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平成23年6月29日判決言渡
平成23年(行ケ)第10040号審決取消請求事件
平成23年5月18日口頭弁論終結
判決
原告株式会社クラウン・クリエイティブ
訴訟代理人弁護士大室俊三
同竹下博徳
訴訟代理人弁理士吉田研二
同石田純
同角田智香子
同吉田麻実子
被告有限会社ル・フリーク
訴訟代理人弁理士吉田芳春
補佐人弁理士堀越真弓
主文
1特許庁が無効2010−890048号事件について平成22年12月28
日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨。
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,別紙「本件商標」記載の構成よりなり,指定商品を第25類「セーター
類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽」とする登録第523090
3号商標(平成17年9月30日登録出願,平成21年4月7日登録査定,同年5
月15日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は,別紙「引用商標」記載の構成よりなり,指定商品を第25類「被服,ガ
ーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊
衣服,運動用特殊靴」とする登録第4832063号商標(平成16年7月12日
登録出願,平成17年1月14日設定登録。以下「引用商標」という。)を引用し
て,平成22年6月16日,本件商標の登録を無効とすることを求めて,審判請求
(無効2010−890048号事件)をした。
特許庁は,同年12月28日,「登録第5230903号の登録を無効とす
る。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,平成23年1月7日,
原告に送達された。
2審決の理由
別紙審決書写しのとおりである。要するに,①本件商標及び引用商標は,ともに
「シュープ」の称呼を生じるものであり,その外観上の相違,観念において両者が
比較できないことを考慮しても,類似の商標といえるのであり,本件商標の指定商
品と引用商標の指定商品とは,同一又は類似する商品であるから,本件商標は,商
標法(以下「法」という。)4条1項11号に該当する商標である,②被請求人
(原告)は,取引の実情等を総合すれば,本件商標と引用商標は,称呼を共通にす
ることによる混同は生じない旨主張するが,本件商標と引用商標とは,「シュー
プ」の称呼を共通にし,その指定商品全般にわたる一般の需要者層も共通にするも
のであるから,取引の実情を考慮しても,商品の出所について混同を生じるおそれ
はあり,被請求人の主張は採用できない,としたものである。
第3当事者の主張
1取消事由に関する原告の主張(本件商標と引用商標の類否判断の誤り)
審決は,本件商標と引用商標の類否判断を誤った違法があるから,取り消される
べきである。
(1)本件商標と引用商標について,審決は,「その外観上の相違,観念において
両者が比較できないことを考慮しても,『シュープ』の称呼を共通にする類似の商
標といえる。」,「本件商標及び引用商標に係る需要者は,その指定商品全般にわ
たる一般の需要者層を共通にするものである。そうすると,本件商標と引用商標と
は,『シュープ』の称呼を共通にする類似の商標であって,その需要者層も共通に
するものであるから,取引の実情を考慮しても,商品の出所について混同を生ずる
おそれはある。」と判断した。
しかし,審決の判断は誤りである。
ア本件商標と引用商標が,ともに「シュープ」の称呼を生じること,本件商標
の指定商品と引用商標の指定商品が,同一又は類似する商品であることについては,
審決の認定を争わない。
イ本件商標と引用商標は,先頭文字が本件商標は「C」であるのに対し,引用
商標は「S」である点で異なり,また,本件商標は「HOOP」が大文字で表記さ
れているのに対し,引用商標は「hoop」が小文字で表記されている点でも異な
るから,外観において相違する。
ウまた,本件に関連する知財高裁平成19年11月28日判決(平成19年
(行ケ)第10172号事件)(以下「別件判決」という。)は,引用商標と商標
「CHOOP」(判決注大文字からなる文字商標であって,本件商標と同一では
ない。)に関する取引の実情として,次の(ア)ないし(ウ)の事情を認定したが,取引
の実情等について,現在まで,特段の変化はない。かかる取引の実情等を前提とす
ると,本件商標と引用商標とは,異なる印象,記憶,連想等を需要者に与えるもの
であるから,称呼を共通にすることによる商品の出所の誤認混同を生じるおそれは
ないというべきである。
(ア)原告による商標「CHOOP」の使用状況
原告は,平成6年に商標「CHOOP」を使用した商品の販売及び広告宣伝を開
始した。平成6年から平成14年にかけて発行されたティーン層の少女をターゲッ
トとする雑誌に「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字を併用した広告がさ
れている。平成7年から平成11年にかけて,「CHOOP」の文字及び「シュー
プ」の文字の映像と共に「シュープ」の音声を用いたテレビコマーシャルが全国各
地で放映された。原告の提供に係るティーン層の少女を主人公とするテレビドラマ
(放映日:平成10年8月15日,平成11年3月22日及び平成12年4月1
日)が新聞に取り上げられ,「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字が併記
され,又は「シュープ」の文字が記載されている。上記テレビドラマにおいて「C
HOOP」の文字及び「シュープ」の文字の映像と共に「シュープ」の音声が用い
られている。原告の提供に係る日本航空の機内番組において,「シュープ」の音声
が用いられ,同番組の案内冊子に「CHOOP」の文字が用いられている。平成9
年から平成13年にかけて発行された「繊維新聞」にファッションブランドとして
の「シュープ」が取り上げられている。「ライセンスブランド名鑑2004」,
「ライセンスビジネス名鑑2003〔ブランド編〕」,「ファッション・ブランド
年鑑98年版」,「ファッションブランドガイドSENKENFB2001」,
「ファッション・ブランド年鑑2001年版」,「ファッションブランドガイド
SENKENFB2003」,「ファッションブランド年鑑2003年版」,
「ファッションブランドガイドSENKENFB2004」,「ファッショ
ン・ブランド年鑑2004年版」に「CHOOP」及び「シュープ」の文字が併記
されている。「CHOOP」を使用した原告又はそのライセンシーの商品は,「雑
貨小物,キッズウェア,パジャマ,レディスカジュアルウェア」などである。
上記各事実及び前述の雑誌,新聞等に掲載された広告宣伝,記事等の内容に照ら
せば,アメリカ生まれの元気なブランド,あるいはおしゃれでキュートなブランド
というコンセプトの下,ティーン世代の少女層をターゲットとして,原告による商
標「CHOOP」の使用(原告のライセンシーによる使用を含む。)及び広告宣伝
活動が継続された結果,引用商標の出願時及び査定時には,「ティーン世代の少女
層向けの可愛いカジュアルファッションブランド」を想起させるものとして,需要
者層を開拓していた。
(イ)被告の引用商標の使用状況
他方,引用商標は,「Shoop」の文字からなり,「シュープ」との称呼を生
じるものである。「Shoop」は,少なくとも,いわゆるブラックミュージック
の愛好者の間では,「タメ息の音」を意味する俗語として認識されている。引用商
標は,被告により,アフリカ系アメリカ女性のファッションをコンセプトとして,
広告宣伝が行われ,平成8年に発行された雑誌にブラック系専門店などとして紹介
され,平成11年に発行された雑誌に引用商標を用いたB系ファッションを趣向と
する女性向け被服及びその直営店の広告が掲載され,平成15年に発行された雑誌
に好きなブランドアンケートの女性部門において第1位であった旨の記事が掲載さ
れたことを含め,平成8年及び平成11年から平成18年にかけて発行されたB系
ファッション雑誌,新聞に引用商標を用いた被服や引用商標に係るブランドに関す
る広告,記事が多数掲載されている。被告は,遅くとも平成11年から引用商標の
出願時までに,全国に19の直営店を展開し,その後,これを22店舗に拡大した。
被告は,平成15年及び平成16年には,雑誌社やアーティストのプロダクション
の要請を受け,引用商標に係るブランドの服を取材用衣装として提供した。平成1
2年から平成16年にかけて,引用商標を付した大型看板や大型映像広告を渋谷駅
や新宿駅に設置し,東京都内(渋谷∼新宿),名古屋市内(栄∼引山,名古屋駅∼
光ケ丘)及び仙台市内にラッピングバスを走らせ,音楽イベントを主催し,音楽専
門チャンネルでコマーシャルをし,携帯電話にモバイルサイトを設置するなど,B
系ファッションを愛好する層が集まる地域やメディアをターゲットとして,積極的
な広告宣伝を展開した。引用商標に類似する商標を付した模倣品が流通した際の,
警察からの照会先は被告に対してであった。
上記各事実及び上述の雑誌,新聞等に掲載された引用商標に関する広告,記事等
の内容に照らせば,B系ファッションを対象とするブランドというコンセプトの下,
セクシーさを趣向するものとして,20代から30代の成熟した女性層やいわゆる
クラブにおけるダンス愛好者をターゲットとして,被告による引用商標の使用及び
広告宣伝活動が継続された結果,引用商標の出願時及び査定時には,引用商標を構
成する「Shoop」の欧文字は,「セクシーなB系ファッションブランド」を想
起させるものとして,需要者層を開拓していた。
(ウ)商標「CHOOP」の使用された商品に関心を示す,「ティーン世代の少女
層向けの可愛いカジュアルファッション」を好む需要者層と,引用商標の使用され
た商品に関心を示す,いわゆる「セクシーなB系ファッション」を好む需要者層と
は,被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)において相違
する。
(2)以上を総合すると,本件商標と引用商標とは非類似の商標とされるべきであ
り,本件商標は,法4条1項11号に該当する商標であるとの審決の判断は誤りで
ある。
2被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
(1)本件商標及び引用商標はともに「シュープ」の称呼を生じることは,原告も
認めるところである。
その結果,別件判決で認定された「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュア
ルファッション」及び「セクシーなB系ファッション」の需要者だけでなく,それ
以外の一般消費者においても,両商標の称呼が共通する。
(2)原告は,本件商標と引用商標について,「その外観上の相違,観念において
両者が比較できないことを考慮しても,『シュープ』の称呼を共通にする類似の商
標といえる。」,「本件商標及び引用商標に係る需要者は,その指定商品全般にわ
たる一般の需要者層を共通にするものである。そうすると,本件商標と引用商標と
は,『シュープ』の称呼を共通にする類似の商標であって,その需要者層も共通に
するものであるから,取引の実情を考慮しても,商品の出所について混同を生ずる
おそれはある。」とする審決の認定は誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は失当である。
別件判決では,取引の実情等を考慮すると,「ティーン世代の少女層向けの可愛
いカジュアルファッション」及び「セクシーなB系ファッション」の需要者層につ
いては,両商標の称呼「シュープ」を共通にすることによる混同は生じないと判断
されている。そして,この取引の実情等については,現在まで,特段の変化はない。
一方,別件判決は,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッショ
ン」及び「セクシーなB系ファッション」以外の「一般消費者」については,両商
標の称呼が共通することにより,混同が生じるおそれがあるものと判断している。
このことから,審決は,本件商標と引用商標は,「シュープ」の称呼を一般消費者
に共通にする類似の商標である旨判断したものである。
そうすると,審決は,判例法理に則った商標の類否の判断手法を用い,別件判決
が認定した取引の実情等を前提に,別件判決が展開した論理に従って商品の出所に
ついての誤認混同のおそれについて判断したものであり,本件商標にルビ「シュー
プ」が付されている結果,両商標の称呼が一般消費者にも共通し,混同が生じるお
それがある旨判断したといえる。
(3)したがって,本件審決と引用商標が類似するとの審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,審決には,本件商標と引用商標の類否判断の誤りがあり,取り消さ
れるべきであると判断する。その理由は,以下のとおりである。
法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用され
た商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,
連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情に基づいて全体的に考察す
べきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小
法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。そこで,上記の観点から,本件商標と
引用商標の類否について検討する。
1事実(争いのない事実を含む。)
(1)原告,被告間の商標を巡る紛争及び別件判決の経緯について
別件判決の経緯は,次のとおりである。すなわち,①被告は,「Shoop」の
文字からなる商標(別紙引用商標と同じである。)の登録を受けていた,②原告は,
「Shoop」の文字からなる被告の登録商標が,取引者・需要者間に広く認識さ
れている原告の商標である「CHOOP」の文字からなる商標と類似するから,法
4条1項10号に該当すると主張して,被告の登録商標の無効を求めて審判請求を
した,③審決は,同登録商標が,法4条1項10号に該当するとして,登録を無効
とすべき旨の審決をした,④別件判決は,第3,1,(1),ウ,(ア)ないし(ウ)のと
おりの取引の事情を認定した上で,取引の実情等を前提とすると,「Shoop」
の文字からなる商標と「CHOOP」の文字からなる商標とは,異なる印象,記憶,
連想等を需要者に与えるものであるから,商品の出所の誤認混同を生じるおそれは
ないとして,審決を取り消し,同判決は上告不受理により確定した(甲1ないし
3)。
(2)称呼
本件商標と引用商標が,ともに「シュープ」の称呼を生じることは,当事者間に
争いがない。
(3)外観及び観念
本件商標は,上段に欧文字からなる「CHOOP」の文字が大きく太く,下段に
片仮名からなる「シュープ」の文字が小さく細く表記されている。欧文字は,曲線
が多用され,全体として丸みが強調されて描かれている。左から4番目の文字は,
花柄様に描かれた図形により白抜きされている。上段の文字は,すべて大文字で表
記され,すべての文字の高さは揃えられている。全体として,柔らかく可愛らしい
印象を与える。
これに対して,引用商標は,横一段に「Shoop」の文字が太く表記されてい
る。各文字の輪郭線は,すべて直線で描かれ,曲線は用いられていない。先頭の
「S」は大文字で,その他の文字は小文字で,それぞれ表記されており,文字によ
って,高さに差がある。各文字は,意図的に太さに変化を持たせ,例えば,「S」
「h」「p」の文字では,右側縦線のみを,不自然なほどに太く描くなどの工夫を
施している。全体として,ボリューム感のある,力強さ等を印象づけたものである。
上記のデザインの相違に照らすならば,本件商標と引用商標とは,外観において
相違する。
本件商標及び引用商標は,いずれも一般的な観念が生じるとまでは認定できない
から,観念における対比をすることができない。
(4)取引の実情等
取引の実情等については,別件判決において,原告主張(上記第3,1,(1),
ウ,(ア)ないし(ウ))の事情が認定されているが,そのような取引の実情等が,現在
まで,特段変化がないことについては,当事者間に争いがない。
別件判決で認定され,当事者間に争いのない,原告による商標「CHOOP」の
使用の状況等は,以下のとおりである。
すなわち,①原告は,平成6年に商標「CHOOP」を使用した商品の販売及び
広告宣伝を開始し,②平成6年から平成14年にかけて発行されたティーン層の少
女をターゲットとする雑誌に「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字を併用
した広告をし,③平成7年から平成11年にかけて,「CHOOP」の文字及び
「シュープ」の文字の映像と共に「シュープ」の音声を用いたテレビコマーシャル
が全国各地で放映され,④原告の提供に係るティーン層の少女を主人公とするテレ
ビドラマ(放映日:平成10年8月15日,平成11年3月22日及び平成12年
4月1日)が新聞に取り上げられ,そこでは「CHOOP」の文字及び「シュー
プ」の文字が併記され,又は「シュープ」の文字が記載され,⑤テレビドラマにお
いて「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字の映像と共に「シュープ」の音
声が用いられ,⑥原告の提供に係る日本航空の機内番組において,「シュープ」の
音声が用いられ,同番組の案内冊子に「CHOOP」の文字が用いられ,⑦平成9
年から平成13年にかけて発行された「繊維新聞」にファッションブランドとして
の「シュープ」が取り上げられ,⑧「ライセンスブランド名鑑2004」,「ライ
センスビジネス名鑑2003〔ブランド編〕」,「ファッション・ブランド年鑑9
8年版」,「ファッションブランドガイドSENKENFB2001」,「フ
ァッション・ブランド年鑑2001年版」,「ファッションブランドガイドSE
NKENFB2003」,「ファッション・ブランド年鑑2003年版」,「フ
ァッションブランドガイドSENKENFB2004」,「ファッション・ブ
ランド年鑑2004年版」に「CHOOP」及び「シュープ」の文字が併記され,
⑨「CHOOP」を使用した商品としては,主として,「雑貨小物,キッズウェア,
パジャマ,レディスカジュアルウェア」などがある。
上記各事実及び前述の雑誌,新聞等に掲載された広告宣伝,記事等の内容に照ら
せば,「CHOOP」の商標は,アメリカ生まれの元気なブランド,あるいはおし
ゃれでキュートなブランドというコンセプトの下,ティーン世代の少女層をターゲ
ットとして,原告によって商標「CHOOP」が使用(原告のライセンシーによる
使用を含む。)され,広告宣伝活動が継続された結果,引用商標の出願時及び査定
時には,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッションブランド」
を想起させるものとして,需要者層を開拓してきた。
これに対して,被告は,引用商標を構成する「Shoop」の欧文字について
「セクシーなB系ファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開
拓してきた実績がある。
(5)指定商品の類否
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が,同一又は類似する商品であること
については,当事者間に争いがない。
2判断
上記の事実を前提として,判断する。
(1)本件商標と引用商標は,「シュープ」の称呼を生じ得る点で称呼において類
似するものの,外観において相違する。また,特定の観念は生じないと解されるか
ら,観念において類否を判断することはできない。また,本件商標に係る取引の実
情をみると,原告は,前記1の(4)のとおり,商標「CHOOP」について,長期
にわたり,指定商品等への使用を継続してきたこと,雑誌,新聞,テレビや飛行機
内での番組提供,テレビCM等を利用して,宣伝広告活動を実施してきたこと,フ
ァションブランド誌や業界誌にも紹介されていること,「ティーン世代の少女層向
けの可愛いカジュアルファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層
を開拓してきたこと,その結果,同商標は,ティーン世代の需要者に対して周知と
なっていることが認められる。他方,引用商標を構成する「Shoop」の欧文字
は,「セクシーなB系ファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層
を開拓してきた,そして,商標「CHOOP」の使用された商品に関心を示す,
「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」を好む需要者層と,
引用商標の使用された商品に関心を示す,いわゆる「セクシーなB系ファッショ
ン」を好む需要者層とは,被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用
場所等)において相違することが認められる。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観が明らかに相違し,取引の実情等に
おいて,原告による「CHOOP」商標が広く周知されていること,需要者層の被
服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)が相違することに照
らすならば,本件商標が指定商品に使用された場合に取引者,需要者に与える印象,
記憶,連想は,引用商標のそれとは大きく異なるものと認められ,称呼を共通にす
ることによる商品の出所の誤認混同を生じるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標と引用商標は類似しないと判断すべきである。
(2)これに対し,被告は,「『ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルフ
ァッション』及び『セクシーなB系ファッション』の各需要者層については,両商
標の称呼『シュープ』を共通にすることによる混同は生じないとしても,『ティー
ン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション』及び『セクシーなB系ファ
ッション』以外の『一般消費者』については,両商標の称呼が共通することにより,
混同が生じるおそれがある」旨主張する。
しかし,被告の主張は採用できない。上記認定のとおり,本件商標と引用商標は,
外観が明らかに相違すること,販売対象及び販売態様が相違すること,原告の「C
HOOP」商標の宣伝広告が,特定の需要層を対象としたものであったとしても,
長年の使用と多大の広告活動等によって,「CHOOP」商標の周知が図られてい
ること等の点を考慮するならば,一般消費者にとっても,本件商標と引用商標とは,
称呼が共通することのみをもって,商品の出所について混同が生じるおそれがある
とはいえない。
3小括
以上によれば,本件商標と引用商標とが類似するとした審決の判断には誤りがあ
ることになる。原告主張の取消事由は理由がある。被告は,他にも縷々反論するが,
いずれも採用の限りではない。
第5結論
よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり
判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
池下朗
裁判官
武宮英子
別紙
本件商標
引用商標

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