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平成17年6月30日判決言渡同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(ワ)第3697号,同第4834号 著作権侵害行為差止等請求各事件
(以下,前者の事件を「甲事件」,後者の事件を「乙事件」という。)
口頭弁論終結の日 平成17年6月22日
           判        決
           主        文
1 被告は,原告に対し,金56万円及びうち4万円に対する平成16年11月1
日から,うち52万円に対する平成17年2月3日から各支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,甲,乙両事件を通じて5分し,その4を原告の,その余を被告の
各負担とする。
4 この判決は,原告勝訴の部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 原告の請求
1(甲事件)
被告は,原告に対し,85万7500円及びこれに対する平成16年11月1日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2(乙事件)
被告は,原告に対し,630万円及びこれに対する平成17年2月3日から支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,別紙目録1及び2記載の各バナー(以下,別紙1記載のバナーを「本件バ
ナー1」,別紙2記載のバナーを「本件バナー2」といい,これらを併せて「本件
各バナー」という。)の著作者であると主張する原告が,本件各バナーを原告に無
断でコピーした上,公衆送信した被告に対し,著作権侵害に基づく損害賠償請求と
して,本件バナー1については85万7500円(甲事件),本件バナー2につい
ては630万円(乙事件)及びこれらに対する不法行為の後の日(本件バナー1に
ついては平成16年11月1日,本件バナー2については平成17年2月3日)か
ら各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠により容易に認定できる事実等)
(1) 当事者
ア 有限会社アイコムは,平成16年2月26日,それまでA(以下「A」とい
う。)及びB(以下「B」という。)の両名が行っていた,インターネット上に開
設するウェブサイト等を利用したいわゆる出会い系サイトに関する情報提供事業な
どを目的とし,両名の有する営業に関する全権利を承継して,設立された。
その後,有限会社アイコムは,平成17年2月17日,同様の業務を目的とする原
告に組織変更され,A及びBの両名が代表取締役に就任した。
イ被告も,インターネット上に開設するウェブサイトを利用して出会い系サイト
に関する情報等を提供することなどを業としている。
(2) 本件各バナーの作成等
AとBは,有限会社アイコムの設立前である平成15年6月ころ,「アイコム」の
屋号をもって,「出会いDB(出会い学校)」という名称のウェブサイト(以下
「原告サイト」という。)を開設し,これを運営する共同事業を始めたが,その
際,Aが作成した本件バナー1を原告サイト内に掲載し,インターネットを通じて
公衆送信した(甲A4の1)。
さらに,有限会社アイコムは,平成16年3月14日ころ,Aが同社の事業のため
に作成した本件バナー2を原告サイトに掲載し,インターネットを通じて公衆送信
した(弁論の全趣旨)。
(3) 被告による本件各バナーの使用
ア 被告は,平成16年5月ころから,被告が開設した「デアッチャマン」という
名称のウェブサイト(以下「被告サイト1」という。)において,有限会社アイコ
ムの承諾を得ることなく複写した本件バナー1を掲載して使用し,インターネット
を通じて公衆送信していたが,6か月を経過した同年10月ころ,これを削除し
た。
イ 被告は,さらに,次のとおり,被告開設の各ウェブサイト(以下,被告サイト
1を含めて「被告各サイト」と総称する。)において,有限会社アイコムの承諾を
得ることなく複写した本件バナー2を掲載して使用し,インターネットを通じて公
衆送信していたが,平成16年12月22日,これらの掲載を削除した(乙4の1
7ないし27,弁論の全趣旨)。
(ア)「出会いの虎」(以下「被告サイト2」という。)
       平成16年8月から
(イ)「パンパンマン」(以下「被告サイト3」という。)
           平成16年10月から
(ウ)「出会っちゃお」(以下「被告サイト4」という。)
          (なお,後記の通り,使用開始時期については争いがあ
る。)
(4) 本件各バナーの構成と著作物性
ア 本件バナー1
本件バナー1は,別紙1のとおり,全体が横長の長方形であって,その中に「サク
ラをサクッと見分けよう!!」という文章が記載され,そのうち「サクラ」の部分は
濃いピンク色により,「をサクッと見分けよう!!」の部分は緑色により,それぞれ
彩色されている。文章以外の地の部分は,全体の外枠を濃いピンク色の線によって
囲み,その少し内側に白色の細い線を施しているほかは,淡いピンク色によって彩
色されている。
そうすると,本件バナー1は,言語と美術の複合的著作物である。
イ 本件バナー2
本件バナー2は,次のとおり,写真及び言語の複合的著作物である。
(ア) 本件バナー2は,別紙2のとおり,ベッドに座った女性の写真(5コマ)と
ピンクの服を着た女性の顔写真(4コマ)によって連続的に構成されている横長の
長方形の動画バナーである。
(イ) ベッドに座った女性の写真(5コマ)は,ベッドに座った女性を頭から足に
向かって順次アングルを動かして撮影したものであり,5コマ目のアングルは膝下
からのものとなっている。なお,1コマ目には,中央付近に横書き赤字で「セフレ
BANK」という広告サイト名が記載されている。
(ウ) 6コマ目以降は,女性の顔写真の横に,順次白字で「誰にも言えない」(顔
の右側),「恥ずかしいことも」(顔の左側),「おねだりして」(顔の右側),
「いいですか?」(顔の左側)という台詞を付し,台詞の背景の一部分(バナーの
左右の上角)に紫色を配色している。
(5)本件各バナーの機能
ア 本件バナー1
インターネット利用者が,原告サイト又は被告サイト1に掲載されている本件バナ
ー1をクリックすると,第三者の相互サイトである
http://www.freepe.com/i.cgi?itachigokkoにリンクするが,これによって,原告
(ないし,その前身である有限会社アイコム,さらには,A及びB)又は被告が広
告料等を受け取ることはない。
イ 本件バナー2
インターネット利用者が,原告サイト及び被告サイト2ないし4に掲載されている
本件バナー2をクリックすると,株式会社メディカム(以下「メディカム」とい
う。)が開設・運営する,セフレ(セックスフレンド)募集を目的とした「セフレ
バンク」という出会い系サイトにリンクするところ,原告及び有限会社アイコム並
びに被告は,それぞれ,メディカムとの間で,広告掲載契約を締結し,広告料の支
払を受けている。
2 本件の争点
被告が本件各バナーを使用したことによる原告の損害額
(1)被告サイト4において本件バナー2の使用を開始した時期についての自白撤回
の可否
(2) 著作権法114条2項による損害額推定の可否
(3) 同条3項による使用料相当額
(4) 同法114条の5に基づく損害額
(5) 慰謝料請求の可否
(6) 弁護士費用額
3 争点に関する当事者の主張
  (原告の主張)
(1) 被告サイト4において本件バナー2の使用を開始した時期についての自白
撤回の可否
    被告は,当初,平成16年8月及び9月についても,被告サイト4におい
て本件バナー2を使用していた事実を自白していたところ,この自白の撤回は,真
実に反し,許されない。すなわち,被告は,請求書(乙4)と陳述書(乙5)を提
出するが,これらは,明らかに虚偽の内容のメールをメディカムに依頼するなどの
被告の訴訟追行態度に照らし,信用できない。
(2) 著作権法114条2項による損害額推定の可否
ア 本件バナー1について
被告は,Aが作成し,有限会社アイコムが著作権を有していた本件バナー1を盗用
することにより,少なくとも本件バナー1の制作費用相当額である15万7000
円の利益を受けたところ,被告の受けた同利益が,原告がその地位を承継した有限
会社アイコムの損害と推定される。
この点について,被告は,原告主張額の15万7500円が高額にすぎると主張
し,これに沿うものとして乙1号証の1及び乙2号証の1を提出するが,これら
は,すでに本件バナー1のデザインが存在することを前提として電子データ化する
場合の見積りであって,デザイン考案から制作に至るまでを対象とした見積りでは
ない。しかも,被告は,上記見積りを依頼するに当たって,安い見積りが欲しいと
の希望を述べており,信用できるものではない。デザインの考案から制作するに
は,リンク先サイト名だけではなく,原告サイト全体のイメージやバナー掲載ペー
ジのイメージにも適合するようデザインする必要があり,最低限15時間程度は必
要である。
また,被告は,1時間程度の作業であるから,制作費用は5000円を超えない旨
主張しているが,趣味のレベルではなく,営利団体としての企業が請け負う場合に
は,直接間接の経費を要し,打合せ等の時間も必要であるから,単純に作業時間と
その人件費だけで制作費が決まるわけではない。本件バナー1は,確かにバナーと
しては最少の大きさであるが,小さい領域に必要な情報を分かりやすく織り込むこ
とは,かえって難しい作業である。
イ 本件バナー2について
(ア) 有限会社アイコムは,原告サイトにおいて,平成16年3月1日から同月1
3日までの間,セフレバンクのバナーとして,メディカムから提供されたものを利
用していたが,同月14日から,本件バナー2に交換したところ,交換前の平均ク
リック数が1日当たり1431回であったのに対し,交換後のそれは2121回と
48パーセントも増加した。
そうすると,本件バナー2の広告としての寄与率は,次の計算式のとおり,少なく
とも30パーセントは下らない。
48%/148%=0.324(以下切り捨て)
(イ) 被告は,メディカムとの間で,被告サイト2ないし4のそれぞれにつき,1
か月各100万円は下らない金額の広告料を受け取る広告掲載契約を締結してい
る。そうすると,被告サイト2ないし4における本件バナー2の使用期間は,被告
サイト2につき平成16年8月から平成17年1月までの6か月間,被告サイト3
につき平成16年10月から平成17年1月までの4か月間,被告サイト4につき
平成16年8月から平成17年1月までの6か月間となり,次の計算式のとおり,
その利益は480万円を下らない。
100万円×0.3×(6+4+6)=480万円
(ウ) 仮に,被告が,メディカムとの間で,一定数のクリックが行われた場合に広
告料が支払われるクリック保障形式で契約を締結しているとすれば,本件バナー2
の顧客誘引力が,クリック数の維持向上に多大な貢献をしていることは明らかであ
り,被告は,本件バナー2がなければ,メディカムとのクリック保障形式による契
約での広告料の利益を受けることはできないから,少なくとも30パーセントを下
らない寄与率で,被告の広告料収入に貢献している。
  そうすると,被告が,メディカムとの間で,クリックに比例する契約を締結し
ている場合には,次のとおり,被告の利益相当額である576万円が原告の損害額
となる。
a クリック数を基準とする出会い系サイトの広告料は,通常1クリック当たり5
0円が相場であり,被告における契約でも40円を下らない。
b 被告は,被告サイト2ないし4のそれぞれにつき,本件バナー2の使用により
1日当たり少なくとも1000クリックの成果を上げている。
c 本件バナー2の広告としての寄与率は30パーセントを下らない。
d そうすると,被告が本件バナー2で得た利益は,次の計算式のとおり,576
万円を下らない。
40円×1000クリック×0.3×30日×(6+4+6)
       =576万円
(3) 著作権法114条3項による使用料相当額
被告が有限会社アイコムに無断で本件各バナーを使用した経緯を考慮すれば,その
使用料相当額は,本件バナー1については1か月当たり1万円,本件バナー2につ
いては1か月当たり20万円を下らない。
そうすると,被告は,本件バナー1を遅くとも平成16年5月ころから同年10月
ころまでの約6か月間,本件バナー2を3つのサイトで延べ16か月間,それぞれ
無断で使用したのであるから,使用料相当額は,少なくとも,本件バナー1につい
ては6万円,本件バナー2については320万円となる。
(4) 著作権法114条の5に基づく損害額
本件各バナーの無断使用による損害額について認定が困難な場合には,著作権法1
14条の5に基づく相当な損害の認定を求める。
(5) 著作者人格権の侵害による慰謝料
有限会社アイコムは,被告によって本件各バナーを故意に無断使用されたことによ
って,著作者人格権を侵害され,多大な精神的損害を被った。かかる有限会社アイ
コムの精神的損害を慰謝すべき慰謝料は,本件バナー1について30万円,本件バ
ナー2について90万円を下らない。
この点について,被告は,法人について慰謝料請求権は認められない旨主張する
が,法人も社会的実在であるから,人格権を有し,その侵害について差止めや無形
損害について慰謝料等の損害賠償を請求できることについて,自然人との差異はな
い。
(6) 弁護士費用相当額
原告は,被告による著作権侵害行為の差止め及び損害賠償請求のために,弁護士で
ある原告代理人に委任して本訴を提起することを余儀なくされたところ,被告が賠
償すべき弁護士費用は,甲事件について40万円,乙事件について60万円を下る
ことはない。
 (被告の主張)
原告の主張は争う。
(1) 被告サイト4において本件バナー2の使用を開始した時期についての自白
撤回の可否
被告は,平成16年8月ころから,被告サイト4において本件バナー2を
原告の承諾を得ることなく使用したことを認めたが,これは,真実に反する陳述で
あり,錯誤に基づくものであるから,撤回する。
    すなわち,被告は,多数のサイトを運営しており,被告サイト4の開始時
期について正確な記憶も記録もなかったが,原告には明確な証拠があるものと考え
て自白した。しかし,メディカムにおいて保管されていた被告からの請求書によれ
ば,被告サイト4について平成16年8月分と9月分の記載はなく,そのころ被告
サイト4は存在していないのであるから,平成16年8月と同年9月については,
被告サイト4において本件バナー2を使用したとの自白を撤回し,この期間の使用
について否認する。
(2)著作権法114条2項による利益相当額について
ア 本件バナー1について
本件バナー1の制作費相当額が15万7500円であることは否認する。消費税込
みでもこれが5250円を超えることはない。文章の長さ,バナーの大きさ等から
みて,別途,考案料,デザイン料が必要であるとしても,数万円程度である。
また,原告は,本件バナー1を作成するのに最低限15時間を要したと主張する
が,常識的ではない。このように短く,小さく,営業上のメリットも大きくない1
個のバナーの制作に15時間も要するようであれば,経営が成り立たない。しか
も,外注した場合の金額(算定根拠も明らかでない。)をもって,自ら制作した場
合の制作費相当額と評価するのは明らかに無理がある。
イ 本件バナー2について
被告は,本件バナー2を公衆送信していた期間,メディカムとの間で,次のとおり
の内容の広告掲載契約を締結しており,クリック数が増加したからといって,受け
取る広告料が増えるものではない。
(ア) 被告サイト2
      平成16年 8月  15万円
      同年    9月  15万円
      同年   10月  15万円
      同年   11月  15万円
      同年   12月   9万円  
(イ) 被告サイト3
      同年   10月  11万3230円(日割り計算,27日分)
      同年   11月  無料
      同年   12月   9万円  
(ウ) 被告サイト4
      同年   10月  13万円
      同年   11月  13万円
      同年   12月  13万円
(3) 著作権法114条3項による使用料相当額について
本件バナー1の使用料相当額が月1万円であること,本件バナー2の使用料相当額
が20万円を下らないことはいずれも否認する。このような事例は見当たらず,算
定根拠に乏しい上に,バナーの使用料相当額が,当該サイトの広告料を上回ること
は常識,経験則に反する。
(4) 著作権法114条の5に基づく損害額について
著作権法114条の5に基づく損害額の認定に当たり,本件各バナーに,高度な芸
術性や顧客誘引力があるわけではないことを考慮すべきである。
(5) 慰謝料について
法人が社会的実在であっても,精神的損害を被るものではないから,慰謝料が発生
する余地はないが,仮に慰謝料が生じ得るとしても,その金額が本件バナー1につ
いて30万円であること,本件バナー2について90万円であることはいずれも否
認する。前者の30万円は,本件バナー1の制作費が原告主張によっても15万7
500円であることからみても過大である。また,本件バナー2を掲載したサイト
が3つであっても,侵害行為は1個と評価すべきである。
(6) 弁護士費用について
原告の主張額は過大である。
第3 当裁判所の判断
1被告サイト4において本件バナー2の使用を開始した時期についての自白撤
回の可否について
   被告は,当初,平成16年8月ころから被告サイト4における本件バナー2
の使用を開始した旨認め自白していたが,その後,撤回している。この点につい
て,原告は,異議を述べるが,証拠(乙4の17ないし27)によれば,被告サイ
ト4が平成16年9月までは存在していなかったと認められるから,上記自白は,
真実に反し,錯誤に基づくものであると認められる。
2 著作権法114条2項による損害額の推定について
著作権法114条2項は,「著作権者……が故意又は過失によりその著作権…を侵
害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において,
その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,当該著
作権者……が受けた損害の額と推定する。」と定めているところ,同項は,著作権
侵害行為によって得た利益をもって著作権者が受けた損害額と推定するにとどま
り,損害の発生自体を推定するものではない。
ところで,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,本件各バナーは,原告及び被
告の開設に係る各サイトに掲載された長方形状のグラフィック表示であって,その
サイトにアクセスして開いた人が,サイト内の本件各バナーをクリックすることに
よって別のサイトが開くものであること(そのサイトを開設している者との間で広
告掲載契約が締結されている場合には,広告料収入を得ることができる。),した
がって,被告各サイトに本件各バナーが掲載されて公衆送信されても,本件各バナ
ーそれ自体が受信複製物として利用価値を有するものではなく,現に,原告サイト
及び被告各サイトのいずれにおいても,本件各バナー自体をアクセスした人等に有
料で利用させているものではないこと,しかも,原告サイト及び被告各サイトを開
いて初めて,そこに掲載された本件各バナーを認識することが可能であること,以
上の事実が認められる。
そうすると,被告が,被告各サイトにおいて,本件各バナーを掲載することにより
公衆送信したからといって,原告サイトにアクセスする人数や原告サイトに掲載さ
れた本件各バナーのクリック数が減少するという関係を認め難いから,得べかりし
利益喪失による有限会社アイコムの損害発生はあり得ず,したがって,本条2項を
適用する余地はないと解するのが相当である。
3 著作権法114条3項による使用料相当額について
(1) 前記前提事実に証拠(甲A4の1,A5ないし7,甲B2ないし12,乙1の
1・2,2の1・2,4の1ないし27,5)及び弁論の全趣旨を総合すると,
ア 本件バナー1は,原告代表取締役であるAがデザインして創作したこと,同人
は,その製作に約15時間を要したと述べていること,88(ピクセル)×31
(ピクセル)サイズのバナーの制作費(デザイン及び制作を含む)一式で15万円
(消費税別)である旨の原告提出に係る見積書が存在するが,これには,どのよう
なバナーであるかは明記されていないこと,他方,被告は,バナーの制作費(デザ
イン費用を含まない。)が3500円ないし5000円(いずれも消費税別)であ
る旨の見積書を提出しているが,少なくとも1つの業者に対して見積りを依頼した
際,被告は少額であれば望ましい旨の希望を申し述べていること,
イ 本件バナー1は,別紙1のとおり,全体が横長の長方形であって,その中に
「サクラをサクッと見分けよう!!」という文章が記載され,そのうち「サクラ」の
部分は濃いピンク色により,「をサクッと見分けよう!!」の部分は緑色により,そ
れぞれ彩色されていること,文章以外の地の部分は,全体の外枠を濃いピンク色の
線によって囲み,その少し内側に白色の細い線を施しているほかは,淡いピンク色
によって彩色されていること,
ウ 本件バナー2は,別紙2のとおり,ベッドに座った女性の写真(5コマ)とピ
ンクの服を着た女性の顔写真(4コマ)によって連続的に構成されている横長の長
方形の動画バナーであること,ベッドに座った女性の写真(5コマ)は,ベッドに
座った女性を頭から足に向かって順次アングルを動かして撮影したものであり,5
コマ目のアングルは膝下からのものとなっており,1コマ目には,中央付近に横書
き赤字で「セフレBANK」という広告サイト名が記載されていること,6コマ目
以降は,女性の顔写真の横に,順次白字で「誰にも言えない」(顔の右側),「恥
ずかしいことも」(顔の左側),「おねだりして」(顔の右側),「いいです
か?」(顔の左側)という台詞を付し,台詞の背景の一部分(バナーの左右の上
角)に紫色を配色していること,
エ原告サイト及び被告サイト1から,本件バナー1をクリックすると,第三者の
相互サイトであるhttp://www.freepe.com/i.cgi?itachigokkoにリンクするが,これ
によって,原告(ないし,その前身である有限会社アイコム,さらには,A及び
B)又は被告が広告料等を受け取ることはないこと,
オ 本件バナー2は,セフレ募集を目的とした「セフレバンク」という出会い系サ
イトの広告のためのリンクバナーであり,原告及び被告は,それぞれ,同サイトを
開設運営しているメディカムとの間で,広告掲載契約を締結しているところ,被告
は,次のとおり,月決めの広告料(合計128万3230円)の支払を受けている
が,被告自身は,他と比較して低廉であると考えていること,
(ア) 被告サイト2
      平成16年 8月  15万円
      同年    9月  15万円
      同年   10月  15万円
      同年   11月  15万円
      同年   12月   9万円  
(イ) 被告サイト3
      同年   10月  11万3230円(27日分の日割計算)
      同年   11月  無料
      同年   12月   9万円  
(ウ) 被告サイト4
      同年   10月  13万円
      同年   11月  13万円
      同年   12月  13万円
カ有限会社アイコムは,平成16年3月1日から同月13日までの間,セフレバ
ンクのバナーとして,メディカムから提供されたものを掲載していたが,同月14
日から本件バナー2に交換したところ,交換前の平均クリック数が1日当たり約1
431回であったのに対し,交換後のそれは2121回と約48パーセントも増加
したこと,
以上の事実が認められる。
(2) 前記認定事実によれば,本件バナー1については,その制作費見積額,バナー
の形状・機能,これ自体によって利益が発生するものではないこと,被告による侵
害状況,侵害期間が約6か月間であること等を総合考慮すれば,原告が著作権の行
使について受けるべき金銭の額は,総額で3万円であると認めるのが相当であり,
本件バナー2については,そのバナーの形状・機能,収入状況,侵害状況,延べ侵
害期間が約11か月間であること等を総合考慮すれば,原告が著作権の行使につい
て受けるべき金銭の額は,総額で44万円と認めるのが相当である。
4 慰謝料について
法人については,一般に,不法行為による精神的苦痛を想定することができないこ
とから,慰謝料請求権の発生を観念することは困難というべきである。もっとも,
法人についても,信用毀損による無形の損害の賠償請求権を肯定することはあり得
るが,本件においては,被告の著作権侵害行為によって,有限会社アイコムの信用
が低下したことを認めるに足る証拠はない。
5 弁護士費用について
原告が,本訴の提起,遂行のため,弁護士である原告代理人に訴訟委任したことは
記録上明らかであるところ,本訴請求の認容額,原・被告の主張立証状況,本訴提
起によって被告が本件各バナーの使用を中止したこと,その他本件に顕れた一切の
事情を考慮すると,被告の著作権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用
としては,甲事件について1万円,乙事件について8万円とするのが相当である。
6 結論
よって,原告の本訴各請求は,被告に対して合計56万円及びうち4万円に対する
平成16年11月1日から,うち52万円に対する平成17年2月3日から各支払
済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,そ
の余については失当として棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条
を,仮執行の宣言につき同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決す
る。
   名古屋地方裁判所民事第9部
         裁判長裁判官  加 藤 幸 雄
            裁判官  舟 橋 恭 子
            裁判官  片 山 博 仁

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また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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