弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はいずれもこれを棄却する。
         理    由
 本件各控訴の趣意は記録編綴の検事合志喜生及び被告人Aの弁護人増原改暦、被
告人Bの弁護人、椢原隆一、高橋武夫、原田香留夫、被告人Cの弁護人竹内虎治郎
並に被告人Cの夫々提出に係る控訴趣意書記載のとおりであるからこれを茲に引用
する。
 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 検事の論旨第一点(被告人Cに対する事実誤認)につき原判決引用の各証拠並に
当審において取調べた証拠によれば
 一、 もともと本件において被告人等が原判決摘示の如くDをE方にかくまうに
至つたのは、被告人CがF党某の依頼を受けて被告人Aに右Dの秘匿方を依頼し、
更に被告人Aから被告人Bにこれが秘匿場所の斡旋を依頼し、よつて被告人BがE
に依頼して同人方の二階を借受けて同所にDをかくまつたものであること。
 二、 被告人Cが前記の如くDの秘匿方を依頼した当時、同被告人は秘蔵匿者が
Dであり、且同人は法令により拘禁中、その拘禁を離脱した者であることを知悉し
ていたこと。
 三、 Dは昭和二十七年四月二十九日広島県安佐郡a町、国家地方警察安佐地区
警察署古市巡査駐在所内に爆発物である火焔瓶を投入して破裂発火せしめて放火し
た等の疑により広島地方裁判所裁判官の発した勾留状により同年五月十三日広島拘
置所に勾留せられ、同日午後五時過頃右裁判所第二号法廷において前記被疑事件の
勾留理由開示手続のなされた直後、G外数名により同法廷より奪取せられた者であ
ること。
 四、 前記の事実は当時、H新聞、I新聞等に詳細掲載し報道されており、且被
奪取者の一部は捜索中であることがJ組合寄場においても話題となつていたこと。
 五、 被告人CはF党員で前記J組合の婦人部幹部であり、同党の指事項等につ
き党員その他関係者に対する連絡事務を担当していたこと。
 が夫々窺知し得られるので、これらの点を綜合して考えると、被告人Cにおいて
も被蔵匿者Dが火焔瓶を破裂発火させて放火した犯人として捜査中の者であること
をも知つて同人をかくまつたものであると認めるのが相当であり、この点について
原審は事実の誤認をしていると認むべきである。
 しかしこの事実誤認は原審が認定した被告人Cの本件犯人蔵匿罪の構成要件を充
足するについて、何等消長を来すものでないのみからず、本件の判決に影響を及ぼ
さないことが明かであるから、原判決破棄の理由とはならない。
 同第二点(擬律の錯誤)につき
 爆発物取締罰則に所謂爆発物とは理化学上の所謂爆発現象(非定常燃焼を含む)
を惹起するような不安定な平衡状態において薬品その他の資料が結合している物体
であつて、その爆発作用自体によつて公共の安全を撹乱し、又は人の身体財産を傷
害損壊するに足る破壊力を有するものと解すべきであるが、記録により本件の被蔵
匿者であるDが使用したと思料される所謂火焔瓶は、その構造、装置、作用、威力
等に鑑み、前記罰則に所謂爆発物に該当しない(当裁判所昭和二十七年(う)第八
一〇号事件判決参照)のみならず、本件において爆発物取締罰則第九条の犯人蔵匿
罪が成立するには被告人等において本件火焔瓶が同罰則に所謂爆発物に該当し被蔵
匿者Dが同罰則第一条乃至第五条の罪を犯した者であることの認識を有するか、乃
至は同人が同罰則に所謂爆発物を使用した罪の嫌疑によつて捜査を受けている者で
あることを認識していなければならないと解するところ、記録によれば被告人等に
おいて右Dが所謂火焔瓶を使用した犯人として捜査中の者であることについて、こ
れを認識していたことが認められるけれども、斯る認識を有していたことが、即ち
同罰則に所謂爆発物を使用した犯人として捜査中の者であることの認識を有してい
たものと即断することはできず、記録を精査するも被告人等においてDの使用した
火焔瓶が前記罰則に所謂爆発物に該当するものであつて、同人が右罰則の罪を犯し
た者であること又は斯る犯罪の嫌疑によつて捜査中の者であることを認識していた
と認むべき証拠はないので、原審が被告人A、同Bに対する爆発物取締罰則違反の
訴因を排斥したのは正当であつて、所論の如き擬律の錯誤はなく、又事実の誤認も
ない。 論旨は理由がない。
 被告人Aの弁護人増原改暦、被告人Bの弁護人掴原隆一、同高橋武夫、同原田香
留夫、被告人Cの弁護人竹内虎治郎及び被告人Cの各事実誤認の論旨について。
 当審において取調べた証拠(被告人D外十六名に対する爆発物取締罰則違反等被
告事件の第一、二審判決謄本)によれば、本件被蔵匿者Dは昭和二十七年五月十三
日、広島地方裁判所第二号法廷において裁判官の発した勾留状により広島拘置所に
勾留中の被拘禁者D外三名に対する爆発物取締罰則違反等被疑事件の勾留理由開示
手続が行われ、同日午後五時二十分頃該手続の閉廷が宣せられた直後、G外数名に
よつて前記法廷から奪取せられたものであることが認められる。
 而して犯人蔵匿罪は犯罪の捜査、審判並に刑の執行に関する国家の機能即ち、刑
事司法の運用を妨害する犯罪であつてその目的とするところは犯人及び逃走者を庇
護し以て刑事の裁判、刑の執行を免れしめようとする<要旨>者を処罰するにあるが
故に刑法第一〇三条に所謂拘禁中逃走した者とは法令に基き国家の権力により拘禁
を受けながら、正当の手続によらずして拘禁を脱した者を指称し、自ら故意
に逃走した者のみならず、奪取せられて拘禁を脱した者をも含む法意であるから、
本件の如く裁判官の発した勾留状によつて拘禁せられている者が、奪取せられた
後、その奪取した者でない者がその情を知りながら、被奪取者を庇護者自身の支配
する場所に収容し、その発見、逮捕を妨げるにおいては同条の犯人蔵匿罪を構成す
るものであり、原判決挙示の各証拠を綜合すれば、被告人等は共謀の上、Dを判示
日時、判示場所にかくまつたこと、当時同人が罰金以上の刑に該る罪を犯した者で
あり且拘禁中正当の手続によらずして拘禁を脱した著であることについて、いずれ
もその情を知つていたことを認める証拠十分であつて、原判決には何等採証法則違
反若くは事実の誤認はなく、論旨はいづれも採用できない。
 又原判決が引用している被告人Bの裁判官尋問調書及び副検事に対する供述調書
については、一件記録を通読すればいずれも同被告人の任意の供述を録取したもの
であることが明かであり、この点についての論旨も理由がない。
 検事の論旨第三点(量刑不当)及び被告人Bの弁護人椢原隆一、同高橋武夫、同
原田香留夫、被告人Cの弁護人竹内虎治郎の各量刑不当の論旨について
 本件訴訟記録並に原審及び当審において取調べた各証拠により諸般の事情殊に本
件の被蔵匿者Dが社会治安の任に当る警察職員等に対する報復手段として危険な火
焔瓶を破裂発火せしめる方法によつて放火の罪を犯した者であり且法令により拘禁
中奪取された者であること、被告人等はこれらの事情を知悉しながら組織的、計劃
的な方法によつてこれを蔵匿し、以て司法権の運用を妨げたものであること及び被
告人等夫々の分担行為等を検討すれば、原審の量刑はいずれも相当であつて弁護人
主張の如く不当に重い刑であるとは認められない、しかし検事主張の如く被告人等
に対する原審の刑が原判決を破棄すべき程不当に軽いとは認められない。
 従つて本論旨についての弁護人並に検事の主張はいずれもその理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条に従い本件控訴はいずれもこれを棄却すべきも
のとし主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 柳田躬則 判事 高橋英明 判事 石見勝四)

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