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平成11年(行ケ)第250号 審決取消請求事件
         判    決
   原      告   ユーロポート株式会社
   代表者代表取締役   A
   訴訟代理人弁理士   B
   被      告   特許庁長官 C
   指定代理人    D
   同          E
         主    文
  原告の請求を棄却する。
  訴訟費用は原告の負担とする。
         事    実
第1 原告が求める裁判
「特許庁が平成6年審判第6450号事件について平成11年6月15日にし
た審決を取り消す。」との判決
第2 原告の主張
 1 特許庁における手続の経緯
原告は、「ThePoloCupChallenge」の欧文字を横書きしてなり、旧21類「かば
ん 袋物 その他本類に属する商品」を指定商品とする商標(以下「本願商標」と
いう。)について、平成3年4月5日に商標登録出願(平成3年商標登録願第34
390号)をしたが、平成6年3月25日に拒絶査定を受けたので、同年4月13
日に査定不服の審判を請求した。
特許庁は、これを平成6年審判第6450号事件として審理した結果、平成11年
6月15日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年7月7日
にその謄本を原告に送達した。
 2 審決の理由
   別紙審決書の理由(一部)写しのとおり
 3 審決取消事由の要点
審決は、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者
はその構成中の「Polo」の文字に注目し、周知になっているFに係る「Polo」標章
を想起し、該商品がF又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務
に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがある旨判断した。しかしな
がら、この判断は取引きの実情を無視するものであって、誤りである。
「Polo」は、主として欧米の富裕層によって行われている球技の英語名であって、
わが国においても広く知られている。
特に、そのプレーヤーが着用する「Poloshirt」、すなわち「ポロシャツ」の語
は、カジュアルな襟付き半袖シャツの名として普通名称となっており、この「ポロ
シャツ」は「ポロ」  と略称されることも少なくない。したがって、「Polo」,
「ポロ」の標章は、被服等のファッション関連商品については自他商品の識別機能
を有しない普通名称というべきである。
それゆえにこそ、Fあるいは彼が創立したポロ・ファッションズ社(以下「ポロ
社」という。)は、その商品に「Polo」の標章ではなく、「PolobyRALPH
LAUREN」  あるいは「POLORALPHLAUREN」の標章を付しており、また、わが国
においても、「POLO」,「Polo」の語に他の語を加えた幾つかの標章が被服等のフ
ァッション関連商品に使用されているのである。
一方、本願商標は、外観、観念及び称呼のいずれの点においても全体として理解さ
れるべきものであって、「Polo」の部分のみを抽出し独立させて理解すべき理由は
ない。
以上のとおりであるから、本願商標に接した取引者・需要者は、その構成中
の「Polo」の文字に注目し、周知になっているFに係る「Polo」標章を想起すると
した審決の判断は、明らかに誤りである。
第3 被告の主張の要点
   原告の主張1及び2は認めるが、3(審決取消事由の要点)は争う。審決の
認定判断は正当であって、これを取り消すべき理由はない。
原告は、「Polo」あるいは「ポロ」の標章は被服等のファッション関連商品につい
ては自他商品の識別機能を有しない普通名称である旨主張する。
しかしながら、乙号各証の刊行物によれば、Fあるいはポロ社は遅くとも昭和55
年ころまでにはファッション関連業者として広く知られるようになっており、これ
らの刊行物において引用商標(審決が「引用商標」として挙げているもの)
は「POLO」,「Polo」,「ポロ」等の名で呼ばれていること、引用商標を模倣した
偽物ブランド商品に関する新聞報道等において、引用商標は「POLO」,「Polo」,
「ポロ」と呼ばれていることが明らかである。以上の事実によれば、引用商標は、
わが国において広く知られており、「POLO」,「Polo」,「ポロ」と略称されるこ
とも多いということができる。
一方、球技としてのポロは、わが国においてはほとんどなじみのないものである。
以上のとおりであるから、被服等のファッション関連商品に「POLO」,「Polo」,
「ポロ」の文字を使用すると、これに接した取引者・需要者は、球技としてのポロ
に関係する商品とは認識せず、Fあるいはポロ社に関係する商品と認識することに
なるのである。
この点について、原告は、普通名称であるポロシャツが「ポロ」と略称されること
も少なくない旨主張するが、仮にそうであるとしても、それは引用商標が広く知ら
れるようになった後のことであるから、原告の上記主張は「Polo」あるいは「ポ
ロ」の標章が自他商品の識別機能を有しない普通名称であることの論拠とはならな
い。
   そして、本願商標は4つの英単語からなるものではあるが、これらが全体と
して1つの観念を生ずるものと広く認識されている事実はないから、本願商標をそ
の指定商品に使用すると、取引者・需要者は、上記4つの英単語の中から、広く知
られている引用商標の略称である「Polo」と同一の単語に注目し、その商品をFあ
るいはポロ社に関係する商品と認識することになるのである。
以上のとおりであるから、本願商標は商標法4条1項15号に該当するとした審決
の判断に誤りはない。
         理    由
第1 原告の主張1(特許庁における手続の経緯)及び2(審決の理由)は、被告
も認めるところである。
第2 乙第1ないし第12号証,第16号証(枝番を含む。以下同じ)の刊行物あ
るいは新聞と弁論の全趣旨によれば、Fあるいはポロ社は少なくとも本願商標の登
録出願時である平成3年4月までにはファッション関連業者として広く知られ、著
名といい得る状態に至って今日に及んでおり、その際、F,ポロ社あるいは引用商
標は、上記の刊行物等においてみられるように「POLO」,「Polo」,  「ポロ」
と略称されることが少なくないことが認められる。
一方、球技としてのポロは、わが国においてはほとんどなじみのないものであるこ
とは、当裁判所に顕著な事実である。
そうすると、被服等のファッション関連商品に「POLO」,「Polo」,「ポロ」の文
字が使用されると、これに接した取引者・需要者は、球技としてのポロに関係する
商品とは認識せず、Fあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高
いということができる。そして、本願商標の指定商品はファッション(装身に関す
る流行)関連商品にほかならないから、これに「Polo」の文字を使用した場合も、
これに接した取引者・需要者は球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、F
あるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いことになるのであ
る。
この点について、原告は、「ポロシャツ」の語はカジュアルな襟付き半袖シャツの
名として普通名称となっており、そのポロシャツは「ポロ」と略称されることも少
なくないから、「Polo」あるいは「ポロ」の標章は自他識別力を有しない旨主張す
る。
確かに、「ポロシャツ」の語が襟付き半袖シャツの名として普通名称となっている
ことは当裁判所にも顕著な事実であり、また、甲第5ないし第7号証,第20号証
によれば、普通名称としての「ポロシャツ」の語が「ポロ」と略称される例がある
ことも認められる。しかしながら、たとえ普通名称としての「ポロシャツ」の語が
「ポロ」と略称される例があるとしても、商品に使用された「Polo」あるいは「ポ
ロ」の語に接した取引者・需要者がFあるいはポロ社に関係する商品と識別するか
否かにそのことが関係するのは、「Polo」あるいは「ポロ」の語が普通名称として
用いられている可能性が認識される場合に限られ、それ以外の場合には関係しない
ことは明らかであるから、原告の上記主張は採用することができない。
以上のとおりであるから、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接す
る取引者・需要者はその構成中の「Polo」の文字に注目し、周知になっているFに
係る「Polo」標章を想起し、該商品がF又は同人と組織的・経済的に何らかの関係
を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるとし
た審決の判断に誤りはない。
この点について、原告は、本願商標は、外観、観念及び称呼のいずれの点において
も全体として理解されるべきものであって、「Polo」の部分のみを抽出し独立させ
て理解すべき理由はない旨主張する。
しかしながら、本願商標を構成する4つの英単語が全体として一体のものとしての
み取引者・需要者に理解されると考えさせる資料も、「Polo」以外の英単語が格別
強く取引者・需要者の関心を引くであろうと考えさせる資料も、本件全証拠を検討
しても見出せないのに対して、「Polo」の語がFあるいはポロ社に係るものとして
周知著名であることは前述のとおりである以上、本願商標に接した取引者・需要者
が「Polo」の部分に特に注意を引かれることは十分にあり得ることというべきであ
る。本願商標から「Polo」の部分のみを抽出し独立させて理解すべき理由はない旨
の原告の主張は採用することができない。
第3 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他、審決にはこ
れを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却するこ
ととし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用し
て、主文のとおり判決する。
  (口頭弁論終結日 平成11年10月26日)
     東京高等裁判所第六民事部
         裁判長裁判官  山 下  和 明
            裁判官  春 日  民 雄
            裁判官  宍 戸    充

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