弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成17年8月31日判決言渡 
平成15年(ワ)第17363号 損害賠償請求事件
判決
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、1557万9493円及びこれに対する平成15年9月3日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、声が出しづらいとしてA病院(当時)を訪れ担当医師から甲状腺腫
瘍と診断されて手術を受けたが、手術後に頸部の違和感及び圧迫感並びに甲状腺機
能低下等の後遺症を発症し、これらは担当医師が穿刺吸引細胞診を実施して手術適応
を判断することを怠ったことにより手術適応を誤った過失又は担当医師には原告に対し
て十分な説明をしなかった過失があるものと主張して、上記病院を管理する被告(上記
病院は、本件の診療がされた当時は国が設置管理していたが、平成16年4月1日以
降、被告が承継した。)に対し、診療契約上の債務不履行に基づき、損害賠償金及び訴
状送達の日の翌日である平成15年9月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を請求している事案である。
1 前提となる事実(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のペ
ージ番号等を〔〕内に示し、さらに特定する場合は〈〉内に示す。以下同じ。)
(1) 当事者
ア 原告は、昭和25年2月1日生まれの女性であり、平成11年7月5日から、神奈
川県相模原市所在のA病院(初診当時の名称。以下「被告病院」という。)の耳鼻咽喉科
において甲状腺の診療を受けた(争いのない事実)。
イ 被告は、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)に基づき、平
成16年4月1日に成立した機構である。被告は、同日当時国立病院であった被告病院
を国から承継するとともに、同法附則5条及び独立行政法人国立病院機構法施行令
(平成15年政令第516号)附則4条の規定に基づき、本件訴訟を国から承継した。(裁
判所に顕著な事実)
(2) 診療経過の概略
 診療に関する事実経過は、別紙「診療経過一覧表」に記載のとおりであり(同表の
うち、「診療経過」欄のゴシック体部分以外は当事者間に争いがない事実であり、診療
経過に関する原告の主張は「原告の反論」欄に記載のとおりである。)、その概略は次
のとおりである。
ア 原告は、声が出しづらくなったとして、平成11年7月5日、被告病院耳鼻咽喉科
の診察を受けた。その際、B医師(以下「B医師」という。)が原告の診察を担当した。(争
いのない事実)
 B医師は、問診及び触診を行ったところ、甲状腺腫瘍が疑われたため、血液検
査、生化学検査、免疫血清検査、尿検査、聴力検査、頸部超音波検査及びX線検査を
施行し、CT、MRI及び甲状腺シンチグラムの検査予約をした(乙A1〔1ないし5、10な
いし17、35〕)。
イ 原告は、平成11年8月30日、被告病院に入院し、翌31日、B医師(術者)、C医
師、D医師及びE医師の担当のもと、甲状腺亜全摘出術(以下「本件手術」という。)を受
けた。この際、原告の甲状腺左葉全体(15グラム)が摘出され、右葉からは嚢胞性腫瘍
1個が甲状腺実質をつけて摘出されたほか(5グラム)、硬い腫瘤2つを周囲の組織ごと
(1グラム)が切除された。(争いのない事実、乙A2〔4、8、21、22、26、29ないし3
3〕)
(3) 手術後の状況
 原告は、被告病院を退院後も、体調の不良を訴えて被告病院を外来受診していた
(争いのない事実、乙A1)。現在は、F医院に通院し、「腺腫様甲状腺腫・甲状腺右葉切
除後」との同病院の医師による診断のもと、甲状腺ホルモン剤であるチラーヂンS錠50
を服用している(甲A1、A2、原告本人〔31〕)。
2 争点
(1) 原告に対する甲状腺腫瘍摘出手術の適応の有無
(2) 原告に対する説明義務違反の有無
(3) 上記各過失行為と損害との間の因果関係の有無(判断する必要がなかった争
点)
(4) 損害額(判断する必要がなかった争点)
3 争点についての当事者の主張
 別紙「主張要約書」(これは、平成17年9月13日の本件第6回弁論準備手続期日
において当事者双方が陳述した争点整理案を基本とし、その後の当事者の主張を付加
したものである。)記載のとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 事実関係
 証拠等によれば、次の事実が認められる。
(1) 初診時(平成11年7月5日)の診察と検査
ア 原告の主訴
 原告は、問診票「3.声がかれる」の項目を丸で囲むとともに、B医師からの問診
に対しても、3か月前からしゃべりすぎると喉が詰まったり声が嗄れると訴えた。(乙A1
〔4、35〕、A15、証人B〔1〕)
イ 視診の実施
 これに対し、B医師は、内視鏡等により検査を行った。その結果、声帯の動きは正
常であり、反回神経麻痺はなく、よって、反回神経に対する癌の浸潤は認められなかっ
た(乙A2〔2〕、証人B〔25〕)。
ウ 触診の実施
 さらに、B医師は、原告の頸部の触診を実施したところ、甲状腺の左葉に嚥下とと
もに挙上する腫瘤に触れた(乙A1〔4〕、乙A15〔2〕)。
 この点に関し、原告は、B医師が触診をしようとはしたものの実際にはしなかった
旨を述べる(原告本人〔16〕)。しかし、乙A第1号証・4頁には、首の付け根の当たりに
丸印が付され、「?」との記載があることから、通常であれば医師が何らかの診察によっ
て当該部位に異常の存在する可能性を認めたものと考えられるし、B医師が触診をしよ
うとしたところ原告が「甲状腺」と発言したため結局触診をせずに他の検査をしたという
原告の供述内容自体も、そのような発言自体が唐突で不自然であり、医師が原告の同
発言のみを根拠に実施しようとしていた触診を省略したというのも不自然かつ不合理で
あって、結局、B医師が触診をしなかったという原告の供述は信用できない。
 なお、原告は、乙A第1号証・4頁の頸部の記載の直下にはエコーの記載がある
こと、乙A第2号証・3頁に「喉の違和感のため、当科を受診した。エコーにて甲状腺腫瘍
を指摘された」と記載されていることなどを根拠に、触診は実施せず、超音波検査(エコ
ー)によって腫瘤を発見したものであると主張する。しかし、甲状腺の腫瘤の検査方法と
しては、検査のための器械・器具を何ら必要としない触診が最も容易な検査手段である
し、乙A第1号証・4頁におけるエコーに関する記載は頸部に関する記載の直下にあると
は言い難く、また、乙A第2号証・3頁の記載についても、超音波検査の結果として甲状
腺腫瘍が指摘されたことをもって触診を実施しなかったということはできず、原告のこの
主張は採用できない。
エ 血液検査等の実施
 そこで、B医師は、血液検査、生化学検査、甲状腺機能検査、尿検査、聴力検査
並びに甲状腺及び喉頭のX線検査を施行した。これらの検査のうち、前五者(血液検査
ないし聴力検査)については異常が見られなかった。
オ 超音波検査の実施
 B医師は、上記と同様に、原告の甲状腺について超音波検査を実施した。その結
果、B医師は「甲状腺左葉の中ないし下極にかけて充実性の腫瘍を認める。内部は一
部cystic(嚢胞性)になっている。また周囲には多数のcysticlesion(嚢胞性病変)あり。右
葉中極から下極にかけて嚢胞性病変を認める。左葉の充実性の部分は血流に富んで
いる」旨、すなわち、右葉中部に腫瘤を、左葉に嚢胞性部分及び充実性部分をそれぞれ
認め、それぞれについて次の所見を示している。すなわち、右葉中部の腫瘤に関して
は、内部エコーはほぼ均一で嚢胞性、境界は明瞭、底面エコーはやや増強、被膜は保
たれており、被膜外への進展はない。左葉の腫瘤に関しては、内部に嚢胞を伴った左葉
の大部分を占める充実性の腫瘍を認める、充実性部分には部分的に高エコー帯が認
められる、正常甲状腺との境界はやや不明瞭、底面エコーは増強。(乙A1〔4、10ない
し16〕、A6の1ないし5、A13〔1〕、A15〔2〕、証人B〔1ないし3〕)
(2) 2回目の診察日(平成11年7月26日)までに施行したその余の検査とその所見
ア 甲状腺シンチグラム検査(乙A1〔18、19〕)
(ア) 被告病院は、B医師からの依頼に基づき、原告について、平成11年7月12
日、甲状腺シンチグラム検査(Tc-99m04-)を施行した。この結果について、被告病院放
射線科のG医師及び同H医師は、「甲状腺右葉中部から下極、左葉中部及び下極外側
及び内側にcoldnodule(コールド結節)を少なくとも4個認めます。左葉への集積は全体
に右葉より低下しています。Tl-201CIによる甲状腺scanも施行して下さい。」との所見を
得、被告病院は「多発性甲状腺腫瘍」であるとの診断をした(乙A1〔18〕)。
(イ) 被告病院は、原告について、平成11年7月19日、甲状腺シンチグラム検査(
Tl-201CI)を実施し、この結果について、被告病院放射線科のG医師及び同H医師は、
「甲状腺左葉中部から下極にかけてcoldnoduleを認めます。甲状腺右葉の上極、中部
にcoldnoduleを認めます。左葉の中部(ほぼ左葉の正中)にはRI集積の高い部分を認
めますが、明かなhotnoduleは指摘できず、早期像と遅延像の比較でも洗い出しは均一
と考えます。」との所見を得、被告病院は「甲状腺嚢腫疑い」であるとの診断をした(乙A
1〔19〕)。
イ CT検査
 被告病院は、原告について、平成11年7月19日、頸部CT検査を実施し、被告病
院放射線科のI、H及びJ医師は、「#甲状腺左葉中部に円形のmasslesion(腫瘤性病
変、証人B〔28〕)が見られます。辺縁には充実成分がみられ、また内部に石灰化がみ
られます。明かな被膜外への進展はみられません。」、「#甲状腺右葉(乙A1〔20〕には
「左葉」と記載されているが、右葉に関する記載がないことと乙A13の記載と対比する
と、「右葉」の誤記と認める。)中部にもmass(腫瘤)がみられます。明らかな充実成分は
見られませんが内部のCT値は水よりもやや高いです。明らかな被膜外への進展はみら
れません。石灰化(-)」、「#左後頸三角リンパ節、左項リンパ節がやや目立ちます。」と
の所見を得た。(乙A1〔20〕)
(3) B医師の所見
ア B医師は、上記(1)及び(2)の各検査の所見に基づき、次のように判断した。
(ア) 原告の甲状腺腫瘍は、多発性であることから、術前診断は線腫様甲状腺腫で
あるが、超音波検査で充実性の腫瘍を認めるとともに石灰化が疑われ、CTによって石
灰化が確認されたことなどから甲状腺左葉の一部には悪性の疑いがある(乙A15〔4、
7〕)。
(イ) 甲状腺腫瘍は悪性であったとしても、ほとんどが性質のおとなしい癌であり、
腫瘍に切り込むことなく周囲組織ごと摘出できれば再発の危険性はごく僅かであり、術
後の病理診断で仮に癌の合併があったとしても、腫瘍ごと腺葉を摘出すれば再発の危
険性は少ない。(乙A15〔7〕)
(ウ) 癌であった場合、稀に反対側へ腺内転移を起こす場合もあるが、残存甲状腺
からの再発防止という面から甲状腺を全摘することは、術後の患者の生活の質(Quality
oflifeを指す。以下「QOL」という。)を考えると合理的でない。仮に全摘とした場合、術
後に甲状腺ホルモン剤の補充が必須で、副甲状腺機能低下に対してはビタミンD、カル
シウム製剤の補充も生涯にわたり必要になる。(乙A15〔8〕)
(エ) 甲状腺機能・副甲状腺機能低下症など、術後の患者のQOLの面から、できる
限り正常甲状腺組織は残すべきである。良性である可能性もあり、甲状腺を大きく摘出
すると一生薬を飲み続けなければならないことを考えれば、良性であった場合、QOLの
面から非常に問題になる。他方、甲状腺の摘出範囲が小さいと、癌で再発を認めた場
合、再手術が必要になるが、その可能性は低い。(乙A15〔8〕、弁論の全趣旨)
(オ) 手術の合併症については、腫瘍は被膜外への進展はなく、反回神経はまず
問題なく保存できる。術後の甲状腺機能も3分の1は正常甲状腺が残るので、甲状腺機
能はまず問題にならない。副甲状腺は右葉の2個を残せるので、術後の機能について
は問題ない。(乙A15〔8〕、弁論の全趣旨)
イ B医師は、上記アを根拠として、手術による治療を行うとの方針を立て、具体的
には、次のような治療方針を立てた(乙A15〔8〕)。
(ア) 悪性の合併も考えられる左葉の腫瘍は左葉全体を完全に摘出する。
(イ) 右葉は、中部の嚢胞は核出し、下極の充実性の小さな腫瘍は部分切除とし、
患者のQOL重視の立場から、極力保存する。
(ウ) 実際の術中所見で、腫瘍の被膜外への浸潤や癒着、リンパ節腫脹など悪性
を疑う所見が見られれば、リンパ節を郭清する。
ウ B医師は、上記の方針に基づき、平成11年7月26日の診察日に、原告に対す
る甲状腺手術を施行する日として同年8月31日を予約し、同月11日に術前検査を行う
こととした(乙A1〔5〕)。
(4) 本件手術が施行されるまでの経緯
ア MRI検査とB医師の判断
(ア) 被告病院は、原告について、平成11年7月29日、頸部MRI検査を施行し、
被告病院放射線科のI、H及びJ医師は、「#甲状腺左葉は腫大し上極~下極にかけて
内部に多房性のmass(腫瘤)がみられます。内部の隔壁様構造にはGd-DTPAによる
enhance(増影効果)がみられます。明らかな被膜外への進展は見られないようです。」、
「#甲状腺右葉中部にもmassがみられます。充実成分は内側にみられます。T1:low、
T2:lowを示しています。明らかな被膜外への進展はみられません。」との所見を得た(乙
A1〔21〕)。
(イ) B医師は、内部の隔壁様構造にはGd-DTPAによる増影効果がみられること
から、悪性の可能性を考えなければならないと判断した(乙A13〔3、4〕、証人B〔8〕)。
イ 手術の決定と原告による手術の承諾
 B医師は、上記(3)及び上記アの判断のもと、手術を施行することとし、平成11年
8月11日、画像上の検査等ですべてが明らかになるものではないため、上記(3)イ(ウ)
の方針などを念頭に置き、手術承諾書に、手書きで「術中所見により、多少術式が変わ
る場合があります。」と記載した(乙A1〔5、37〕、A15〔5ないし8〕)。
 原告は、同日、上記承諾書の交付を受けて帰宅し、同月17日にこれに対して署
名押印をした上、同月30日の入院時に提出した(乙A1〔37〕、A2〔29〕、A15〔8〕、原
告本人〔8、24〕)。同承諾書には、「……手術、麻酔、検査及び処置等を依頼するにあ
たり、その内容、その必要性、その後の経過と予想される結果、起こりうる合併症などに
ついて、担当医師から説明を受け、了解しました。よってその実施を承諾します。」との
記載が不動文字で存在し、説明医師としてB医師の氏名が手書きで記載されている(乙
A1〔37〕、乙A15〔8〕)。
ウ 原告の入院
 原告は、平成11年8月30日午前9時30分、被告病院に入院した(乙A2〔2、1
0〕)。
 入院に際し、原告は、「問診票」に必要事項を記入した。原告は、質問事項のう
ち、「3)医師からどのように説明されましたか」との項目に対する回答としては「大きな声
でしゃべっていたので、そういう風になるとも…。腫ようがあるので手術が必要」と、「V.
ご入院に際しまして、何か質問はありませんか」との項目に対する回答としては「手術は
甲状腺の手術に慣れた専門の外科医がなさるのでしょうか‥‥」とそれぞれ記載した。
(乙A2〔14ないし19〕)
 他方、被告病院の看護師は、原告から必要事項を聴取し、これを「入院時データ
ベース」に記入した。そのうち、「医師から病気についてどのように説明されたか」の項目
に「腫瘍があるのでとった方がいい」と記載されている。(乙A2〔10〕)
エ 穿刺吸引細胞診の不施行とB医師の認識
(ア) 原告に対しては、初診時から本件手術を施行するに至るまで、穿刺吸引細胞
診は実施されなかった(争いのない事実)。
(イ) 穿刺吸引細胞診について、B医師は、次のような認識を有していた。
a 一般的に、甲状腺腫瘍において画像診断等により充実性、石灰化が認められ
る場合は、穿刺吸引細胞診を行う必要はない(乙A15〔14、15〕)。
b 穿刺吸引細胞診については、内頸動脈が近くにあり、誤って突いて大出血を起
こして気道狭窄を来した症例など、出血の恐れや、気胸、播種の問題がある。播種は、
臨床的に問題にならないだろうと文献には書いてあるが、実際にはそのような文献はご
く僅かで、はっきりしたことは言えない。実際、特に耳鼻科の場合、扁平上皮癌という悪
性度の強い腫瘍を扱うことが多く、安易な穿刺が播種や急激な腫瘍の増大や転移を促
進することが経験的に判っている。したがって、甲状腺については問題がないとはいえ
ないのであって、そうである以上、B医師が過去に所属していた北里大学の医局の方針
と同様に、穿刺吸引細胞診は慎重に行うべきである。(証人B〔16〕)
 原告については、画像所見等で手術適応があると判断されるし、その上で侵襲
を加えるような穿刺吸引細胞診を行う必要もないのであるから、穿刺吸引細胞診を実施
する必要はない。(証人B〔15、16〕)
(5) 本件手術の施行
 原告は、平成11年8月31日午後2時10分、入院病棟から手術室へ出棟し(乙A2
〔22〕)、次の手順により手術が施行された(乙A2〔30〕、乙A15〔8ないし10〕)。
ア 襟状切開による皮膚切開
イ 皮膚の剥離
ウ 甲状腺の露出
エ 甲状腺周囲の剥離
オ 反回神経の確認及び保存
カ 腫瘍の摘出
キ リンパ節の郭清
ク 縫合
(6) 原告の甲状腺腫瘍の状態(良性)
 被告病院のC医師は、本件手術において摘出された原告の甲状腺について、病理
組織検査を依頼し、平成11年9月3日、同検査がされた。病理診断医であるK医師は、
上記甲状腺について、「腺腫様甲状腺腫、良性」と診断し、「2.1×4.5×2cm大の甲状
腺左葉内には結節性病変が多発している。これらはいずれも大小の濾胞の増生巣で、
中心部には硝子様の小さな線維化巣がみられる。被膜形成は不完全で、腺腫様甲状腺
腫と診断される。甲状腺右葉の3×1.5×1.3cm大と1.5×1.4×0.8cm大の2個の結
節についても左葉とほぼ同様で、一部は嚢胞状に拡張した濾胞も含まれている。また、
繊維化に加え石灰化を伴った部分も認められる。以上、全体として甲状腺全域の腺腫
様甲状腺腫の存在が示唆される。悪性所見なし」との所見を得た。(乙A2〔36〕)
(7) 本件手術施行後の状況
ア 退院(平成11年9月24日)まで
 原告は、本件手術後、首が引きつれて重い感覚があるとの訴えがあった他は良
好に経過し、2度の外泊を経て、平成11年9月24日、被告病院を退院した(乙A2〔2、
24、25、45、46〕)。
イ 退院後の外来受診
 原告は、退院後も13回にわたって外来受診をし、そのうち、平成11年10月29
日、11月29日、12月15日、平成12年2月16日、3月15日、10月19日には、医師
の診察を受けた(乙A1〔5ないし9〕)。
 そのうち、平成12年2月16日には、原告は、D医師に対し、本件手術に関して質
問をした。この点に関し、同日の外来診療録に、「私はセカンドオピニオンという単語は
知っていたが素人なので手術と言われたらやるしかなかった」旨の記載がある。(乙A1
〔7〕、原告本人〔10、11、32、33〕)
2 医学的知見関係
 証拠等によれば、次の医学的知見が認められる。
(1) 結節性甲状腺腫の種類と症状
ア 良性結節
 良性の結節には、腺腫と腺腫様甲状腺腫、濾胞がある。腺腫様甲状腺腫は、厳
密には腫瘍とは言い難いが、診断上ないし治療上、良性結節に含めて考えられる。腺
腫様甲状腺腫を過形成として分類する場合もある。(甲B4〔124〕、B6〔104〕、B8〔8
76〕、B9〔83〕、乙B2〔222〕)
イ 悪性腫瘍
 悪性腫瘍は、乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫に分類される
(甲B4〔121ないし122〕、B6〔113〕、B8〔876〕、B9〔83〈表III・2〉〕)。
(2) 結節性甲状腺腫の診断法
 結節性甲状腺腫の診断をするためは、次の方法がある(甲B16〔96ないし10
2〕、乙B3〔488ないし494〕)。
ア 問診
 腫脹に気付いた時期や腫大の有無、随伴症状(嗄声や嚥下障害の有無など)の
有無を聞き出す(甲B16〔96〕、乙B3〔488、489〕)。
イ 視診
 前頸部の皮膚の性状を診る(甲B16〔96〕)。嚥下運動により腫瘍が喉頭と共動
することを確認する(乙B3〔489〕)。
ウ 触診
 硬さの程度とその均一性、波動の有無、結節の表面と境界の性状を診る(甲B1
6〔96、97〕)。
 腫瘍の表面の性状や硬さ、大きさ、波動の有無をみるだけでなく、喉頭、気管及
び頸動脈などとの関係に注意することが重要である。気管はほとんど健側に曲がってい
ることも確認する。転移の有無も確かめる。良性の甲状腺腫は一般に弾性を有するが、
癌では硬く周囲と癒着し、また転移を触れることがある。(乙B3〔489〕)
エ X線撮影検査
 気管の状態や石灰化像の有無とをみる。
 喉頭撮影正面及び側面を撮影する。気管の偏位と石灰沈着の有無が重要な所
見である。乳頭腺癌に石灰化がみられることが多い。砂粒腫様小体がみられれば決定
的である。触診で触れなくとも石灰化をみたら、甲状腺癌を疑って精査する必要がある。
(乙B3〔489、490〕)
オ 超音波検査
 結節が充実性か嚢胞性かをみる。充実性であれば、たとえ良性のものであっても
結節が徐々に大きくなる可能性があるほか(甲B4〔125〕)、腺腫や癌、腺腫様結節な
どが考えられる。嚢胞性であれば嚢胞あるいは嚢胞変性を起こした腺腫や腺腫様結節
が考えられる。腫瘤の形態と内部構造の性状をみる。反射強度では特に悪性リンパ腫
で細胞が均一に増殖すると内部エコーが帰ってこないため、嚢胞と見間違うような所見
を呈する。石灰化は乳頭癌あるいは髄様癌を疑わせる。(甲B16〔97〕)
 水浸法で一般にI型、II型及びIII型の3パターンを示す。II型及びIII型は充実性
の腫瘍であり、特にIII型は内部に石灰沈着や結合組織の増殖が強いものにみられ、癌
の可能性が高いといえる。(乙B3〔491、492〕)
カ シンチグラム
 201Tl等によるシンチグラムでは、甲状腺結節性病変の良性・悪性の判定、悪性
腫瘍の浸潤範囲や遠隔転移の検索ができる(甲B13〔84〕)。
 131Iによるシンチグラムは、一般に良性腫瘍ではcoldnoduleの境界が明瞭で、悪
性腫瘍は境界不鮮明か全く欠損するといわれている。ただし、これには反論もある。(乙
B3〔493〕)
キ 甲状腺機能検査
 大部分の甲状腺腫は、甲状腺機能は正常であって実際には機能検査の診断的
価値は少ないが、他の甲状腺疾患を否定する意味で必ず行われている(乙B3〔49
3〕)。
ク 穿刺吸引細胞診・病理組織診
(ア) 直接、腫瘍に針を刺し、腫瘍細胞を採ってくる(甲B16〔97〕)。
 切開して切除する方法や、針による組織採取法や細胞診がある。これらの方法
については、転移の問題があって論議の的になっている。22ゲージくらいの細い針で行
うaspiratonbiospy(穿刺吸引細胞診)なら転移や散布を生じないだろうという意見がある
が、採取組織が少ないため誤診の可能性がある。(甲B17の2〔163〕、乙B3〔493〕、
弁論の全趣旨)
(イ) 穿刺吸引細胞診の結果は、クラス1からクラス5の5段階に分類され、その内
容は次のとおりである(裁判所に顕著な事実、弁論の全趣旨)。
● クラス1正常(異型細胞を見ない)
● クラス2良性異型(異型細胞はあるが悪性細胞を見ない)
● クラス3良性・悪性の判定の困難な異型(悪性を疑わせる細胞を見るが確定
診断できない)
● クラス4悪性を強く疑う(悪性、極めて濃厚な異型細胞)
● クラス5悪性(悪性と診断可能な異型細胞)
ケ CT、MRI
 腫瘍の進展度(周囲臓器、特に気管や前縦隔内への進展度)をみるのに有用で
ある(甲B5〔38〕、B16〔102〕)。
(3) 穿刺吸引細胞診の一般的有用性と危険性
ア 一般的有用性
(ア) 甲状腺の触診や超音波などの画像診断で結節が認められたとき、それが悪
性が良性かを診断するのに、穿刺吸引細胞診は最も優れているとされている(甲B2〔2
1〕、B3〔44〕、B4〔115〕、B5〔35、40〕、B10〔90〕、B11〔55〕、乙B4〔252〕)。触
診の際、特に悪性が疑われる場合には必ず行うべきであるとの指摘もある(甲B13〔8
1〕)。
(イ) 特に、超音波ガイド下穿刺吸引細胞診には、針先が穿刺目的部位に到達した
かどうかを画像上で客観的に確認でき、血管その他周囲臓器の副損傷を容易に避ける
ことができる、触診や他の画像診断で検出できない小病変でも穿刺が可能であるなどの
有用性があるとされている(乙B7〔16〕)。
イ 合併症
 穿刺吸引細胞診の合併症としては、出血、感染及び癌細胞播種の3つが考えら
れる(乙B7〔23、24〕)。
ウ 穿刺吸引細胞診に対する慎重な考え方
(ア) 穿刺吸引細胞診は、良性腫瘍の診断率は優れているが、本来の目的である
悪性腫瘍の診断率については20%強の取りこぼし(偽陰性)があり、偽陰性の例では、
嚢胞状変性の例で嚢胞液が穿刺され十分に細胞が採取されなかったものが多く、次い
で乳頭癌に特徴的な石灰化のために細胞が上手く採取されなかったものが多かったと
の指摘がある。(乙B4〔252〕)
(イ) 穿刺吸引細胞診では、濾胞腺腫と濾胞癌とは鑑別が困難であることは、その
有用性を強調する文献も多くも認めているし(甲B2〔21〕、B3〔44、49〕、B4〔115〕、
B5〔43〕)、むしろ充実性結節では濾胞癌の見落としが問題となるとの指摘もある(甲B
11〔56〕)。また、濾胞が多い乳頭癌の診断が困難であって、実際、甲状腺癌の約9.5
%を占めている濾胞癌が誤診される率は約75%から85%であり、乳頭癌でも濾胞構
造を示す部分が多いものでは誤診率が25%程度になる。(乙B5〔1〕)
(ウ) 穿刺吸引細胞診については、腫瘍細胞の播種が起こりうることを重視し、その
適応は慎重に決定されるべきであって、頭頸部領域に原発巣がある患者の転移と思わ
れる頸部腫瘤に対する穿刺吸引細胞診は行うべきでないなどと考え、穿刺吸引細胞診
の適応は①良性腫瘍の可能性も高いが悪性腫瘍である可能性も捨てきれない症例、②
すでに全身転移を認める症例、③他科領域からの頸部転移、④OB(openbiospy;切開
して行う組織診)で腫瘍に割を入れざるを得ない症例にあるという指摘もある(乙B9〔2
72、273〕)。
(4) 腺腫様甲状腺腫と腺腫、癌の鑑別
 腺腫様甲状腺腫と腺腫、癌を術前に鑑別診断するために99mTc・201Tlシンチグラ
ム、超音波検査、穿刺吸引細胞診などが駆使されるが、手術後の病理組織検査によら
ない限り、腺腫様甲状腺腫に癌や腺腫が合併していることの正確な判断は困難である
(乙B4〔248〕)。
(5) 腺腫様甲状腺腫と癌の合併頻度
 腺腫様甲状腺腫の大半のものは腺腫様結節として出現し、その多くは増大せず、
大きくなったものでもやがて二次性変性により自然退縮する傾向があるので、できるだ
け手術をしないという考えも依然として根強いが、一方で、腺腫様甲状腺腫に癌が合併
することは多くの報告にみられ、その頻度も近年増加してきているとの指摘がある(乙B
4〔248〕)。
 腺腫様甲状腺腫は約20%に乳頭癌の合併があるので、要注意であるとの指摘が
あり(乙B4〔253〕)、これとほぼ同旨の指摘もある(甲B9〔87〕)。
(6) 甲状腺腫瘍の治療方針と摘出手術の適応
ア 悪性腫瘍の場合
 甲状腺腫瘍が悪性腫瘍である場合には、その治療は手術による腫瘍の摘出であ
り、手術の絶対的適応がある(甲B1〔184〕、乙B3〔494、495〕)。
イ 良性腫瘍ないし良性結節、腺腫様甲状腺腫の場合
(ア)a 良性腫瘍ないし良性結節の場合に考えられる治療法には、経過観察をして
甲状腺刺激ホルモン(以下「TSH」という。)抑制療法を行うほか、手術がある(甲B1〔18
3〕、B4〔124〕、B17の2〔164〕、)。
b 良性腫瘍ないし良性結節の場合には、癌の合併等がない限り原則として手術
は不要であるとの見解もあるが(甲B3〔43〕、B4〔124〕)、良性腫瘍の場合、一般に、
手術適応については相対的適応であると考えられている(甲B16〔102〕)。また、相対
的適応の基準については、それぞれの施設、それぞれの医師によってさまざまであると
の意見もある(甲B16〔103〕)。また、良性腫瘍であることがはっきりしている例でも、腫
瘤がある程度大きいと抑制療法を行う例もあるが、経過観察よりは患者の希望を入れ、
インフォームドコンセントの上、積極的に手術していることが多く、今日なお甲状腺良性
腫瘍(非機能性)に対しての治療法は外科医、耳鼻咽喉科医に統一された指針は決ま
っていないとの意見がある(乙B8〔853〕)。
(イ)a 甲状腺良性結節の手術適応は次の6つであるとの意見がある(甲B9〔8
4〕)。
● 縦隔内甲状腺腫(周囲臓器への圧迫症状がある)
● 腫瘤内への出血がある
● 大きい腫瘤(径5cmを超えるもの)
● 悪性の可能性が否定できないとき(濾胞性腫瘍で径3cm以上、穿刺吸引細
胞診でクラス3、次第に大きくなるもの(TSH抑制療法に反応しないもの)、細胞診で好酸
性細胞腫瘍、超音波検査で嚢胞内に乳頭状の突起があるとき)
● 機能性甲状腺結節
● 美容上の問題
b 同様に、手術適応はむしろ厳しくしていると断った上、相対的手術適応は次の
8つ及びその他であるとの意見がある(甲B16〔103〕)。
● 大きく硬い腫瘤(5cmを超えるもの)
● 次第に大きくなるもの(TSH抑制療法に反応しないもの)
● 嚢胞及び嚢胞変性を来たし穿刺吸引を繰り返しても縮小しないもの
● 超音波エコーで嚢胞内に乳頭状の突起物のあるもの
● 細胞診でクラス3のもの
● 好酸性細胞のもの
● 機能性結節(AFTN、TMNG)
● 社会的適応
(ウ)a 他方、原則として腺腫様甲状腺腫については手術は不要であるとしながら
も、直径3cm以上あるいは4cm以上の結節があって、しかも超音波検査をして充実性の
場合は、放置すると今後まだ大きくなる可能性があると思えるため、絶対的適応ではな
いとしつつも、手術を勧めていいとする見解がある(甲B4〔124、125〕)。
b L医師は、「多発結節性の腺腫様甲状腺腫で小さい明らかに良性結節と思わ
れる場合は、しいて手術を施行しなくてもよいが、変化の著しいものは癌の合併がありう
るし、腫大の傾向が強く、時に胸腔内に進展することがあるのでやはり手術すべきであ
る」と指摘する(乙B4〔249〕)。
c 良性の腫瘍が大きくなるには20年、30年という長い年月がかかるが、かなり
の高齢になって体力も弱り、持病を持つようになって気道閉塞になって苦しむことにな
る。持病の種類と程度によってはすぐに手術ができないこともある。したがって、それほ
ど高齢であるとか病人でなくてもあまり大きなこぶを頸部に持っているのは美容的にも
醜く、やはり切除した方がよい場合もあるとの指摘もある。(乙B5〔1〕)。
3 争点(1)(原告に対する甲状腺腫瘍摘出手術の適応の有無)について
(1) 認定事実に対する評価
ア 前記2(3)アにおいて認定したとおり、穿刺吸引細胞診は、甲状腺腫瘍が良性で
あるか悪性であるかを鑑別するのに有用な検査であり、広く実施されている検査である
ことが認められ、B医師もこれを認めている(証人B〔15、39〕)。これに対して、同ウに
おいて認定したとおり、穿刺吸引細胞診には一定の限界があり、その有用性に対する
懐疑的な見解も存在し、B医師は、基本的にこれに同調し、他の検査結果から手術適応
があると認められる場合には、たとえ穿刺吸引細胞診を行って陰性の結果が出たとして
も手術を実施するほかないのであるから、そのような場合には、これを行う必要はないと
考えるものと認められる。
イ 他方、前記2において認定したところを総合すれば、良性腫瘍ないし良性結節の
場合には、これを原則として経過観察とするとしながらも一定の場合には手術適応があ
るとするのが一般的見解であると認められる。しかし、結節等が良性か否かの確定診断
は手術後の病理組織検査によるほかなく、穿刺吸引細胞診では一定割合の偽陰性が
あり、陰性であっても良性であるとの確定診断が下せないのであるから(なお、穿刺吸
引細胞診を実施しても、クラス3の診断となった場合には、特に確定診断が下せないも
のである。)、他の検査結果から既に悪性であるとの疑いが相当程度認められる場合に
は、仮に穿刺吸引細胞診を行って陰性の結果が出ても、なお悪性の疑いを否定できな
いこととなるが、このような場合にも敢えて穿刺吸引細胞診を行うべきであると明示的に
論じた文献は見当たらないし、むしろその結果いかんにかかわらず悪性の疑いが払拭
できない以上、そのような検査は行う必要がないと考えるのが合理的である。
ウ 本件においては、前記1(3)及び(4)において認定したとおり、B医師は、原告の甲
状腺の結節については、その形状が大きく充実性で石灰化が認められることから、癌で
ある疑いがあるものの良性である可能性があると認識していたところ、前記2(2)オにお
いて認定したとおり石灰化が乳頭癌あるいは髄様癌を疑わせる所見であること、同(4)及
び同(5)において認定したとおり腺腫様甲状腺腫にも癌の合併があり得ることといった各
医学的知見を考慮すれば、B医師の認識に誤りはない。また、本件において原告の甲
状腺左葉の状態は前記1(1)オ及び前記1(2)イにおいて認定したとおり充実性部分が認
められることから、次第に大きくなることが予想された上、前記1(6)において認定したと
おり、摘出後においても長径4.5cm、短径2.1cmに達し、左葉の全部を占めており、摘
出された甲状腺結節においては嚢胞成分が流出して縮小すると認められること(乙A1
6)を考慮すると、結節の大きさはさらに大きかったものと認められるのであるから、仮に
これが良性のものと認識し得たとしても、既に手術適応があったと認めることができる。
エ 以上からすれば、既に手術適応があると認められる本件においては、ことさら穿
刺吸引細胞診を実施する必要性に乏しいものとB医師が判断したことに不合理な点は
見当たらない。
 したがって、B医師が原告に対して穿刺吸引細胞診をするべき注意義務はないと
いえるのであって、B医師が原告に対して穿刺吸引細胞診を実施することなく手術適応
があると判断したことについて過失があるとはいえない。
(2) 原告の主張に対する判断
ア これに対して、原告は、穿刺吸引細胞診の診断的意義について主張した上、甲
状腺の腫瘤ないし結節が良性である疑いが強い場合には経過観察をすれば十分であ
って、手術は不要である旨主張する。
イ 確かに、原告が提出した書証によれば、一般的に、穿刺吸引細胞診が広く行わ
れ、かつ、良性腫瘍ないし良性結節であるとの疑いが強い場合にはこれを経過観察に
付すべきだという意見が強まっていることを推認することは可能である。しかし、前記1(3
)ア(ア)において認定したとおり、原告の結節は多発性のものであるから、これに穿刺吸
引細胞診を実施する場合には、相当回数の穿刺が必要となり、その危険性も無視でき
ないし、結節に石灰化が認められたことから良好な細胞を吸引できるか否かにも不確か
な点があったことと、充実性の結節が認められたことから濾胞癌の見落としも懸念され
たことを考慮すると、仮に穿刺吸引細胞診によって陰性の結果が出ても、良性を強く疑
い得る状況にはなかったと認められ、原告の主張はその前提を欠くといわざるを得な
い。
 この点に関し、原告は、甲B第20号証を挙げて、穿刺吸引細胞診を実施して良
性、悪性の鑑別をした場合の予後を根拠に、穿刺吸引細胞診の必要性と経過観察に付
すべきこととを主張するが、甲B第20号証・2頁の記載及び同5頁の図2によれば、この
研究は、細胞診上良性とされた患者1076人のうち臨床上悪性の疑いがある患者544
人を除外してされたものであるし、臨床上悪性の疑いがあるとして手術を施行したが、
結果として良性であった患者が上記544人のうち531人いたことが認められるのであっ
て、むしろ臨床上悪性の疑いがある以上、細胞診の結果にかかわらず手術を行うのが
実体であったことを示しており、甲B第20号証のみを以て経過観察に付すべきであると
いうことはできない。
ウ したがって、原告の主張は採用できない。
4 争点(2)(原告に対する説明義務違反の有無)について
(1) 緒言
ア 原告のこの点に関する主張は、穿刺吸引細胞診を行うべきであったことを前提と
して、穿刺吸引細胞診自体の説明と、その結果が良性であった場合には経過観察をし
て大きくならないようなら心配しなくてよいと説明すべきであったというものである。
 しかし、前記3で説示したとおり、本件においては穿刺吸引細胞診を行う必要はな
かったのであるから、この点を説明する必要は認められないし、仮にこれを実施して良
性の結果が得られたとしても、手術適応がある以上はその旨を説明すべきであって、原
告主張のような説明をする必要はない。
 したがって、原告のこの点に関する主張は、その前提を欠くものといわざるを得な
い。
イ 上記のとおり、原告の主張はその前提を欠き、原告は、手術適応や穿刺吸引細
胞診の必要性に関する被告の主張を前提として説明に不十分な点があったとの主張は
予備的にもしていないから、本来ならばこれ以上説明義務違反の有無について認定判
断する必要はないが、念のため、被告の上記主張を前提としてB医師の説明内容につ
いて検討する。
(2) B医師の説明内容について
ア B医師が実際にどのような説明を行ったかについては、当該双方の主張が大き
く異なっているところ、診療録には説明内容に関する記載がなく、手術承諾書における
説明内容に関する記載は非常に抽象的なものにすぎないから、被告主張のような詳細
な主張がされたことを裏付ける証拠はないといわざるを得ない。
イ もっとも、原告は、B医師が、平成11年7月26日の診察時には、「たぶん良性で
しょう。でも、1か所、内部の石灰化がちょっとね……」と説明をし、原告がB医師に対し
て「手術は、どうして受けなければならないのでしょうか」と質問したところ、同医師は「腫
瘍が大きくなりますから」と答え、そのほか合併症についての説明をしただけで、同年8
月31日に手術をすると決定されたと主張し、かつ、これに沿う陳述(甲A3〔2〕及び供述
(原告本人〔2、5〕)をする。
 しかし、前記1(1)ウにおいて認定したようにB医師が触診しなかった旨の原告の
供述が信用できないことに照らすと、原告が主張する内容以外の説明がされなかったと
も認定できない。
 仮に、実際の説明が原告主張の限度にとどまるとすると、説明としてはいささか
不十分との印象は免れないところであるが、腫瘍が良性である可能性があるにもかか
わらず、石灰化が認められることと腫瘍が大きくなる可能性があることから手術を行うと
の意図は十分に伝わっており、手術適応の判断の中核部分は説明されたと認めること
ができる。
 その上、原告は当該B医師を信頼しており(原告本人〔35〕)、手術適応があると
のB医師の判断に前記のとおり誤りがない以上、B医師が前記1(3)及び(4)の所見等を
詳しく説明したとしても、それに加えて、手術を行うとの結論を示されれば、手術に応じた
ものと認められるから(原告本人の同頁の供述中には、他の病院では経過観察をしてい
るところもあるとか、他の病院へ行って意見を伺ったらどうかと言われていれば、それに
従ったとする部分もあるが、前記のとおり、手術適応に関するB医師の判断に誤りがな
い以上、同医師としては、そのような説明や慫慂を行う義務はなかったというべきであ
る。)、仮に同医師の説明内容が上記のとおりであってそれが不十分であるとしても、こ
れによって原告の自己決定権が侵害されたとは認められず、原告に何らかの請求権が
発生するとは認め難い。
5 結論
 以上のとおり、争点(1)(原告に対する甲状腺腫瘍摘出手術の適応の有無)について
は、被告病院のB医師に過失があるとはいえず、かつ、争点(2)(原告に対する説明義務
違反の有無)についても、これを認めることができないのであるから、その余の争点(争
点(3)(上記各過失行為と損害との間の因果関係の有無)及び争点(4)(損害額))につい
て判断するまでもなく、被告に診療契約上の債務不履行がなく、損害賠償責任が発生し
ないことは明らかである。
 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官藤山雅行
裁判官金光秀明
裁判官萩原孝基
(別紙)
主張要約書
第1 穿刺吸引細胞診を実施せずに本件手術の必要性を判断した過失の有無
(原告の主張)
1 穿刺吸引細胞診の一般的有効性
 ①甲状腺の穿刺吸引細胞診、とりわけ超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診は、安全
性が高く、石灰化がみられるものも含めて良性・悪性の鑑別のみならず、腫瘍の種類に
ついても診断率が極めて高い、他方で②悪性腫瘍が疑われる部位についての穿刺吸
引細胞診で発見されないような微小癌は一般に経過観察で十分である、そして③甲状
腺摘出手術は、そもそも侵襲的な治療法であり、甲状腺機能低下の危険性があるだけ
ではなく、手術した皮膚の触覚知覚異常、感覚鈍麻、癒着によるひきつれ、さらには手
術に伴う感染症等の危険がある。
 したがって、穿刺吸引細胞診を実施しないで実施する手術(診断的治療目的手術)
に伴うリスクと穿刺吸引細胞診を実施したにもかかわらず悪性腫瘍を見逃した場合のリ
スクを比較した場合には、穿刺吸引細胞診自体の危険性は低く、仮に偽陰性であっても
経過観察にとどめることによるリスクは低いことからして、前者(穿刺吸引細胞診を実施
しないで手術を実施)のリスクの方がはるかに高いのであり、超音波ガイド下での穿刺
吸引細胞診を実施して悪性腫瘍であることが強く疑われない場合には経過観察をすれ
ば十分なのである。
 このようなことから、成書に甲状腺の結節性病変の診断プロセスに穿刺吸引細胞診
が不可欠な検査であることが記述されているばかりではなく、医学生向けの教科書にす
ら穿刺吸引細胞診が「甲状腺腫瘍の診断に最も重要な検査」であることが指摘されてい
るのである。
2 原告の甲状腺腫瘍についての手術の適否の判断
 ①甲状腺の結節はほとんど(90パーセント)は良性であり、腺腫様甲状腺腫の有無
により癌の合併率は異ならないこと、②原告の結節が多発性のものであり、良性疾患で
ある腺腫様甲状腺腫が最も疑われていたこと(実際術前診断、術後の確定診断のいず
れも腺腫様甲状腺腫となっている)、③原告の結節に関し癌を疑う触診所見としてたとえ
ば硬さ、周辺組織とりわけ気管への癒着の有無の可能性についての記載が診療録に
無く、結節は可動性であったこと、④被告病院放射線科による画像診断の報告書にある
診断名は腺腫様甲状腺腫とされていることなどから、原告の甲状腺の腫瘤は良性の可
能性が極めて高かった。
 このような場合に、穿刺吸引細胞診、とりわけ、超音波検査ガイド下の穿刺吸引細
胞診を実施することなく、悪性の疑いがあるとして甲状腺摘出手術をすることは許されな
い。
 この検査を実施せずに、結節の切除手術を行いうる条件を強いてあげるなら、腫瘍
が大きくて周辺組織とりわけ気管への圧迫症状がある場合や、患者が結節の存在を嫌
がり、自ら切除を望む場合くらいである。
 ところが、本件では、原告には結節による圧迫症状と思われる自覚症状はなく、甲
状腺左葉の腫瘤の大きさも3センチメートルに達するものではなく、まして触診、超音波
検査ではむしろ、良性の可能性が高かったものであり(悪性を示唆する記載は診療録に
見当たらない)、穿刺吸引細胞診をせずに手術の適応を判断することはできなかった。
にもかかわらず、被告病院は、平成11年7月5日の初診時に手術方針を決定し、その
後も手術方針を変更せず、平成11年8月31日に手術を行った。
3 原告に対する穿刺吸引細胞診の要否
 原告の場合には、石灰化した部位等の悪性が疑われる部位について穿刺吸引細
胞診を行えば、良性であると診断されたはずであり、穿刺吸引細胞診が必要であったこ
とは明らかである。このことを言葉を変えて言うなら、穿刺吸引細胞診を行わず、あえて
診断的治療目的で手術を行ったということになる。
(被告の主張)
1 原告の甲状腺腫瘍の性質
(1) 腺腫様甲状腺腫について
 原告の甲状腺腫瘍は、腺腫様甲状腺腫の疑いが強い病変であった。
 腺腫様甲状腺腫は、腺腫に似た大小種々の結節が多発性に生じるもので、結節
内には出血、線維化、石灰沈着等の変化がみられるなど、組織所見は多様で、超音波
検査の結果もそれに伴って多彩となる。腺腫様甲状腺腫は、臨床的に癌との鑑別が困
難で、術後の病理組織検査によらない限り、腺腫様甲状腺腫に癌が合併していることの
正確な判断は困難である。特に、画像診断により腫瘍に石灰沈着などの所見が認めら
れる場合には、超音波ガイド下穿刺吸引細胞診によっても細胞の採取がより難しくな
る。一方で、癌との合併は少なくなく、腺腫様甲状腺腫のうち約20パーセントに乳頭癌
の合併があるとの報告がされている(乙B4〔248ないし249頁、253頁左〕、乙B6〔69
7頁〕、乙B7〔66頁〕、甲B9〔87頁〕)。したがって、通常の良性腫瘍と異なり、腺腫様甲
状腺腫について、非侵襲的検査により悪性が疑われる場合に、誤診の可能性がある侵
襲的検査を行うことなく、手術後の病理組織検査により確定的に鑑別する(診断的治
療)ために、手術を行う必要性が高い。
(2) 一部に悪性が疑われたこと
 甲状腺の悪性腫瘍は、腫瘍の発育が緩徐なためか、繊維の増殖、硝子化、石灰化
を示すものが多く、超音波診断法等の画像診断により充実性の腫瘍に、石灰化が認め
られる場合は、癌(乳頭癌等)の可能性が高い(乙B3〔486ないし493頁〕、甲B8〔87
7頁〕)。なお、充実性、石灰化などの腫瘍の形態、内部構造等については、超音波検査
のみならずCTによっても診断できる(甲B9〔87頁〕)。
 原告については、上記頸部超音波検査及びCTの結果、甲状腺両葉に大小多数の
結節が多発的に生じ、甲状腺左葉に存在した腫瘍につき、充実性及び石灰化が認めら
れ、その大きさも長径4.5センチメートル以上、短径2.5センチメートルと比較的大きか
ったこと、嗄声が認められたことなどから、原告の甲状腺腫瘍について、悪性の疑いも
あった。
 なお、腫瘍に可動性があり、多発性であることは、腺腫様甲状腺腫を裏付ける所
見でもあるところ、腺腫様甲状腺腫は、一般的に相当の割合で悪性腫瘍の合併を伴うも
のであるうえ、原告については、上述のとおり、一部の腫瘍に充実性及び石灰化が認め
られるなど悪性が疑われる所見があった。したがって、本件においては、可動性、多発
性との所見があることをもって、原告の腫瘍が良性である可能性が高いということはで
きない。
2 原告の甲状腺腫瘍についての手術適応
 悪性腫瘍(甲状腺癌)の場合は、未分化癌及び悪性リンパ腫を除き、治療法の第1
次的な選択は手術である(乙B3〔495頁〕、B5〔2、3頁〕)。乳頭癌については、放射線
療法や化学療法は効果がなく、また、リンパ節転移を高頻度に起こし、気管・食道等の
甲状腺周辺臓器に浸潤増殖する例もあることなどから、進行すれば、組織又は臓器の
摘出範囲が広がり(乙B3〔496頁〕)、術後合併症が重くなる(患者のQOLを損なう)こ
とは容易に予想される。したがって、術前の検査によって乳頭癌の疑いがある限り、経
過観察を選択すべきだとはいえない(乙B2〔223頁〕)。
 また、良性腫瘍とされる腺腫様甲状腺腫であっても、上記1(1)のとおりの性質を有し
ていることから、超音波検査・CT等の画像診断により、腫瘍に充実性、石灰化が認めら
れるなど悪性腫瘍の疑いがある場合は、手術適応が認められる(乙B3〔494頁〈図2-
13〉〕、B4〔253頁左〕)。
 本件においては、上記1のとおり、必要な術前検査を実施した結果、原告の甲状腺
腫瘍につき腺腫様甲状腺腫が強く疑われ、その腫瘍の一部に悪性を疑う所見がみられ
たのであるから、本件手術の適応があった。
 特に、本件の場合、画像上、悪性の可能性が疑われる部位は反回神経に近接して
いたことから、経過観察中に反回神経に浸潤することもあり、その時点で摘出手術をす
るとすれば、浸潤した反回神経もともに摘出することとなり、一生にわたり、嗄声や嚥下
障害を残すことも十分に考えられたのであり、悪性腫瘍の進度を考慮してもなお、早期
に手術を行う必要性があったというべきである。
3 穿刺吸引細胞診の一般的な問題点
(1) 穿刺吸引細胞診の誤診率(補助診断法にすぎないこと)
 穿刺吸引細胞診は、採取し得る組織片が少ない、穿刺法・スライドガラスの上への
のばし方・固定法・染め方・見方それぞれに高度の技量を要する(甲B4〔114、115
頁〕)などの問題から、良性と診断されても誤診である可能性があり、甲状腺腫瘍につい
て、穿刺吸引細胞診によって良性と診断された症例のうち、手術後の病理組織学的検
査によって悪性と確定診断された例(偽陰性)が20パーセント以上あるとの報告もあり、
偽陰性の例は、嚢胞状変性の例で嚢胞液が穿刺され十分に細胞が採取されなかったも
のが多く、次いで乳頭癌に特徴的な石灰化のために細胞がうまく採取されなかったもの
が多いとされている(乙B4〔252頁〕、B8〔848頁〕、甲B7〔9頁〕)。また、乳頭癌でも
濾胞構造を示す部分が多いものでは誤診率が25パーセント程度になり(乙B5〔1
頁〕)、画像診断により石灰沈着などの所見が認められる場合には、穿刺吸引細胞診に
よる細胞の採取は難しくなる(乙B4〔253頁左〕)。
 したがって、穿刺吸引細胞診は、甲状腺腫瘍が良性であるとの鑑別診断において
選択し得る補助診断の一つにすぎず(甲B4〔114頁〕)、確定診断法とはなり得ない。悪
性腫瘍の合併が疑われる甲状腺腫瘍について鑑別診断を行う場合、確定診断は、摘出
された腫瘍の病理診断によってのみ可能である(乙B4〔248頁〕)。
(2) 穿刺吸引細胞診の合併症
 穿刺吸引細胞診には、出血、感染、細胞播種などの危険もある。出血は、血管の
誤穿刺と易出血性腫瘤穿刺の際に特に問題となり、血流の豊富な易出血性病変に対す
る穿刺そのものが禁忌であるとする意見もある(乙B7〔24頁〕)。また、穿刺吸引細胞診
では、腫瘍細胞に汚染された針が腫瘍周囲、皮下、皮膚等の組織を貫通するので腫瘍
細胞の播種が起こり得る。本件当時も、腫瘍細胞の播種は、以前より減少したとはい
え、皆無ではない。また、穿刺吸引細胞診は1回の検査で2、3回の試技が行われること
が通常であることから、病巣に加わる機械的刺激によって、癌の転移を促進する可能性
がある。したがって、予後への影響を考えれば、穿刺吸引細胞診の適応は慎重に決定
されるべきである(乙B9〔272頁〕)。
4 超音波ガイド下穿刺吸引細胞診の実施状況
 「甲状腺腫瘍統計と癌治療(乙B8)」は、奈良県立医科大学における昭和60(西暦
1985)年から平成9(西暦1997)年まで、病理組織診断がされた甲状腺腫瘍例につい
て、平成10(西暦1998)年にその要旨が耳鼻咽喉科臨床学会で報告された臨床報告
であるが、これによると、上記大学病院において、対象期間内に超音波ガイド下穿刺吸
引細胞診が実施された形跡はなく、平成10(西暦1998)年に発行された医学文献にお
いても、「最近」超音波ガイド下穿刺吸引細胞診も行うようになったと記載されていること
(乙B4〔253頁〕)などから、頸部における超音波ガイド下穿刺吸引細胞診については、
一部の積極的な施設によって実施されていたものの、本件当時において、全国的に一
般的な検査方法であったとはいえない。
 このように、一部の積極的な施設によって実施されていたにすぎない検査方法につ
いて、医師にこれを実施すべき義務はない。
5 原告に対する穿刺吸引細胞診の要否
 原告についてみると、腺腫様甲状腺腫の一部に石灰化がみられることから、偽陰性
の可能性が高まる。また、充実性、石灰化が認められる(悪性腫瘍の合併の可能性が
高い)左葉の腫瘍は、内部の血流が豊富であることから、穿刺による出血の危険性も高
まる。さらに、腫瘍が多様・多発性であり、上述のとおり一部に石灰化病変を伴っていた
ため、組織の採取が難しくなることなどから、複数回穿刺することが必要とされ、細胞播
種の危険性が増大するなどの問題がある。
 他方、原告の甲状腺腫瘍は、腺腫様甲状腺腫の疑いが強く、かつ非侵襲的検査に
よってその腫瘍の一部に悪性を疑わせる所見が認められたことから、誤診の可能性が
ある侵襲的検査を行うことなく、手術後の病理組織検査によって確定的に鑑別する(診
断的治療)必要性が高かった(前記第1(被告の主張)1(1))。また、仮に、穿刺吸引細胞
診を行って良性の結果が出たとしても、上述のとおり相当程度偽陰性の誤診がある(悪
性の疑いが残る)以上、その検査結果に従い経過観察としたものの、実際には悪性であ
ったという場合があり得る。その場合、経過観察中に悪性腫瘍が進行し、その後の検査
によって悪性腫瘍が発見された後に、手術を施行することになる結果、早期に手術を行
う場合よりも、患者のQOL(QualityofLife;生活の質)を損なうことになる。すなわち、悪
性腫瘍が気管・食道などの甲状腺周辺臓器に浸潤増殖することにより、甲状腺はもちろ
ん、反回神経・リンパ節・喉頭・気管・食道等の組織又は臓器の摘出範囲が広がり(乙B
3〔496頁〕)、甲状腺機能低下症、嗄声、嚥下障害等の術後合併症が重くなることは容
易に予想される。特に、本件の場合、画像上、悪性の可能性が疑われる部位は反回神
経に近接していることから、経過観察中に反回神経に浸潤することもあり、摘出手術の
結果、一生にわたり、嗄声や嚥下障害を残すことも十分に考えられたのであり、早期に
手術を行う必要性があったというべきである(前記第1(被告の主張)2)。
 以上によれば、被告病院において、本件手術の適応を決するに当たって、穿刺吸引
細胞診を実施すべき義務があったとはいえない。
第2 説明義務違反の有無
(原告の主張)
1 被告病院が原告に対して行うべきであった説明内容
 上記のような甲状腺結節についての知識と穿刺吸引細胞診の重要性を前提に、疑
われる診断名(腺腫様甲状腺腫と乳頭癌等)、その診断法としての穿刺吸引細胞診の
意義、それがされた場合の一般的な治療方法、つまり穿刺吸引細胞診で悪性でなかっ
た場合の治療法、つまり一般には手術を行わないことも含めて治療法の選択を説明し、
自らが穿刺吸引細胞診を実施できないのであればその旨を説明すべきであった。
2 被告病院が原告に対して実際に行った説明内容及び説明義務違反
 原告に対する説明内容については、当事者間に争いがあるものの、「経過観察をし
ても心配がない」との説明はなく、被告もそのような説明をしたとは主張していない。そし
て、被告病院の診療録には説明に関する具体的記載がないのであるから、この点につ
いては、原告本人が記憶しているとおり、担当医が原告に対し、初診の段階で手術の方
針であることを伝え、さらにCT画像上「石灰化」が認められることのみを根拠に、放射線
科の診断が腺腫様甲状腺腫であるにもかかわらず、悪性の疑いがあるとし、このような
場合には手術が必要であると思わせたと認めるべきであり、そのような説明を受けため
に原告が手術を承諾したものである。適切な説明がされていれば、穿刺吸引細胞診を
経ていたはずであり、そして穿刺吸引細胞診を受けて、その結果が良性であって経過観
察をして大きくならないようなら心配ないとの説明を受けていれば手術を承諾しなかった
ことは明らかであり、明白な説明義務違反がある。
3 最高裁判決の解釈について
 なお、被告は平成13年11月27日最高裁第3小法廷判決(民集55巻6号1154
頁)を根拠に、患者が関心を抱いていない治療法を患者に説明しなくとも良いと主張して
いる。
 しかし、同判決は当時我が国では未確立であった乳房温存療法についても、実施さ
れている他の医療機関名の説明が必要であることについて、原告が強く乳房の温存を
求めていたことを1つの根拠に説明義務違反を認めたものであり、本件のように医学生
向けの教科書においてすら穿刺吸引細胞診の実施が必要である旨の記載がされてい
て、甲状腺の専門家ではその実施が確立(本件のようなケースで、あえて穿刺吸引細胞
診をおこなわないとしている専門医は成書を見ても存在しない)しており、しかも、原告が
手術に対する不安を述べていることをも踏まえれば、当然に穿刺吸引細胞診の存在と、
実施医療機関、そして実施した場合の治療法について説明する義務があることは明ら
かである。
 特に、被告病院が、地区の中核医療機関であることを踏まえれば、その説明義務が
あることは明らかである。
(被告の主張)
1 被告病院が原告に対して行った説明内容
(1) B医師は、平成11年7月5日、声が嗄れるなどを主訴として被告病院を受診した
原告を診察し、問診及び触診により甲状腺腫瘍を疑い、頚部超音波検査を施行した結
果、甲状腺左葉中部から下極にかけて充実性の腫瘍を認め、その内部は血流に富んで
おり、一部は嚢胞であり、両葉に大小多数の、嚢胞病変があることを確認し、また充実
性の腫瘍に石灰化の疑いがあったことから、悪性腫瘍の可能性があると判断した(乙A
1〔4、10、11頁〕)。
 B医師は、上記診断に基づき、同日、原告に対し、甲状腺に腫瘍(できもの)がある
こと、良性、悪性の鑑別のため詳細な検査をする必要があること、甲状腺の腫瘍は良
性、悪性いずれでも増殖速度が緩徐であるものが多く、仮に悪性だとしても、すぐに転
移することはほとんどないことなどを説明した上で、1か月後、再度診察を受けるよう指
示した(乙A1〔5、12ないし16頁〕)。
(2) B医師は、平成11年7月26日、原告に対して、CT、シンチグラムの画像を示しな
がら、①甲状腺左葉は大部分が腫瘍で、内部には石灰化がみられ、石灰化部分は悪性
の疑いがあること、甲状腺右葉には小さな腫瘍があること、②基本的に甲状腺腫瘍は
良性も悪性も増殖速度が緩徐であることが多く、もし悪性であっても、一般的にいわれる
癌とは異なり、急激に増殖したり、すぐに転移することはまずないので、経過を観察する
ことも選択し得るが、悪性の場合は進行することがあるので注意を要すること、③術前
の検査で大体の鑑別はつくが、正確な診断(確定診断)をするには手術をして病理組織
学的診断をする必要があることから、被告病院においては、手術により腫瘍を切除して
診断をつける方針(診断的治療)をとっていること、④放射線や化学療法などには治療
意義があまりないこと、⑤セカンドオピニオンを含め、手術をするかどうかは原告の意思
決定によること、⑥手術をする場合、施設によっては少ししか切らないところもあるが、
充分な視野が確保できず、反回神経麻痺、腫瘍の取残し及び腫瘍の切込みによる細胞
播種などの危険があることから適切ではなく、被告病院においては、腫瘍を安全かつ確
実に切除するために、襟状切開を行っていることなどを説明した。
 さらに、MRIの結果が出てから、詳しい術式(切除範囲等)について再度説明をす
るが、もし手術を希望するとしても予約できるのは一番早くて同年8月31日であり、一応
枠は確保しておくが、キャンセルはいつでもできることについても説明し、次回までに手
術をするか否かについて考えてくるように説明した。
 B医師は、その上で、次回診察日を8月11日とし、手術を希望する場合に備え、手
術前検査を予約した(乙A1〔5頁〕)。
(3) B医師は、平成11年8月11日、原告に対し、MRIの結果を踏まえ、仮に手術を
する場合は、①原告の甲状腺左葉は、大部分が腫瘍で、一部の腫瘍に充実性・石灰化
がみられ、MRIによると造影剤で増強していることから、腫瘍ごと左葉を切除する方がよ
く、②甲状腺右葉の腫瘍部分は良性の可能性が高く、甲状腺を全部摘出すると甲状
腺、副甲状腺ホルモンが不足するので、可能な限り核出術を実施すること、③悪性か良
性かは、手術により採取した組織の病理組織診断をしないと確実な診断ができないこ
と、④術前検査では腫瘍は甲状腺内に収まってるようであるが、術中所見によっては周
囲のリンパ節まで採取することがあり得ることなどを説明した。また、術後の合併症とし
て、反回神経麻痺による嗄声等の可能性があること、甲状腺、副甲状腺機能の低下も
問題となり、甲状腺、副甲状腺を大きく摘出すると術後、一生ホルモン剤等を服用する
必要があるが、原告については甲状腺を3分の1程度残せる見込みであり、4分の1程
度残っていれば通常、必要なホルモンの分泌は保たれること、副甲状腺は4つのうち1
つ残っていれば通常は問題は起こらず、原告については2つ残せると思われること、ホ
ルモンの分泌が不足すると、手足がしびれたり、痙攀したりすること、出血、大きく切開
するため綺麗に縫合できるが、体質によって傷がケロイド状に盛りあがる可能性があ
り、傷を目立たなくする薬を長ければ2年ほど服用し、ある程度目立たなくすることがで
きること、術後しばらく創部の違和感があり、通常は、次第に知覚は戻って気にならなく
なると思われることなどを説明した。
 以上の説明に対して、原告からは特に質問もなく、手術を希望したので、手術承諾
書を手交して、入院時に提出するよう指示し、入院を前提として入院診療計画を説明し
た(乙A1〔37、38頁〕)。
 原告は、入院時(平成11年8月30日)に、手術承諾書を提出した。
2 被告病院に説明義務違反が存しないこと
(1) 上記1のとおり、B医師は、術前検査の結果、原告の甲状腺腫瘍につき良性の可
能性もあるが悪性の可能性を否定できないこと、手術の内容・目的(診断的治療等)、手
術による合併症の内容・発症可能性の程度等について具体的に説明をし、かつ、悪性
の疑いがある場合でも良性の可能性もあるため、経過観察の方法も採り得ること及びそ
の場合の注意点について説明した。
(2) 一部の積極的な施設によって実施されていたにすぎない検査方法について、患
者が当該検査方法を実施する可能性について関心を示していない場合に、医師が当該
検査方法を他院で実施していることについて積極的に説明すべき義務はないと解される
(最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決・民集55巻7号1154頁参照)。
 本件当時、超音波ガイド下穿刺吸引細胞診の方法が、広く一般的に行われていた
とはいえず、一部の積極的な施設によって実施されていたにすぎず(前記第1(被告の
主張)4)、原告がかかる検査方法を実施する可能性について関心を示していた形跡は
ない。また、本件については、腺腫様甲状腺腫が強く疑われ、充実性腫瘍が石灰沈着を
伴っていて、悪性の可能性もある場合には、超音波ガイド下穿刺吸引細胞診によっても
細胞の採取が難しく、これを行って良性の診断が出ても偽陰性の問題があって、悪性の
可能性を否定できず、出血、感染、細胞播種などの合併症を生ずる危険があった(前記
第1(被告の主張)3)。
 以上の事情を総合すると、B医師において、原告に対し、超音波ガイド下穿刺吸引
細胞診という検査方法等について説明すべき義務はなかったというべきである。
(3) 以上のとおり、被告病院に説明義務違反は認められない。
第3 上記第1及び第2の過失と原告の現在の症状(損害)との因果関係の有無
(原告の主張)
1 原告の後遺症の程度
 原告は被告病院における手術の結果、手術痕、頸部の違和感、しびれ感、嚥下障
害といった手術そのものの後遺症に加え、甲状腺の大部分を摘出したことによる甲状腺
機能低下症によると思われる手のこわばり、手・足の冷え、両膝の痛み、むくみ、思考力
の低下等の症状に苦しんでいる。
2 「甲状腺喪失」という後遺症
 原告が「甲状腺の大部分を喪失した」こと、いわば臓器そのものを喪失したこともま
た、後遺症に関する損害の一内容である。
 後遺障害による損害は、いわゆる症状を伴う障害が出現しているものばかりを対象
とするわけではない。例えば、臓器である「脾臓」は、その機能及び脾臓を失った場合の
機能低下については必ずしも科学的に明かにされていない。しかし、「脾臓」を失った場
合にも、8級としての後遺障害に関する損害が認められるのであり、このような評価もま
た、後遺症の損害の一内容と評価しうるのである。
3 本件手術と上記後遺症との因果関係について
 手術そのものの後遺症が存在することは明らかであり、甲状腺機能検査の数値上
甲状腺機能低下が認められないとしても、上述の症状は甲状腺摘出によるものと推認
され、また、甲状腺の一部を切除されたことによる甲状腺機能予備能の低下のために将
来甲状腺機能低下が出ると考えられる。
 そして、このような将来に対する不安もあわせて考えれば、甲状腺摘出そのものに
よる損害が認められるべきである。
4 原告は、前記第2(原告の主張)の1において述べた内容を説明されていれば、本
件手術を受けることはなかったこと
 説明義務違反の項で述べたとおり、穿刺吸引細胞診を中心とする説明がされてい
れば、原告は穿刺吸引細胞診を受け、そして穿刺吸引細胞診が実施されて、その結果
が良性であって、経過観察をして大きくならないようなら心配ないとの説明を受けていれ
ば、原告が手術を受けず、上記後遺症も生じなかったことは明かである。
(被告の主張)
1 原告の現在の症状について
 手術痕が残っていることは認めるが、原告に、その主張する後遺症があることにつ
いては不知。本件手術後の症状等としては、以下のとおりであり、客観的に認められ
る。
(1) 残された甲状腺の重量・大きさ
 一般に、甲状腺は全体として重さ約20グラムの臓器であり、片方の重さは約10グ
ラムである。
 本件手術においては、原告の甲状腺のうち、左葉全部(15グラム)と甲状腺右葉
の嚢胞(5グラム)及び右葉下極腫瘍(1グラム)の合計21グラムを切除している。このう
ち、甲状腺左葉は、ほぼ腫瘍性に変化していたためそのすべてを切除しているが、15
グラムというのは腫瘍を含めた重量である。すなわち、腫瘍が大きかったために重量が
重くなったにすぎない。また、残された右葉については、約10グラムのうち6グラムが切
除されており、約4グラムしか残っていないと理解しがちであるが、切除されたうちの5グ
ラムには、正常甲状腺は含まれておらず、すべて嚢胞部分である。下極の腫瘍は、正常
甲状腺組織を含んで切除しているが、腫瘍を含んだ重量が1グラムであることから、本
件では、少なくとも約9グラムの正常甲状腺が残されている。
 したがって、原告が本件手術により、甲状腺の大部分を喪失したとはいえない。
 なお、摘出された原告の甲状腺結節の大きさは、以下のとおりである(乙A第2号
証36頁)。
   甲状腺左葉(1個) 2.1×4.5×2  センチメートル大
   甲状腺右葉(2個) 3  ×1.5×1.3センチメートル大
             1.5×1.4×0.8センチメートル大
(2) 甲状腺機能が維持されていること
ア 正常甲状腺腫瘍組織が残されていること
 一般に、甲状腺が4分の1以上残されていれば、甲状腺機能は保たれるといわれ
ているが、前述したとおり、本件手術によって切除したのは、ほとんどが腫瘍の部分であ
って、正常な甲状腺組織はごくわずかしか切除しておらず、少なくみても3分の1以上の
正常甲状腺組織は残している(上記(1))。
 本件手術で切除したのは、甲状腺としての正常な機能を果たしていない部分(Tc
で欠損像)である。TcというのはI(ヨード)と同様に甲状腺内に取り込まれる性質を有す
るが、ヨードは甲状腺ホルモン産生に必要な元素で、Tcシンチグラムで欠損像として描
出された場合、その部分は正常にホルモンを産生することができないと判断される。つ
まり、本件では、大部分はもともと機能していないと考えられた部分を切除したものであ
り、正常組織の摘出は必要最小限に止めたものであるから、原告の甲状腺機能に影響
があったとは考えられない。なお、副甲状腺については、左右上下極に4個ついており、
通常は1個残せばテタニー症状は起こらないといわれているところ、本例では2個残して
いるのであるから、まず問題は起こらない。
イ 甲状腺機能検査に異常がないこと
 甲状腺機能低下症は甲状腺機能検査によって診断される。甲状腺機能低下症で
あれば、血中甲状腺ホルモン(T3、T4等)は低値を示し、TSHは高値となる(乙B10〔1
110、1111頁〕)。
 本件手術後、平成11年9月16日、11月29日に、被告病院において甲状腺機能
検査(血中甲状腺ホルモン検査)が行われたが、TSH、T3、T4値のいずれも正常値で
あった。また、平成16年5月10日、F医院において実施された検査によっても、TSHの
検査結果は基準値内に収まっている(乙A14〔3頁〕)。
 また、血中カルシウム濃度も正常であり、副甲状腺機能にも問題はないと考えら
れ、甲状腺・副甲状腺機能低下症についての理学所見も見受けられない(乙A14)。
ウ したがって、客観的にみて原告に甲状腺機能低下症は認められない。
2 本件手術と原告の現在の症状との因果関係について
 一般に、甲状腺機能低下症には、甲状腺ホルモン欠乏による新陳代謝低下の症状
として、精神活動の低下(無気力、精神鈍麻、言語緩徐等)、心機能低下(徐脈、心不
全)、寒がり、しびれ感、月経過多等がみられるが(乙B10〔1109ないし1110頁〕)、
甲状腺機能低下症は甲状腺機能検査によって診断されるものである。このうち、原発性
(甲状腺性)甲状腺機能低下症に対する最も鋭敏な検査は血中TSH濃度の測定であ
り、臨床症状が出ていない例でも、TSHは高値となることから、早期診断に役立つ(同
〔1110、1111頁〕)。
 前述のとおり、本件手術後、原告には、甲状腺機能低下症を示す検査所見は認め
られなかったのであり、特に、鋭敏な検査であって理学的所見に先だって検査結果が得
られるはずのTSHが正常値である時点で、原告が、既に体が熱くなったり冷たくなったり
する、手足の冷え、気力の減退(落ち込み)等の新陳代謝低下に相当する症状を訴えて
いたこと(乙A1〔6頁〕)、その後の甲状腺機能検査でも異常が認められないことからす
ると、原告の症状は、本件手術により甲状腺機能低下症を発症したために生じたものと
はいえず、因果関係はないというほかない。
第4 損害額
(原告の主張)
1 治療費7万8340円
2 入通院慰謝料183万0000円
3 逸失利益397万1153円
4 後遺症慰謝料830万0000円
 なお、甲状腺機能の低下、脾臓の喪失と同様の損害についての慰謝料に加え、手
術そのものの後遺症、即ち、頸部手術痕や頸部部違和感、しびれ感、えん下障害につ
いてもあわせて慰謝料を算定すべきである。
5 弁護士費用140万0000円
(被告の主張)
 争う。
 なお、本件手術により摘出されたのは正常な甲状腺の一部にすぎなかったこと(上記
第3(被告の主張)1(1))、原告の甲状腺機能が正常に保たれていること(同(2))などに
照らせば、これを脾臓のすべてを失った場合と同視することはできず、原告の労働能力
が低下したとは到底考えられない。また、通院については、実通院日数を基準とすべき
であり、原告の主張は前提事実に誤りがある。
以 上

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛