罪についての刑に未
決勾留日数を算入する限り,刑法21条にいう「本刑」に算入したこととなるので
あって,勾留されていない事実に由来する罰金刑に対し,これと併合罪として処断
された他の事実に係る未決勾留日数を算入した第1審判決を原判決が是認したこと
につき,何ら違法はない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。なお,裁判官古田佑紀の補足意見がある。
裁判官古田佑紀の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見と見解をともにするものであるが,なお,非勾留事実に係る刑に
対する未決勾留日数算入の可否について補足して意見を述べておく。
私は,刑法21条は,未決勾留に係る犯罪事実に対する刑に未決勾留日数を算入
することを想定した規定であり,昭和39年1月23日の当審判例(最高裁昭和3
7年(あ)第2173号同39年1月23日第一小法廷判決・刑集18巻1号15
頁)は,同条に関するそのような理解の下に,勾留事実と非勾留事実が併合罪の関
係になく,別個の主文で刑が言い渡される場合について,未決勾留日数の算入は勾
留されている事実に対する刑に対して行われることが原則であることを明らかにし
たものと理解すべきものと考える。したがって,勾留事実と併合罪又は科刑上一罪
の関係にない非勾留事実に係る刑に対する未決勾留日数の算入は,それが合理的で
ある特段の事情が認められる場合に限られると解すべきである。
しかしながら,未決勾留日数の算入は言い渡された刑に対してなされるものであ
るところ,本件のように非勾留事実が勾留事実と併合罪として処断される場合につ
いては,併合罪として処理された勾留事実を含む数個の犯罪事実に対して1個の主
文により刑を言い渡すこととされているのであるから,言い渡された刑が,2個以
上の主刑を併科する場合であっても,全体として刑法21条にいう「本刑」に該当
すると解すべきことは,法廷意見のとおりと考える。なお,刑法9条の刑種の定め
は一般的に刑の種類を定めるものであり,他方,法定刑又は宣告刑はある犯罪事実
に対する法的評価であるので,両者は別個の問題であって,刑種の異なる主刑が併
科される場合であっても,そのことにより,ある犯罪事実に対する法的評価の一体
性が失われるものではないというべきである。
(裁判長裁判官今井功裁判官滝井繁男裁判官津野修裁判官
中川了滋裁判官古田佑紀)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛