弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成27年5月21日判決言渡
平成24年(行ウ)第459号,第462号ないし468号所得税更正処分取消
等請求事件
平成24年(行ウ)第460号,第461号更正の請求拒否通知処分取消請求事

(以下,各事件を事件番号により,「459号事件」等という。)
主文
1右京税務署長が平成23年3月9日付けで原告P1に対してした原告P1の
平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額8879万6320円,
納付すべき税額2209万1700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決
定のうち,85万円を超える部分を取り消す。
2日野税務署長が平成22年7月30日付けで原告P2に対してした原告P2
の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額6299万5849円,
納付すべき税額2104万5400円を超える部分を取り消す。
3中野税務署長が平成22年7月30日付けで原告P3に対してした原告P
3の平成19年分の所得税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がな
い旨の通知処分を取り消す。
4福岡税務署長が平成23年3月11日付けで原告P4に対してした原告P
4の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額3億5143万74
41円,納付すべき税額8101万6300円を超える部分及び過少申告加算
税賦課決定を取り消す。
5天王寺税務署長が平成23年3月10日付けで原告P5に対してした原告
P5の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額1億2405万8
438円,納付すべき税額3448万7000円を超える部分及び過少申告加
算税賦課決定を取り消す。
6昭和税務署長が平成23年3月8日付けで原告P6に対してした原告P6
の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額1億2632万037
9円,納付すべき税額3722万5600円を超える部分及び過少申告加算税
賦課決定を取り消す。
7世田谷税務署長が平成23年3月11日付けで原告P7に対してした原告
P7の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額1億5477万5
308円,納付すべき税額5805万3200円を超える部分及び過少申告加
算税賦課決定を取り消す。
8品川税務署長が平成23年3月11日付けで原告P8に対してした原告P
8の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額2億8132万85
25円,納付すべき税額6024万4100円を超える部分及び過少申告加算
税賦課決定を取り消す。
9諏訪税務署長が平成23年3月10日付けで原告P9に対してした原告P
9の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額1億5533万66
89円,納付すべき税額3689万7900円を超える部分及び過少申告加算
税賦課決定を取り消す。
10芝税務署長が平成23年3月10日付けで原告P10に対してした原告P
10の平成19年分の所得税に係る更正のうち,総所得金額4億1765万9
504円,納付すべき税額8884万6200円を超える部分及び過少申告加
算税賦課決定を取り消す。
11訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
本件は,原告らが,他の出資者と共に組合契約を締結して民法上の組合を組成
した上,金融機関から金員を借り入れて航空機を購入し,これを航空会社に賃貸
する事業を営んでいたところ,航空機を売却して当該事業を終了する際,①航空
機の購入原資の一部となった借入金の一部に係る債務の免除を受けたことによる
利益(以下「本件ローン債務免除益」という。)及び②当該組合の業務執行者に
対して支払うべき手数料に係る債務の免除を受けたことによる利益(以下「本件
手数料免除益」といい,本件ローン債務免除益と併せて「本件各免除益」という。)
が発生したことについて,それぞれ各処分行政庁から,本件各免除益が所得税法
26条1項所定の不動産所得や同法35条1項所定の雑所得に該当するとして,
更正をすべき理由がない旨の通知又は更正及び過少申告加算税賦課決定を受けた
ことから,本件各免除益はいずれも同法34条1項所定の一時所得に該当すると
主張し,これらの処分はいずれも違法であるとして,その全部又は一部の取消し
を求める事案である。
なお,被告は,本件訴訟において,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手
数料免除益は,主位的には不動産所得に,予備的には雑所得に,それぞれ該当す
ると主張している。
1関係法令の定め
本件の関係法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」記載のとおりである。
なお,別紙2において改正注記をしたものについては,本文及び他の別紙にお
いても同様であるから,改正注記を省略する。
2前提事実(証拠等を掲げていない事実は,当事者間に争いがない。なお,以
下,書証については,特記するものを除き,各枝番を含むものとする。)
(1)原告らによる組合契約の締結
アP11株式会社(以下「P11」という。)は,平成10年3月23日
付けの「航空機賃貸事業のご案内-P12向けリース」という文書により,
個人投資家とP11の関連会社を組合員とする民法上の任意組合を組成し
た上,組合員による出資金と金融機関からの借入金(責任財産を原則とし
て組合財産に限定したもの)を原資として航空機を購入し,その航空機を
航空会社に貸し付けるという航空機リース事業について,出資者(組合員)
の募集を行った。(乙A1)
イP11の募集に応じた原告ら10名を含む個人投資家17名とP11の
関連会社であるP13有限会社(以下「本件業務執行者」という。)の合
計18名(以下「本件各組合員」と総称する。)は,平成10年4月21
日付けで,要旨次のような内容を含む任意組合契約(以下「本件組合契約」
といい,本件組合契約に基づいて組成された民法上の組合を「本件組合」
という。)を締結した。
(ア)組合の名称(第1条)
本件組合はP14事業組合1号と称する。
(イ)目的(第2条)
本件組合は,本件各組合員が出資した出資金及び本件組合の資産に適
当な担保を設定して金融機関から借り入れた金員をもって航空機1機
(1992年製○型機,製造番号×。以下「本件航空機」という。)を
取得し,取得した本件航空機をP12Inc.(以下「P12」という。)
又はその他の賃借人にリースし,リース契約終了後は本件航空機の売却
等の処分をするという,航空機の取得,賃貸,管理,売却及びこれに附
帯する一切の事業(以下,併せて「本件組合事業」という。)を行うこ
とによって,組合員相互の利益を図ることを目的とする。
(ウ)組合の発足時期及び存続期間(第3条及び第4条)
本件組合の存続期間は,本件組合契約の契約書に別に定める場合のほ
か,本件組合が発足する平成10年4月21日から7年間とする。
ただし,業務執行者が存続期間の延長を提案し,かつ,本件組合に対
する出資割合の過半数を有する本件各組合員の書面による同意が得られ
た場合には,これを延長する。
(エ)業務執行者(第8条)
本件各組合員は,本件業務執行者を本件組合の唯一の業務執行者と定
め,本件組合における一切の業務執行を委任する。本件業務執行者以外
の本件各組合員は,本件組合契約に定めるもののほか,何ら業務につい
ての権限を有しない。
業務執行者は,本件組合から,本件組合の業務執行に対する報酬とし
て,リース契約所定のリース料の3%相当額(消費税込み。)の支払を
受けることができる(以下,この報酬を「本件手数料」という。)。
(オ)事業年度及び事業報告(第9条及び第11条)
本件組合の事業年度は,1月1日から12月31日までの1年間(初
年度の開始日は本件組合発足の日から12月31日まで,最終年度は1
月1日から本件組合の解散の日までとする。)とし,業務執行者は,各
事業年度の本件組合事業につき,貸借対照表及び損益計算書を作成し,
各事業年度終了後60日以内に本件各組合員に送付して報告を行う。
(カ)損益の分配(第10条)
業務執行者は,本件組合事業から生ずる損益を事業年度毎に計算し,
本件各組合員に対し,その出資割合に応じて分配する。
(キ)重要事項に関する特則(第13条)
本件航空機全部の売却及び本件組合の存続期間の延長は,業務執行者
の提案に基づき,本件組合に対する出資割合の過半数以上を有する本件
各組合員の書面による同意により行われる。
(ク)解散(第22条)
本件組合は,存続期間が満了した場合や本件航空機全部を売却した場
合等に解散する。
(ケ)清算(第23条)
本件組合を解散したときは,業務執行者が清算人となる。清算人は,
現務の結了,債権の取立て及び債務の弁済並びに残余財産の引渡しを行
うために必要な一切の行為を行うことができる。また,残余財産は本件
各組合員の出資割合に応じて配当する。
ウ本件各組合員は,本件組合契約に基づき,別紙3出資金等一覧表の「出
資金」欄記載のとおりの出資をし,同表の「出資割合」欄記載の出資割
合により,本件組合による本件組合事業から生じる損益の分配を受ける
こととなった。
(2)最初のリース契約の締結
ア本件組合は,平成10年4月24日,CREDITP15,P16Branch
(本件組合の解散時の商号は,P17銀行P18支店。以下「本件融資
銀行」という。)を貸主,本件組合を借主とし,利率を年7.82%,
返済期間を同年5月6日から平成16年4月20日まで,毎月の返済金
額を39万3000米国ドル(以下「ドル」という。)(元利均等払。
ただし,同月5日は18万4000ドル,同月20日は1427万37
66.26ドル)とする金銭消費貸借契約(以下「本件ローン契約」と
いう。)を締結し,本件航空機の購入資金として3143万5442.
49ドルを借り入れた(以下,本件ローン契約に基づく借入元本,利息
金その他返済金を併せて「本件借入金」という。)。
なお,本件ローン契約では,本件借入金の返済原資を原則として本件
航空機等の本件組合の組合財産のみに限定し,本件各組合員の個人財産
を返済の原資としないものと定められていたが(以下,この定めをした
条項を「ノン・リコース条項」という。),これに加えて,一定の場合
に本件借入金に係る債務のうちの本件航空機等の本件組合の組合財産
を上回る部分を当然に免除する旨の条項等は設けられていなかった。
(甲A2,弁論の全趣旨)
イ本件組合は,平成10年4月24日,本件各組合員の出資した出資金
及び本件ローン契約に基づく借入金を原資として,本件航空機を420
0万ドルで購入した。
ウ本件組合は,P12との間で,期間を平成10年4月から平成16年
4月まで,リース料を月額43万ドルとして,本件航空機を貸し渡す旨
のリース契約(以下「旧リース契約」という。)を締結し,平成10年
4月,P12に対して本件航空機を貸し渡し,P12が倒産した平成1
3年までの間,旧リース契約で定められたリース料の支払を受け,同リ
ース料のうち39万3000ドルを毎月の本件借入金の返済(元利均等
払)に充て,その残額を毎月の本件手数料の支払等に充てていた。
(3)P12の倒産と新たなリース契約の締結
ア本件航空機のリース先であったP12は,平成13年9月11日に発
生したアメリカ合衆国における同時多発テロ事件(航空機テロ事件)の
影響を受け,同年11月8日,倒産した。(弁論の全趣旨)
イ本件組合は,平成14年5月頃,P19Limited(平成16年
1月13日に「P20」へ商号変更。以下「P19」という。)との間
で,期間を平成14年5月10日から平成16年3月31日まで(1年
間のリース期間延長のオプション付き),リース料を月額9万ドルから
13万ドルとして,本件航空機を貸し渡す旨のリース契約(以下「新リ
ース契約」という。)を締結し,P19に対して本件航空機を貸し渡し
た。(甲A3,甲A5,弁論の全趣旨)
なお,本件組合とP19は,平成15年6月19日,新リース契約に
ついて,リース期間を平成22年3月31日までに,平成16年4月1
日以降のリース料を月額12万5000ドルに,それぞれ変更する旨合
意した。(甲A4,甲A5,弁論の全趣旨)
ウ本件組合は,P12の倒産に伴う本件航空機の取戻し及びP19との
間の新リース契約に関する費用が必要となったため,平成14年5月8
日,同年6月17日及び平成15年4月8日の3回に分けて,P11か
ら総額276万6093.27ドルを借り入れて(以下,この借入れに
基づく借入元本,利息金その他返済金を「P11借入金」という。),
上記費用の支払に充てた。(甲A3,甲A4,甲A8,乙A2,弁論の
全趣旨)
エ本件組合は,新リース契約における月額リース料が本件借入金の返済
月額に足りないものとなったことから,平成14年11月25日,平成
15年7月2日及び平成18年12月22日の3回にわたり,本件融資
銀行との間で,本件ローン契約の契約内容の見直しを行い,その結果,
新リース契約のリース料全額を本件借入金の返済に充当することや返
済期限を平成22年3月31日までに延長すること,利率を年5.4
8%に変更することなどが合意されたが,ノン・リコース条項の変更は
行われていない。
(4)本件手数料の支払猶予
ア本件各組合員は,本件組合契約に基づき,本件業務執行者に対し,本
件航空機のリース料の3%に相当する本件手数料を支払うことになっ
ていたところ,P12の倒産からP19との間の新リース契約の締結ま
での間は本件航空機に係るリース料収入を得られなかったことや,新リ
ース契約における月額リース料全額が本件借入金の返済に充てられる
ことになったことから,平成13年11月分以降,本件手数料を支払う
ことができなくなった。
イ本件業務執行者は,上記のような状況を受けて,平成14年8月1日
付けで,本件各組合員に対し,新リース契約のリース期間中の本件手数
料の支払については,新リース契約の終了時又はそれ以降に繰り延べら
れることになる旨通知した。(甲A3)
ウ原告らは,本件手数料を支払わなくなった平成13年11月以降も,従
前と同様に,本件手数料のうちの自らの出資割合に相当する部分を不動産
所得の必要経費に算入して所得税に係る確定申告を行っていた。(弁論の
全趣旨)
(5)本件組合の解散
ア本件組合は,平成15年4月23日付けの本件業務執行者の提案に基
づき,出資割合の過半数を有する組合員の同意により,その存続期間を
平成29年4月21日まで延長した。(甲A4,甲A5)
イ本件業務執行者は,平成19年2月1日付け報告書により,本件各組
合員に対し,次のとおり,本件航空機を売却して本件組合事業を終了す
るという提案を行った。
(ア)米国などにおける景気低迷,平成13年9月の米国での同時多発
テロ,イラク戦争等の影響により,航空業界は,かつて経験したこと
がないほど厳しい状況になり,航空機マーケットも低迷が続いている。
また,P21が平成16年10月に○型航空機(○及び○)の生産を
中止したため,本件航空機に関するマーケットは依然として厳しい状
況にある。
そして,鑑定会社5社の評価によると,本件航空機の平成19年1
月時点の市場価格は,1360万ドルないし1848万ドルであるが,
これは同年2月時点の本件借入金の元本残高である約2130万ド
ルを下回る水準となっている。
このような状況の中で本件組合事業を継続しても,出資金の回収の
見込みが生じる可能性は小さい。
(イ)以上の情報と諸般の事情を前提に,本件組合の業務執行者として,
本件融資銀行及びP11と交渉を行った結果,次のaないしdの取引
についての合意を取り付けることができる見込みとなり,これらによ
り,本件各組合員に追加出資を求めることなく,本件組合事業を終了
させることが可能となった。
a本件組合は,平成19年2月5日を基準として本件航空機を17
00万ドルで売却する(本件航空機の最終的な売却価格は,実際の
売却日によって変更になる可能性がある。)。
b本件組合は,上記の本件航空機の売却代金の一部を用いて,本件
融資銀行に対して約1400万ドルを支払うことにより,本件借入
金を完済し(平成19年2月時点の本件借入金の元本残高は約21
30万ドルであるが,本件融資銀行との交渉により,その返済必要
額が減額される予定である。),当該返済に充てた残額により,P
11借入金(金利を含めて約300万ドル)を完済する。
c本件組合は,P12の倒産時に,本件航空機を取り戻すため,P
12が支払っていなかった管制料や空港使用料等をカナダ当局等
に対して立替払しているところ,この立替金を取り戻すために行っ
たカナダの裁判に関連して今後発生する債権債務をP11に譲渡
し,本件各組合員には当該裁判に関する資金負担が今後発生しない
ようにし,本件組合事業を速やかに終了させる。
d本件組合事業においては,本件航空機売却の手数料は機体売却価
格の3%となっているが,今回の売却に伴う手数料については0と
する。
ウ上記イの提案について,本件組合契約13条に基づき,本件組合の出
資割合の過半数を有する組合員が,書面によって同意をした。(弁論の
全趣旨)
エ本件組合は,平成19年2月5日,本件融資銀行との間で,本件融資
銀行に対して本件ローン契約に基づく債務の全部かつ最終の弁済とし
て1400万ドルを同年3月5日に支払う旨合意した。
オ本件業務執行者は,平成19年3月5日,本件航空機を1700万ドル
で売却した。
カ本件組合は,平成19年3月5日,本件融資銀行に対し,本件航空機
の売却代金を原資として,本件借入金の元金の弁済として1400万ド
ル(同日現在の元本残高は2117万4562.71ドル)を,同日ま
での利息の弁済として10万0117.17ドルを,それぞれ支払い,
その一方で,本件融資銀行から,本件借入金に係る残債務(717万4
562.71ドル)を免除された(以下,本件融資銀行が行ったこの債
務免除を「本件ローン債務免除行為」という。)。(甲A10,甲A11,
甲A22,甲A24)
本件ローン債務免除行為によって本件ローン債務免除益が発生し,原
告らについて,別紙3出資金等一覧表のとおり,出資割合に応じた債務
免除益が発生した。(甲Bイないしヌの各1)
キ本件組合は,平成19年3月5日,本件業務執行者から,同日時点で
未払となっていた本件手数料に係る債務全額(合計23万1370ドル)
を免除された(以下,本件業務執行者が行ったこの本件手数料の免除を
「本件手数料免除行為」という。)。(甲A11,甲A14)
本件手数料免除行為によって本件手数料免除益が発生し,原告らにつ
いて,別紙3出資金等一覧表の「本件手数料免除益」欄記載のとおり,
出資割合に応じた債務免除益が発生した。(甲Bイないしヌの各1,弁
論の全趣旨)
ク本件組合は,平成19年3月6日,P11に対し,本件航空機の売却
代金を原資として,P11借入金の残額298万9587.19ドルを
弁済した。(甲A11,甲A12,甲A13,甲A24)
ケ本件組合は,平成19年3月6日,本件組合契約22条に基づいて解散
した。(弁論の全趣旨)
(6)本件業務執行者による本件各免除益の扱い等
ア本件業務執行者(本件組合の清算人)は,本件組合の平成19年1月1
日から同年3月6日までの事業年度の損益計算書において,本件各免除益
を,債務免除益として計上した。
イ本件業務執行者は,本件各組合員に対し,本件各免除益を記載した本件
組合の損益計算書や,出資割合に応じた本件各組合員それぞれの本件各免
除益(別紙3出資金等一覧表の「本件各免除益」欄記載のとおり)を記載
した計算書等を会計報告書として送付した。
(7)確定申告及びこれに対する更正等
別紙4「更正等の経緯」のとおり,原告らは,それぞれ,平成19年分の
所得税に係る確定申告等をし,これらに対して各処分行政庁による更正等が
されたが,その概要は,次のとおりである(別紙5の1ないし10参照)。
なお,別紙4で用いた略語は以下の本文及び他の別紙でも用いることとする。
(甲Bイないしヌの各1ないし4,弁論の全趣旨)
ア原告らは,それぞれ,平成19年分の所得税について,本件各免除益の
うちの出資割合に応じた部分の金額を,原告P2及び原告P3については
雑所得に係る総所得金額に,原告P4,原告P5,原告P6,原告P7,
原告P8,原告P9及び原告P10については一時所得に係る総所得金額
に,それぞれ算入し,原告P1についてはいずれの所得に係る総収入金額
にも算入せず,確定申告をした(原告P6については修正申告もした。)。
イ原告P2及び原告P3は,上記アの各確定申告後,本件各免除益は一時
所得に該当するなどとして,それぞれを所轄する各処分行政庁に対して更
正の請求をしたが,原告P2更正請求に対しては,日野税務署長が,社会
保険料の控除漏れは認めたものの,本件各免除益は不動産所得に該当する
として原告P2更正処分を,原告P3更正請求に対しては,中野税務署長
が,更正をすべき理由がない旨の原告P3通知処分を,それぞれした。
また,原告P4,原告P5,原告P6,原告P7,原告P8,原告P9
及び原告P10については,本件各免除益が一時所得に該当するものとし
て,確定申告を行っていたため,同原告らを所轄する各処分行政庁は,い
ずれも,本件各免除益が雑所得に該当するとして,各更正及び過少申告加
算税賦課決定をした。
さらに,原告P1については,原告P1確定申告において本件各免除益
を申告していなかったため,右京税務署長は,本件各免除益が雑所得に該
当するとして,原告P1更正処分及び原告P1賦課決定処分をした。
ウ原告らは,上記の各更正等(以下「本件各更正処分等」という。)に対
して,それぞれ適法な不服申立てをした。
(8)本件各訴えの提起
原告らは,平成24年7月13日,それぞれ本件各訴えを提起した。(顕
著な事実)
3被告が主張する更正等の根拠と適法性
被告が主張する本件各更正処分等の根拠と適法性は,別紙6「更正等の根拠
と適法性(被告の主張)」のとおりである。
4争点及び当事者の主張の要旨
本件における争点は,本件各免除益の所得区分であり,具体的には,①本
件ローン債務免除益が,一時所得に該当するか,あるいは,雑所得に該当する
か,②本件手数料免除益が,不動産所得に該当するか,不動産所得に該当し
ない場合に,一時所得に該当するか,あるいは,雑所得に該当するか,が争わ
れている。
争点に関する当事者の主張は,別紙7「被告の主張」及び別紙8「原告らの
主張」のとおりであるが,その要点は以下のとおりである。なお,別紙7で用
いた略語は以下の本文及び他の別紙でも用いることとする。
(1)被告
ア本件ローン債務免除益は,一時所得に該当せず,雑所得に該当する。
(ア)ある所得が,所得税法における所得区分のいずれに該当するかを判
断するに当たっては,当該所得が得られた直接的な原因(原因をなす行
為等の事実やそれに対する法的評価)を重要な考慮要素としつつ,それ
以外にも所得の性質や発生の態様及びそれに関連する事実関係をも総合
考慮した上で,事実関係に即した法的評価を行い,利子所得ないし雑所
得の10種類の所得の意義及び要件を定めた同法23条ないし35条の
いずれに該当するかを判断すべきである。
(イ)本件ローン債務免除益が除外要件を充足することは認める。
(ウ)原告らを含む本件各組合員が営んでいた本件組合事業は,本件各組
合員による出資金及び本件借入金をもって本件航空機を取得し,これを
賃貸,管理,売却すること及びこれらに附帯する一切の業務を含むもの
であり,これにより組合員相互の利益を図ることを目的とするものであ
るから,「営利を目的とする継続的行為」に該当することは明らかであ
る。そして,本件ローン債務免除益は,原告らを含む本件各組合員が営
む本件組合事業を遂行するに当たって不可欠な本件航空機の取得資金を
調達するために締結した本件ローン契約において,追加出資のリスクを
回避するためにノン・リコース条項が設けられていることを前提として,
本件組合が本件ローン契約において定められた債務者としての義務を履
行し続けたことにより,本件航空機を売却した際にその売却代金を含む
組合財産によって返済できなかった本件ローン契約に基づく本件借入金
に係る残債務につき,本件融資銀行から免除を受けることによって発生
したものである。したがって,本件ローン債務免除益は,原告らが営む
航空機賃貸事業の一環として生じたものであって,賃貸料収入等と同様,
営利事業から生じる定期的あるいは回帰的な所得と把握し得るものであ
るから,営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当し,非継続
要件を充足しない。
(エ)次に,非対価要件における対価性は,直接的な対価関係より相対的
に広い概念であり,ある者が別の者から何かを受け取る場合において,
そこに牽連関係が存在したと認め得る状況があれば,労務その他の役務
の対価としての性質を有するものとして,非対価要件を充足しない。
そして,本件ローン債務免除益の発生の態様及び考慮すべき事実関係
をみると,原告らは,航空機賃貸事業における事業主で,かつ,本件ロ
ーン契約における金員の借主であり,ノン・リコース条項が設けられた
本件ローン契約により,本件航空機等の本件組合の財産のみを本件融資
銀行の掴取権の対象にした契約上の地位にあることに加え,本件融資銀
行における本件ローン契約の締結及びその後の本件ローン債務免除行為
までの一連の行為に経済的合理性が認められることからすると,原告ら
が本件融資銀行にリスク投資の機会を与えたとの関係が認められ,この
ような関係から生じた本件ローン債務免除益には牽連関係が存在した状
況を認めることができるから,本件ローン債務免除益は非対価要件を充
足しない。
(オ)したがって,本件ローン債務免除益は一時所得に該当せず,雑所得
に該当する。
イ本件手数料免除益は不動産所得に該当する。仮に不動産所得に該当しな
いとしても,一時所得には該当せず,雑所得に該当する。
(ア)不動産所得に該当する不動産等の貸付けによる所得とは,使用収益
期間に対応して定期的かつ継続的に支払われる賃料がその典型であるが,
これに限らず,賃借人から賃貸人に移転される経済的利益のうち,目的
物を使用収益する対価としての性質を有するもの又はこれに代わる性質
を有するものをいう。そして,ある所得が不動産所得に該当するか否か
は,当該所得が得られた直接的な原因だけでなく,所得の性質や発生の
態様及びこれらに関連する事実関係も考慮要素に含めて判断すべきであ
る。
この点,不動産所得の必要経費に該当するというためには,当該所得
を得るための活動,すなわち不動産貸付事業(ないし業務)と直接の関
連を有し,当該事業(ないし業務)を行うために客観的に必要な支出で
あることが必要とされるのであり,このような必要経費に該当する支出
と当該事業(ないし業務)との関連性は,事後的に当該必要経費に係る
支払が免除されたからといって直ちに失われるものではない。そうする
と,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入した費用が未払となっ
ていたところ,その後,当該未払となっている費用について債権者から
債務免除を受けた場合の当該債務免除を受けた部分については,特別な
事情がない限り,当該債務免除益が生じた日の属する年分の不動産所得
の総収入金額に算入すべきである。このように解することは,必要経費
に算入されていた費用に係る債務の免除が,過去に不動産所得から控除
していた必要経費を事後的に減少させ,その結果,不動産所得を増加さ
せるという経済的実質をもっていることや,所得税法の他の規定からみ
ても理由がある。
そして,本件手数料は,本件組合事業の執行を本件業務執行者に委託
したことに基づく当該業務執行に対する報酬であり,原告らが本件組合
を通じて行った本件航空機の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必
要経費に算入されていたものであるところ,本件手数料免除益は,未払
となっていた平成13年11月分以降の本件手数料全額を本件業務執行
者が債務免除したこと(本件手数料免除行為)によって発生した経済的
利益であるから,不動産所得に該当するということになる。
(イ)仮に,本件手数料免除益が不動産所得に該当しないとしても,本件
手数料免除益は,未払となっていた平成13年11月分以降の本件手数
料を本件業務執行者が債務免除したことによって生じた経済的利益であ
り,本件組合の活動から得られた損益として認識されたものである。そ
して,本件手数料免除益は,営利を目的とする継続的行為に該当する本
件組合事業(航空機賃貸事業)の一環から生じたものであること,そし
て,原告らが本件組合事業の委託者である本件組合の組合員であるが故
に生じたものであることからすれば,偶発的に生じたものではなく,営
利を目的とする継続的行為から生じた所得であり,労務その他の役務の
対価としての性質を有することも明らかであるから,本件手数料免除益
は一時所得には該当せず,雑所得に該当する。
(2)原告ら
ア本件ローン債務免除益は一時所得に該当する。
(ア)ある所得が一時所得に該当するためには,①利子所得,配当所得,
不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以
外の所得のうち(除外要件),②営利を目的とする継続的行為から生
じた所得以外の一時の所得で(非継続要件),③労務その他の役務又
は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの(非対価要件)という
各要件を充足する必要があるところ(所得税法34条1項),本件ロー
ン債務免除益が除外要件を充足することは,当事者間に争いがない。
(イ)また,本件ローン債務免除益が発生した原因は本件ローン債務免除
行為であるところ,本件ローン債務免除行為は,原告らが本件組合を通
じて行っていた本件組合事業において予定されておらず,偶発的に行わ
れたものであり,かつ,繰り返し生じることが予定されていない1回限
りのものであるから,本件ローン債務免除益は非継続要件を充足する。
(ウ)さらに,本件ローン債務免除益の発生に関し,原告らは本件融資銀
行に対して何ら「労務その他の役務」の提供や「資産の譲渡」を行って
いないから,本件ローン債務免除益は非対価要件も充足する。
(エ)したがって,本件ローン債務免除益は一時所得に該当する。
イ本件手数料免除益は,不動産所得に該当せず,一時所得に該当する。
(ア)本件手数料免除益が発生した原因は,本件業務執行者が未払となっ
ていた本件手数料に係る債務を免除したという本件手数料免除行為であ
るところ,本件手数料免除益が本件航空機の貸付けによる所得でないこ
とは明らかであり,また,本件手数料免除行為を行った本件業務執行者
は本件航空機の借主でもないから,本件手数料免除益は不動産所得に該
当しない。
(イ)次に,本件手数料免除益は,不動産所得に該当しないことを含めて,
除外要件を充足する。また,本件手数料免除益の発生原因である本件手
数料免除行為は,本件組合事業終了時に未払となっていた本件手数料を
支払う資金が本件組合になかったなどの事情に鑑みて,本件業務執行者
がやむなく行ったものであり,本件組合事業の開始する時点で予定され
ておらず,偶発的に行われたものであり,かつ,本件組合契約上も繰り
返して生じることは予定されていない1回限りのものであるから,本件
手数料免除益は非継続要件を充足する。さらに,本件手数料免除益に関
し,原告らは本件業務執行者に対して何ら「労務その他の役務」の提供
や「資産の譲渡」を行っていないから,本件手数料免除益は非対価要件
も充足する。
(ウ)したがって,本件手数料免除益は一時所得に該当する。
第3当裁判所の判断
1前提
(1)本件組合事業によって得られた所得の納税義務者
民法上の組合(任意組合)は,複数の組合員が共同の事業を営む組織であ
り,組合員となる者が出資をして共同の事業を営むことを約する旨の組合契
約を締結することによって設立されるが(同法667条1項),組合は事業
の主体ではあっても,権利義務の帰属する法主体ではないから,その活動に
よって得られる損益は,組合を通り抜け,組合契約で定める損益分配割合(同
法674条)に応じて直接各組合員に帰属する。
所得税法は,民法上の組合の活動によって生み出された所得の計算や組合
員に対する所得配分について何ら規定を設けていないものの,上記のとおり,
民法上の組合は法主体ではなく,その活動による損益は直接各組合員に帰属
することからすると,組合の活動によって生み出された所得に関しては,組
合員がそれぞれ納税義務を負うことになる。
そして,前提事実(1)イのとおり,原告らを含む本件各組合員は,本件組合
契約を締結して民法上の組合である本件組合を組成し,本件融資銀行からの
本件借入金と本件各組合員の出資した出資金を原資として本件航空機を購入
し,本件航空機を賃貸するという本件組合事業を営んでいるところ(本件組
合契約2条),本件組合事業による損益は,出資割合に応じて直接本件各組
合員に帰属することになるから(本件組合契約10条),本件組合事業によ
って生み出された所得については,本件各組合員である原告らがそれぞれ納
税義務を負うことになる。
(2)所得区分該当性の判断の在り方
所得税法は,所得をその源泉ないし性質によって,利子所得,配当所得,
不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得,一時所
得及び雑所得の10種類に区分し,これらの所得ごとに所得の金額を計算す
ることとしている(同法21条1項1号)。
これは,所得はその性質や発生の態様によって担税力が異なるという前提
に立って,公平負担の観点から,各種の所得について,それぞれの担税力の
相違に応じた計算方法を定め,また,それぞれの態様に応じた課税方法を定
めるためである。
したがって,ある所得がどの所得区分に該当するかについては,所得を分
類し,その種類に応じた課税を定めている同法の趣旨及び目的に照らして判
断するのが相当である。
2本件ローン債務免除益について
(1)本件ローン債務免除益について問題となる所得区分
本件ローン債務免除益が利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給
与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得であることは当事者間
に争いがないことから,本件ローン債務免除益の所得区分については,一時
所得に該当するか否か,具体的には,除外要件を充足することを前提として,
非継続要件(営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得
であること)及び非対価要件(労務その他の役務又は資産の譲渡の対価とし
ての性質を有しない所得であること)を充足するか否かが問題となる。
(2)本件ローン債務免除益の非継続要件充足の有無について
ア所得税法上,一時所得は,通常は担税力が乏しいとされる一時的,臨時
的な所得であるために,50万円の特別控除がされた後(同法34条2項
及び3項),その金額の2分の1に相当する金額が総所得金額に算入され
るものと規定されているところ(同22条2項2号),非継続要件が一時
所得に該当するための要件とされているのは,営利を目的とする継続的行
為から生じた所得は偶発的に発生した所得ではなく,類型的にその担税力
が偶発的な所得の担税力よりも大きいと考えられるからである。
そして,所得税法34条1項及び35条1項の規定からすると,所得税
法上,除外要件を充足する所得のうち,営利を目的とする継続的行為から
生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分されるところ,営利を目的
とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,当該行為ないし所得の
性質を踏まえた上で,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の
規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である
(最高裁平成26年(あ)第948号同27年3月10日第三小法廷判
決・裁判所時報1623号52頁参照)。
イこの点,本件ローン債務免除益は,本件融資銀行が本件借入金の残債務
を免除したという本件ローン債務免除行為によって発生したものであると
ころ,前提事実によれば,本件ローン債務免除益は,次のような点を指摘
することができる。
(ア)本件ローン債務免除益は,本件航空機の賃貸を含む本件組合事業を
行っていた本件組合が,本件航空機を売却して本件組合事業を清算する
に際し,本件航空機の購入資金の一部となった本件ローン契約に基づく
本件借入金の一部について,債務免除(本件債務免除行為)を受けたこ
とによって発生したものであり,本件ローン債務免除益が,本件組合事
業の一環として生じたものであること,そして,本件ローン債務免除益
が,原告らを含む本件各組合員の共通の利益となるものであることは確
かである。
しかしながら,本件組合事業として行われた本件航空機の賃貸が営利
を目的とする継続的行為であるとしても,本件ローン債務免除益は,飽
くまで本件ローン債務免除行為によって発生したものであって,本件航
空機の賃貸自体から発生したものではない。
(イ)また,本件ローン契約では,本件借入金の返済原資を原則として本
件航空機等の本件組合の組合財産のみに限定し,それ以外の原告らを含
む本件各組合員の財産を返済の原資としないというノン・リコース条項
が設けられていたが,一定の場合に,本件借入金に係る債務の全部又は
一部を本件融資銀行が当然に免除するというような条項は設けられてい
なかった。しかも,本件融資銀行は,ノン・リコース条項を前提として
も,本件航空機を含む本件組合の組合財産の全部から本件借入金を回収
することができたにもかかわらず,本件航空機の任意売却に同意した上,
その売却代金である1700万ドル全額ではなく,その一部である14
00万ドルを受領しただけで,本件借入金の残額に係る債務を免除する
という本件ローン債務免除行為をしていることからすると,本件ローン
債務免除行為は,必ずしもノン・リコース条項を前提とした法律関係を
反映したものというわけではなく,本件ローン債務免除益は,本件組合
事業において,本件ローン契約やノン・リコース条項に基づいて当然に
発生したものではなかったということができる。
(ウ)さらに,本件組合は,本件ローン契約に基づく本件借入金及び原告
らを含む本件各組合員の出資金を原資として本件航空機1機を購入し,
これを賃貸する事業を行うことを目的として組成された組合であり,本
件ローン契約の内容からすると,約6年後には本件航空機を売却処分す
るなどして本件融資銀行からの本件借入金を返済し,組合事業を終了す
ることを予定していたものと認めることができるから,そもそも,本件
ローン契約に設けられたノン・リコース条項が問題となるということ自
体が,事業終了時点で本件借入金が本件組合の組合財産を上回るなどの
限定的な場合に発生する可能性があるものにすぎなかった。
もとより,ノン・リコース条項が設けられていたことからも明らかな
ように,本件組合事業を開始するに当たり,本件組合事業終了時に本件
借入金が本件組合の組合財産を上回って,ノン・リコース条項が問題と
なるという事態が発生することも想定されていたということができるし,
また,そのような場合に,本件融資銀行が債務免除を行うということが
およそ想定することができなかったということはできず,さらに,実際,
本件融資銀行は,本件ローン契約にノン・リコース条項が設けられてい
たことや,原告らを含む本件各組合員が本件融資銀行に対してノン・リ
コース条項の存在を前提とした高い利息を支払っていたことなども踏ま
えて,本件ローン債務免除行為を行うに至ったものと推認することがで
きる。
しかしながら,前記のとおり,そもそもノン・リコース条項が問題と
なるという場合自体が限られていたことからすると,本件融資銀行が債
務免除を行うということは,そのような場合に生じ得る様々な可能性の
一つにすぎなかったというべきである。
以上に加え,現に,P11が組成した個人向け航空機リース事業23
組中,ノン・リコース条項が設けられた金銭消費貸借契約に基づく借入
金に係る債務免除が行われたのは,本件組合のみであったことなどに鑑
みても(甲A17),結局のところ,本件融資銀行は,本件航空機の売
却代金が想定されていた価額を大幅に下回り,本件借入金が本件航空機
の売却代金を上回るという事情が生じた中で,ノン・リコース条項を前
提としつつ,その経営判断により,様々な可能性の中から本件ローン債
務免除行為をするという選択をしたのであって,本件ローン債務免除行
為及びそれによる本件ローン債務免除益の発生は,本件組合事業におい
て予定されたものでもなかったというべきである。
(エ)加えて,実際,本件ローン債務免除行為は,本件組合事業において,
1回限り行われたものであり,これによる本件ローン債務免除益も1回
限り発生したものである。
ウ以上によれば,本件ローン債務免除益は,本件組合が行っていた営利を
目的とする継続的行為である本件航空機の賃貸自体によって発生したもの
ではなく,また,本件組合事業の終了に伴って当然に発生したものでも,
発生が予定されていたものでもなく,本件融資銀行の判断により,一時的,
偶発的に発生したものと認めるのが相当であるから,営利を目的とした継
続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当するものというべきであ
る。
エこれに対し,被告は,本件組合事業は営利を目的とする継続的行為であ
るところ,本件ローン債務免除益は本件組合事業の一環として生じたもの
であるとして,本件ローン債務免除益が営利を目的とする継続的行為から
生じた所得に該当し,非継続要件を充足しないなどと主張する。
この点,前提事実によれば,本件組合が行っていた本件組合事業は,営
利を目的とする継続的行為である本件航空機の賃貸を含むものであるこ
と,そして,本件ローン債務免除益は,本件航空機を売却して本件組合事
業を終了するに際し,本件航空機を購入する際の原資の一部となった本件
ローン契約に基づく本件借入金の一部の債務免除を受けたことによって
発生したものであり,本件組合事業の一環として発生したものであること
は確かである。
しかしながら,本件組合事業に営利を目的とする継続的行為である本件
航空機の賃貸が含まれていたからといって,これを含む本件組合事業にお
いて行われる行為が全て営利を目的とする継続的行為ということにはな
らず,本件ローン債務免除益が,本件航空機の賃貸という営利を目的とし
た継続的行為を含む本件組合事業の一環として発生したものであること
をもって,直ちに本件ローン債務免除益が営利を目的とする継続的行為か
ら生じた所得であるとすることはできないというべきである。そして,被
告が指摘するとおり,原告らを含む本件各組合員が,本件組合契約を締結
し,本件組合を通じて,本件航空機を購入して賃貸するという本件組合事
業を行っていたこと,原告らを含む本件各組合員は,本件組合事業に不可
欠な本件航空機の購入資金を確保するために本件ローン契約を締結して
金員を借り入れていたこと,本件ローン契約においては,ノン・リコース
条項が設けられており,その反面,通常よりも高い利率が設定されていた
こと,原告らを含む本件各組合員が,本件ローン契約で定められた義務を
履行していたことは確かであり,また,本件融資銀行は,本件ローン契約
にノン・リコース条項が設けられていたことや,原告らを含む本件各組合
員がノン・リコース条項を前提とした通常よりも高い利息の支払等の本件
ローン契約に基づく義務を履行していたことを踏まえて,本件ローン債務
免除行為を行ったということはできるとしても,前記判断のとおり,本件
ローン債務免除益は,本件組合事業や本件ローン契約において当然に発生
したものでも,発生が予定されていたものでもなく,1回限りのものとし
て,偶発的に発生したものと認めるのが相当であり,非継続要件が一時所
得の要件とされている趣旨を踏まえて考えると,本件ローン債務免除益が
営利を目的とした継続的行為によって生じた所得であると認めることは
できないというべきである。
オその他,被告は,本件ローン契約にノン・リコース条項が設けられて
いたことなどから,本件ローン債務免除行為が予定されていたなどとも
主張するが,前記判断のとおり,本件組合事業を終了するに当たって,
本件融資銀行が本件借入金のうちの本件組合の組合財産を上回る部分に
ついて債務免除することが,およそ想定されていなかったということは
できないものの,それは,本件組合事業の終了時に本件借入金が本件組
合の組合財産を上回るというような限定的な場合において,しかも,そ
のような場合に発生し得る様々な可能性の一つにすぎないものであった
というべきから,やはり,本件ローン債務免除行為は,本件融資銀行に
よって偶発的に行われたものであり,本件ローン債務免除益は偶発的に
発生したものと認めるのが相当である。
カ以上のとおりであるから,本件ローン債務免除益は,非継続要件を充足
するものと認めることができる。
(3)本件ローン債務免除益の非対価要件充足の有無について
ア非対価要件が一時所得の要件とされているのは,対価性を有する所得は,
たとえ一時的なものであっても偶発的に発生した所得ではなく,類型的に
その担税力が対価性のない偶発的な所得の担税力よりも大きいと考えら
れるからであり,この非対価要件も,一時所得の範囲について,その対象
となる所得を一般に担税力が低いと考えられる一時的,偶発的に生じたも
のに限定する趣旨のものと理解することができる。
イこの点,そもそも,原告らは,本件ローン債務免除益の発生原因である
本件ローン債務免除行為を行った本件融資銀行に対し,その対価となるよ
うな具体的な労務その他の役務を提供したと認めることはできない。
ウまた,原告らは,本件融資銀行に対し,本件組合を通じて,本件借入金
の主債務の弁済や利息の支払を行っているものの,主債務の弁済は,借り
受けた金員の返済であり,利息の支払も,借り受けた金員を一定期間使用
収益したことに対する対価と評価すべきものであって,いずれも本件ロー
ン債務免除益と対価関係があるものと認めることは困難である。本件ロー
ン契約では,ノン・リコース条項が設けられていたことを前提として,通
常よりも高い利率が定められていたと推認することができるものの,この
高い利率に基づく利息の支払についても,ノン・リコース条項によって本
件借入金の返済原資が原則として本件航空機等の本件組合の組合財産のみ
に限定されることとの間に経済的な関係性を認めることができるとしても,
本件ローン債務免除行為を原因として発生した本件ローン債務免除益との
間の対価関係を認めることまではできないというべきである。
エさらに,被告が指摘するように,原告らを含む本件各組合員が,本件ロ
ーン契約において,本件借入金の借主の地位にあったこと,本件ローン契
約には,本件借入金の返済原資を原則として本件航空機等の本件組合の組
合財産のみに限定するノン・リコース条項が設けられていたこと,ノン・
リコース条項が設けられていたことにより,通常よりも高い利率が定めら
れていたところ,原告らを含む本件各組合員がこの利率に基づく利息の支
払をしていたこと,そして,このような状況の下で,本件融資銀行が本件
ローン債務免除行為を行ったことによって本件ローン債務免除益が発生し
たところ,この本件ローン契約から本件ローン債務免除行為までの本件融
資銀行の一連の行為も特段不合理というわけではないことからすると,社
会的な事実として,ノン・リコース条項が設けられた本件ローン契約の締
結や原告らを含む本件各組合員による本件ローン契約上の義務の履行と,
本件ローン債務免除益の発生との間に一定の関連性があることは確かであ
り,被告は,上記のような関連性を牽連関係と主張し,このような牽連関
係が認められる以上,本件ローン債務免除益は非対価要件を充足しないと
主張している。
しかしながら,前記のとおり,そもそも一時所得に該当するための要件
として非対価要件が設けられているのは,対価性を有する所得は,たとえ
一時的なものであっても偶発的に発生した所得ではなく,その担税力が,
類型的に,対価性のない偶発的な所得の担税力よりも大きいと考えられる
ためであり,このような非対価要件の趣旨からすると,ある所得が労務そ
の他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有するというためには,
当該所得と一定の関係がある事実が存在するというだけでは足りず,少な
くとも当該所得が偶発的に発生したものではないといえるような関係に
ある事実が存在することが必要と解するのが相当である。
そして,結果的に,本件ローン債務免除行為によって発生した本件ロー
ン債務免除益と,原告らを含む本件各組合員と本件融資銀行がノン・リコ
ース条項が設けられた本件ローン契約を締結し,原告らを含む本件各組合
員が本件ローン契約に基づく義務を履行していたこととの間に一定の関
係があったとしても,本件ローン契約で設けられたノン・リコース条項は
飽くまで本件借入金の返済原資の範囲を限定するものにすぎないし,本件
ローン契約には条件付きの債務免除の条項等は設けられていなかったこ
とからすると,本件ローン債務免除益は本件組合事業において本件ローン
契約に基づいて当然に発生すべきものであったと認めることはできない。
また,本件組合事業の内容やノン・リコース条項の存在を前提としても,
本件融資銀行が本件ローン債務免除行為をするということは,本件組合事
業の終了時点で本件借入金が本件組合の組合財産を上回るというような
限定的な場合において,しかも,そのような場合に発生し得る様々な可
能性の一つにすぎないものであったことからすると,本件ローン債務免除
益は偶発的に発生したものと認めるのが相当であり,原告らが本件融資銀
行に対して本件ローン債務免除益の対価となるような労務その他の役務
を提供したと認めることはできないというべきである。
したがって,非対価要件の対価としての性質が直接的な対価関係より相
対的に広い概念であることを前提としたとしても,本件ローン債務免除益
が,労務その他の役務の対価としての性質を有するものということはでき
ない。また,本件ローン債務免除益が資産の譲渡の対価としての性質を有
しないことは明らかである。
オ以上によれば,本件ローン債務免除益は,非対価要件も充足するものと
認めることができる。
(4)小括
よって,本件ローン債務免除益は一時所得に該当する。
3本件手数料免除益について
(1)本件手数料免除益の不動産所得該当性について
ア雑所得に該当するためには,一時所得に該当しないことが要件となり(所
得税法35条1項),一時所得に該当するためには,除外要件との関係で,
不動産所得に該当しないことが要件となることから(同法34条1項),
本件手数料免除益については,まず,被告が主張するように,不動産所得
に該当するか否かを検討すべきことになる。
イ所得税法上,不動産所得とは,「不動産,不動産の上に存する権利,船
舶又は航空機の貸付けによる所得(事業所得又は譲渡所得に該当するもの
を除く。)」をいうとされており(同法26条1項),また,不動産所得
を生ずべき業務に関し,当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止そ
の他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これ
に類するものについて,その業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る
収入金額に代わる性質を有するものも,不動産所得に該当するものとされ
ている(同法施行令94条1項2号)。
これらの規定によれば,不動産所得とは,賃貸人が賃借人に対して一定
の期間,目的物を使用収益させる対価として受け取る利益又はこれに代わ
る性質を有するものと解するのが相当である。
ウしかるに,本件手数料免除益の発生原因である本件手数料免除行為を行
ったのは本件業務執行者であるところ,本件業務執行者は,本件航空機の
賃借人ではなく,本件航空機を使用収益していたわけではない。そして,
本件手数料免除益は,本件組合の業務執行に対する報酬である本件手数料
に係る債務が,債権者(本件業務執行者)によって免除されたことによっ
て発生した利益であり,本件航空機を使用収益させる対価又はこれに代わ
る性質を有するものでないことは明らかである。
エこの点,被告は,ある所得が不動産所得に該当するか否かは,当該所得
が得られた直接的な原因だけではなく,所得の性質や発生の態様及びこれ
らに関する事実関係も考慮要素に含めて判断すべきであるとして,本件手
数料免除益の直接的な発生原因は本件手数料免除行為であるものの,所得
税法26条2項における不動産所得の計算方法を踏まえて考えると,本件
手数料は本件航空機の賃貸による不動産所得の必要経費とされていたもの
であり,本件手数料と本件航空機の賃貸との関連性は,その後に本件手数
料に係る債務が免除されたことによって直ちに失われるものではないから,
本件手数料免除行為によって発生した本件手数料免除益は,不動産所得に
該当すると主張する。
しかしながら,同条が,不動産等の貸付けという特定の業務に対応した
所得種類を設け,同時に,当該業務に係る収入と費用とを対応させた所得
計算を規定していることからすると,不動産所得とされる所得とその必要
経費とされる費用との間に一定の関係があることは確かであるし,被告が
指摘する所得税法施行令94条1項が,不動産所得,事業所得,山林所得
又は雑所得を生ずべき業務に関し,当該業務に係るたな卸資産等について
損失を受けたことにより取得する保険金,損害賠償金,見舞金その他これ
らに類するもの(同項1号)と,当該業務の全部又は一部の休止,転換又
は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金
その他これに類するもの(同項2号)について,当該業務の遂行により生
ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これら
の所得に係る収入金額とする旨定めていることも確かであるが,そもそも,
ある費用が必要経費に該当するか否かという判断と,当該費用に係る債務
が免除されたことによる所得がどの所得区分に該当するかという判断は,
本来,別々に行われるべきものであり,不動産所得についても,ある所得
が不動産所得の必要経費とされていた費用に係る債務の免除によって発
生したものであったとしても,そのことをもって直ちに,発生した当該所
得が,目的物を使用収益する対価又はこれに代わる性質を有するものであ
るのと認めることはできない。また,同法には,未払の費用が特定の所得
の必要経費に算入されていたところ,後にその費用に係る債務の免除がさ
れたという場合に,その債務免除によって発生した利益をその費用が従前
必要経費に算入されていた所得に区分すべきものとした規定も存在しな
いことからすると,同法上,ある所得とその必要経費とされる費用であっ
たという関係をもって,当該費用に係る債務が免除されたことによって発
生した所得を,当然に,当該費用が必要経費として算入されていた所得区
分に係る所得とするものとはされていないというべきである。被告が主張
するように,ある所得が不動産所得に該当するか否かは,当該所得が得ら
れた直接的な原因だけでなく,所得の性質や発生の態様及びこれらに関す
る事実関係も考慮要素に含めて判断するということを前提としたとして
も,本件手数料免除益について,特に不動産所得に区分すべき事情を認め
ることはできない。
したがって,本件航空機を使用収益する対価又はこれに代わる性質を有
するものではない本件手数料免除益については,従前,本件航空機の賃貸
によって発生した不動産所得の必要経費とされていた本件手数料に係る
債務が免除されたことによって発生したものであるということをもって,
不動産所得に該当するものと認めることはできないというべきである。
オまた,被告は,本件手数料免除益を不動産所得とすべき根拠として,要
するに,本件手数料免除益は,過去に不動産所得の必要経費に算入されて
いた本件手数料に係る債務を免除することによって生じたものであり,過
去の不動産所得の必要経費を事後的に減少させ,不動産所得を取り戻させ
る(増加させる)ものであるということも主張する。
確かに,本件手数料免除益は,支払債務は発生していたが支払はされて
いなかったという本件手数料について,所得税法26条2項所定の不動産
所得の金額の計算上,必要経費に算入されていたところ,その後にその支
払債務の免除を受けたことによって発生したものであり,計算上は,不動
産所得の総収入金額から控除されていた必要経費を減額し,その分,不動
産所得を増加させるものという見方もできないわけではないことからす
ると,本件手数料免除益は,その経済的実質に着目すれば,不動産所得に
該当するというのも理解できないわけではない。
しかしながら,同法上,未払であっても債務として確定した費用は,そ
の確定した日の属する年分の必要経費に算入するものとされ(同法37条
1項),その一方で,債務免除によって生じる経済的利益は,それが生じ
た日の属する年分の各種所得の金額の計算上,総収入金額に算入すべき金
額に該当するという仕組みがとられていること(同法36条1項),また,
前記のとおり,同法には,未払の費用が特定の所得の必要経費に算入され
ていたところ,後にその費用に係る債務の免除がされたという場合に,そ
の債務免除による利益をその費用が必要経費に算入されていた所得に区分
すべきものとした特段の規定もないことからすると,上記のような経済的
実質の点から本件手数料免除益を不動産所得に該当するものと認めること
は,租税法律主義の観点から許容することができるものではないというべ
きである。
カ以上によれば,本件手数料免除益は,不動産所得に該当するものと認め
ることはできないというべきである。
(2)本件手数料免除益の一時所得該当性について
ア前記判断のとおり,本件手数料免除益は不動産所得に該当せず,また,
本件手数料免除益が利子所得,配当所得,事業所得,給与所得,退職所得,
山林所得及び譲渡所得以外の所得であることは当事者間に争いがないこと
から,次に,本件手数料免除益が一時所得に該当するか否か,具体的には,
除外要件を充足することを前提として,非継続要件(営利を目的とする継
続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること)及び非対価要件(労
務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない所得である
こと)を充足するか否かが問題となる。
イこの点,本件手数料免除益が,原告らが本件組合を通じて行っていた本
件組合事業の一環として,原告らが本件業務執行者に対して従前から業務
を委託していたという関係で発生したものであることは確かである。
しかしながら,原告らが本件組合を通じて行っていた本件組合事業が,
本件航空機の賃貸という営利を目的とした継続的行為を含むものであっ
たとしても,本件手数料免除益は,本件航空機の賃貸を原因として発生し
たものではなく,本件業務執行者が原告らに対して未払となっていた本件
手数料に係る債務を免除したという本件手数料免除行為を原因として発
生したものであり,本件手数料免除益が本件組合事業の一環として発生し
たものであることから直ちに,本件手数料免除益が営利を目的とした継続
的行為から生じた所得と認めることはできない。また,本件組合契約では,
本件業務執行者に対する本件手数料の支払義務が明確に合意されており,
その免除を定めた規定はもちろん,本件手数料に係る債務を担保すべき責
任財産の範囲を限定する条項も設けられていなかったことからすると,本
件手数料免除益は,本件組合事業において,本件組合契約に基づいて当然
に発生したものでも,その発生が予定されていたものではなく,むしろ,
その発生は予定されていなかったものと認めるのが相当であるから,本件
手数料免除益は偶発的に発生したものであり,営利を目的とする継続的行
為から生じた所得以外の一時の所得と認めるのが相当である。
したがって,本件手数料免除益については,非継続要件を充足するもの
というべきである。
ウまた,原告らを含む本件各組合員は,本件組合契約に基づき,本件業務
執行者に対して本件手数料の支払をしていたものの,これは本件業務執行
者の業務執行に対する対価として支払っていたのであって,本件手数料免
除益の対価としての性質を有するものではない。その他,原告らが,本件
業務執行者に対して何らかの労務その他の役務を提供していたものと認め
ることもできず,また,本件手数料免除益が資産の譲渡の対価としての性
質を有しないことは明らかであるから,本件手数料免除益は,非対価要件
も充足するものと認めるのが相当である。
エ以上によれば,本件手数料免除益は一時所得に該当する。
4原告らの税額と更正等の適法性
(1)原告P3を除く原告らに対する各更正処分及び原告P3通知処分につい

本件各免除益は,いずれも一時所得に該当するから,原告らの平成19年
分の所得税に係る総所得金額及び納付すべき税額は,それぞれ,別紙9「原
告らに係る所得税の計算書」のとおりとなる。
したがって,原告P3を除く原告らに対する各更正処分は,上記計算書に
記載されたそれぞれの総所得金額及び納付すべき税額を超える部分について
違法であり,原告P3通知処分も違法である。
なお,原告P10については,認定した総所得金額は4億1755万95
04円,納付すべき税額は8880万6200円であるが,原告P10確定
申告及び本件訴訟において取消しを求める部分を超えて原告P10の請求を
認容することはできない。
(2)原告P2及び原告P3を除く原告らに対する過少申告加算税賦課決定に
ついて
ア前提事実(8)(別紙4「更正等の経緯」)及び上記(1)の判断を前提とす
ると,原告P2及び原告P3を除く原告らのうち,原告P1を除く原告ら
については,平成19年分の所得税に係る更正を受ける前にした確定申告
又は修正申告において,いずれも過少申告をしていないことになるから,
上記各更正に伴って同原告らに対してされた過少申告加算税賦課決定は,
いずれも違法である。
イまた,前記(1)のとおり,原告P1更正処分は総所得金額8879万63
20円,納付すべき税額2209万1700円を超える部分について違法
であるところ,原告P1が原告P1更正処分により新たに納付すべきこと
となった税額のうち,上記金額以下の部分(上記金額から当初申告額を控
除した部分。2209万1700円-1358万2500円≒850万円。
なお,国税通則法118条3項により,1万円未満の金額は切り捨て。)
については,その計算の基礎となった事実のうちに原告P1更正処分前の
税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項
に規定する正当な理由があると認められるものがあるとは認められないか
ら,上記の850万円については,同条1項に基づいて過少申告加算税が
課されることになる。
そして,原告P1に課されるべき平成19年分の所得税に係る過少申告
加算税の額は,同項に基づき,上記の850万円に100分の10の割合
を乗じて算出した金額85万円となるところ,この金額は,原告P1賦課
決定処分における過少申告加算税の額(甲Bイ2の1枚目「過少申告加算
税」欄参照)である166万円を下回るから,原告P1賦課決定処分のう
ち85万円を超える部分は違法となる。
5結論
以上によれば,原告らの請求はいずれも理由があるから,これらを認容する
こととし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官増田稔
裁判官齊藤充洋
裁判官佐野義孝
(別紙2)
関係法令の定め
1所得区分
(1)所得税法21条1項1号は,所得を,利子所得,配当所得,不動産所得,
事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得,一時所得及び雑所得
の10種類に区分し,これらの所得ごとに所得の金額を計算する旨定めてい
る。
(2)所得税法26条1項は,「不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する
権利,船舶又は航空機(括弧内省略)の貸付け(地上権又は永小作権の設定
その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又
は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と定めている。
(3)所得税法34条1項は,「一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所
得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のう
ち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務そ
の他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。」と
定めている。
(4)所得税法35条1項は,「雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,
事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれ
にも該当しない所得をいう。」と定めている。
2所得の金額の計算方法
(1)所得税法22条1項は,所得税の課税標準を総所得金額,退職所得金額及
び山林所得金額とし,同条2項は,総所得金額について,各種所得の金額の
計算の規定により計算した次に掲げる金額の合計額(70条1項若しくは2
項(純損失の繰越控除)又は71条1項(雑損失の繰越控除)の規定の適用
がある場合には,その適用後の金額)とする旨定めている。
①利子所得の金額,配当所得の金額,不動産所得の金額,事業所得の金額,
給与所得の金額,譲渡所得の金額(33条3項1号(譲渡所得の金額の計
算)に掲げる所得に係る部分の金額に限る。)及び雑所得の金額(これら
の金額につき69条(損益通算)の規定の適用がある場合には,その適用
後の金額)の合計額
②譲渡所得の金額(33条3項2号に掲げる所得に係る部分の金額に限る。)
及び一時所得の金額(これらの金額につき69条の規定の適用がある場合
には,その適用後の金額)の合計額の2分の1に相当する金額
(2)所得税法26条2項は,不動産所得の金額は,その年中の不動産所得に係
る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨定めている。
(3)所得税法33条3項は,譲渡所得の金額は,その年中の資産の譲渡による
所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資
産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し,その残額から同条4項に規定
する特別控除額として最大50万円を控除した金額とする旨定めている。
(4)所得税法34条2項は,一時所得の金額は,その年中の一時所得に係る総
収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為を
するため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)
の合計額を控除し,その残額から同条3項に規定する特別控除額として最大
50万円を控除した金額とする旨定めている。
(5)所得税法35条2項は,雑所得の金額は,その年中の公的年金等の収入金
額から公的年金等控除額を控除した残額と,その年中の雑所得(公的年金等
に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額との合
計額とする旨定めている。
(6)所得税法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上,総収入金額
に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入す
べき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合
には,その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨定め,
同条2項は,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は,当該物若
しくは権利を取得し,又は当該利益を享受する時における価額とする旨定め
ている。
(7)所得税法37条1項は,その年分の不動産所得の金額,事業所得の金額又
は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるも
のを除き,これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額
を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費そ
の他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用で
その年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨定めている。
(8)所得税法69条1項は,総所得金額,退職所得金額又は山林所得金額を計
算する場合において,不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額
又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは,政令で定める
順序により,これを他の各種所得の金額から控除する旨定め,所得税法施行
令198条1号は,不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上生じた損
失の金額があるときは,これをまず他の利子所得の金額,配当所得の金額,
不動産所得の金額,事業所得の金額,給与所得の金額及び雑所得の金額から
控除し,同条3号は,同条1号の場合において,同号の規定による控除をし
てもなお控除しきれない損失の金額があるときは,これを譲渡所得の金額及
び一時所得の金額から順次控除する旨定めている。
(9)所得税法70条1項は,同法69条1項の損益通算に規定する損失の金額
のうち,同条の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の
金額)がある場合(当該純損失の金額が生じた年分について青色申告書を提
出している場合に限る。),その純損失の金額を3年以内に限って翌年以降
に繰り越して控除することができる旨定めている。
(10)所得税法140条は,青色申告書を提出する居住者は,同法69条1項
の損益通算に規定する損失の金額のうち同条の規定を適用してもなお控除し
きれない部分の金額(純損失の金額)がある場合,前年も青色申告書を提出
している場合は,その純損失の金額の繰戻しにより前年分の所得税の還付を
受けることができる旨定めている。
(11)租税特別措置法25条の2第1項1号は,青色申告書を提出することに
つき税務署長の承認を受けている個人は,その承認を受けている年分の不動
産所得の金額について,所得税法26条2項の規定により計算した不動産所
得の金額から最大10万円を控除することができる旨定めている。
(12)所得税法施行令94条1項は,不動産所得,事業所得,山林所得又は雑
所得を生ずべき業務に関し,当該業務に係るたな卸資産等について損失を受
けたことにより取得する保険金,損害賠償金,見舞金その他これらに類する
もの(同項1号)と,当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他
の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類す
るもの(同項2号)について,当該業務の遂行により生ずべきこれらの所得
に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に係る収入金額
とする旨定めている。
3税額の計算方法
(1)所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの)89条は,所得税
の額は,その年分の課税総所得金額を金額に応じて6つに区分し,それぞれ
の金額に所定の税率を乗じて計算した金額を合計した金額とする旨定めてい
る。
(2)所得税法92条1項3号は,居住者が配当所得を有する場合で,その年分
の課税総所得金額が1000万円を超え,かつ,当該課税総所得金額から証
券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を控除した金額が1000万
円を超える場合(同項3号),剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち,
当該課税総所得金額から1000万円と証券投資信託の収益の分配に係る配
当所得の金額との合計額を控除した金額に達するまでの金額については10
0分の5を乗じて計算した金額を,所得税額から控除する旨定めている。
(3)平成20年法律第23号による改正前の租税特別措置法37条の11第
1項は,上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額に対する税額は,上場株式
等に係る課税譲渡所得等の金額に7%の税率を乗じて算出した金額とする旨
定めている。
(4)国税通則法65条1項は,法定申告期限内に確定申告書が提出された場合
において,修正申告書の提出又は更正があったときは,当該納税者に対し,
その修正申告又は更正に基づいて納付すべき税額に100分の10の割合を
乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨定め,同条4項は,
同条1項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその
修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正
当な理由があると認められるものがある場合には,同項に規定する納付すべ
き税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令
で定めるところにより計算した金額を控除して,同項の規定を適用する旨定
めている。
(5)国税通則法118条1項は,国税(印紙税及び附帯税を除く。)の課税標
準を計算する場合において,その額に1000円未満の端数があるとき,又
はその全額が1000円未満であるときは,その端数金額又はその全額を切
り捨てる旨定め,同条3項は,附帯税の額を計算する場合において,その計
算の基礎となる税額に1万円未満の端数があるとき,又はその税額の全額が
1万円未満であるときは,その端数金額又はその全額を切り捨てる旨定めて
いる。
(6)国税通則法119条1項は,国税(自動車重量税,印紙税及び附帯税を除
く。)の確定金額に100円未満の端数があるとき,又はその全額が100
円未満であるときは,その端数金額又はその全額を切り捨てる旨定め,同条
4項は,附帯税の確定金額に100円未満の端数があるとき,又はその全額
が1000円未満(加算税に係るものについては,5000円未満)である
ときは,その端数金額又はその全額を切り捨てる旨定めている。
以上
(別紙4)
更正等の経緯
1原告P1
(1)確定申告
原告P1は,平成20年3月17日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,それぞれ算
入し,本件各免除益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計3999
万8126円)はいずれの所得に係る総収入金額にも算入せず,一方で,
本件各組合員が本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未
払債務のうち,平成19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に
応じた持分相当額を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総
所得金額を6752万2884円,納付すべき税額を1358万2500
円として,確定申告(以下「原告P1確定申告」という。)をした。
(2)更正等
右京税務署長は,原告P1の平成19年分の所得税について,平成23
年3月9日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するなどとし,
総所得金額を1億0904万5383円,納付すべき税額を3019万1
300円とする更正(以下「原告P1更正処分」という。)及び加算税額
を166万円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P1賦課決定処
分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P1は,原告P1更正処分及び原告P1賦課決定処分について,本
件各免除益は一時所得に該当するとして,平成23年4月28日付けで,
右京税務署長に対し,異議申立てをしたところ,同税務署長は,同年6月
23日付けで,本件各免除益は一時所得に該当せず,雑所得に該当すると
して,異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(4)審査請求
原告P1は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
2原告P2
(1)確定申告
原告P2は,平成20年3月13日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計3999万8126円)を
雑所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が本
件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平成
19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当額
を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を832
4万4912円,納付すべき税額を2917万2600円として,確定申
告(以下「原告P2確定申告」という。)をした。
(2)更正の請求
原告P2は,平成21年1月27日,日野税務署長に対し,平成19年
分の所得税について,雑所得として申告した本件各免除益はいずれも一時
所得に該当し,また,社会保険料の控除漏れがあるとして,総所得金額を
6299万5849円,納付すべき税額を2104万5400円とする更
正の請求(以下「原告P2更正請求」という。)をした。
(3)更正
日野税務署長は,原告P2更正請求に対し,平成22年7月30日付け
で,本件各免除益は不動産所得に該当するとした上で,社会保険料控除漏
れは認めて,総所得金額を8324万4912円,納付すべき税額を29
14万5000円とする更正(以下「原告P2更正処分」という。)をし
た。
(4)異議申立て
原告P2は,原告P2更正処分について,本件各免除益は一時所得に該
当するとして,平成22年9月30日付けで,日野税務署長に対し,異議
申立てをしたところ,同税務署長は,同年12月20日付けで,本件各免
除益は一時所得に該当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却
する旨の決定をした。
(5)審査請求
原告P2は,上記(4)の決定を受け,平成23年1月20日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年1月16日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
3原告P3
(1)確定申告
原告P3は,平成20年3月12日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計3999万8126円)を
雑所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が本
件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平成
19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当額
を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を821
1万3169円,納付すべき税額を2944万6100円として,確定申
告(以下「原告P3確定申告」という。)をした。
(2)更正の請求
原告P3は,平成21年1月15日,中野税務署長に対し,平成19年
分の所得税について,雑所得として申告した本件各免除益はいずれも一時
所得に該当するとして,総所得金額を6186万4106円,納付すべき
税額を2134万6500円とする更正の請求(以下「原告P3更正請求」
という。)をした。
(3)通知
中野税務署長は,原告P3更正請求に対し,平成22年7月30日付け
で,更正をすべき理由がない旨の通知(以下「原告P3通知処分」という。)
をした。
(4)異議申立て
原告P3は,原告P3通知処分について,平成22年9月30日付けで,
中野税務署長に対し,異議申立てをしたところ,同税務署長は,同年12
月20日付けで,本件各免除益は一時所得に該当せず,雑所得に該当する
として,異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(5)審査請求
原告P3は,上記(4)の決定を受け,平成23年1月20日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年1月16日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
4原告P4
(1)確定申告
原告P4は,平成20年3月10日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計7999万6252円)を
一時所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が
本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平
成19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当
額を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を3億
5143万7441円,納付すべき税額を8101万6300円として,
確定申告(以下「原告P4確定申告」という。)をした。
(2)更正等
福岡税務署長は,原告P4の平成19年分の所得税について,平成23
年3月11日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,
総所得金額を3億9168万5567円,納付すべき税額を9711万5
900円とする更正(以下「原告P4更正処分」という。)及び加算税額
を160万9000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P4賦
課決定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P4は,原告P4更正処分及び原告P4賦課決定処分について,平
成23年4月28日付けで,福岡税務署長に対し,異議申立てをしたとこ
ろ,同税務署長は,同年7月7日付けで,本件各免除益は一時所得に該当
せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(4)審査請求
原告P4は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
5原告P5
(1)確定申告
原告P5は,平成20年3月14日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計3999万8126円)を
一時所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が
本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平
成19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当
額を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を1億
2405万8438円,納付すべき税額を3448万7000円として,
確定申告(以下「原告P5確定申告」という。)をした。
(2)更正等
天王寺税務署長は,原告P5の平成19年分の所得税について,平成2
3年3月10日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,
総所得金額を1億4430万7501円,納付すべき税額を4258万6
600円とする更正(以下「原告P5更正処分」という。)及び加算税額
を80万9000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P5賦課
決定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P5は,原告P5更正処分及び原告P5賦課決定処分について,平
成23年4月28日付けで,天王寺税務署長に対し,異議申立てをしたと
ころ,同税務署長は,同年6月23日付けで,本件各免除益は一時所得に
該当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をし
た。
(4)審査請求
原告P5は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
6原告P6
(1)確定申告
原告P6は,平成20年3月12日,平成19年分の所得税について,
確定申告をした後,平成21年11月6日,修正申告(以下「原告P6修
正申告」という。)をした。原告P6修正申告においては,本件航空機の
リース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動産所得に係る
総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合に応じた持分
相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除益のうちの出
資割合に応じた持分相当額(合計3999万8126円)を一時所得に係
る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が本件業務執行
者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平成19年中に
支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当額を,不動産所
得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を1億2632万03
79円,納付すべき税額を3722万5600円としていた。
(2)更正等
昭和税務署長は,原告P6の平成19年分の所得税について,平成23
年3月8日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,総
所得金額を1億4656万9442円,納付すべき税額を4532万52
00円とする更正(以下「原告P6更正処分」という。)及び加算税額を
80万9000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P6賦課決
定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P6は,原告P6更正処分及び原告P6賦課決定処分について,平
成23年4月28日付けで,昭和税務署長に対し,異議申立てをしたとこ
ろ,同税務署長は,同年6月28日付けで,本件各免除益は一時所得に該
当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(4)審査請求
原告P6は,上記(3)の決定を受けて,平成23年7月21日付けで,
国税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,
平成24年3月22日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手
数料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却す
る旨の裁決をした。
7原告P7
(1)確定申告
原告P7は,平成20年3月14日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計6799万6814円)を
一時所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が
本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平
成19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当
額を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を1億
5477万5308円,納付すべき税額を5805万3200円として,
確定申告(以下「原告P7確定申告」という。)をした。
(2)更正等
世田谷税務署長は,原告P7の平成19年分の所得税について,平成2
3年3月11日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,
総所得金額を1億8711万1226円,納付すべき税額を7098万7
600円とする更正(以下「原告P7更正処分」という。)及び加算税額
を129万3000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P7賦
課決定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P7は,原告P7更正処分及び原告P7賦課決定処分について,平
成23年4月28日付けで,世田谷税務署長に対し,異議申立てをしたと
ころ,同税務署長は,同年6月28日付けで,本件各免除益は一時所得に
該当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をし
た。
(4)審査請求
原告P7は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
8原告P8
(1)確定申告
原告P8は,平成20年3月5日,平成19年分の所得税について,本
件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動産
所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合に
応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除益
のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計7999万6252円)を一
時所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が本
件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平成
19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当額
を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を2億8
132万8525円,納付すべき税額を6024万4100円として,確
定申告(以下「原告P8確定申告」という。)をした。
(2)更正等
品川税務署長は,原告P8の平成19年分の所得税について,平成23
年3月11日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,
総所得金額を3億2157万6651円,納付すべき税額を7634万3
300円とする更正(以下「原告P8更正処分」という。)及び加算税額
を160万9000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P8賦
課決定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P8は,原告P8更正処分及び原告P8賦課決定処分について,平
成23年4月28日付けで,品川税務署長に対し,異議申立てをしたとこ
ろ,同税務署長は,同年6月27日付けで,本件各免除益は一時所得に該
当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(4)審査請求
原告P8は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
9原告P9
(1)確定申告
原告P9は,平成20年3月17日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計5599万7376円)を
一時所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員が
本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,平
成19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相当
額を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を1億
5533万6689円,納付すべき税額を3689万7900円として,
確定申告(以下「原告P9確定申告」という。)をした。
(2)更正等
諏訪税務署長は,原告P9の平成19年分の所得税について,平成23
年3月10日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,
総所得金額を1億8358万5377円,納付すべき税額を4819万7
500円とする更正処分(以下「原告P9更正処分」という。)及び加算
税額を112万9000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告P
9賦課決定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P9は,原告P9更正処分及び原告P9賦課決定処分について,平
成23年4月28日付けで,諏訪税務署長に対し,異議申立てをしたとこ
ろ,同税務署長は,同年6月28日付けで,本件各免除益は一時所得に該
当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(4)審査請求
原告P9は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,国
税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平
成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手数
料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却する
旨の裁決をした。
10原告P10
(1)確定申告
原告P10は,平成20年3月15日,平成19年分の所得税について,
本件航空機のリース料収入のうちの出資割合に応じた持分相当額を不動
産所得に係る総収入金額に,本件航空機の売却代金収入のうちの出資割合
に応じた持分相当額を総合長期譲渡所得に係る総収入金額に,本件各免除
益のうちの出資割合に応じた持分相当額(合計1億1999万4377円)
を一時所得に係る総収入金額に,それぞれ算入し,一方で,本件各組合員
が本件業務執行者に対して支払うべき本件手数料に係る未払債務のうち,
平成19年中に支払日の到来する分の合計額の出資割合に応じた持分相
当額を,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入し,総所得金額を4
億1765万9504円,納付すべき税額を8884万6200円として,
確定申告をした(以下,この確定申告を「原告P10確定申告」という。)。
(2)更正等
芝税務署長は,原告P10の平成19年分の所得税について,平成23
年3月10日付けで,本件各免除益はいずれも雑所得に該当するとして,
総所得金額を4億7780万6692円,納付すべき税額を1億1290
万5000円とする更正(以下「原告P10更正処分」という。)及び加
算税額を240万5000円とする過少申告加算税賦課決定(以下「原告
P10賦課決定処分」という。)をした。
(3)異議申立て
原告P10は,原告P10更正処分及び原告P10賦課決定処分につい
て,平成23年4月28日付けで,芝税務署長に対し,異議申立てをした
ところ,同務署長は,同年6月28日付けで,本件各免除益は一時所得に
該当せず,雑所得に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をし
た。
(4)審査請求
原告P10は,上記(3)の決定を受け,平成23年7月21日付けで,
国税不服審判所長に対し,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,
平成24年3月21日付けで,本件ローン債務免除益は雑所得に,本件手
数料免除益は不動産所得に,それぞれ該当するとして,審査請求を棄却す
る旨の裁決をした。
以上

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛