弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
     原審における訴訟費用(証人A、同B、同C、同Dに各支給した分)は
被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人竹林節治作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、こ
れを引用する。
 控訴趣意第三(事実誤認の主張)について
 論旨は要するに原判示第四の事実につき被告人は被害者Cが被告人の姉を侮辱し
たことにつき単にCに謝罪を求める気持から被告人方で同人と応対したのに過ぎな
いもので、同人を脅迫する意思は全くなかつたものであり、同人と応対中そこに居
合わせたDがCに対しテーブル上の灰皿を投げつけたり、更に右灰皿を持つて同人
の頭部を殴打したのは被告人の意思に基くものではなく、被告人はこのような暴力
に訴える意思が全くなかつたのであるから、右Dの暴行について責任はないという
のである。
 よつて所論にかんがみ記録を精査するのに、原判決挙示の証拠を綜合すると、被
告人は昭和四一年四月一四日午前二時頃被告人の姉Eが株式会社F所属のタクシー
運転手Cの運転するタクシーに乗車中同人と口論し同人からパンパン呼ばわりされ
て肩を突かれた旨聞知するや深夜であるのに同会社に電話して宿直員に対し今から
事情を聞きたいから同運転手を探がして連れて来いと申し向け、同日午前四時頃原
判示G組事務所に右Cと同会社営業課長A及び同会社H営業所整備主任Bを呼び出
し、右事務所応接室において、右Cに対し、「今晩あつた姉との問題を俺に分るよ
うに話してみい」といい、同人が「済みません、私の云い過ぎでした」といつて謝
まつているのに拘わらず、身体を乗り出しテーブルを叩いてにらみつけて大声で怒
鳴りながら「済みませんでは分らんじやないか、何でうちの姉のことをパンパン呼
ばわりしたのか俺に説明せよ」といつて追求し同人が「パンパンではなくぽん引と
いつたのだが、済みません」といつて謝罪するのに対し、更にその場にいたDも傍
から「お前先から謝つてばかりいるが、これで済んだと思うのか、組長が許すとい
つても俺は許さんぞ、ぽん引とは何だ」といい、なおも弁解しようとするCに対
し、Dにおいて原判示の如くテーブル上の灰皿をCの胸部に投げつけるや、被告人
はこれを制止しないばかりか同人に対し「今うちの若衆が灰皿を投げたが、こんな
ことで俺の気がすむと思うか」とか、「このままでは唯で済まんぞ」といつて同人
の身体に更に暴行等の如何なる危害を加えるか判らないような気勢を示し、更にD
が右灰皿でCの頭部を殴打し泣き出して謝る同人に対し被告人において「こんなこ
とでへこたれるのなら初めから大きな口をきくな」とか「これで話しはまだついて
ないぞ」といい、前記Eに謝罪させた後も「姉との話はすんでも俺たちの代絞を傷
つけたことの話はついてない」といつて右Cに対しその身体等に如何なる危害を加
えるか判らない旨暗示して脅迫していることが認められる。そして右のように被告
人が深夜であるのにCを呼び出したうえ、謝罪する同人に対してなした言動は被告
人方の組員ではないが、居候をして被告人の世話になつているDが被告人の意にそ
うべく取つた前記言動と相呼応するもので同人と意思相通じ共同してCを脅迫した
ものというべく、DがCに加えた前記各暴行も被告人の意思に基づくものであると
みられるのであつて、所論のように被告人に脅迫の犯意がなかつたとか、又Dの脅
迫や暴行が被告人の意思に基くものでないといつて被告人の刑責を否定できるもの
ではない。されば以上と同趣旨の事実を認定したとみられる原判決は正当であつ
て、記録を精査しても所論のよらな誤りの点は存しない。論旨は理由がない。
 なお職権をもつて調査するのに、原判決は罪となるべき事実第三において被告人
に対する昭和四一年三月四日附起訴状記載の公訴事実と同じく「被告人は暴力団I
組糸G組々長、Jはその知人であるが、Jが法定の除外事由がないのに、昭和三九
年二月末頃、神戸市a区b町c丁目dバー「K」で同居主Lより三二口径自動装顛
式拳銃一挺、同実包約二五発を買受け、同日より昭和四一年一月七日頃迄の間、同
所及び姫路市e区fgの自宅等において右拳銃等を不法に所持するに当り、被告人
はその情を知りながらその頃右Jを前記L方に連行し、右Jをして右Lより前記拳
銃等を買受けさせ、以つて右Jの前記犯行を容易ならしめてこれを幇助した」との
事実を認定判示し、右事実につき銃砲刀剣類所持等取締法附則12による改正前の
銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条、罰金等臨時措置法二条(懲役刑選択)と火
薬類取締法一七条一項、五九条四号、罰金等臨時措置法二条(懲役刑選択)を適用
し、右両罪の関係を他の原判示各罪との関係と同様に刑法四五条前段の併合罪の関
係にあるものとし、累犯加重、従犯減軽、併合罪の加重をして処断していることが
明らかである。
 ところで、火薬類取締法一七条一項(但し後記昭和四一年六月七日法律第八〇号
による改正前)は同項但書の場合を除き火薬類を譲り渡し、又は譲り受けようとす
る者は都道府県知事(右法律による改正後は都道府県公安委員会と読み替える。)
の許可を受けなければならないと規定し、同法五九条四号は右一七条一項の規定に
違反し、許可を受けないで火薬類を譲り渡し、又は譲り受けた者についての罰則を
定めたものであるところ、前記原判示によれば実行正犯であるJの犯行につき拳銃
と共にその実包を買受けた旨の文言があるけれども火薬類である右実包の買受けを
都道府県知事の許可を受けないでしたとの文言はなく「右拳銃等を不法に所持する
に当り、被告人はその情を知りながら……右Jをして右Lより前記拳銃等を買受け
させ以つて右Jの前記犯行を幇助した」旨判示しているところからみると拳銃につ
いても同様に火薬類である拳銃用の右実包についてもJがこれを不法に所持した犯
行を幇助した事実を認定判示したものとみざるを得ないのであり、右原判示と同じ
公訴事実を記載した前記起訴状の罰条にも火薬類取締法二一条、五九条二号刑法六
二条が掲記されており、火薬類についての本件訴因は不法所持罪に該当する事実で
あつて本件起訴が同法一七条一項、五九条四号違反の罪を問うたものでないことは
明らかである。してみると、原判決が同法二一条、五九条を適用せずに、同法一七
条一項、五九条四号を適用したのは法令の適用を誤つたものといわざるを得ない。
そして右原判示によると被告人はJが昭和三九年二月末頃Lから原判示バー「K」
で原判示拳銃一挺及び同実包二五発を買受けて同日より昭和四一年一月七日頃まで
の間、同所及び姫路市内のJの自宅等において右拳銃及びその実包を不法に所持し
た犯行を幇助した事実を認定したものとみられるのであるが、右事実に関する証拠
を検討すると、原判決挙示の関係証拠によれば、被告人は昭和三九年二月下旬頃肩
書住居において来邦したJと話しをしていた際Lから電話により拳銃を買わないか
という連絡があり、これを知つたJから拳銃とその実包を入手したいからその購入
の斡旋をしてくれとの依頼を受けてこれに応じ右Lに連絡して会合場所を打ち合わ
せ、Jを連れて原判示バー「K」附近の喫茶店におもむき同人をLに引き合わせる
と共に同人に対しJが自己の刑務所服役当時からの知り合いで間違いない男だから
同人に売却してやつてくれといい、更にLの経営する右バー「K」に同人と共にJ
を連れておもむき同人がLから法定の除外事由がないのに拳銃及び実包を購入する
につき斡旋をし、同日同所においてJはLより原判示拳銃及び実包を一三万円で買
受けて入手し、これを原判示同人の自宅に持ち帰り納屋に隠匿して同日より昭和四
一年一月七日頃まで保管していたことが認められる。従つて正犯であるJは右拳銃
及び実包をLから購入してから自宅において引き続き所持していたのであつて昭和
三九年二月下旬より後記認定の如く改正法律の施行後の昭和四一年一月七日まで拳
銃についても火薬類である同実包についても継続してそれぞれ不法所持をなしたも
のであり、しかも取締法規が異なる拳銃とその実包の所持は一所為数法の関係にあ
るものとみられるところ、拳銃についてはJが入手して自宅納屋に保管中に昭和四
〇年四月一五日法律第四七号によりそれまでの銃砲刀剣類等所持取締法(以下旧法
と称する。)の一部が改正され、同法の名称が銃砲刀剣類所持等取締法と改められ
ると共に旧法三一条が改正され拳銃の不法所持の罰則につきその三一条の二の規定
が設けられて法定刑が引き上げられ右改正法律は同年七月一五日から施行された
が、右改正法律の施行の前後にまたがる正犯の拳銃不法所持の行為については右改
正前の犯罪行為と改正後の犯罪行為とが相合して一個の継続犯を構成するものと解
すべく、右改正法律の附則五項の規定に関係なく改正後の同法三一条の二の規定の
みを適用すべきものと解せられる。(昭和三一年五月四日最高裁判所判決刑集一〇
巻五号六三三頁参照)
 なお、昭和四一年六月七日法律第八〇号銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締
法の一部を改正する法律が昭和四二年一月一日から施行されたが、この改正法律は
本件の拳銃及び実包の不法所持罪には直接の関係はない。
 <要旨>そこで、従犯である被告人の本件幇助罪については従属性の立前上、その
犯の成立、罪数が共に正犯のそれに従うべきものとすると、正犯と同じく前
記昭和四〇年法律第四七号による改正後の三一条の二を適用することとなる筋合で
あるが、前記認定事実から明らかなように被告人は旧法当時の昭和三九年二月下旬
に拳銃及び実包の購入の斡旋をしたのに過ぎず、右購入斡旋によりJがLから原判
示拳銃及び実包を購入すればこれを不法に所持することは認識していたとはいえ、
右幇助行為の態様からみて右拳銃等を購入することにともなう直後の不法所持の犯
行を幇助する意思しかなかつたとみるべきであつて、Jがその後継続して右拳銃等
を自宅納屋に隠匿保管して不法に所持していたことについては全く被告人の関知し
ないところであると認められる。このような場合には被告人の幇助犯の罪責はJの
右拳銃等の購入直後の所持の限度すなわち、Jが前記の如くLから右拳銃等を購入
し自宅に持ち帰るまでの不法所持の限度に止まると解すべきで幇助犯が正犯に従属
するといつても本犯の本件犯罪行為は前記認定の通り改正前の犯罪行為と改正後の
犯罪行為とを相合した一個の継続犯であつて、単純一罪ではなく、改正前の犯罪行
為を幇助したに過ぎない被告人に対し幇助の範囲を改正後の本犯の犯罪行為にまで
及ぼして一罪の一部に対する幇助は全部に対する幇助に当るという結論を採用すべ
き限りではないのである。このような極端な従属性説は不当であつて当裁判所は採
ることができない。されば被告人の従犯としての罪責につき、正犯の前記拳銃等の
購入直後の不法所持の限度をこえて、その後の改正後の不法所持についてまで及ぼ
した原判決は法解釈を誤りひいては事実を誤認したものというべく、右認定の相異
は拳銃の不法所持につき旧法三一条を適用するか新法三一条の二を適用するかの差
異を来たすものであるから、右事実誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであ
る。(なお原判決の拳銃不法所持についての前記適条は附則12というのは昭和四
一年法律第八〇号附則12項を指すものとみられ、それによる改正前の銃砲刀剣類
等所持取締法三条、三一条とは昭和四〇年法律第四七号による改正前の旧法三条、
三一条を指し、結局旧法を適用しているとみられるけれども、前記の如き原判示事
実の認定をする以上は新法三一条の二を適用すべきであるとみられるのに特に旧法
を適用すべき根拠を示していない。)更に原判決は前記の如く火薬類である拳銃用
実包の不法所持について火薬類取締法二一条、五九条二号を適用せずに同法一七
条、五九条四号を適用している点においても、法令適用の誤りがあり、この誤りも
判決に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決はこれらの点において原判示第三
の罪について破棄を免れない。そして、原判決は右原判示第三の各罪と他の原判示
第一、第二及び第四の各罪とを併合罪の関係にあるものとして一個の刑を言渡した
ものであるから、他の控訴趣意に対する判断をまつまでもなく、原判決全部は破棄
を免れない。
 よつて、その余の控訴趣意(量刑不当の主張)に対する判断を省略し、刑事訴訟
法三九七条一項、三八〇条、三八二条、四〇〇条但書により原判決を破棄して更に
次のとおり判決することとする。
 原判決が適法に確定した原判示第一、第二及び第四の各事実のほかに原判示第三
の事実に代えて、右事実に関する訴因の範囲内で次の事実を認定する。
 罪となるべき事実
 被告人は昭和三九年二月下旬頃知人Jから拳銃及びその実包の購入斡旋を頼まれ
るや即日その売主である神戸市a区b町c丁目d番地所在バー「K」の経営者Lに
連絡して同人との打合せ場所である同店附近の喫茶店に右Jを連れていつてLに引
き合わせたうえ、右バー「K」に右Jと同行して同人がLから拳銃及び実包を買受
けるについて斡旋して同人をしてLから三二口径自動装顛式拳銃一挺及び同実包約
二五発を買受けさせ、Jにおいて法定の除外事由がないのにその頃右バー「K」か
ら姫路市e区fg番地所在の同人方まで右買受にかかる右拳銃及び実包を不法に所
持するに当り、右同人の犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。
 二 右事実に関する証拠
 原判決が原判示第三につき掲げた各証拠と同一であるから、これを引用する。
 原判示第一及び第二の各所為は各自転車競技法一八条二号、刑法六〇条に、原判
示第四の所為は暴力行為等処罰に関する法律一条に、当審で新たに認定した所為中
拳銃不法所持幇助の点は昭和四一年法律第八〇号附則一二項、昭和四〇年法律第四
七号附則五項による改正前の銃砲刀剣類等所持取締法三条、三一条刑法六二条一項
に、実包不法所持幇助の点は火薬類取締法二一条、五九条二号、刑法六二条一項に
該当し、右拳銃及びその実包の不法所持の各幇助は一個の行為により二個の罪名に
触れる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条により重き拳銃不法所持の罪の
刑に従い、以上の各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、原判示累犯となる前科があ
るから、同法五六条一項、五七条により以上各罪の刑に累犯加重をし、更に右幇助
罪については刑法六三条、六八条三号により従犯の減軽をし、以上は刑法四五条前
段の併合罪であるから同法七四条本文、一〇条により刑重く、犯情最も重い原判示
第二の別表(二)の罪につき定めた刑により法定の併合罪の加重をした刑期範囲内
で被告人を懲役一年六月に処し、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法一八一条一項本
文を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 畠山成伸 裁判官 八木直道 裁判官 神保修蔵)

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