弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     検察官および被告人の本件各控訴は孰れも之を棄却する。
         理    由
 検祭官福田源一郎および被告人の各控訴趣意は本判決書末尾添附の各控訴趣意書
に記載のとおりであるから、これらについて判断する。
 一、 被告人の控訴趣意の一について
 所論の要旨は、被告人は原判決が有罪に認定した各事実の日時場所において、単
に一般抽象的に、およそ兎角の風評ある者を議員に選出せざるよう聴衆に申したの
みで、それに該当する者は何人であるか氏名を指示しなかつた。故に原判決が被告
人が本件演説により同判示特定人の名誉を毀損したとなしているのは事実誤認なる
旨主張するものである。
 <要旨>然し、演説会場において特に何人を指して批判攻撃しているかの明言をし
なくとも演説の全趣旨および当時の一般的風評等により聴衆をして演説者の
謂う何らか非行ある者とは何人に該当するかを推知せしめるに足る内容の公言をし
たときは、之によつて名誉毀損罪の成立あるものと解するを相当とする。
 而して原判決引用にかかる証人Aその他各証人の供述、証人に対する各尋問調
書、被告人の各供述等を綜合すると、本件選挙演説会場内にいた聴衆約二〇〇名中
の約半数は、被告人が批判の対象とした「町の一番偉い人」「某婦人議員」または
「役員であるa街選出の有力な議員」とは、原判決に謂う如く夫々B、AおよびC
なることを推知できる実状にあつたことを認めるに十分である。故に、被告人の右
演説を以て右三名の名誉を毀損するものと認定した原判決には所論のような事実誤
認の廉あるものではない。
 論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 久礼田益喜 判事 武田軍治 判事 石井文治)

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