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裁判例


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平成15年(わ)第522号,平成16年(わ)第45号
 無為徒食の生活を送っていた被告人ら親子が,遊ぶ金ほしさに,新聞のお悔やみ
欄を見て家人が留守だと当たりをつけた民家や会社事務所に忍び込んで窃盗を繰り
返した事案につき,被告人両名にそれぞれ実刑を言い渡した判決
主文
被告人Aを懲役2年6月に,被告人Bを懲役1年6月に処する。
被告人らに対し,未決勾留日数中各40日をそれぞれその刑に算入す
る。
理由
【認定事実(罪となるべき事実)】
第1 被告人両名は,C,D,E,Fと共謀の上,平成15年9月22日午前2時
ころ,金品窃取の目的で,山梨県北巨摩郡a町bc番地所在のG方の玄関から屋内
に忍び込んで侵入し,そのころ,同所において,同人所有に係る現金約9万200
0円及びキャッシュカード2点,運転免許証1点在中の財布1個(時価約1000
円相当),現金約3000円在中のたばこ入れ1個(時価約500円相当)並びに
旧紙幣約1万6800円及び記念硬貨約8万円在中の手提げ金庫1個(時価約50
0円相当)を窃取した
第2 被告人両名は,C,D,E,F,Hと共謀の上,平成15年9月23日午前
2時30分ころ,金品窃取の目的で,山梨県東八代郡d町ef番地所在のI株式会
社売店事務所の西側高窓から建物内に忍び込んで侵入し,そのころ,同所におい
て,同社代表取締役J管理に係るたばこ約1000個(販売価格合計約27万円相
当)を窃取した
第3 被告人両名は,C,D,E,F,Hと共謀の上,前同日午前3時30分こ
ろ,金品窃取の目的で,前記I株式会社売店事務所の裏口片開き戸から建物内に忍
び込んで侵入し,そのころ,同所において,同社代表取締役J管理に係る現金合計
約70万円,記念硬貨約55万円及び土地権利証4通ほか57点くらい在中の耐火
金庫1台(時価約10万円相当)を窃取した
第4 被告人両名は,C,D,E,Fと共謀の上,平成15年10月3日午後1時
20分ころ,金品窃取の目的で,甲府市gh丁目i番j号所在のK方の1階南側縁
側掃き出し窓から屋内に忍び込んで侵入し,そのころ,同所において,同人所有に
係る現金約141万円を窃取した
第5 被告人Bは,C,D,E,Fと共謀の上,平成15年10月7日午後2時過
ぎころ,金品窃取の目的で,山梨県東八代郡k村lm番地所在のL方の北側アルミ
製一枚開きドアから屋内に忍び込んで侵入し,そのころ,同所において,たんすの
引き出しを開けるなどして金品を物色したが,金品を発見できなかったため,その
目的を遂げなかった
第6 被告人Bは,C,D,E,Fと共謀の上,判示第5記載の日時ころ,金品窃
取の目的で,同記載の番地所在のM方の1階南側縁側アルミ製一枚開きドアから屋
内に忍び込んで侵入し,そのころ,同所において,同人所有に係る現金約89万7
200円を窃取した
第7 被告人Aは,C,Fと共謀の上,平成15年10月12日午後1時ころ,金
品窃取の目的で,山梨県甲府市n町o番地のp所在のN方の1階和室掃き出し窓か
ら屋内に忍び込んで侵入し,そのころ,同所において,同人所有に係る現金22万
6000円並びにO所有に係る現金2万5000円在中の財布1個(時価約1万円
相当)及び現金約1000円在中の小銭入れ1個(時価約1000円相当)を窃取
した
第8被告人Aは,Fと共謀の上,平成15年10月15日午後1時10分ころ,
金品窃取の目的で,甲府市qr丁目s番t号所在のP方の1階事務室東側腰高窓か
ら屋内に忍び込んで侵入し,そのころ,同所において,同人所有に係る現金約50
00円,時価合計1500円相当の商品券3枚及び時価合計1000円相当のギフ
ト品券2枚在中の財布1個(時価約5000円相当),現金5万374円及びクレ
ジットカード3枚在中の財布1個(時価約3万円相当),現金2470円在中の財
布1個(時価約2000円相当)並びに現金3382円在中のビニール袋1枚を窃
取した
 ものである。
【法令の適用】
1 被告人Aについて
 同被告人の判示第1,第4,第7及び第8の各所為のうち各住居侵入の点はいず
れも刑法60条,130条前段に,各窃盗の点はいずれも同法60条,235条
に,判示第2及び第3の各所為のうち各建造物侵入の点はいずれも同法60条,1
30条前段に,各窃盗の点はいずれも同法60条,235条にそれぞれ該当すると
ころ,判示第1,第4,第7及び第8の各住居侵入と各窃盗との間並びに判示第2
及び第3の各建造物侵入と各窃盗との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,
同法54条1項後段,10条によりいずれも1罪として重い窃盗罪の刑でそれぞれ
処断することとし,以上の各罪は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条
本文,10条により犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範
囲内で同被告人を懲役
2年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中40日をその刑に算入し,
訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させない
こととする。
2 被告人Bについて
 同被告人の判示第1,第4及び第6の各所為のうち各住居侵入の点はいずれも刑
法60条,130条前段に,各窃盗の点はいずれも同法60条,235条に,判示
第2及び第3の各所為のうち各建造物侵入の点はいずれも同法60条,130条前
段に,各窃盗の点はいずれも同法60条,235条に,判示第5の所為のうち住居
侵入の点は同法60条,130条前段に,窃盗未遂の点は同法60条,243条,
235条にそれぞれ該当するところ,判示第1,第4及び第6の各住居侵入と各窃
盗との間,判示第2及び第3の各建造物侵入と各窃盗との間並びに判示第5の住居
侵入と窃盗未遂との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,同法54条1項後
段,10条によりいずれも1罪として重い罪の刑,すなわち,判示第1ないし第4
及び第6の各所為に
ついてはいずれも窃盗罪の,判示第5の所為については窃盗未遂罪の刑でそれぞれ
処断することとし,以上の各罪は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条
本文,10条により犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範
囲内で,同被告人を懲役1年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中4
0日をその刑に算入し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を
適用して同被告人に負担させないこととする。
【量刑の理由】
 本件は,無為徒食の生活を送っていた被告人らが,遊ぶ金欲しさに,昨年の9月
から10月にかけて立て続けに,民家や会社事務所に忍び込んで窃盗を繰り返した
という事案である。
 忍び込みという類型の窃盗事犯は,他人の生活の場である住居などを土足で踏み
荒らすもので,単に財産的被害にとどまらない損害を被害者に与える点において窃
盗の中でも殊に悪質な部類に属する犯罪であるし,偶々居合わせた家人に発見され
たような場合,逮捕を免れるために家人に乱暴を働いて重大な結果を発生させかね
ない点においても,悪質な犯罪である。しかも,昨年の10月になってから立て続
けに敢行された6件の侵入盗事犯は,いずれも新聞のお悔やみ欄を見て,葬儀のた
めに家人が家を留守にせざるを得ない家を狙って,白昼堂々と計画的に実行したも
のであり,まことに卑劣であって,人倫にもとる許し難い犯行といわなければなら
ず,地域社会に与えた衝撃も軽視できない。また,本件の一連の犯行による被害額
は,判示のとおり甚
大であるが,一部の被害品が発見されて被害者に還付されているにすぎず,現金の
ほとんどは被告人らが遊興のために湯水の如く費消してしまっており,実効ある被
害回復など期待できない状況にあるから,結果もまことに重大である。このように
本件の一連の犯行の犯情は,まことに悪質である。
 被告人両名は,シンナーに耽溺しながら無為徒食の生活を送ったあげく,遊ぶ金
欲しさに,上記のような悪質な犯罪を常習的に繰り返したものであるばかりか,未
成年者を犯罪に引き込み,自らは安全な屋外で見張り行為をしながら,立場の弱い
未成年の共犯者らをして危険な侵入行為をさせ,未成年の共犯者らよりも多くの分
け前を得ていたのであるから,厳しい非難を免れない。
 以上に加えて,A被告人については,本件窃盗グループの中で一番の年長者であ
り,分け前にしても,共犯者Cよりは少ないものの,B被告人とともに他の共犯者
よりも多くを手中に収めている上,息子のBやDから,これ以上盗みに加担するの
は嫌だと訴えられた際も,逆に息子らを説得して本件窃盗グループに引き止めよう
としており,共犯者Cとともに,本件窃盗グループの中で主導的立場にあったもの
と認められる。しかも,同被告人は,平成14年1月22日に,電磁的公正証書原
本不実記載等により懲役1年6月,3年間執行猶予に処せられており,厳に行動を
慎むべき執行猶予の期間中に,本件の一連の犯罪を敢行したばかりか,父親として
の立場を顧みずに息子らを犯罪に引き込んだのであるから,その規範意識の低劣さ
には目に余るものが
ある。してみれば,A被告人の刑事責任は重く,同被告人には実刑をもって臨むほ
かない。
 また,B被告人についても,A被告人の息子として,本件窃盗グループの中でA
被告人とほぼ同格の地位にあったものであるし,少年時代に友人とシンナーを吸引
している最中にその友人を死亡させてしまったという事件で少年院に送致されて矯
正教育を受けたにもかかわらず,少年院を出院して後,2年ほどでシンナーの吸引
を再開して生活を乱すようになり,ついには,自分が直接盗みに入らなければ自分
が捕まることはないなどとという安易な考えから,今回の一連の侵入盗に加担する
ことになったのであって,その規範意識には相当に問題があるといわざるを得な
い。してみれば,B被告人の刑事責任も軽視することはできず,同被告人を健全な
社会人として更生させるためには,施設収容の上,再度矯正教育を施す必要性が高
いことも否定できない
から,後述する同被告人のために酌むべき諸事情を最大限考慮しても,同被告人を
実刑に処することはやむを得ないものと思料する。
 もっとも,被告人らのために酌むべき事情として,被告人両名が当公判廷におい
て本件の一連の犯行を反省する態度を示していること,A被告人については,今般
の実刑判決により執行猶予が取り消されて,相当長期間の服役を余儀なくされるこ
と,B被告人については,父親のA被告人に,これ以上盗みに加担するのは嫌だと
訴えたり,盗みに同行しなかったり,同行しても車の中で寝るなどして,他人の家
に盗みに入ることを悪と感じるが故の消極的な姿勢も示しており,今回の一連の侵
入盗を積極的に推進していたとまではいえないこと,前科がないこと,交際相手の
女性が情状証人として出廷して,同被告人の更生を支えていく旨誓約しているこ
と,同被告人がまだ若年であり,本人の自覚次第では今後の更生も期待できること
などの諸事情も認めら
れる。
 そこで,これらの被告人両名に有利・不利な一切の事情を考慮し,被告人両名の
本件の一連の侵入盗に対する積極性の違いなどもふまえた上で,その刑事責任の重
さに応じて,主文のとおりの刑を量定することとした。
(出席した検察官山下明義,国選弁護人内田清〔被告人両名につき〕)
(検察官の求刑 被告人Aにつき懲役4年,被告人Bにつき懲役2年)
平成16年3月3日
甲府地方裁判所刑事部
裁判官   柴  田    誠

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