弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決のうち、本件救済命令主文第一項中の参加人C1、同C2に対す
る各解雇後原職復帰までの賃金相当額の支払を命ずる部分(以下「本件バツクペイ
命令」という。)の取消請求に関する部分を破棄し、右部分につき第一審判決を取
り消す。
     本件バツクペイ命令を取り消す。
     上告人のその余の上告を棄却する。
     訴訟の総費用はこれを五分し、その一を被上告人の負担とし、その余を
上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人苑田美穀、同山口定男、同立川康彦の上告理由書(一)記載の上告理由
について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及び説示に照らして
是認することができ、その過程に所論の違法はない。原審の確定した事実関係の下
において、参加人C1、同C2に対する本件解雇を労働組合法七条一号に違反する
不当労働行為とした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所
論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実
の認定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実若しくは独自の見解に基づい
て原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 同上告理由書(二)記載の上告理由第一について
 一 論旨は、要するに、本件バツクペイ命令について、これを労働委員会の裁量
権の合理的な行使を超えた違法なものということはできないとした原判決には、労
働委員会の裁量権の範囲について法令の解釈適用を誤つた違法がある、というので
ある。
 二 労働委員会が不当労働行為により解雇された労働者の救済命令において、解
雇後原職復帰までの間の得べかりし賃金相当額の遡及支払(バツクペイ)を命ずる
場合に、被解雇者が右期間中他の職に就いて収入を得ていたときは、労働委員会は、
解雇により被解雇者が受けた個人的被害の救済の観点だけから右収入(以下「中間
収入」という。)の額を機械的にそのまま控除すべきではなく、右解雇が使用者の
事業所における労働者らの組合活動一般に対して与えた侵害を除去し正常な集団的
労使関係秩序を回復、確保するという観点をもあわせ考慮して、合理的裁量により、
中間収入の控除の要否及び程度を決すべきであり、そのいずれか一方の考慮を怠り、
又は救済の必要性の判断において合理性を欠くときは、その命令は、裁量権の限界
を超え、違法とされることを免れない。そして、右後者の、解雇が組合活動一般に
対して与える侵害の除去という観点から中間収入控除の要否及びその金額を決定す
るに当たつては、右の侵害は、当該労働者の解雇により当該使用者の事業所におけ
る労働者らの組合活動意思が萎縮し、そのため組合活動一般に対して制約的効果が
及ぶことにより生ずるものであるという見地においてこれをみるべきものであり、
それは、当該労働者が解雇によつて現実に受ける打撃の軽重と密接な関係を持つも
のであるから、これに関連する諸事情を勘案して中間収入控除の要否及びその金額
を決定すべきものである(最高裁昭和四五年(行ツ)第六〇号、第六一号同五二年
二月二三日大法廷判決・民集三一巻一号九三頁参照)。
 三 原審の適法に確定したところによれば、参加人C1、同C2は、タクシー業
を営む上告人にタクシー運転手として雇用され、上告人会社に勤務するタクシー運
転手で構成する参加人組合に所属していたものであるところ、昭和五一年八月二一
日懲戒解雇されたが、同年九月一日から訴外Dタクシー有限会社にタクシー運転手
として就職し、同月以降本件救済命令が発せられた当時まで、従前上告人から支給
を受けていた賃金額を上回る金額の賃金を得ていた、というのである。
 原審は、右事実に基づき、本件解雇によつて参加人C1、同C2が受けた個人的
な経済的被害の面からみると、その回復があつたものといえるとした上、本件解雇
が上告人会社における組合活動一般に対して与える侵害の面について、次のように
判示している。すなわち、参加人C1、同C2が本件解雇によつて受けた個人的打
撃そのものは軽少であつたというを妨げないが、本件解雇はE副執行委員長に対す
る出勤停止二か月、F、G両執行委員に対する出勤停止各三か月の懲戒処分と共に
参加人組合に対し打撃を加える目的の下にされたものであつて、現に参加人組合は
本件解雇を契機として組合員の大量脱退、退社等が相次ぎ、参加人組合は壊滅的打
撃を受けており、参加人組合員の組合活動意思に対する制約的効果が軽少であつた
とはいい難い場合であるから、被上告人が全額のバツクペイを命じたことがその裁
量権の合理的な行使を超えた違法なものということはできない。
 四 しかしながら、原審の確定した前記事実関係に照らせば、原判決が判示する
とおり、本件解雇による被解雇者の打撃は比較的軽少であるというべく、したがつ
てまた、本件解雇がもたらす上告人会社における労働者らの組合活動意思に対する
制約的効果にも通常の場合とはかなり異なるものがあるとみるのが当然であるから、
他に特段の理由のない限り、本件において全額のバツクペイを命ずることは合理性
を欠くものといわなければならない。原判決は、本件解雇が他の組合役員に対する
出勤停止の懲戒処分と共に参加人組合に対し打撃を加える目的の下にされたもので
あるとの事情をもつて参加人組合員の組合活動意思に対する制約的効果が軽少であ
ったとはいい難い場合である旨判示するが、バツクペイ命令における中間収入控除
の要否及びその金額を決定するに当たり、当該解雇の組合活動一般に対して与える
侵害の面として右のような解雇の事情を考慮に入れることは、前示の観点からみて
妥当を欠くものといわざるを得ない。
 本件救済命令は、全額のバツクペイを命ずるに当たり、「C1及びC2は会社か
ら解雇された後、他のタクシー会社で就労し、相当の収入を得ていることが認めら
れるが、その勤務は欠勤者を待つて就労するものであつて、通常の勤務者に比べて
不安定な地位にあることが認められ、また、解雇期間中の生活費、不当労働行為救
済申立に伴う諸費用及び企業外に排除された同人らの組合活動上の制約等のことを
勘案して、……全額の支払を命ずることをもつて相当と判断する」との理由を示し
ていることが第一審判決別紙命令書の記載上明らかであるが、右理由のうち、参加
人C1、同C2の他のタクシー会社(Dタクシー有限会社)における勤務が不安定
なものであるとの点は、原審の認定しないところであるばかりでなく、右参加人ら
が毎月解雇前の賃金額を上回る賃金を得ていた事実に対比し、理由として納得し難
いところであり、また、その余の点は被解雇者に一般的な事情をいうものにすぎな
い。そして、本件に現れた資料によつても、本件解雇後前記のような収入を得てい
た参加人C1、同C2につき、右中間収入の控除を全く不要とする特段の理由を見
出すことはできない。してみると、本件バツクペイ命令は、被上告人に認められた
裁量権の合理的な行使の限度を超えた違法なものといわざるを得ない。
 五 以上と異なる原審の判断は、バツクペイ命令に関する労働委員会の裁量権の
行使について法令の解釈適用を誤つたものというべく、右違法が判決に影響を及ぼ
すことは明らかである。論旨は理由があり、原判決中本件バツクペイ命令に関する
部分は破棄を免れない。そして、前記の事実関係の下においては、上告人の本訴請
求中本件バツクペイ命令の取消しを求める部分は正当として認容すべきものであつ
て、これを棄却した第一審判決は不当であるから、右部分につき第一審判決を取り
消した上、右請求を認容することとする。
 同第二について
 労働委員会による救済命令の基本的目的は、使用者による不当労働行為の結果を
事実上除去し、正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復、確保を図ることにあるの
であつて、私法上の法律関係を確認したり、形成しようとすることにあるのではな
いから、被解雇者が解雇期間中他に就労して中間収入を得た場合、バツクペイ命令
においても平均賃金の六〇パーセントを下らない限度で中間収入を控除すべきであ
るとする所論は、失当である。論旨は、採用することができない。
 同第三について
 所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論
の違法はない。主文における「懲戒解雇を取り消し」との文言の故に本件救済命令
の内容が不明確であるとの見解を前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。
論旨は、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、三八六条、
九六条、九二条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    高   島   益   郎
            裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    佐   藤   哲   郎

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