弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A、弁護人神浦静夫及び同小田泰三の上告趣意は末尾添付の別紙書面記載
の通りである。
 被告人Aの上告趣意について。
 所論は縷々述べてはいるが、結局事実誤認の主張に帰するから、適法な上告理由
に当らない。
 弁護人神浦静夫の上告趣意第一点について。
 原判決が論旨の指摘するような事実摘示をしていること及び原審相被告人Bが昭
和二三年二月一〇日予審判事に対し、論旨に指摘するような供述をしていることは、
いずれも所論の通りである。しかし、原判決は、その事実摘示第一及び第二を認定
するに当り、Cの創傷の部位程度並びに死亡の原因の点を除いた部分を認める一資
料として、Bに対する予審訊問調書中の前記供述記載を摘記しているし、又右Cの
創傷の部位程度並びに死亡の原因を認める資料として鑑定人D作成の鑑定書中の記
載を摘記しており、それによると「Cの死体中右乳嘴部に………創傷あり」と記載
されている。これ等の証拠説明と犯人が短刀で他人を突刺す場合右側から相手の左
胸部を突刺すが如きは、極めて稀有で、而も一般に容易でないこととを考量すると、
原判決の事実摘示に左胸部と記載してあるのは、明らかに右胸部の誤記であること
が認められる。従つて、原判決のかかる誤記を捉えて、同判決に審理不尽に基づく
事実の誤認があると主張するのは当らない。
 同第二点について。
 しかし、原判決の確定した事実は、被告人等が共謀の上、地下足袋の売却に名を
藉り、船で、買主又は仲介人を、海上に誘い出し、所持金を強取しようと計画し、
その役割を定めた上、先づ仲介人Cを海上に連れ出し、これを脅迫したが、同人に
所持金がなかつた為め、其の目的を遂げず、次いで買主Eから金員を強取しようと
言うことになつたが、それには同人とCとの連絡を断つて置く必要があると言うこ
とで、同人を船縄で縛つて附近の海岸に上陸させ、猿轡を施し、原審相被告人Bを
監視人につけて置き、Eを海上に連れ出そうと試みたけれども、同人においてCが
海上に連れて行かれたまま帰えつて来ず、且つ夜おそく誘い出しに来たことに疑念
を抱いた為め、Eを連れ出すこともできなかつたが、他方、海岸でBから監視され
ていたCが猿轡を解いて貰い、偶々附近海上を航行中の漁船を見て、大声で救助を
求めたので、BはここでCが救助されては、折角のEに対する金員強取の計画も水
泡に帰すると考え、突嗟に所携の切出型短刀でCの右胸部を突刺し、同人を出血死
に致らしめたというに在つて、その謀議の内容に伸縮二段構えの二個の行為を含ん
でいたことやBに殺意があつたことは原判決の認定していないところである。そし
て、原判決の認定した右事実はその挙示する証拠によつてこれを認めることができ
るし、なおこの認定が実験則に反すると言うこともできない。又、原判決はB、従
つて被告人等の、Cに対する所為を共謀による単純殺人罪(刑法第一九九条)と認
定したのではなく、共謀による強盗致死罪(同第二四〇条後段)と認定したもので
ある。そして、この強盗致死罪は、いわゆる結合犯であり、結果犯であつて、強盗
犯人が、強盗を為す機会において、暴行の結果他人を死に致すことによつて成立す
る罪であり、殺意の有無はこれを問わない(昭和二四年(れ)第五六二号、同年五
月二八日第二小法廷判決、同年(れ)第一〇一二号、同年七月一四日第一小法廷判
決参照)。又、共犯の場合、強盗共犯者間に、被害者に対し死の結果を与えること
につき、意思の連絡がなくても、強盗の実行中、共犯者の一人が被害者に暴行を加
えて、死の結果を生ぜしめたときは、共犯者全員につき、強盗致死の罪が成立する
(昭和二四年(れ)第一三二九号、同年一二月一〇日第二小法廷判決、昭和二三年
(れ)第七二〇号、同年一一月四日第二小法廷判決参照)。本件は、被告人等がC
から金員を強取することを共謀し、役割を定めて、これを実行し、共犯者の一人で、
強盗の身分を持つた第一審相被告人Bが、強盗の機会において行つた暴行の結果、
Cを死に致したというのであるから、単にBだけでなく、強盗の共謀を為した被告
人等全員につき強盗致死の罪が成立すると言わなければならない。所論は、これと
異る見地に立ち、原判決の採用しない証拠に基づいて、其の事実認定を非難するに
帰着し、理由がない。
 同第三点について。
 原判決がその事実摘示第二の事実を認定する一資料として、論旨の指摘する予審
訊問調書中の供述記載を摘記していることは所論の通りである。しかし、原判決は、
これによつて第一審相被告人Bに殺意があつたことを認めた訳ではなく、又その所
為に対し殺人罪の規定を適用してもいない。同判決は、Cの死の結果は、Bが強盗
の機会において行つた暴行により惹起されたものとして、同人の行為を共謀に基づ
く強盗致死と見、これに刑法第二四〇条後段を適用しているのである。そして、そ
の認定及び擬律が必らずしも不当でないことは既に第二点において判断した通りで
ある。所論は、原判決の誤解に基づく議論であつて、採用することができない。
 同第四点について。
 所論は「不公平」という言葉を用いてはいるが、憲法第一四条第三七条第一項違
反の主張をしている訳ではなく、単なる量刑不当の主張に過ぎないものと認められ
るから、適法な上告理由ということはできない。
 弁護人小田泰三の上告趣意第一点について。
 しかし、本件はいわゆる旧法によつて処理された事件である。従つて、国選弁護
人に支給する日当等は旧刑訴法にいわゆる訴訟費用の中に含まれない(刑訴施行法
第一五条第一項第一号及び同法律による改正前の刑事訴訟費用法第一条参照)。さ
れば、原判決が「当審に於ける訴訟費用は全部被告人Fの負担とする。」としてい
るからとて、所論の国選弁護人に支給した日当等までも被告人に負担せしめたもの
ということはできない。原判決は、唯だ、その主文を簡潔にする為めに、所論の様
な語句を用いたまでで、その趣旨とするところは、「当審の各証人に支給した費用
は全部被告人Fの負担とする」という意味に解すべきである。このことは、原審が
分離して判決したGに対する判決においては、前記費用を同人に負担せしめていな
いことからも容易に察知できるところである。所論は、旧刑訴法における訴訟費用
を新法におけるそれと混同した議論であつて、採用し難い。
 同第二点について。
 これは、弁護人神浦静夫の上告趣意第一点と同趣旨である。従つて、これに対す
る判断は、右趣意につき記載したところと同一である。
 同第三点について。
 原判決は、その事実摘示第二の事実につき、強盗未遂の規定(刑法第二三六条第
二四三条第六〇条)と強盗致死の規定(刑法第二四〇条後段第六〇条)を適用して
いる。しかし、右事実中には、被告人等のCに対する所為とEに対する所為とが含
まれている。そして、被告人等のCに対する所為が、強盗致死罪に当ることは、既
に弁護人神浦静夫の上告趣意第二点に対する判断の際に記載した通りである。従つ
て、原判決は、被告人等のEに対する所為につき強盗未遂の規定を適用したもので
あると為す所論も一応尤もな議論である。しかし、被告人等のEに対する所為は、
僅に相手を海上に連れ出そうと試みたに止まり、未だその連れ出しにすら成功しな
かつた行為である、これに強盗の実行の著手があつたことを認めるのは無理であり、
又これを認めるに足る特段の事情もない。従つて、原判決が、被告人等のEに対す
る所為につき、強盗未遂の規定を適用したと言うのは早計である。それは、原判決
が、(被告人には関係がないことになつているけれども)既に海上えの連れ出しに
成功しており、その行為の程度、発展段階において被告人等のEに対する行為より
も、遙かに進んでいると認められる相被告人A等のHに対する原判決事実摘示第一
の所為につき、強盗の実行の著手を認めず、強盗予備の規定(刑法第二三七条第六
〇条)を適用していることと対照すれば、一層明らかである。尤もそうなると、原
判決は被告人等のCに対する所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した
ことになり、結果犯乃至結合犯の法理と牴触し、擬律違背の問題を生ずる。しかし、
原判決はこの両罪に連続犯の規定を適用し、結局強盗致死の一罪として処断してい
るから、先きの擬律違背は、未だ判決に影響を及ぼさないものとして、原判決を破
棄すべき理由とはならないものと認める。
 同第四点について。
 これは、弁護人神浦静夫の上告趣意第二点と同趣旨に帰着する。従つて、これに
対する判断も右趣意につき記載したところと同一である。
 よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴法四四六条に従い、主文の通り判決する。
 この判決は全裁判官一致の意見である。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二五年一一月一七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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