弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 被告人及び弁護人大塚喜一郎の上告趣意(後記)について。
 所論は、地方公務員法六一条四号の「そそのかす」罪が成立するためには、他人
に対し所定の違法行為(本件では怠業的行為)実行の決意を生ぜしめ、又は既に生
じている決意を助長せしめた事実がなければならないのであつて、この要件をそな
えない行為を処罰することは憲法二一条に違反するものであると主張する。
 しかし、地方公務員法六一条四号にいう「そそのかす」とは、同法三七条一項前
段所定の違法行為を実行させる目的をもつて、人に対し、その行為を実行する決意
を新に生じさせるに足りる慫慂行為をすることを意味し、これにより、相手方が新
に実行の決意を生じて実行に出る危険性があるかぎり、実際に相手方が、新に実行
の決意を生じたかどうか、あるいは既に生じている決意を助長されたかどうかは、
右「そそのかす」罪の成否に影響しないものと解すべきである。そして叙上のよう
な慫慂行為が、憲法の保障する言論の自由の限界を超え、これを犯罪として処罰す
ることが憲法二一条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところで
ある(昭和二三年(れ)一三〇八号同二四年五月一八日大法廷判決〔集三巻六号八
三九頁〕、昭和二七年(あ)一二〇三号同年八月二九日第二小法廷判決〔集六巻八
号一〇五三頁〕参照)。
 本件についてみると、被告人が福島県石川郡a町の警察吏員に対して手交したガ
リ版印刷物には、「祖国は今、重大な岐路に立たされているとき、諸君もまた二つ
の違つた将来を約束されようとしている。その一つは、人民のために、積極的に協
力することについてである。われわれは、日本人民の名において、これらの諸君に
対しては、警察幹部といえども、相当の地位の者までも含めて将来最大限の寛容な
待遇を与えることを断言する。他の一つは、警備(情報)、捜査、特務(特審局や
外国機関の要員など)の特高活動をする者及び労働者をダンアツし、特に発砲やガ
ス使用を命ずるような幹部に対するものである。これに対してはいかなる容捨をも
与えることはできない。われわれはこれらの一人一人を人民の敵として記憶し、来
るべき日において最も峻烈なる人民の処罰を与えるであろう。」という記載がある。
そして、右のような記載をふくむその内容全般を、第一審判決挙示の証拠にあらわ
れた他の諸事実と合せ考えると、被告人は、右印刷物の手交により、警察吏員に対
し、自治体警察の活動能率を低下させる怠業的行為をさせる目的で(論旨のうち、
被告人は右印刷物を、単に政府施策行為に対する自分の見解を伝えるため、参考と
して交付したにすぎないとする点は、被告人の意図に関する事実誤認の主張であつ
て、刑訴四〇五条所定の上告理由といえないのみならず、記録を調べても、この点
に事実誤認があるとは認められない。)、右怠業的行為を実行する決意を新に生じ
させるに足りる慫慂行為をしたものであり、これにより相手方が新に実行の決意を
生じて実行に出る危険性があるものということができるのである。だから、前記の
理由によつて、相手方の決意の発生又はその助長の事実の有無を問わず、被告人の
所為は地方公務員法六一条四号の「そそのかす」罪を構成するものであり、そして、
その処罰は憲法二一条に違反しないものといわなければならない。従つて原判旨は
結局正当であり、所論は採用できない。
 また記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められな
い。
 よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す
る。
  昭和二九年四月二七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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