弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
      原判決を破棄する。
      被上告人の控訴を棄却する。
      控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人三重利典,同久米弘子,同村松いづみ,同吉田眞佐子,同小山千蔭の
上告受理申立て理由について
 1 児童扶養手当法(以下「法」という。)4条1項1号ないし4号は,児童扶
養手当の支給対象となる児童として,父母が婚姻を解消した児童,父が死亡した児
童,父が政令で定める程度の障害の状態にある児童及び父の生死が明らかでない児
童を規定し,同項5号は「その他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるも
の」を規定している(ここに規定する場合を含め,法にいう「婚姻」には,婚姻の
届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含むものとされてい
る(法3条3項)。以下,本判決においても同じ。)。児童扶養手当法施行令(平
成10年政令第224号による改正前のもの。以下「施行令」という。)1条の2
第3号は,法4条1項5号に規定する政令で定める児童の一つとして,「母が婚姻
(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)に
よらないで懐胎した児童(父から認知された児童を除く。)」を規定している。
 2 原審の適法に確定したところによれば,上告人は,婚姻によらないで子を懐
胎,出産して,これを監護しており,被上告人から,施行令1条の2第3号に該当
する児童を監護する母として,平成3年2月分から児童扶養手当の支給を受けてい
たが,同6年1月26日,子がその父から認知されたため,児童扶養手当の受給資
格が消滅したとして,被上告人から同7年4月5日付けで児童扶養手当受給資格喪
失処分(以下「本件処分」という。)を受けたというのである。
 本件は,上告人が,施行令1条の2第3号において「(父から認知された児童を
除く。)」との括弧書(以下「本件括弧書」という。)を設けたことは違憲,違法
であるとして,本件処分の取消しを求めている事案である。
 3 上記事実関係の下で,原審は,概要,(1) 母が婚姻によらずに懐胎,出
産した児童(以下「婚姻外懐胎児童」という。)は,認知によって法律上の父がい
ない状態から脱却し,父に扶養請求をすることができるようになり,生活環境の好
転があったと評価することができるから,本件括弧書を設けて認知の有無によって
支給対象児童を区別することが,憲法14条に違反しているとか,法の委任の範囲
内で政令を制定する内閣の裁量の逸脱,濫用に当たるとすることはできない,(2)
 本件括弧書は,市民的及び政治的権利に関する国際規約,児童の権利に関する条
約並びに女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に違反するものでは
ない,(3) 本件括弧書が認知請求権を侵害するものとはいえないと判断して,
上告人の請求を認容した第1審判決を取り消して,上告人の請求を棄却した。
 4 しかしながら,本件括弧書を設けたことが法の委任の範囲内にあるものとし
た原審の上記判断は,是認することができない。その理由は次のとおりである。
 法4条1項5号による委任の範囲については,その文言はもとより,法の趣旨及
び目的,同項が支給対象児童として一定の類型の児童を掲げた趣旨並びにそれら児
童との均衡等をも考慮して解釈すべきところ,法4条1項各号は,類型的にみて世
帯の生計維持者としての父による現実の扶養を期待することができないと考えられ
る児童,すなわち,児童の母と婚姻関係にあるような父が存在しない状態,あるい
は児童の扶養の観点からこれと同視することができる状態にある児童を支給対象児
童として定めているものと解される。
 婚姻外懐胎児童は,世帯の生計維持者としての父がいない児童であって,父によ
る現実の扶養を期待することができない類型の児童に当たり,施行令1条の2第3
号が本件括弧書を除いた本文において婚姻外懐胎児童を法4条1項1号ないし4号
に準ずる児童として取り上げていることは,法の委任の趣旨に合致するところであ
る。一方で,施行令1条の2第3号は,本件括弧書を設けて,父から認知された婚
姻外懐胎児童を支給対象児童から除外することとしている。確かに,認知によって
婚姻外懐胎児童は法律上の父が存在する状態になるのであるが,法4条1項1号な
いし4号が法律上の父の存否のみによって支給対象児童の類型化をする趣旨でない
ことは明らかであるし,認知により,当然に母との婚姻関係が形成されるなどして
,世帯の生計維持者としての父が存在する状態になるわけでもない。また,父から
認知されれば,通常,父による現実の扶養を期待することができるともいえない。
したがって,婚姻外懐胎児童が認知により法律上の父がいる状態になったとしても
,類型的にみて,法4条1項1号ないし4号に準ずる状態が続いていることを否定
することはできないというべきである。そうすると,施行令1条の2第3号が本件
括弧書を除いた本文において,法4条1項1号ないし4号に準ずる状態にある婚姻
外懐胎児童を支給対象児童としながら,本件括弧書により,父から認知された婚姻
外懐胎児童を除外することは,法の委任の趣旨に反するものといわざるを得ない。
 5 以上のとおりであるから,【要旨】父から認知された婚姻外懐胎児童を児童
扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外した本件括弧書は,法の委任の範囲
を逸脱した違法な規定として,無効と解すべきものである。そうすると,その余の
点についての検討を経るまでもなく,本件括弧書を根拠としてされた本件処分は違
法といわざるを得ず,原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法
令の違反がある。したがって,上告理由について判断するまでもなく,原判決は破
棄を免れない。そして,前記説示によれば,上告人の請求を認容した第1審判決は
,是認することができるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第二小法廷
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川
弘治 裁判官 亀山継夫)

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