弁護士法人ITJ法律事務所

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平成11年(行ケ)第359号 審決取消請求事件(平成13年5月10日口頭弁
論終結)
         判    決
   原      告      ドクトル・インジエニエール・ハー・ツエ
ー・エフ・ポルシエ・アクチエンゲゼルシヤフト
   訴訟代理人弁護士      加   藤   義   明
  同             鹿   野   直   子
   訴訟代理人弁理士      久   野   琢   也
   被     告     特許庁長官   及   川   耕   

  指定代理人        和   田   雄   二
   同             舟   木       進
同         大   野   覚   美
   同             茂   木   静   代
   主    文
    原告の請求を棄却する。
    訴訟費用は原告の負担とする。
    この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定
める。
    事    実
第1請求
特許庁が平成10年審判第18634号事件について平成11年6月29日にし
た審決を取り消す。
第2前提となる事実(争いのない事実)
1特許庁における手続の経緯
原告は、平成元年3月9日(パリ条約による優先権主張日・1988年(昭和6
3年)3月10日、優先権主張国・ドイツ連邦共和国)、発明の名称を「自動車の
自動変速機のためのシフト装置」とする発明につき特許出願(特願平1-5524
5号)をしたところ、平成10年8月27日に拒絶査定を受けたので、同年11月
27日に拒絶査定不服の審判を請求した。
 特許庁は、同請求を平成10年審判第18634号事件として審理した結果、平
成11年6月29日、出訴期間として90日を付加して、「本件審判の請求は、成
り立たない。」との審決をし、その謄本は同年7月19日に原告に送達された。
 2 本願発明の要旨(本件特許出願の願書に添付された明細書(平成9年2月1
3日付けの手続補正書による補正後のもの)の特許請求の範囲請求項1に係る発
明。以下「本願発明」という。)
 電子制御装置によって制御される、自動車の自動式の変速機(3)のためのシフト装
置であって、シフトレバー(1)が設けられており、自動車長手方向に延在する第1の
シフト路(2)内におけるシフトレバーの長手方向旋回によって、変速機のシフト位
置(P,R,N,D,3,2,1)が予め選択可能であり、シフトレバーを用いて第2のシフト
路(7)内においては付加的に、変速機の前進ギヤが手動で切換え可能であり、この場
合第2のシフト路(7)においては、中立の中央位置からシフトレバー(1)を1回旋回
させてプラス-センサ(9)に接触させることによって、1段だけシフトアップへの手
動切換えが可能であり、かつ逆方向に1回旋回させてマイナス-センサ(11)に接触
させることによって、1段だけシフトダウンへの手動切換えが可能であり、次いで
シフトレバー(1)がその都度自動的に第2のシフト路の中立の中央位置に戻される形
式のものにおいて、
イ)シフトレバー(1)が第1のシフト路(2)におけるシフト位置Dから横路(6)を介し
て、ただ1つの第2のシフト路(7)に切換え可能であり、
ロ)第2のシフト路(7)が、第1のシフト路(2)と同じ方向に延在するように配置さ
れており、
ハ)シフトレバー(1)を第2のシフト路(7)において長手方向旋回させることによっ
て、変速機(3)の前進ギヤが手動で切換え可能であることを特徴とする、自動車の自
動変速機のためのシフト装置。
 3 審決の理由 
 別紙1の審決書の理由写し(以下「審決書」という。)のとおり、本願発明は、
特開昭60-252853号公報(甲第4号証。以下「引用例1」という。)及び
特開昭62-34214号公報(甲第5号証。以下「引用例2」という。)にそれ
ぞれ記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと認めら
れるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断し
た。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例1の記載事項の認定は認め、引用
例1の記載事項から認定した引用例1記載の発明の構成のうち、イ)ないしハ)の
構成が記載されているとした部分は争うが、その余は認める。本願発明と引用例1
記載の発明との一致点の認定のうち、イ)ないしハ)の内容で一致しているとした
部分は争うが、その余は認める。本願発明と引用例1記載の発明との相違点の認定
のうち、本願発明における相違点の認定は認め、引用例1記載の発明における相違
点の認定は争う。本願発明と引用例1記載の発明との相違点についての判断につ
き、引用例2の記載事項の認定中、引用例2記載の発明の「アップ・シフト・スイ
ッチ」と本願発明の「プラス-センサ」とが、「ダウン・シフト・スイッチ」と本
願発明の「マイナス-スイッチ」とが、それぞれ機能的に等価であるとの認定、及
び引用例2記載の発明に、レバー・シフト・ゲート内において、ギア・チェンジ・
レバーを「長手方向旋回して」切換可能な構成が示されていることは争い、その余
の認定、及び引用例2記載の発明と引用例1記載の発明と技術分野が共通すること
は認める。
 審決は、本願発明と引用例1記載の発明との一致点及び相違点の認定を誤り(取
消事由1)、引用例2記載の発明の認定を誤り(取消事由2)、さらに、相違点に
ついての判断を誤り(取消事由3)、そのために、本願発明の進歩性を誤って否定
したものであり、違法であるから取り消すべきである。
 1 取消事由1(引用例1記載の発明との一致点及び相違点の認定の誤り)
 審決が、本願発明と引用例1記載の発明とを対比して、両者が「イ)シフトレバ
ーが第1のシフト路におけるシフト位置Dから横路を介して、ただ1つの第1のシ
フト路とは別のシフト路に切換え可能であり、ロ)第1のシフト路とは別のシフト
路が、第1のシフト路と同じ方向に延在するように配置されており、ハ)シフトレ
バーを第1のシフト路とは別のシフト路において長手方向旋回させることによっ
て、変速機の前進ギヤが手動で切換え可能である、自動車の自動変速機のためのシ
フト装置」の点で一致していると認定したこと(審決書8頁5行ないし15行)、
及び両者の相違点として、「引用例1記載の発明では、「第1のシフト路と同じ方
向に延在する第Ⅱのシフト路においては、ドライブポジションDから横路を介し
て、シフトレバーを1回長手方向旋回させてシフトアップポジションに投入させる
ことによって、1段だけシフトアップへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向の
シフトダウンポジションに1回移動させることによって、1段だけシフトダウンへ
の手動切換えが可能であり、次いで自動変速レバーがその都度自動的にドライブポ
ジションDに戻される形式のもの」であり、第Ⅱのシフト路の中立位置を起点とし
たシフトレバー操作が可能かどうか不明な点。」(審決書9頁7行ないし19行)
と認定したことは、以下のとおり、いずれも誤りである。
 (1) 第Ⅱのシフト路の延在方向について
 本願発明では、「第2のシフト路7が、第1のシフト路2と同じ方向に延在する
ように配置されており」(特許請求の範囲請求項1の構成ロ)との構成であるのに
対し、引用例1記載の発明では、審決も認定したように、「この場合第Ⅱのシフト
路においては、ドライブポジションDから横路を介して、自動変速レバーを1回旋
回させてシフトアップポジションに投入させることによって、1段だけシフトアッ
プへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向のシフトダウンポジションに1回旋回
させることによって、1段だけシフトダウンへの手動切換えが可能であり、次いで
自動変速レバーがその都度自動的にドライブポジションDに戻される形式のもの」
(審決書6頁1行ないし10行)であるから、この第Ⅱのシフト路は、シフトアッ
プポジションとシフトダウンポジションを含むシフト路と、このシフト路に対して
ほぼ直角に延在してドライブポジションDに通じる横路の2つのシフト路から構成
されているものということになる。したがって、本願発明における第2のシフト路
と引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト路とは、その構成について全く異なるから、
審決がした上記の一致点の認定のうち、ロ)の部分は誤りである。
 (2) 中立の位置について
 本願発明は、「第2のシフト路(7)においては、中立の中央位置からシフトレ
バー(1)を1回旋回させてプラス-センサ(9)に接触させることによって、1
段だけシフトアップへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向に1回旋回させてマ
イナス-センサ(11)に接触させることによって、1段だけシフトダウンへの手
動切換えが可能であり、次いでシフトレバー(1)がその都度自動的に第2のシフ
ト路の中立の中央位置に戻される形式のもの」(特許請求の範囲請求項1)との構
成を有するものであるから、「中立の中央位置」とは、単に制御のための信号を新
たに発することがないということだけではなく、第2のシフト路において、シフト
レバーがその都度自動的に戻されることで、自動変速から独立した手動切換えを行
うための、シフトレバーを旋回させる際の出発点となる位置のことであって、シフ
トレバーから手を離しても、シフトレバーを保持して手動で切り換えた状態を維持
する位置のことである。
 これに対して、引用例1には、「シフトアップポジションSHIFT UP若し
くはシフトダウンポジションSHIFT DOWNに投入されているときにレバー
から手を離すと、レバーはばねの力により自動的にドライブポジションDに復帰す
るようになっている。」(甲第4号証5頁左下欄10行ないし15行)と記載され
ているから、引用例1記載の発明の自動変速レバーでは、これをシフトアップポジ
ション又はシフトダウンポジションに投入して変速機の前進ギヤ段を手動で切り換
える際に、その切り換えたギヤ段を維持するには、自動変速レバーをそのポジショ
ンに手で押さえ続ける必要がある。このように引用例1が開示する技術は、変速機
のギヤ段を、ドライブポジションDにおいて自動選択されたギヤ段から1段だけ手
動で一時的に切り換えるものにすぎず、自動変速レバーは、その都度ドライブポジ
ションDからシフトアップポジション又はシフトダウンポジションへとほぼ直角に
旋回させられ、ギヤ段の切換え後には、ばねの力によって自動的にドライブポジシ
ョンDに復帰するようになっているものである。
 このように、引用例1記載の自動変速システムでは、自動変速機の前進ギヤ段を
手動で切り換えた状態に維持するための中立位置というものは存在せず、またこれ
を設ける必要もないのである。
 したがって、審決がした上記相違点の認定のうち、引用例1記載の発明につき、
「第Ⅱのシフト路の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか不明な
点」(審決書9頁7行ないし19行)を認定したことは、中立位置が存在すること
を前提とするものであり、上記のとおり、引用例1記載の発明には中立位置が存在
しないのであるから、この認定は誤りである。
2 取消事由2(引用例2記載の発明の認定についての誤り)
 (1) 本願発明のセンサに相当する構成がないことについて
 審決は、引用例2の記載事項として、引用例2記載の発明の「アップ・シフト・
スイッチ」と本願発明の「プラス-センサ」とが、「ダウン・シフト・スイッチ」
と本願発明の「マイナス-スイッチ」とが、それぞれ機能的に等価であると認定し
ているが、以下のとおり誤りである。
 本願発明の全文訂正明細書(甲第3号証)には、本願発明の効果として、「第1
のシフト路におけるシフトレバーによって自動変速機の通常のシフト位置が予め選
択可能であり、平行な第2のシフト路への切換え後に自動変速機の前進ギヤがいわ
ばノックのような接触切換え(Tippschaltung)によって手動で切換え可能であると、
ドライバは、オートマチック運転でドライブすることも又はマニュアル運転でドラ
イブすることも可能である。第2のシフト路におけるギヤの切換えのためには、シ
フトレバーを一方の方向に短い距離旋回させて1回ノック接触させるだけで、ギヤ
を1段切り換えることができる。その後でシフトレバーは自動的に中立的な中央位
置に戻る。2回ノック接触させると、シフトアップ又はシフトダウンがギヤ段2つ
分行われる。4段変速機の場合には、3回のノック接触によって最高で3段だけシ
フトアップ又はシフトダウンの方へ切換えが行われる。」(5頁14行ないし24
行)と記載されているから、本願発明では、前進ギヤを手動で切り換えるためのシ
フトレバーによるノックのような接触切換えが、プラス(又はマイナス)-センサ
の応動によって達成されるものである。
 この点について、被告は、本願発明に係る明細書の記載によれば、プラス-セン
サ(9)及びマイナス-センサ(11)が、シフトレバーの旋回運動を検出する機
能を有するだけで、変速機を何段変速させるかは制御装置(5)からの指令によっ
て行われるものであるから、これらのセンサは運転者の変速意志に基づき操作され
るシフトレバーの特定位置を検出するためのセンサにすぎず、その後の変速作用は
制御装置の機能とみるべきであると主張する。
 しかし、被告の上記主張は、本願発明に係る明細書に記載された実施例に対して
は妥当しても、本願発明そのものには適用し得ないものである。すなわち、本願発
明の特許請求の範囲の請求項1には、「シフトレバー(1)を1回旋回させてプラ
ス-センサ(9)に接触させることによって、1段だけシフトアップへの手動切換
えが可能であり、かつ逆方向に1回旋回させてマイナス-センサ(11)に接触さ
せることによって、1段だけシフトダウンへの手動切換えが可能であり」と記載さ
れており、本願発明に係る明細書には、本願発明の効果として、上記のとおり記載
されているだけであって、本願発明を実施例レベルに具体化する場合に付加される
制御装置(5)については、全く言及されていないのであるから、本願発明のプラ
ス-センサ(9)とマイナス-センサ(11)は、単に、シフトレバーの旋回運動
を検出する機能を有するだけではなく、変速機の前進ギヤを実際にシフトさせるた
めの機能をも併せ備えているものと解釈するべきである。
 これに対し、引用例2に記載されたギア・チェンジ・レバー・ユニットのアッ
プ・シフト・スイッチとダウン・シフト・スイッチは、アップ(又はダウン)・シ
フト・ソレノイド・バルブを開閉するためのスイッチであって、このアップ(又は
ダウン)・シフト・スイッチの閉路によりアップ(又はダウン)・シフト・ソレノ
イド・バルブが開かれると圧油がクラッチに流れて、トランスミッションがアップ
(又はダウン)・シフトされるようになっている。したがって、トランスミッショ
ンを所望のアップ(又はダウン)・シフトさせるためには、シフトすべき段数に応
じた所定時間だけアップ(又はダウン)・シフト・スイッチを閉路して、所定量の
圧油をクラッチに供給しなければならないことになる。
 このように、引用例2記載の発明のスイッチは、シフトアップ又はシフトダウン
させるためには、必ず一定時間閉路し続けなければならない構成となっており、本
願発明のノックのような接触切換えを可能にするプラス(及びマイナス)-センサ
とは本質的に異なるものである。
 (2) 変速レバーの旋回方向の誤りについて
 引用例2記載の発明では、レバー・シフト・ゲート32における、ホールド位置
を起点としたマニュアル・アップ・シフト位置又はマニュアル・ダウン・シフト位
置へのギア・チェンジ・レバー16の揺動範囲に対応する領域は、左右方向に延在
しているのであるから、引用例2のギア・チェンジ・レバーは左右方向に旋回する
ことでマニュアル・アップ・シフト位置又はマニュアル・ダウン・シフト位置に切
り換えられることになる。
 したがって、審決が、引用例2には当該シフト・ゲートの中立の中央位置を起点
としてマニュアル・アップ・シフト位置又はマニュアル・ダウン・シフト位置にギ
ヤ・チェンジ・レバー(シフトレバー)を「長手方向旋回して」切換可能な構成が
示されていると認定したこと(審決書12頁13行ないし17行)は、誤りであ
る。
3 取消事由3(相違点についての判断の誤り)
 上記のとおり、引用例1記載の発明では、その第Ⅱのシフト路に「中立の位置」
というものが存在しないのであり、一方、引用例2記載の発明では、そのアップ
(又はダウン)・シフト・スイッチが本願発明の接触切換えを可能にするプラス
(又はマイナス)-センサとは本質的に異なるものであり、かつ、ギア・チェン
ジ・レバーは「長手方向」ではなくて「左右方向」に旋回することでマニュアル・
アップ・シフト位置又はマニュアル・ダウン・シフト位置に切り換えられるもので
あるという相違点がある。
 さらに、上記のとおり、引用例1記載の発明では、変速機の前進ギヤ段が手動で
強制的に1段切換え可能であり、かつ自動変速レバーは、手を離すとその都度自動
的にドライブポジションDに戻されるから、引用例1の第Ⅱのシフト路は、ドライ
ブポジションDにおける自動変速に付随して強制的に前進ギヤを1段だけ一時的に
変更するためのものであって、自動変速から完全に独立して変速機の前進ギヤ段を
任意に変更させるためのものではない。一方、引用例2記載の発明では、そのレバ
ー・シフト・ゲート32は、ドライブ位置D、ホールド位置HOLD、マニュア
ル・アップ・シフト位置UP、マニュアル・ダウン・シフト位置DOWNなどのレ
バー・シフト位置を設定するためにT字状開口に形成され、ギア・チェンジ・レバ
ー16は、レバー・シフト・ゲート32の左右方向に延在する部分において、ホー
ルド位置を起点としてマニュアル・アップ・シフト位置又はマニュアル・ダウン・
シフト位置に左右方向に旋回してトランスミッションをアップ(又はダウン)・シ
フトさせることができるようになっているから、このレバー・シフト・ゲートの左
右方向に延在する部分は、ドライブ位置Dにおける自動変速から完全に独立して、
ドライバーの意志により任意に変速するためのシフト路である。
 このように、引用例1に記載された全体として略T字状に延在する第Ⅱのシフト
路と、引用例2に記載されたレバー・シフト・ゲートの左右方向に延在する部分と
は、上記のとおり、その目的、構成、作用において本質的に相違している。
 そうすると、引用例1記載の発明の構成を出発点として、これから本願発明に到
達するには、①引用例1記載の発明における中立位置を必要としない略T字状に延
在している第Ⅱのシフト路を、第Ⅰのシフト路と同じ方向に延在するただ1つのシ
フト路に変更し、②第Ⅰのシフト路と第Ⅱのシフト路との間に付加的に横路を設
け、③第Ⅱのシフト路に、自動変速レバーがその都度自動的に戻される中立の中央
位置を設ける、という飛躍的な構成の変更が必要であるが、引用例1記載の発明と
は、その目的、構成、作用において本質的に相違している引用例2が、この変更を
示唆する道理はないのである。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定、判断に誤りはなく、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(引用例1記載の発明との一致点及び相違点の認定の誤り)に対し

(1) 第Ⅱのシフト路の延在方向について
 審決は、引用例1記載の発明における「第Ⅱのシフト路」を、第Ⅰのシフト路に
おけるシフト位置Dから横路を介して切換え可能な第Ⅰのシフト路と同じ方向に延
在するように配置されたシフト路(原告の言葉を借りれば、シフトアップポジショ
ン及びシフトダウンポジションを含むシフト路)と認定している。
 したがって、審決でいう「第Ⅱのシフト路」とは、第Ⅰのシフト路と同じ方向に
延在するように配置され、横路を含まないものである。したがって、本願発明の第
2のシフト路と引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト路とがその構成で全く異なると
の原告の主張は、審決が第Ⅱのシフト路を横路を含むものと認定したという誤った
認識に基づくものであり、失当である。
(2)中立の位置について
 本願発明の「中立の中央位置」とは、シフトレバーがシフト位置Dや第2のシフ
ト路の両端の位置にあるときのように制御のための信号を新たに発することがない
という技術的意味での「中立」の状態で、その位置が中央であるという程度のこと
と解される。そうすると、引用例1における審決認定の「第Ⅱのシフト路」の両端
を除く中間の位置にシフトレバーがあるときに、これを中立の中央位置と解するこ
とができる。したがって、引用例1では、中立の位置が存在しないし、その必要も
ないとの原告主張は失当である。
 もっとも、引用例1では、シフトレバーが第Ⅱのシフト路の中立の中央位置に戻
される形式のものではないので、審決は、これを認めた上で、引用例1記載の発明
が、「第Ⅱシフト路の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか不明
な点」(審決書9頁9頁17~19行)を相違点として認定しているから、この認
定に原告主張の誤りはない。
 審決は、本願発明の「第2のシフト路」と引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト
路」との相違点、特に、本願発明では、シフトレバーがその都度自動的に第2のシ
フト路の中立の中央位置に戻るようになっているのに対し、引用例1記載の発明で
は、シフトレバーがドライブポジションDに復帰するようになっている違いを認識
した上で、本願発明と引用例1記載の発明の一致点を認定し(審決書8頁5行ない
し13行)、相違点を認定した(審決書9頁7行ないし19行)のであるから、こ
れらの認定には何ら誤りはない。
 2 取消事由2(引用例2記載の発明の認定についての誤り)に対して
  (1) 本願発明のセンサに相当する構成がないとの主張に対して
 本願発明の全文訂正明細書(甲第3号証)の特許請求の範囲請求項3には「シフ
トレバー(1)の旋回運動がセンサ(8,9,11)によって検出されて、制御装
置(5)に与えられ、さらにこの制御装置において、シフトレバーの連続する旋回
運動の数に相応して変速機(3)が1段、2段又は3段だけシフトアップもしくは
シフトダウンの方へ切り換えられるように処理されるようになっている」(2頁5
行ないし9行)と記載され、この記載によれば、本願発明の「プラス-センサ」及
び「マイナス-センサ」は、シフトレバーのシフトアップ又はシフトダウンの旋回
運動を検出する機能を有するのに留まり、変速機を何段変速させるかは制御装置5
からの指令によって行われるものであるから、上記センサ(9,11)は運転者の
変速意志に基づき操作されるシフトレバーの特定位置を検出するためのセンサであ
るにすぎず、その後の変速作用は制御装置の機能である。
 一方、引用例2のアップ・シフト・スイッチ23及びダウン・シフト・スイッチ
24も、ギア・チェンジ・レバー16がアップ・シフト位置又はダウン・シフト位
置にあることを検出する機能にとどまるものであり、その後の変速作用は油圧制御
回路の機能である。
 したがって、本願発明の上記センサと引用例2の上記スイッチとは機能的に変わ
りがないのであって、審決が、これらが機能的に等価であると認定したことに誤り
はない。
 また、原告は、引用例2記載の発明は、トランスミッションを所望のアップ(又
はダウン)・シフトさせるために、シフトすべき段数に応じた所定時間だけアップ
(又はダウン)・シフト・スイッチを閉路して、所定量の圧油をクラッチに供給し
なければならないものであると主張する。
 しかし、引用例2記載の発明には、原告主張のようなスイッチの作動時間に応じ
て変速される段数が異なるような仕様の変速装置が記載も示唆もされていないか
ら、原告の上記主張は何ら根拠のない単なる推測にすぎないものであり、失当であ
る。
 (2) 変速レバーの旋回方向の誤りについて
 確かに、本願発明における「長手方向」の意味は、特許請求の範囲請求項1の記
載全体から、「自動車の長手方向」を指すものと理解することができるが、一般に
「長手方向」と記載しただけでは、特定の方向が規定されるものではなく、長手方
向に何らかの意味を持たせるためには、例えば、「テーブルの長手方向」というよ
うに、長手方向という言葉に、方向を特定する基準となる言葉を結合させるか、前
後の文脈から特定の方向を読む必要があることは明らかである。
 そこで、審決が引用例2記載の発明におけるレバーの旋回方向について用いた
「長手方向」という言葉の意味について検討すると、審決は、引用例2記載の発明
の認定として、「マニュアル・アップ・シフト位置およびマニュアル・ダウン・シ
フト位置を設定可能にするレバー・シフト・ゲート(本願発明の「第2のシフト
路」に機能的に等価。以下、括弧内の記載は同様の意味で用いる。)においては、
ホールド位置(中立の中央位置)から、ギヤ・チェンジ・レバー(シフトレバー)
を旋回させてアップ・シフト・スイッチ(プラス-センサ)に接触させることによ
って、シフトアップへの手動切換が可能であり、かつ逆方向に旋回させてダウン・
シフト・スイッチ(マイナス-スイッチ)に接触させることによって、シフトダウ
ンへの手動切換が可能であり、次いでギヤ・チェンジ・レバー(シフトレバー)が
その都度自動的にマニュアル・アップ・シフト位置およびマニュアル・ダウン・シ
フト位置を設定可能にするレバー・シフト・ゲート(第2のシフト路)のホールド
位置(中立の中央位置)に戻される・・・ただ一つのマニュアル・アップ・シフト
位置およびマニュアル・ダウン・シフト位置を設定可能にするレバー・シフト・ゲ
ート(第2のシフト路)内において、当該シフト・ゲートの中立の中央位置を起点
としてマニュアル・アップ・シフト位置又はマニュアル・ダウン・シフト位置にギ
ヤ・チェンジ・レバー(シフトレバー)を長手方向旋回して切換可能」と認定して
いるのであり(審決書10頁16行ないし12頁17行)、これによれば、審決
は、引用例2記載の発明のギヤ・チェンジ・レバーについて、ホールド位置からア
ップ(又はダウン)・シフト・スイッチに向けて旋回されること及びレバー・シフ
ト・ゲートについて、ギヤ・チェンジ・レバーの旋回する方向に延在することを認
定していることを理解することができる。つまり、審決は、ギヤ・チェンジ・レバ
ーが旋回する方向を、レバー・シフト・ゲートの延在する方向、すなわちレバー・
シフト・ゲートの長手方向と認定しているのであり、審決が引用例2記載の発明の
認定において用いた「長手方向」なる言葉は、レバー・シフト・ゲートの延在する
方向の意味で用いたにすぎない。
 したがって、審決が用いた「長手方向」なる言葉は、自動車の長手方向を意味す
るものとして使用したものでないことは明らかであるから、引用例2に記載の発明
の認定に原告主張の誤りはない。
 なお、引用例2記載の発明に係る手動切換のための上記レバー・シフト・ゲート
が自動車の長手方向にないとしても、後記のとおり、引用例1記載の発明には、自
動車の長手方向に延在する第Ⅱのシフト路が示されており、他方、引用例2記載の
発明には、変速レバーが自動的に戻される中立の中央位置に係る技術思想が開示さ
れている以上、これを引用例1記載の発明に適用し、引用例1記載の発明との相違
点に係る本願発明の構成を採択することに格別な困難性がないことはいうまでもな
い。
3 取消事由3(相違点についての判断の誤り)に対して
 上記のとおり、審決の引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明の各認定、並
びに本願発明と引用例1記載の発明との一致点及び相違点についての各認定には、
いずれも誤りは存在しない。そして、引用例1には、「ドライブポジションDに投
入されると運転状態に応じた最適な前進ギヤ段に入るよう指令が出される。・・・
シフトアップポジションSHIFTUPに投入されると現ギヤ段に対し強制的に1段ギヤ
段を上げるよう指令が出される。シフトダウンポジションSHIFTDOWNに投入される
と現ギヤ段に対して強制的に1段ギヤ段を下げるよう指令が出される。」(甲第4
号証5頁右上欄末行ないし左下欄9行)と記載され、この記載と第8図(b)が図
示するシフト路の配置から明らかなように、引用例1記載の発明は、運転状態に応
じて自動変速可能なドライブポジションDとは別に、ドライバーの意志に基づいて
強制的に変速段を1段だけ上下させることができる変速位置(シフトアップ又はシ
フトダウン)を設定し、自動変速に加えて手動変速を可能とする変速装置に係るも
のであり、この点で引用例2記載の発明と共通の技術分野に属するものであるか
ら、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用することに何ら無理はない。
 このように、本願発明が引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基づい
て、当業者がいかに容易に発明することができたものであるかを、別紙2の参考図
(以下「参考図」という。)を用いて説明する。
 引用例1記載の発明では、参考図の第1図(引用例1記載の第8図(b))にお
いて、運転者がドライブポジションDからシフトアップ又はシフトダウンしようと
すれば、シフトレバーをDの位置からシフトアップの位置(以下「UP」という。)
とシフトダウンの位置(以下「DN」という。)を結ぶシフト路内の位置(以下
「O」という。)に移動し、そこからUP又はDNに移動することになる。運転者
が当初からシフトの移動先(UP又はDN)を決定していても、装置の機能からみ
れば、D-Oの間は、その後の移動先が確定していないことになるので、D-Oは
本願発明の横路の機能を具備することになる。そして、D、UP、DNの各位置が
シフト路を介してそれぞれ離れて位置するのは、誤動作をなくすためであることは
たやすく理解できるから、シフトレバーがこれらの位置以外にあるときには、新た
な信号を発しないように構成されていると解することが自然かつ合理的である。そ
うすると、Oの位置が本願発明における「中立」の状態に相当する。
 また、通常のシフトレバーがそうであるように、引用例1記載の発明のシフトレ
バーについても、D-O-UP及びD-O-DNのシフト操作のスピードがどのよ
うなものでも対応することができるものであると理解されるから、運転者がこれを
Oの位置、すなわち、中立の中央位置に停止し、運転状況に応じて、いずれの方向に
でも移動することが可能と解される。そうすると、運転者がシフトレバーをUP-O-
DNと操作することも可能ということになる。なるほど、引用例1記載のシフトレバ
ーは、手を離すとDに復帰するものではあるが、運転者がシフトレバーを手動によ
り中立の中央位置であるOに保持することができると解されるのである。
 そして、引用例2記載の発明では、参考図の第2図(引用例2記載の第4図)の
とおり、シフトレバーを、装置の機構として中立の中央位置であるOに自動的に復帰
させたり、保持させたりするものが記載されているから(引用例2記載の発明のH
OLDの位置)、当業者であれば、参考図の第3図のとおり、この引用例2記載の
発明の機構を引用例1記載の発明に採用して、同第4図のとおり、本願発明の構成
にすることに格別な困難性があるとは認められない。
 以上のとおり、本願発明が引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基づい
て当業者が容易に発明をすることができたものであるとした審決の判断に誤りはな
い。
         理    由
1 取消事由1(引用例1記載の発明との一致点及び相違点の認定の誤り)につい

(1) 第Ⅱのシフト路の延在方向について
 原告は、本願発明では、第2のシフト路が、第1のシフト路と同じ方向に延在す
る構成であるのに対し、引用例1記載の発明では、審決も認定したように、「この
場合第Ⅱのシフト路においては、ドライブポジションDから横路を介して、自動変
速レバーを1回旋回させてシフトアップポジションに投入させることによって、1
段だけシフトアップへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向のシフトダウンポジ
ションに1回旋回させることによって、1段だけシフトダウンへの手動切換えが可
能であり、次いで自動変速レバーがその都度自動的にドライブポジションDに戻さ
れる形式のもの」(審決書6頁1行ないし10行)であるから、この第Ⅱのシフト
路は、シフトアップポジションとシフトダウンポジションを含むシフト路と、この
シフト路に対してほぼ直角に延在してドライブポジションDに通じる横路の2つの
シフト路から構成されているものということになり、本願発明における第2のシフ
ト路と引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト路とは、その構成について全く異なり、
審決が、第Ⅱのシフト路が第1のシフト路と同じ方向に延在している点を一致点と
して認定したことは誤りである旨主張している。
 しかし、審決が引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」の構成として認定した
内容についてみると、審決は、引用例1には「自動変速レバー102を用いてシフトア
ップポジション及びシフトダウンポジション投入用シフト路(以下、便宜上「第Ⅱ
のシフト路」という。)内においては付加的に、変速機の前進ギヤが手動で切換え
可能であり、この場合第Ⅱのシフト路においては、ドライブポジションDから横路
を介して、自動変速レバーを1回旋回させてシフトアップポジションに投入させる
ことによって、1段だけシフトアップへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向の
シフトダウンポジションに1回旋回させることによって、1段だけシフトダウンへ
の手動切換えが可能であり、次いで自動変速レバーがその都度自動的にドライブポ
ジションDに戻される形式のものにおいて、イ)自動変速レバーが第Ⅰのシフト路
におけるシフト位置Dから横路を介して、ただ1つの第Ⅱのシフト路に切換え可能
であり、ロ)第Ⅱのシフト路が、第Ⅰのシフト路と同じ方向に延在するように配置
されており、ハ)自動変速レバーを第Ⅱのシフト路において長手方向旋回させるこ
とによって、変速機の前進ギヤが手動で切換え可能である、自動車の自動変速機の
ためのシフト装置。」が記載されていると認定している(審決書5頁17行ないし
6頁末行)のであるから、審決は、引用例1記載の発明において、「横路」をその
構造に含んでいない「シフトアップポジション及びシフトダウンポジション投入用
シフト路」(原告主張の「シフトアップポジションとシフトダウンポジションを含
むシフト路」。引用例1記載の第8図では、「SHIFT DOWN(強制シフト
ダウン)の位置(参考図の第1図の「DN」の位置」)と「SHIFT UP(強
制シフトアップ)の位置(参考図の第1図の「UP」の位置」)との間のシフト路
部分」)を、本願発明の「第2のシフト路」との対比上、便宜的に「第Ⅱのシフト
路」と称呼していることが認められる。
 審決は、引用例1記載の発明につき、「車両方向に延在するドライブ及びニュー
トラルポジション投入用シフト路(以下、便宜上「第Ⅰのシフト路」という。)」
(審決書5頁12行ないし15行)と認定し、「第Ⅰのシフト路」は本願発明の第
1のシフト路」に相当し(審決書7頁6行ないし9行)、第Ⅰのシフト路が自動車
長手方向に延在する(審決書7頁12行)とした上で、本願発明の「第2のシフト
路」と引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」のそれぞれの構成を対比して、両
者は、「シフトレバーを用いて第1のシフト路とは別のシフト路内においては付加
的に、変速機の前進ギヤが手動で切換え可能であり、この場合第1のシフト路とは
別のシフト路においては、シフトレバーを1回旋回させることよって、1段だけシ
フトアップへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向に1回旋回させることによっ
て、1段だけシフトダウンへの手動切換えが可能であり、次いで自動変速レバーが
その都度所定位置に自動的に戻される形式のものにおいて、イ)シフトレバーが第
1のシフト路におけるシフト位置Dから横路を介して、ただ1つの第1のシフト路
とは別のシフト路に切換え可能であり、ロ)第1のシフト路とは別のシフト路が、
第1のシフト路と同じ方向に延在するように配置されており、ハ)シフトレバーを
第1のシフト路とは別のシフト路において長手方向旋回させることによって、変速
機の前進ギヤが手動で切換え可能である、自動車の自動変速機のためのシフト装
置。」の点で一致すると認定している(審決書7頁9行ないし8頁15行)。そし
て、両者の相違点として、「本願発明では、シフト装置が「第1のシフト路と同じ
方向に延在する第2のシフト路(7)においては、中立の中央位置からシフトレバ
ー(1)を1回長手方向旋回させてプラス-センサ(9)に接触させることによっ
て、1段だけシフトアップへの手動切換えが可能であり、かつ逆方向に1回旋回さ
せてマイナス-センサ(11)に接触させることによって、1段だけシフトダウン
への手動切換えが可能であり、次いでシフトレバー(1)がその都度自動的に第2
のシフト路の中立の中央位置に戻される形式のもの」であるのに対し、引用例1記
載の発明では、「第1のシフト路と同じ方向に延在する第Ⅱのシフト路において
は、ドライブポジションDから横路を介して、シフトレバーを1回長手方向旋回さ
せてシフトアップポジションに投入させることによって、1段だけシフトアップへ
の手動切換えが可能であり、かつ逆方向のシフトダウンポジションに1回移動させ
ることによって、1段だけシフトダウンへの手動切換えが可能であり、次いで自動
変速レバーがその都度自動的にドライブポジションDに戻される形式のもの」であ
り、第Ⅱシフト路の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか不明な
点」で相違すると認定している(審決書8頁16行ないし9頁19行)のである。
 このように、審決は、引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」について、本願
発明の「第2のシフト路」との間で、同じ構成、作用効果を有し、これに相当する
構造の部分として認定したものではなく、本願発明の「第2のシフト路」と対比す
るに当たって、引用例1記載の発明において、自動車長手方向に延在する「第Ⅰの
シフト路」(本願発明の「第1のシフト路」に相当する)と同じ方向に延在する構
造のシフト路部分(原告主張の「シフトアップポジションとシフトダウンポジショ
ンを含むシフト路」部分)に着目して、この部分を便宜上「第Ⅱのシフト路」と称
呼し、「第Ⅱのシフト路」を、本願発明の「第2のシフト路」と対比して、その構
成、作用効果において一致する点として、上記審決書7頁9行ないし8頁15行の
とおり認定し、その中で第Ⅱのシフト路が第1のシフト路と同じ方向に延在するよ
うに配置されている構造であることを認定し、他方、構成、作用効果を異にする点
として、本願発明の「第2のシフト路」は、「中立の中央位置から」シフトレバー
を操作することによりシフトアップ、ダウンへの手動切換えが可能であり、「次い
でシフトレバーがその都度自動的に第2のシフト路の中立の中央位置に戻される形
式のもの」であるのに対し、引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」は、「ドラ
イブポジションDから横路を介して、」シフトレバーを操作することによってシフ
トアップ、ダウンへの手動切換えが可能であり、「次いで自動変速レバーがその都
度自動的にドライブポジションDに戻される形式のもの」であって「第Ⅱシフト路
の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか不明な点」が相違すると
認定し、その上で、この相違点について判断していること(審決書10頁12行以
下)が認められる。
 以上のとおり、審決は、引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」について、本
願発明における「第2のシフト路」と対比して、第1のシフト路と同じ方向に延在
するシフト路部分であるという構造において一致すると認定し、他方、シフトアッ
プ、ダウンへの手動切換操作におけるシフトレバーの開始位置及び終了位置(手動
切換操作の起点)をその構造の中に含む(中立の中央位置を起点とする)ものであ
ることは一致点として認定しておらず、逆に、引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフ
ト路」では、その構造の外に位置する「ドライブポジションD」が手動切換操作に
おけるシフトレバーの開始位置及び終了位置(手動切換操作の起点)として開示さ
れており、「第Ⅱシフト路の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどう
か不明な点」が、構成、作用効果を異にする点であると認定し、その相違点につい
て判断しているのである。
 したがって、審決が、引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト路の構成について、本
願発明の第2のシフト路と対比して、引用例1記載の発明では、手動切換操作をす
る際のシフトレバーの起点を(その構造外の)ドライブポジションDとすることが
開示されていると認定していても、これは、本願発明の第2のシフト路と構成、作
用効果を異にする点として認定しているのであるから、審決が引用例1記載の発明
の「第Ⅱのシフト路」について、ドライブポジションDをその構造中に含まない、
第1のシフト路と同じ方向に延在している構造の部分として把握し、この構造が本
願発明の第2のシフト路の構造(延在方向)と一致すると認定したこと自体に誤り
があるということはできず、原告の上記主張は採用することができない。 
 (2) 中立の位置について
 原告は、引用例1記載の自動変速システムでは、自動変速機の前進ギヤ段を手動
で切り換えた状態に維持するための中立位置というものは存在せず、またこれを設
ける必要もないから、本願発明と引用例1記載の発明の相違点として審決が「第Ⅱ
のシフト路の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか不明な点」と
認定したことは、中立位置が存在することを前提としたものであり、誤りであると
主張している。
 しかし、本願発明における第2のシフト路中の「中立位置」が、原告が主張する
ように、自動変速機の前進ギヤ段を手動で切り換えた状態に維持するという構成、
作用効果を有するものであるとしても、審決は、前判示(1)のとおり、引用例1
記載の発明の「第Ⅱのシフト路」について、本願発明における「第2のシフト路」
と対比して、その構成、作用効果を異にする点として、本願発明の「第2のシフト
路」は、「中立の中央位置から」シフトレバーを操作することによりシフトアッ
プ、ダウンへの手動切換えが可能であり、「次いでシフトレバーがその都度自動的
に第2のシフト路の中立の中央位置に戻される形式のもの」であるのに対し、引用
例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」は、「ドライブポジションDから横路を介し
て、」シフトレバーを操作することによってシフトアップ、ダウンへの手動切換え
が可能であり、「次いで自動変速レバーがその都度自動的にドライブポジションD
に戻される形式のもの」であると認定しているのであり、この認定を前提として
「第Ⅱシフト路の中立位置を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか不明な
点」が相違すると認定し、次いで、相違点について判断していることが認められる
のである。
 したがって、審決は、引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト路について、本願発明
の第2のシフト路と同じ構成、作用効果を有する「中立位置」が存在することを一
致点としては認定しておらず、逆に、引用例1記載の発明の「第Ⅱのシフト路」で
は、その構造の外に位置する「ドライブポジションD」が手動切換操作におけるシ
フトレバーの開始位置及び終了位置(手動切換操作の起点)として開示されている
ことを相違点として認定していることは明らかであり、審決のこれらの認定に誤り
はないものと認められる。
 以上のとおり、審決は、原告が主張するように、自動変速機の前進ギヤ段を手動
で切り換えた状態に維持するための中立位置が引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト
路に存在すると認定したものではないから、原告の上記主張は、その前提を欠くも
のであり、失当である。
 付言すると、引用例1(甲第4号証)には、「ドライブポジションDに投入され
ると運転状態に応じた最適な前進ギヤ段に入るよう指令が出される。シフトアップ
ポジションSHIFTUPに投入されると現ギヤ段に対して強制的に1段ギヤ段を上げる
よう指令が出される。シフトダウンポジションSHIFTDOWNに投入されると現ギヤ段
に対して強制的に1段ギヤ段を下げるよう指令が出される。・・・なお、シフトア
ップポジションSHIFTUP若しくはシフトダウンポジションSHIFTDOWNに投入されて
いるときにレバーから手を離すと、レバーはばねの力により自動的にドライブポジ
ションDに復帰するようになっている。」(5頁右上欄末行ないし左下欄15行)
と記載されていることが認められ、この記載によれば、引用例1記載の発明では、
シフトレバーがドライブポジションDからシフトアップポジション又はシフトダウ
ンポジションに投入される際及びドライブポジションDに復帰する際に、シフトレ
バーは、第Ⅱのシフト路と横路とが接する第Ⅱのシフト路の中央の位置(参考図の
第1図の「O」の位置)を必ず通過するものであり、シフトレバーが少なくともこ
の中央位置付近にあるときには、シフトアップ及びシフトダウンを強制しない状態
にあると認められ、このことを指して、「中立の状態にある」と認めることができ
るものである。そこで、審決は、引用例1記載の発明の第Ⅱのシフト路について、
本願発明の第2のシフト路と対比し、その相違点として、上記の意味で「中立」の
状態にある中央位置(上記「O」の位置)に着目して、「引用例1記載の発明で
は、第Ⅱのシフト路の「中立位置」を起点としたシフトレバー操作が可能かどうか
不明な点」が異なると認定したと理解することができる。
2 取消事由2(引用例2記載の技術内容の認定についての誤り)について
 (1) 本願発明のセンサに相当する構成がないことについて
 原告は、本願発明のプラス-センサ(9)とマイナス-センサ(11)が、単
に、シフトレバーの旋回運動を検出する機能を有するだけではなく、変速機の前進
ギヤを実際にシフトさせるための機能をも併せ備えているものと解釈するべきであ
ると主張し、被告が、これらのセンサはシフトレバーの特定位置を検出するための
センサにすぎず、その後の変速作用は制御装置の機能とみるべきであるから、引用
例2記載の発明におけるスイッチと本願発明におけるセンサは機能的に等価である
との審決の認定に誤りがないと主張したのに対して、被告の主張は本願発明に係る
明細書に記載された実施例に対しては妥当しても、本願発明そのものには適用し得
ない旨主張している。
 しかし、本願発明に係る全文訂正明細書(甲第3号証)によれば、本願発明の特
許請求の範囲には、本願発明が「電子制御装置によって制御される、自動車の自動
式の変速機(3)のためのシフト装置であ(る)」ことが明記されており、「発明
の詳細な説明」欄の「産業上の利用分野」にも、「本発明は、電子制御装置によっ
て制御される自動式の変速機のためのシフト装置」であることが明記されている
(3頁23行ないし25行)ことが認められ、本願発明の「実施例」として、「第
2のシフト路7内でシフトレバー1を自動車の走行方向で旋回させる際に、プラス
-センサ9が応動し、このプラス-センサのシグナルによって制御装置は、変速機
3において1段だけシフトアップが行われるようにする。」(6頁8行ないし10
行)、「シフトレバーを走行方向とは逆に旋回させると、マイナス-センサ11が
シグナルを制御装置5に与えて、変速機3においては1段だけシフトダウンが行わ
れる。」(6頁13行ないし15行)と記載され、この記載と本願発明に係る当初
明細書(甲第2号証)の第1図が図示するところによれば、本願発明に係る明細書
では、本願発明の実施例としても、プラス-センサ及びマイナス-センサについ
て、シフトレバーの旋回に応じて信号(シグナル)を発し、該信号は制御装置に伝
送され、該制御装置は変速機を1段だけ高速又は低速の方へ切り換える指令を変速
機3に与える構成を記載しているのであり、本願発明のプラス-センサ(9)とマ
イナス-センサ(11)がシフトレバーの旋回運動を検出する機能を有するだけで
はなく、変速機の前進ギヤを実際にシフトさせるための機能をも併せ備えているも
のであることを示唆する記載は認められない。
 したがって、本願発明のプラス-センサ(9)とマイナス-センサ(11)は、
シフトレバーの旋回による接触に応じた信号を発する機能を有するが、変速機の前
進ギヤを実際にシフトさせるための機能は有しないものとして構成されていること
は明らかであるというべきであり、一方、甲第5号証によれば、引用例2記載の発
明におけるアップ・シフト・スイッチ及びダウン・シフト・スイッチも、ギヤ・チ
ェンジ・レバーの揺動による接触に応じてシフト・アップ又はシフト・ダウンの指
令を与えるものと認められるから、引用例2記載の発明におけるスイッチと本願発
明におけるセンサは機能的に等価であるとの審決の認定には誤りがなく、原告の上
記主張は失当である。
 原告は、引用例2記載の発明のスイッチは、シフトアップ又はシフトダウンさせ
るためには、必ず一定時間閉路し続けなければならない構成となっており、本願発
明のノックのような接触切換えを可能にするプラス(及びマイナス)-センサとは
本質的に異なるものであるとも主張している。
 しかし、本願発明と引用例1記載の発明との前記の相違点(第2のシフト路にお
けるレバー操作の起点の相違点)について判断するに当たって、引用例2記載の発
明における本願発明の第2のシフト路に相当する構成(第1のシフト路から独立し
て、レバー操作を中立の中央位置を起点とするもの)に係る技術内容を、上記相違
点に適用することの容易想到性を評価する場合に、原告が主張する引用例2記載の
発明のスイッチの具体的な構成が、その適用を困難とするような本質的なものであ
るとみることができるかについてはそもそも疑問があり、むしろ、原告主張の引用
例2記載の発明のスイッチの構成は、制御装置の構成に応じたものにすぎず、引用
例2記載の発明における上記の本願発明の第2のシフト路に相当する構成に係る技
術内容とは直接関係するものではないから、その適用を阻害するものではなく、本
願発明のセンサと本質的に異なるものではないというべきである。
 したがって、原告の上記主張も採用することができない。
 (2) 変速レバーの旋回方向の誤りについて
 原告は、審決が、引用例2にはギヤ・チェンジ・レバー(シフトレバー)を「長
手方向旋回して」切換可能な構成が示されていると認定したこと(審決書12頁1
3行ないし17行)が誤りであると主張している。
 しかしながら、審決が、引用例2にはギヤ・チェンジ・レバー(シフトレバー)
を「長手方向旋回して」切換可能な構成が示されていると認定した趣旨は、本願発
明の構成と同じく、レバーを「自動車長手方向」に旋回することを認定したもので
はなく、被告が指摘するとおり、審決が引用例2記載の発明について認定した部分
(審決書10頁16行ないし12頁17行)をみれば、審決は、ギヤ・チェンジ・
レバーが旋回する方向を、レバー・シフト・ゲートの延在する方向との趣旨で、レ
バー・シフト・ゲートの長手方向と認定していることは明らかであり、審決が引用
例2記載の発明の認定において使用した「長手方向」という用語は、本願発明にお
ける自動車の「長手方向」とは異なり、「レバー・シフト・ゲートの延在する方
向」、すなわち、自動車左右方向の意味で用いられていることが認められる。
 したがって、審決が、「レバー・シフト・ゲートの延在する方向」(自動車左右
方向)を意味するものとして、「長手方向」と表現したことの当否は別として、そ
の用語が自動車の長手方向を意味するものとして使用されたものでないことは明ら
かであるから、審決がした引用例2記載の発明の認定に誤りはなく、原告の上記主
張は採用することができない。
3 取消事由3(相違点についての判断の誤り)について
 原告は、引用例1記載の発明では、その第Ⅱのシフト路に中立の位置というもの
が存在しないのであり、引用例2記載の発明では、そのアップ(又はダウン)・シ
フト・スイッチが本願発明の接触切換えを可能にするプラス(又はマイナス)-セ
ンサとは本質的に異なるものであると主張しているが、前判示のとおり、原告の上
記各主張は、いずれも採用することができない。
 また、原告は、引用例2記載の発明のギア・チェンジ・レバーは長手方向ではな
くて左右方向に旋回することでシフトを切り換えられるものであると主張してい
る。
 確かに、引用例2のギア・チェンジ・レバーは、自動車長手方向ではなく、自動
車左右方向に旋回することでシフトを切り換えることができるものではあるが、こ
の事実は、引用例2の技術内容(第1のシフト路のドライブポジションDから独立
し、中立の中央位置にレバー操作の起点が位置するシフト路)を、引用例1記載の
発明における第Ⅰのシフト路と同じ方向に延在する構造を有する第Ⅱのシフト路の
構成に適用する上で、格別の妨げとなるものではないと認められるから、原告の上
記主張も失当である。
 さらに、原告は、引用例1に記載された全体として略T字状に延在する第Ⅱのシ
フト路と、引用例2に記載されたレバー・シフト・ゲートの左右方向に延在する部
分とは、その目的、構成、作用において本質的に相違しているから、引用例1と引
用例2を組み合わせることができないと主張している。
 しかし、審決が認定した第Ⅱのシフト路は、原告が主張するように、略T字状に
延在するものではないことは前判示のとおりであるところ、審決が認定するとお
り、引用例1記載の発明では、本願発明の第1のシフト路に相当する第Ⅰのシフト
路が存在し、かつ、この第Ⅰのシフト路と同じ方向に延在するシフト路の構造(第
Ⅱのシフト路)が、その他の本願発明の構成と一致する構成とともに開示されてい
るのであり、引用例1記載の発明と本願発明との間の相異点である第Ⅱのシフト路
と本願発明の第2のシフト路との構成で異なる点(レバー操作の起点の位置)につ
いては、引用例2記載の発明において、ドライブポジション(シフト位置D)から
独立し、シフト路の中立の中央位置にレバー操作の起点を有し、この点で、本願発
明の第2のシフト路に相当する構成のものが開示されているのである。
 そして、審決が認定するとおり、引用例1記載の自動変速システムと引用例2の
ギア・チェンジ・レバー・ユニットとは、ともに、自動車に搭載された自動変速機
において、自動変速に加えてドライバーの意志による強制的な手動変速を可能とす
る変速装置に係るものとして、その技術分野を共通にするものであるから(審決書
12頁18行ないし13頁1行参照。原告も、審決が認定した技術分野の共通性の
認定については争っていない。)、これらの構成に係る技術的思想を組み合わせる
ことは、当業者であれば容易に想到することができたというべきである。
 したがって、本願発明が引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基づいて
当業者が容易に発明をすることができたとした審決の判断に、原告主張の誤りはな
い。
4 結論
 以上の次第で、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取
り消すべき瑕疵は見当たらない。
 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判
決する。
東京高等裁判所第18民事部
    裁判長裁判官 永   井   紀   昭
    裁判官 古   城   春   実
    裁判官 橋   本   英   史
別紙1 審決書の理由写し 省略
別紙2 参考図

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