弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人村上信金上告趣意第一点について。
 原判決が所論A提出の盗難被害届の記載を、原判決挙示の他の証拠と共に綜合し
て判示被告人の犯行を認定したものであることは所論のとおりである。そして右盗
難被害届の記載が本件犯行による被害の事実(殊にその被害内容)を認定するにつ
き最も有力な直接証拠として援用されたものであることは、他の引用証拠の内容に
対比して多言を要しないところである。しかるに原審公判調書によれば、原審にお
いては、ただ「各訊問調書並各聴取書、原審公判調書並判決書、上申書及病気診断
書」についてのみ順次読聞け又はその要旨を告げ、次いで押収品並びに記録添付の
図面を展示し、意見弁解ありや否やを問うたに止まり、前示A提出の盗難被害届に
ついては何等証拠調手続の履践された証跡は存在しないのである(もとより被告人
訊問の際においても右被害届が読聞けられ又は展示され、これに関する意見弁解の
求められた形跡は認められない)、果して然りとすれば、原審は証拠調を経ない証
拠によつて事実を認定した違法あるに帰し、既にこの点において原判決は全部破棄
を免れ得ない。従つて所論後段Bに対する司法警察官代理の聴収書に関する所論の
当否を判断するまでもなく論旨は理由ありといわなければならない。
 よつて上告趣意第二点に対する説明を省略し旧刑訴四四七条四四八条ノ二、一項
に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二六年四月一二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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