弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人等弁護人浅野昇上告趣意第一点について。
 しかし憲法第三七条第一項の規定は、偏頗でない公平な組織構成を有する裁判所
の迅速な公開裁判を受ける権利を被告人に与えたに過ぎないもので、裁判所に対し
所論のごとき義務を負担せしめた規定ではない。また憲法はその第三八条第一項に
おいて「何人も自己に不利益な供述を強要されない」と規定して、被告人にいわゆ
る黙祕の権利あることを認めているが、所論のごとく裁判所に対し、訊問の事前に
その権利あることを被告人に告知理解せしめ置かねばならぬ手続上の義務を命じて
いないのである。それ故かような手続を執らないで訊問したからと言つて所論のよ
うに被告人の供述を強要し又は裁判手続に違憲ありと言い得ない。論旨はその理由
がない。
 第二点について。
 裁判所は事件に対し予断先入観を抱いてならないことは勿論であるが審理におけ
る用語につき所論のごとき制限を受ける理由はない。そして本件のごとき強盗事件
の審理において「強盗」「兇器」のような平易な通用語を使用して訊問したからと
言つて所論のように予断を示しているとはいえない。所論は採るを得ない。
 第三、第四点について。
 刑訴応急措置法第一二条は被告人の請求があるときは所定の書類につきその供述
者又は作成者訊問の機会を被告人に与えねばならぬことを規定したにとどまり所論
のようにその訊問権あることを被告人に告知しこれを促す義務を裁判所に負担せし
め又はかゝる訊問請求権を放棄したことその他を公判調書に録取しなければならぬ
ことを定めたものではない。それ故原審がかような告知又は録取をしなかつたから
とて所論の違法ありといえない。論旨はいずれもその理由がない。
 第五点について。
 所論刑訴第四一〇条第一三号の「証拠の取調」とは例えば同法第三四二条所定の
証拠のごとく、その取調が裁判所の自由裁量に属せず従つて法律上必ず公判におい
て取調べなければならないような証拠の取調を言うものであるから、所論の証拠に
ついては仮りにこれが取調をしなかつたからとて同号所定の取調をしなかつた違法
ありとはいえない。しかのみならず原審公判調書によれば「裁判長は各証拠品を示
めし」云々とあつて所論の兇器等について証拠調をしたこと明白であるから原判決
には所論の違法はない。この論旨も採用し得ない。
 同第六点について。
 論旨第一点について説明したごとく原判決挙示の被告人等の供述は所論のように
「強要に依る供述」とはいえない。また所論刑訴第七三条第七四条は書類作成の形
式について所論のとおり規定しているが旧刑訴とは異なりその所定の形式に反した
書類の無効であることを規定していない。それ故裁判所は書類の作成が所定の形式
に反する場合でも諸般の資料によりその真正に成立したものであることを自由に判
断するを妨ぐるものではない。所論被害発見並に追加届には所論のように年月日の
記載なくまた追加届と強盗被害届に記載せられている氏名の筆蹟が所論のように他
の書類のそれと異なるけれどもこの一事を以つて、直ちに右書類を無効と解すべき
理由なく、却つて右書類の提出者の名下にはいずれも「A」なる同一の印影が押捺
されてあるから右書類の成立を認めてこれを証拠としたからと言つて違法であると
は云えない。それ故右各書類の記載並びに前記各供述を援用して本件犯罪事実を認
定した原判決には所論のような違法はない。この論旨もその理由がない。
 第七点について。
 しかし原判決の趣旨は被告人Bは判示のごとく発議し被告人C同Dの両名はこれ
に賛同し茲に三名共謀の上Bにおいて判示日本刀の貸与、判示間取の説明及び道案
内等を為し、他の両名において判示侵入、強取等の実行を為した旨判示したもので、
かくのごとく数人共謀して犯罪を実行したときは共謀者の一人が実行行為を分担し
ない場合でもその実行正犯の責を免れ得ないものであるから原判決には所論のよう
な違法はない。論旨はその理由がない。
 被告人等弁護人乗国万吉上告趣意第一点について。
 所論A提出の届書には判示事実の全部に符合する被害顛末の記載存しないことは
所論のとおりである。しかし同届書には判示日判示場所において刀及びピストルを
所持せる二人組強盗に押し入られ同人所有の判示衣類を強奪された趣旨の記載存す
るから、これを以て原判決説示のごとく判示に照応する強盗被害顛末の記載と解す
ることができるばかりでなく、これと原判決挙示のその他の証拠とを綜合すれば原
判決認定の全事実を肯認し得るから原判決には所論の違法はない。
 同第二点について。
 しかし原判決の判示並びに擬律によれば原判決は所論の住居侵入の事実をその強
盗の事実の手段たる関係にある事実と認めその両事実につき重き強盗の刑のみに従
ひ一罪として処断したものであること明白である。そしてかように一罪の一部につ
いてはその部分につき特に公訴の提起がなくとも当然その全部につき審判し得るこ
と言うまでもないから原判決には所論の違法はない。
 よつて刑訴第四四六条に則り主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
  検察官 橋本乾三関与
  昭和二三年七月一四日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
 裁判官庄野理一は退官に付署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義

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