弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人篠田一丸上告趣意第一点について。
 所論の各書類にそれぞれ所論摘示の記載があることは所論のとおりである。しか
し原判決以外の所論各書類における所論摘示の記載は原判決に影響を及ぼさないこ
と明瞭である。そして原判決における所論「被告人は土木請負業A組の最高幹部で
あつたが」の判示は単に被告人の経歴を示したに過ぎないもので、所論のようにこ
れを判決の前提又は背景としたものでないこと明白であるから、かような判示をし
たからといつて、直に原判決が被告人に対してその身分門地によつて差別的取扱を
したとはいえない。又所論の東京地方検察庁検事鯉沼昌之が昭和二二年一〇月一〇
日Bを召喚して、その聴取書を作成し第一審裁判所に追送した意図が仮に所論のよ
うであるとしても、原審は右聴取書を証拠として引用していないのであるから、右
検察官の措置をもつて、原審が被告人を差別的に取扱つた証拠であるとの所論はあ
たらない。その他原判決が被告人をその身分門地により差別的取扱をしたと見るべ
き形跡を発見することができないから、所論は結局名を憲法違反に借りて原判決を
非難するにとどまるものであつて論旨は理由がない。
 同第二点について。
 しかし判示第二の詐欺の事実は原判決挙示の各証拠を綜合してこれを肯認するこ
とができ、その間反経験則その他の違法は存しない。所論は原判決の採用していな
い証拠に基き事実審たる原裁判所の裁量権に属する事実の認定を非難するにとどま
り上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 しかし、いやしくも人を殴打する意思をもつて人を殴打した以上暴行罪は直に成
立しその殴打された者が殴打せんとした者と異つても暴行罪の成立に必要な故意に
影響を来すものではない。されば被告人がBを殴打せんとして、これを制止せんと
した同人の内妻「C」を殴打した以上、同女に対する暴行の故意がないものとはい
えない。それ故、原判決が被告人のCに対する犯行をもつて、刑法第二〇四条に問
擬したのは正当であつて、原判決には所論の違法はない。
 同第四点について。
 原判決が確定した第一事実の判示に所論摘示のとおり「Bの顔面を数回手拳にて
殴打し」とあるにかかわらず原判決挙示の証拠には所論摘示のように「平手にて一、
二回顔面(或は顔或は額の辺り)を殴つた」とあることは所論のとおりである。さ
れば「平手で一、二回」と判示するのが原判決挙示の各証拠の文詞にそうわけであ
つて、所論指摘の判示は精確を欠くものといわなければならない。しかし傷害罪は
人の生理的完全性を侵害する罪であつて、その侵害する手段方法又はその回数の如
何は犯罪の構成に消長を来す事由となるものでない。されば、かような傷害の手段
方法等に関する前記程度の判示と証拠との間の相違は旧刑訴第四一〇条第一九号に
いわゆる「理由に齟齬あるとき」に該当しないものと解するのが相当である。それ
故この点に関する所論は採用するを得ない。
 次に原判決中所論指摘の「D」とあるのは「B」の誤記であることは判文上明か
なところであるから、これをもつて原判決に審理不尽の違法ありとの所論も亦理由
がない。
 同第五点について。
 しかし原判決の証拠説明中所論指摘の「小切手一通の割引方」の文詞は原審公判
廷における被告人の供述「小切手ヲ割ツテクレ」即ち原判示の現金換えの依頼の趣
旨であつて所論のように法律上の正確な手形の割引の義に用いたものでないことを
推断するに難くはないから、右証拠によつて判示事実を認定したからといつて、所
論のような審理不尽理由不備の違法ありとはいうことができぬ。
 次に原判決の第二判示事実の説明において「被告人は右小切手を前記Eに返済し
て」と判示していることは所論のとおりであるが、右「小切手」とあるのは「右小
切手金」の義で金の一字を誤脱したものであることは、判文上明らかなところであ
る。又判示第二の事実の判示には「貸借」とはなく「貸借名義」と判示しているの
であるから、所論のように「貸借」と「騙取」と互に両立しない観念の二の事実を
認定していないのである。されば原判決の右判示理由中にはいささかの齟齬も存在
しない。なお第二事実の判示と証拠説明中に所論指摘のように数箇所にわたり「F」
の記載のあることは所論のとおりであるが右「F」はいずれも「G」の誤記である
こと記録上からも判文上の前後の関係からも明らかなところであるから、原判決に
は理由齟齬乃至審理不尽の違法はない。論旨は理由がない。
 同第六点について。
 しかし所論は結局本件傷害罪の動機、経過、傷害の程度、被害者との示談並びに
本件詐欺罪についての動機、被害者への賠償等を縷述して事実審たる原裁判所の裁
量権に属する量刑を非難するにとどまるものであるから上告適法の理由とならない。
 よつて旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二四年六月一六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛