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平成13年(行ケ)第2号審決取消請求事件
平成13年4月17日口頭弁論終結
判決
  原      告A
訴訟代理人弁理士亀井弘勝
同稲岡耕作
同川崎実夫
  被      告特許庁長官 及 川 耕 造
指定代理人   岩井芳紀
同藤木和雄
同大橋良三
主文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が平成10年審判第11272号事件について平成12年11月21
日にした審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は,意匠に係る物品を「戸車用レール」とし,その形状を別紙審決書添
付の別紙1(本願の意匠)記載のとおりとする意匠について,平成7年8月10
日,意匠登録出願をしたが,平成10年5月19日,拒絶査定を受けたので,これ
を不服として,同年7月15日,拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は,これ
を平成10年審判第11272号事件として審理した結果,平成12年11月21
日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年12月11日にそ
の謄本を原告に送達した。
2 審決の理由
 別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願意匠は,平成5年8月9
日に特許庁が発行した意匠公報掲載の登録第874516号意匠(以下「引用意
匠」という。その形状は,別紙審決書添付の別紙2(引用意匠)記載のとおりであ
る。)に類似するから,意匠法3条1項3号に該当し,意匠登録を受けることがで
きない,とするものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 審決の理由中,本願意匠及び引用意匠の認定の部分,両意匠の共通点及び相
違点の認定の部分は認める。共通点及び相違点についての判断の部分のうち,相違
点(3)及び(5)に係る部分は認め,その余は争う。結論の部分は争う。
1 審決の採用した観察方法の誤り
 審決は,「共通点(1)の全体の基本構成は,意匠の骨格を成すとともに,意匠の基
調を形成するものであり,これに共通点(2)のレールの全幅に占める戸車走行溝の寸
法比率における共通性及び(3)の脚片の態様における共通性が加味されることによっ
て,両意匠間に強い類似性をもたらしている」(審決書2頁26行~30行)とし
ている。しかし,審決における意匠の観察方法は,共通点についての評価を不当に
重視し,相違点についての評価を不当に軽視するものであり,判断の前提について
既に誤りがある。なぜならば,本願意匠と引用意匠との間に重要な相違がある場合
には,それが,本願意匠及び引用意匠を見る者に,共通点が与えるものを凌駕する
印象を与え,共通点に基づく類似性を減殺することがあるからである。
2 共通点についての判断の誤り
 審決は,共通点について,前記1のとおり,共通点(1)に,同(2)及び(3)が加
味されて,両意匠間に強い類似性をもたらしていると判断している。しかし,共通
点(1)に,同(2)及び(3)が加味されたからといって,直ちに,両意匠間に強い類似性
をもたらしているとはいえない。この判断は,共通点についての評価を不当に重視
するものであり,誤っている。
3 相違点についての判断の誤り
(1) 相違点(1)(戸車走行溝の態様の相違)について
 審決は,「相違点(1)の戸車走行溝の態様における差異については,本願の
意匠のY型溝がこの種の物品において従来より広く知られた態様であって,本願の
意匠を特徴付けるものとは成し得ないものであるとともに,意匠を全体的に観察し
た場合には,共通点(2)に示すレールの全幅に占める戸車走行溝幅の寸法比率におけ
る共通性及び,溝の開口端付近の内壁面が両意匠とも傾斜面であることの共通性に
希釈されるものであることを考慮すれば,その差異は共通点(1)の共通性を凌ぐもの
ではない。」(審決書2頁31行~37行)と判断しているが,この判断は誤りで
ある。
(イ) 本願意匠のY型溝,すなわち,「溝の底部から深さ略4分の3付近ま
での内壁面を垂直面とし,その上端から開口端に至る部分を緩やかな傾斜面とし
た」断面略矩形の広くゆったりとした印象の戸車走行溝の形状は,本願出願当時,
広く知られてはいなかった。
 被告は,上記広く知られていたとの事実を裏付けるために,乙第1号証及び第2
号証を提出している。しかし,上記乙各号証に係る戸車レールは,本願意匠が3本
の溝を有する広幅の複列形による戸車レールを対象としているのに対し,1本しか
溝のない,細くて,しかも,外形において本願意匠とは全く異なる単列形の戸車レ
ールであるから,引用例として不適切である。
(ロ) 仮に,本願意匠のY型溝が本願出願当時広く知られた形状であったと
しても,本願意匠のY型溝と,引用意匠の,溝の内壁面を一様な傾斜面とした溝,
すなわち,内壁面に垂直面が少しもない鋭い溝のイメージを生じさせるV型溝と
は,何人が見ても明瞭に相違しているものである。そして,戸車を走行させるのに
最も重要な部分となる戸車走行溝の形状は,当事者の間で,戸車用レールの意匠を
特徴付ける最も重要な要素とされており,当業者が,戸車用レールを比較検討する
に当たって,機能の観点から,最も重点的に取り上げる部分である。したがって,
戸車走行溝の形状の相違の与える印象が,レールの全幅に占める戸車走行溝の寸法
比率の共通性(共通点(2))の与える印象によって希釈されることはあり得ない。
 戸車走行溝の形状が戸車用レールの意匠を特徴付ける最も重要な要素であること
は,戸車走行溝の形状以外の点では異なるところがないといってよい,甲第4号証
(意匠登録第914591号)及び甲第5号証(意匠登録第954499号)の意
匠が,本願出願前に別個の意匠として登録されていることからも裏付けられる。
(2) 相違点(2)(レール表面における条溝の有無)について
 審決は,「相違点(2)のレール表面における条溝の有無については,本願の
意匠の条溝の態様が滑り止めとしてはありふれた態様であって,本願の意匠を特徴
付けるものとは成し得ず,その有無にともなう視覚的効果の差異も微弱であって,
両意匠の類否を左右するものではない。」(審決書2頁38行~3頁2行)と判断
するが,この判断は誤っている。
 本願意匠においては,戸車走行溝間となる左右の表面には,それぞれ条溝を15
本ずつ,左右のレール外側縁部の表面には,それぞれ条溝を3本ずつ形成してい
る。仮に,条溝自体は,滑り止めとしてありふれているとしても,このように多く
の条溝がレール表面に目立つように形成されている以上,そのような多数の条溝が
形成されていない引用意匠と比べると,見る者に,十分に視覚上の相違,言い換え
れば,意匠的相違を印象づけることになるのである。条溝自体は従前から公知であ
るとしても,どのような外形のレールに形成されるかの組合せ次第で意匠としての
構成は変わるのである。したがって,レール表面における多数の条溝の有無は,両
意匠を対比検討するうえで,大きな相違と評価されるべきであり,これを軽視した
審決は,失当である。
(3) 相違点(4)(脚片の本数の相違)について
 審決は,「相違点(4)の脚片の本数における差異については,共通点(1)に
係る脚片の配置態様及び,共通点(3)に示す個々の脚片の態様における共通性に希釈
されるものであるとともに,当該部位が意匠に係る物品の使用時においては,レー
ルの裏側に隠れてしまう部位であることを考慮すれば,その差異は局所的なものに
止まり,共通点(1)に示す全体的共通性を凌ぐものではない。」(審決書3頁7行~
12行)と判断しているが,この判断は誤っている。
 引用意匠の場合,戸車走行溝が下方に向かって鋭いV型溝であって,着地面積が
少なく不安定感が否めないので,2本ずつ合計4本の脚片を有している。一方,本
願意匠の場合,戸車走行溝が断面略矩形状で広い底部を有しているため,着地の安
定性があり,1本ずつ合計2本の太めの脚片で全体の均衡を維持している。このよ
うに,脚片の本数は,戸車用レールとして最も重要な要素となる戸車走行溝の形状
と関連を有しているものであるから,脚片の本数の相違による印象の相違は,共通
点(3)の与える印象によって希釈されるものではない。
 脚片の本数の相違が,戸車用レールの意匠における重要な要素であることは,脚
片の本数以外の点では異なるところがないといってよい,甲第6号証(意匠登録第
952146号)及び甲第7号証(意匠登録第989582号)の意匠が,本願出
願前に別個の意匠として登録されていることからも裏付けられる。
 また,審決は,脚片が裏側に隠れてしまう部位であるとの理由で,その本数の相
違を軽視している。しかし,意匠に係る物品において,使用時には隠れる部分であ
っても,物品の取引段階で十分に見て確認できるものであれば,意匠の構成要素と
しては無視できないことであり,このことは,多くの判例において指摘されている
ところである。先述したとおり,戸車用レールの意匠において,脚片の本数は,重
要な要素であり,当業者は,物品の流通段階で,当然これに注目しているのであ
る。
 脚片の本数の相違を軽視した審決は,両意匠の評価において明らかな誤りを犯す
ものである。
4 全体的観察
 上述したとおり,本願意匠と引用意匠との間には,戸車走行溝の態様の相違
(相違点(1)),レール表面における多数の条溝の有無の相違(同(2)),脚片にお
ける本数の相違(同(4))という極めて重要な相違があり,これらの相違は,互いに
あいまって,本願意匠及び引用意匠を見る者に,共通点(1)ないし(3)が与えるもの
を凌駕する印象を与え,そのため,本願意匠は,全体として,引用意匠とは別異な
視覚的効果をもたらす意匠となっているのである。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定判断は,正当であり,審決を取り消すべき理由はない。
1 審決の採用した観察方法の誤りについて
 審決は,公知事実からの隔たりや使用状態を考慮しつつ,各相違点に係る本
願意匠の態様を評価し,個々の相違点が表出する効果及びこれらがあいまって表出
する効果,すなわち,類似性に抗する異質な視覚効果を十分把握したうえで,共通
点に基づく視覚効果と対比させ,全体的にそれぞれの優劣を衡量し,その結果,各
相違点に係る本願意匠の態様には,本願意匠を全体的に特徴付けるものはなく,そ
の相違は,各共通点によってもたらされる両意匠の類似性を凌ぐほどのものではな
いと判断したものである。相違点を不当に軽視しているのでないことは,いうまで
もないことである。
2 共通点についての判断の誤りについて
 共通点(1)の全体の基本構成は,意匠の骨格を成すとともに意匠の基調を形成
するものであって,その形態的共通性は,観察者に強く印象づけられるものであ
り,これに他の共通点が加わることにより,本願意匠と引用意匠の共通性は,さら
に強められ,両意匠間に強い類似性をもたらすに至っているのである。
3 相違点についての判断の誤りについて
(1) 相違点(1)(戸車走行溝の態様の相違)について
(イ) 本願意匠のように上端付近がY型に拡がった溝は,本願出願前に既に
広く知られていたものであり,このことは,乙第1号証(実開平4-第30681
号)及び第2号証(実用新案登録第3001761号公報)からも裏付けられる。
(ロ) 原告主張のように,本願意匠の戸車走行溝を「断面略矩形」の溝とみ
ることができるとしても,「断面略矩形」の溝は,引用意匠の断面視V型の溝と同
様に,戸車走行溝としては基本的なものであるとともに,極めてありふれた形態で
あり(乙第3号証(実公昭29-第469号公報)参照),開口端付近の小幅な傾
斜面についても,角部に施される面取りの域を出ないものであって,そこに特筆す
べき創意を見出すことはできない。したがって,たとい,溝の形状のみを対比した
場合に,その相違が明瞭であるとしても,全体的にみれば,到底,本願意匠を特徴
付けるものとすることはできない。
 戸車走行溝の形状が,機能上重要な要素であり,当業者が購買に当たり当然にそ
の相違に留意するとしても,物品の全体形状を構成要素とし,視覚を通じて美感を
起こさせることを要件とする意匠においては,機能上の重要性のみをもって,一概
に,戸車走行溝の形状がレールの意匠を特徴付ける最重要の要素であると決めつけ
ることはできない。
(ハ) 原告の主張は,意匠の構成要素としての共通点と相違点の軽重を総合
的に評価することをせず,もっばら戸車走行溝の形状差のみに拘泥した恣意的なも
のであり,失当である。
(2) 相違点(2)(レール表面における条溝の有無)について
 本願意匠のレール表面における条溝の態様は,滑り止めとしてありふれた
ものである(乙第4号証(実開平3-第72777号公報),第5号証(実開平4
-第39242号公報)参照)。そして,この種の条溝のもたらす視覚効果が微弱
であって,全体の基本構成における共通性を凌ぐものではないことは,原告が意匠
権者である登録第952146号意匠とその類似1号意匠(乙第6号証及び乙第7
号証)を対比観察してみても明らかである。
(3) 相違点(4)(脚片の本数の相違)について
 脚片における本数の相違についての評価は,審決に記載したとおりであ
り,技術的な効果はともかく,意匠の構成要素としては,格別の評価をすることの
できないものである。
4 全体的観察の誤りについて
 争う。
第5 当裁判所の判断
1 審決の採用した観察方法の誤りについて
 原告は,審決が,共通点を不当に重視した旨主張する。
 しかしながら,審決が,本願意匠と引用意匠との構成態様の共通点と相違点を抽
出し,これらの軽重を総合的に評価し,結論を導き出していることは,審決の説示
自体に照らして明らかであり,この検討の仕方自体には何らの誤りもない。原告の
主張は採用できない。
2 共通点についての判断の誤りについて
(1) 本願意匠と引用意匠とが次の各点で共通していることは,当事者間に争い
がない。
① 断面視左右対称形に屈曲する薄板状の扁平な戸車用レールであって,表
面の大部分を面一の水平面とし,該水平面の中央部と両側部の3個所に戸車走行溝
を1本ずつ,合計3本設け,両側にある戸車走行溝の開口端部外縁から側端の接地
部にかけてのレール外側縁部を断面視略円弧状の丸面とし,各戸車走行溝間の水平
面の裏面側に長手方向に続く脚片を均等に配置し,さらに戸車走行溝裏面,脚片下
端及びレール外側縁部下端の各接地個所を面一に揃えて成る全体の基本構成(共通
点(1))
② レールの全幅に占める戸車走行溝の寸法比率について,該溝の開口幅を
全幅の略10分の1程度としていること(共通点(2))
③ 脚片の態様について,断面視縦長の長方形状であって,水平面の裏面に
対して直角に配置していること(共通点(3))
(2) 上記共通点(1)は,本願意匠及び引用意匠を大づかみに把握した場合にお
ける全体の構成態様ということができ(基本的構成態様),この基本的構成態様に
よって全体としてまとまった一つの意匠を形成し,見る者に視覚を通じてまとまっ
た一つの美感を与えていると認められる。
 そして,両意匠は,両者が,具体的構成態様である共通点(2)及び(3)においても
共通していることを考慮すれば,上記共通の形状の範囲内で具体的形状に相違があ
るとしても,その相違によって見る者に相異なった特別な美感を与える要素が付加
されない限り,意匠法3条1項3号の意匠登録の可否の基準としての類似の範囲内
にとどまるものというべきである。
3 相違点についての判断の誤りについて
(1) 本願意匠と引用意匠とが次の各点で相違していることは,当事者間に争い
がない。
① 戸車走行溝の態様について,本願の意匠においては,溝の底部から深さの略4
分の3付近までの内壁面を垂直面とし,その上端から開口端に至る部分を緩やかな
傾斜面とした通称Y型溝であるのに対し,引用意匠においては,溝の内壁面を一様
な傾斜面とした通称V型溝であること(相違点(1))
② レール表面における条溝の有無について,本願の意匠においては,レー
ル表面全体に長手方向に続く条溝を等間隔に多数形成しているのに対し,引用意匠
にはそのような条溝が無いこと(相違点(2))
③ レール外側縁部における丸面の態様について,本願の意匠においては,
比較的浅い傾斜で緩やかに湾曲する断面視略円弧状としているのに対し,引用意匠
においては,断面視略4分の1円弧状であること(相違点③)
④ 脚片の本数について,本願の意匠においては,戸車走行溝間に1本ずつ
配置しているのに対し,引用意匠においては,戸車走行溝間に2本ずつ配置してい
ること(相違点④)
⑤ レールの全高に対する全幅の比率について,本願の意匠においては,全
幅が全高の略24倍弱であるのに対し,引用意匠においては,全幅が全高の略16
倍弱であること(相違点⑤)
(2) 相違点(1)(戸車走行溝の態様の相違)について
(イ) 本願意匠の戸車走行溝の断面形状(審決にいう「通称Y型溝」,原告
のいう「断面略矩形」の形状)は,戸車用レールの分野を離れて一般的にみた場
合,極めてありふれたものであり,当業者のみならず一般通常人であっても,日常
的に目にする形状であることは,当裁判所に顕著である。
 戸車用レールの分野についてみると,乙第1号証(実開平4-第30681
号),第2号証(特許庁が平成6年9月6日に発行した実用新案登録第30017
61号公報)によれば,戸車走行溝は,戸車がその上を転動するものであること,
戸車の半径方向の断面形状には,本願出願前に,半円形のもの,矩形のもの,円板
の厚みを2段階に変えたものが存在していたことが認められる。戸車走行溝は,こ
れらの戸車が転動し得るような溝でなければならないのであるから,その断面形状
は,必然的に,特殊な形状ではなく,戸車の形状に合わせて,基本的に,V型溝,
矩形あるいはY型溝のいずれかを選択し,これに若干の設計変更を加える程度のも
のとなることが明らかである。
 本件においては,引用意匠のものはV型溝であるのに対して,本願意匠のもの
は,通称Y型溝(原告のいう「断面略矩形」)であって,いずれもごくありふれた
断面形状というべきであるから,そこによほど特異な要素が見いだせない限り,格
別に見る者の注意を引き付け,見る者に特別な美感を与えるものではなく,したが
って,これを意匠登録の根拠となるべき新たな意匠的特徴とみる余地はないという
べきである。ところが,本件全証拠を検討しても,本願意匠にそのような新たな特
異な要素を認めることはできない。
(ロ) 原告は,本願意匠のY型溝と,引用意匠の,溝の内壁面を一様な傾斜
面とした溝,すなわち,内壁面に垂直面が少しもない鋭い溝のイメージを視覚する
V型溝とは,何人が見ても明瞭に相違しているものである,そして,戸車を走行さ
せるのに最も重要な部分となる戸車走行溝の形状は,当事者の間で,戸車用レール
の意匠を特徴付ける最も重要な要素とされており,当業者が,戸車用レールを比較
検討するに当たって,機能の観点から,最も重点的に取り上げる部分である,した
がって,戸車走行溝の形状の相違の与える印象が,レールの全幅に占める戸車走行
溝の寸法比率の共通性(共通点(2))の与える印象によって希釈されることはあり得
ない旨主張する。
 しかしながら,本願意匠と引用意匠の溝の形状のみを比べて相違があっ
たからといって,上述したとおり,意匠登録の根拠となるべき新たな意匠的特徴が
なく,格別に見る者の注意を引き付け,見る者に特別な美感を与えるものではない
以上,その程度のものとしか評価できないのである。
 また,たとい,戸車走行溝の形状が,戸車を走行させるのに重要であるとして
も,そのことは,機能に関する事柄であって,美感に関する事柄ではない。したが
って,戸車走行溝の相違が,直ちに,新たな意匠的特徴に結びつくということには
ならない。
(3) 相違点(2)(レール表面における条溝の有無)について
(イ) 物の表面に条溝を設けることは,戸車用レールの分野を離れて一般的
にみた場合,極めてありふれた事柄であり,当業者のみならず一般通常人であって
も,日常的に目にするものであることは,当裁判所に顕著である。このことは,戸
車用レールの分野においても同様にいうことができるものと認められる。
 結局,レール表面に条溝を設けるかどうかは,通常ありふれた意匠的な設計変更
の範囲内の事項であり,到底,見る者に特別な美感を与えるとはいい難い。
(ロ) 原告は,仮に,条溝自体としては,滑り止めとしてありふれていると
しても,このように多くの条溝がレール表面に目立つように形成されている以上,
そのような多数の条溝が形成されていない引用意匠と比べると,見る者に,十分に
視覚上の相違,言い換えれば,意匠的相違を印象づけることになる旨主張する。
 しかしながら,本願意匠において,多くの条溝がレール表面に目立つように形成
されているとしても,それがありふれた形状である以上,その相違によって見る者
に従来のものと相異なった特別な美感を与える要素とはならないというべきであ
る。
(4) 相違点(4)(脚片の本数の相違)について
 脚片の本数は,着地の安定性のためのもので,通常ありふれた意匠的な設
計変更の範囲内の事項というべきであるから,戸車走行溝間に配置されている脚片
が,1本か2本かで,見る者の注意を特に引きつけるほどの新たな意匠的な特徴が
加わるものとはいえない。
 原告は,脚片の本数は,戸車用レールの意匠における重要な要素である旨主張す
る。
 しかしながら,戸車走行溝間に配置されている脚片を1本にしようが,2本にし
ようが,通常ありふれた意匠的な設計変更の範囲内の事項というべきである以上,
その相違によって見る者に従来のものと相異なった特別な美感を与える要素となり
得ないことは,明白である。
4 全体的観察について
 上記2及び3に認定したところによれば,原告主張の,戸車走行溝の態様の
相違,レール表面における多数の条溝の有無,脚片における本数の相違を検討して
も,これらの相違によって見る者に相異なった特別な美感を与える要素が付加され
るということはできない。したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するから,意
匠法3条1項3号に該当し,意匠登録を受けることができない,とした審決の判断
に誤りはない。
5 結論
 以上によれば,原告主張の審決取消事由は,理由がなく,その他,審決の認
定判断にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
 よって,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟
法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
  裁判長裁判官 山  下  和  明
     裁判官 設  樂  隆  一
     裁判官 宍  戸     充

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