弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人江村高行同河合信義の上告趣意第一点。
 原審公判調書によれば、原審は、昭和二四年九月二日第一回公判を開いた後、引
き続き一五日以上開廷しないで同年一〇月二一日公判手続を更新することなく、第
二回公判を開いて審理を行つたことは、所論のとおりである。しかし、刑訴規則施
行規則(昭和二三年最高裁判所規則三四号)第三条第三号によれば、本件のような
旧刑訴事件においては右のような場合においても、裁判所が必要と認める場合に限
り公判手続を更新すれば足りるものであつて、右規則は、直接には刑訴施行法一三
条の規定の委任に基き且つ憲法七七条による最高裁判所本来の権限内で制定された
適法合憲のものであることは、当裁判所の判例の示すとおりであるから右規則に則
り更新を必要と認めないでした原審の手続には所論のような違法はない。
 論旨は、理由がない。
 同第二点。
 しかし、原判決は、昭和二一年六月一九日以降翌年四月一六日迄の間の被告人の
麻薬を所持した行為を認定処罰したものであつて、麻薬取締規則五九条による報告
義務に違反し、又は、同規則六一条による売渡義務に違反したものとして刑事責任
を追及したものではない。そして、仮りに麻薬取締規則の施行された昭和二一年六
月一九日までの麻薬の所持が適法であつたとしても、原判決の認定したように被告
人は麻薬取扱者の免許を受けない者であつたのであるから、同日以後の所持を適法
ならしめる理由はないし、また、同規則四二条は、その一号乃至四号の者だけを除
外しているに過ぎないから、更に同規則施行以前の所持者をも除外すべしとする所
論は何等の根拠がない。それ故所論は到底採用できない。被告人Bの弁護人寺田四
郎同吉岡秀四郎の上告趣意第一点。
 論旨の理由のないことは、被告人Aの弁護人等の前記上告趣意第一点に対する判
断のとおりである。
 同第二点
 しかし、原判決は、被告人が麻薬取扱者の免許を受けないに拘らず判示期間判示
麻薬を判示のごとく所持し且つ使用した事実を認定し、その所為は、麻薬取締規則
四二条又は二三条の違反し同規則五六条に該当するものとしたのである。そして、
所論のごとき事情のある者であるというだけで右規定の適用から除外される理由と
はならないから、所論は到底採用することを得ないものといわねばならない。
 なほ、昭和二五年七月四日及同年同月五日附の被告人Bの弁護人寺田四郎同吉岡
秀四郎の各上告趣意書は、回提出期間経過後に提出せられたものであるから、これ
に対して判断を加えない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に則り主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 堀忠嗣関与
  昭和二七年一二月二五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
 裁判官沢田竹治郎は退官につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎

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