弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、主文第二、三項を取消す。
     控訴人(附帯被控訴人)Aは被控訴人(附帯控訴人)に対し、金一五万
八〇〇〇円およびこれに対する昭和四四年一一月一九日以降右支払済に至るまで年
六分の割合による金員を支払え。
     控訴人(附帯被控訴人)Bは被控訴人(附帯控訴人)に対し、金三一万
三四〇〇円およびこれに対する昭和四四年一一月一九日以降右支払済に至るまで年
六分の割合による金員を支払え。
     訴訟費用は、第一、二審を通じこれを三分し、その一を控訴人(附帯被
控訴人)Aの負担とし、その余を控訴人(附帯被控訴人)Bの負担とする。
     この判決は、被控訴人(附帯控訴人)において、控訴人(附帯被控訴
人)Aに対し金五万円の担保を供するときは主文第二項につき、また控訴人(附帯
被控訴人)Bに対し金一〇万円の担保を供するときは主文第三項につき、それぞれ
仮りに執行することができる。
     原判決中、被控訴人の第二次請求を認容した主文第一項およびこれに対
して仮執行の宣言を付した主文第四項の部分は、当審で第一次請求を認容したこと
により失効した。
         事    実
 控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という)両名代理人は、「原判決主文第
二項を除くその余の部分を取消す。被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人とい
う)の第二次請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」
との判決および「被控訴人の本件附帯控訴を棄却する。」との判決を求め、被控訴
代理人は、「本件控訴を棄却する。」との判決および附帯控訴につき主文第一ない
し第四項同旨の判決ならびに主文第二、三項につき仮執行の宣言を求めた。
 当事者双方の事実上法律上の主張、提出援用した証拠、認否は、つぎに訂正付加
する外は原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。(但し、原判決三枚
目表三行目に「一月」とあるを「一一月」と訂正する)。
 (証拠関係)(省略)
         理    由
 一 被控訴人が建具類の販売を業とする商人であることは当事者間に争いがな
い。
 二 そこでつぎに、被控訴人がその主張の如く控訴人両名にアルミサッシ類を売
渡したか否かについて判断する。
 成立に争いのない甲第二号証、同第五号証の一、二、乙第五、六号証、公務署作
成部分につき成立に争いがなくその余の部分につき原審証人C(第一回)の証言に
より成立の認め得る乙第三、四号証、原審における被控訴人本人尋問の結果により
成立の認め得る甲第一号証、同第三、四号証、原審証人C(第一回)の証言により
成立の認め得る乙第一号証の一、二、同第二号証、原審証人D、同Eの各証言、原
審および当審における証人C(但し、原審は第一、二回)、同Fの各証言、控訴人
B、被控訴人各本人尋問の結果(但し、右証人C、同Fの各証言および控訴人B本
人尋問の結果中、後記信用しない部分は除く)を総合するとつぎの如き事実を認め
ることができる。すなわち、訴外有限会社高橋建設(以下単に高橋建設という)
は、昭和四四年七月三一日、控訴人Bから同控訴人方の鉄骨ブロツク建住宅の新築
工事を代金一一三万円で、また同年八月三〇日、控訴人Bの紹介で、同控訴人を通
じ同控訴人の義兄(実姉の夫)にあたる控訴人A方居宅の増改築工事(天井、壁、
戸障子等の改造工事と風呂場、便所の増築工事)を代金六二万円で、それぞれ請負
い、右各契約締結後間もなくその工事に着工したこと、ところで、右控訴人B方の
新築家屋および控訴人A方の増改築家屋には、アルミサツシの戸やその他の戸障子
を取付けることになつていたところ、控訴人Bが右各契約を締結した後高知市a町
で公衆浴場を営む同業者某を訪れた際、たまたま被控訴人が同所でサツシ戸を取り
つけていたところから、控訴人Bは前記高橋建設に工事を請負わせた家屋にとりつ
けるサツシ戸などを被控訴人から購入しようと考え、その頃自己の名刺(甲第二号
証)を被控訴人に渡すなどして右家屋にとりつけるサツシ戸などの見積方を依頼し
たこと、そこで被控訴人は、その翌日ないし翌々日頃、控訴人B方の家屋新築工事
現場に赴き、同控訴人方に取りつけるサツシ戸などの見積をしたが、その際には主
として控訴人Bがサツシ戸の取りつけ場所やデザインなどを指示し、前記新築工事
を請負つていた高橋建設の代表者である訴外Cは、その場に居合わせなから単に技
術的な助言をしたに過ぎないこと、また被控訴人が控訴人B方に右見積に赴いた
際、控訴人Aから同人方の前記増改築工事の施行につき一切の権限を委任されてい
た控訴人Bは、控訴人Aの代理人として同控訴人方の右増改築家屋に取りつけるサ
ッシ戸なども被控訴人から購入すべく、被控訴人に対し、控訴人A方に取りつける
サツシ戸などの見積も一緒にして欲しいと依頼したので、被控訴人は右同日控訴人
Bと共に控訴人A方に赴き、右サツシ戸などの見積をしたが、その際にも、控訴人
Bがその取りつけ場所などを指示し、訴外Cはその折には被控訴人と共に控訴人A
方へ行くことさえもしなかつたこと、そして被控訴人はその頃かねてから控訴人B
方の事情を知つていた自己の使用人Dに、同控訴人方の信用状態などを確かめ、同
控訴人は公衆浴場を経営していて右浴場組合の副理事長もしており、代金の支払能
力もあることなどを聴取した上、右控訴人B方の新築家屋および控訴人A方の増改
築家屋に取りつけるサツシ戸などを売却することにしたこと、しかして被控訴人と
控訴人Bとの右サツシ戸などの取引の交渉過程において、前記Cは控訴人Bと共に
被控訴人と会つたことはあるが、当時控訴人Bや右Cらから被控訴人に対し、前記
控訴人両名方の新築および増改築工事は、高橋建設が請負つているものであつて、
右サツシ戸類も同会社が購入して取りつけるものであるとの意思表示は全くなされ
なかつたし、またその後被控訴人方で控訴人ら方に納入するサツシ戸などの調達調
整に手間どり、その納入が遅れた際にも、控訴人Bが屡々被控訴人に対し、直接電
話でその納入方の督促をしたこと、一方、被控訴人方では、従来から始めての顧客
と本件の如きかなり多額に上るサツシ類の販売取引をする場合には、事前に買主の
信用調査をするか、或は少なくともその代金の半額程度の支払いを受けてその販売
取引をすることにしていたところ、本件では前述の如き経過から、控訴人B方の前
記新築工事および控訴人A方の前記増改築工事はいずれも同控訴人らの直営工事
(大工等を雇つて工事をすること)であつて、右サツシ戸などの注文者は控訴人ら
であると考え、専ら控訴人Bの信用状態を調査して同控訴人を信頼し、それ以外に
高橋建設の信用調査などは全くすることなく(当時はその存在さえ知らなかつ
た)、右サツシ戸などを売却することにしたものであること、なお、控訴人Aは控
訴人Bの義兄であり、かつ控訴人Bがその代理人として行動していたところから、
控訴人Bを信用し、直接控訴人Aの信用調査などはしなかつたこと、そして、被控
訴人は、その後いずれも代金の支払期を明確に定めることなく、昭和四四年一〇月
二〇日頃から同月三一日までの間にアルミサツシ戸などの戸障子を、代金合計金一
五万八〇〇〇円で、またサツシ小窓を、代金五二二〇円で、それぞれ控訴人Aに売
渡す趣旨の下に、同控訴人方に搬入して引渡し、また同年一〇月二一日から同年一
一月四日までの間にアルミサツシ戸などを代金合計金三一万三四〇〇円で、控訴人
Bに売渡す趣旨の下に搬入して引渡したが、右引渡に際しても、控訴人Aの妻や控
訴人Bらがほとんどその引渡を受けたこと、その後同年一一月になつてから被控訴
人の妻が右サツシ戸などの代金の請求書(甲第一号証、同第四号証、乙第五号証)
を作成して控訴人ら方にその支払請求に赴いたところ、控訴人Aからそのうち乙第
五号証の請求書にあるサツシ小窓の代金五二二〇円のみの支払を受けたこと、とこ
ろが控訴人ら方の前記新築および増改築工事を請負つた高橋建設は昭和四四年一〇
月二九日に倒産し、ついでその後同年一一月五日頃、右高橋建設から被控訴人に対
し、前記被控訴人が控訴人ら方に納入したサツシ戸などの買主は高橋建設であると
して、同月六日開催の同会社の債権者集会に出席するよう通知があつたので、被控
訴人はこれに驚き、突差に前記控訴人ら方に納人したサツシ戸類は控訴人Bらに詐
取されたものであると即断し、直ちに右納入したサツシ戸類を引きあげようとした
が、控訴人Bや警察官らに制止されてこれを取りやめ、その後高橋建設の代表者C
方に赴いて同人と話し合つた結果、同人から右サツシ戸類は高橋建設が注文したも
のではないことの確認を得てその旨記載した甲第三号証の書面の作成交付を受けた
こと、以上の如き事実が認められる。
 しかして以上の如き諸事実に、前記原審証人D、同Eの各証言、原審および当審
における被控訴人本人尋問の結果を総合すると、被控訴人は昭和四四年一〇月二〇
日頃から同年一一月四日頃までの間に、控訴人Aについてはその代理人である控訴
人Bを通じ、控訴人A、同Bの両名に対し、それぞれ被控訴人主張の如きアルミサ
ツシ戸などを前記認定の如き代金で、その支払期を特に定めることなく売渡したも
のというべく、右買主は控訴人両名であつて訴外高橋建設ではないと認めるのが相
当であり、以上の認定に反する原審および当審における証人C(但し、原審は第
一、二回)、同Fの各証言、控訴人B各本人尋問の結果はいずれもたやすく信用で
きず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
 三 してみれば、被控訴人に対し、控訴人Aは前記売買代金一五万八〇〇〇円お
よびこれに対する本件支払命令の送達された日の翌日であることが記録上明らかな
昭和四四年一一月一九日以降右支払済に至るまで商法所定の年六分の割合による遅
延損害金を支払うべき義務があり、また控訴人Bは右売買代金三一万三四〇〇円お
よびこれに対する本件支払命令の送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和
四四年一一月一九日以降右支払済に至るまで商法所定の年六分の割合による遅延損
害金の支払義務がある。
 よつて、被控訴人の附帯控訴に基づき、右売買代金の支払を求める被控訴人の本
訴請求を棄却した原判決部分(主文第二、三項)は不当であるから、民訴法三八六
条により右原判決部分を取消して被控訴人の右第一次請求を認容し、原審および当
審の訴訟費用の負担につき同法九六条八九条九三条を各適用して主文第四<要旨>項
のとおり定め、同法一九六条を適用して主文第四項のとおり仮執行の宣言を付する
こととする。なお、いわゆる請求の予備的併合においては、第一次請求が認
容されることを解除条件として予め予備的に第二次請求の審判を求めるものである
から、第一次請求が認容された場合には、第二次請求は、訴の取下げがあつた場合
と同様に、当然に審判の対象から除かれ、これに対する裁判を要しないものと解す
べきところ(但し、第二次請求について確定的に訴訟係属が消滅するのは第一次請
求を認容した判決が確定したときである)、この理は、第一審で第一次請求が棄却
されて第一次請求が認容されたが、控訴審では第一審判決と異なり第一次請求が認
容された場合にも同様に解すべきである。したがつて、右の如き場合に、控訴審で
第一次請求が認容されたときは、これにより第一審で認容された第二次請求は、当
然にその審判の対象から除かれ、右第二次請求を認容した第一審判決部分は、これ
を取消すまでもなく当然に失効するものと解すべきであり、かつ、かかる場合には
その旨を主文に明記するのが相当である。これを本件についてみるに、原審は被控
訴人の第一次請求を棄却し、第二次請求を認容したが、当審では右第一次請求が認
容されたから、これにより被控訴人の第二次請求を認容した原判決主文第一項およ
びこれに対し仮執行の宣言を付した同主文第四項の部分は当然に失効するものとい
うべきである(したがつて、本件控訴も当然にその対象を失うものというべきであ
る)。よつて、主文でその旨明記することとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 加藤龍雄 裁判官 後藤勇 裁判官 小田原満知子)

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