弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人坂上寿夫の上告趣意は別紙記載のとおりであつてこれに対する判断は次の
とおりである。
 右上告趣意第一点について、
 所論引用の昭和二二年(れ)第一四六五号同年一一月八日東京高等裁判所の判決
は、「原判決が被告人の本体鰛油の販売価格に付昭和二一年七月一日大蔵省告示第
五三六号所定の販売業者価格の統制額に拠るべきこととしたこと、及び被告人が鰛
油の販売業者に非ざることは所論のとおりである。しかし物価統制令第七条第二項
によれば、特定の者の為す給付に付適用せらるべき統制額は特に別段の定めを為す
場合の外は、当該特定の者以外の者の為す同種の給付に対する価格の統制額とする
旨規定して居るので本件の如き場合においては、販売業者以外の者の給付に対する
統制額は、販売業者の為す給付に対する価格を適用すべきものと解せられるのであ
る。従つて、原判決が販売業者に非ざる被告人の同種の給付に付、販売業者の為す
給付に対する価格を適用したのは、妥当であつて、論旨は理由がない。」として、
鰛油の販売業者に非ざる被告人が鰛油を、前記告示第五三六号所定の販売業者販売
価格の統制額を超えて販売した事実を、物価統制令第三条に違反する行為として処
断した第一審判決を是認したものである。しかして右鰛油については犯行当時右告
示以外に駅売業者に非ざる一般人の販売行為に適用すべき統制額を指定した告示は
有しなかつたのである。一方本件原判決は、昭和二四年四月二三日頃乃至同月三〇
日頃における、落花生むき実の販売を不当に高価なる額を以つて、取引したもので
物価統制令第九条ノ二に違反するものとして処断しているが、落花生むき実につい
ては本件犯行当時昭和二四年四月一四日物価庁告示第二三三号によう、食糧配給公
団が主食用として販売する場合の販売価格の統制額が指定されている外、なお昭和
二三年一一月一日物価庁告示第一一〇五号によつて、食糧配給公団が主食用として
販売する場合以外の販売価格の統制額、即ち生産者及びその他の一般の者(主食用
として賊売する場合の食糧配給公団を除く)が販売する場合の統制額が指定されて
いるのであつて、(右告示はその後昭和二四年一月二七日物価庁告示第三九号、同
年二月一〇日同庁告示第七四号同年六月一〇日同庁告示第三九〇号によつて改正さ
れているが落花生むき実の統制額については、変更はない)被告人の販売した落葉
生むき実については、これに適用すべき販売価格の統制額が存したのである。従つ
て、統制額のある物を、その統制額を超えて販売した場合に、これを物価統制令第
九条ノ二に違反するものとして処罰し得るか否かは疑問であり、又一定業者たる資
格ある者の販売価格の統制額を指定した物価統制令に基く告示の統制額について、
他の法令に定むる額に関する物価統制令、第七条第二項を適用した所論判例として
引用の東京高等裁判所の判決の当否はさておき、一定業者たる資格ある者の販売す
る場合の統制額だけが存在し、右資格のない一般の者の販売する場合の統制額の存
在しない場合に関する所論東京高等裁判所の判決は本件に適切ではなく、原判決は
右判例たる判決と相反する判断をしたものとはいえないから論旨は理由がない。
 同第二点について、
 論旨は刑訴第四〇五条に規定する事由にあたらないこと明らかであるから、上告
適法の理由とならない。
 なお本件について刑訴第四一一条を適用すべきものとは認められないから刑訴第
四〇八条、第一八一条第一項によつて主文のとおり判決する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二六年一月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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