弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鈴木義男同河野太郎同鶴崎善八の各上告趣意は、末尾に添えた書面記載の
とおりである。
 弁護人鈴木義男同河野太郎の上告趣意第一点について。
 労働安全衛生規則第一二四条は、労働基準法第四二条に定められている使用者が
機械、器具その他の設備による危害を防止するために講じなければならない必要な
措置の具体的内容を明らかにするために同法第四五条の委任により定められた命令
であつて、同法第四六条第三項の委任による命令ではないこと所論のとおりである。
従つて、規則第一二四条に違反した被告人の行為は、法第四二条に違反したもので
あつて法第四六条に違反したものではない。されば原審が被告人の行為につき法第
四二条を適用しないで法第四六条を適用したことは、法令の適用を誤つたものと言
わねばならない。しかしながら、法第四二条も法第四六条も共に機械、器具による
危害を防止するに必要な措置を命ずる規定であつて、これら何れの規定に違反した
場合であつても法第一一九条第一号に該当し、同条所定の刑に処せられることには
少しも変りはないのである。それゆえ、法令の適用に関する原審の前記誤は、判決
に影響を及ぼさないこと明らかであるから、論旨は採用することができない。
 同第二点について。
 論旨前段は、弁護人において原審と異つた証拠の判断に基き、原審が自由裁量権
の範囲内でした証拠の取捨並びに事実の認定を非難するに外ならないのであるから
採用することができない。論旨後段は労働基準法による本件の直接責任者は工場長
であるのに、被告人が会社機構上の上役として責任を問われるのは法の解釈適用を
誤つたものであると言うのである。しかし、原判決の認定した事実をその挙示する
証拠を参酌して見れば、原判示の会社は小会社のこととて被告人は現場の方も見廻
り工場長や現場監督と共に被告人自身も行為者として本件違反行為をした趣旨を認
定したことが明らかであるから、原判決には所論のような違法はない。
 同第三点について。
 原判決はその挙示する証拠によつて、工場長の外になお被告人においても本件に
関し責任あることを認定したものであつて、原判決の理由には所論のようなくいち
がいはない。
 同第四点について。
 原審が被告人に本件事故発生につき業務上の過失責任を負わしめたことは、同人
が本件工場を見廻り工場長や現場監督と共に現場の監督をも兼ねていたことを認定
したからであり、右の事実は原判決挙示の証拠によつて認め得るのであるから論旨
は理由はない。
 弁護人鶴崎善八の上告趣意について。
 論旨第一の理由のないことは、弁護人鈴木義男同河野太郎の上告趣意第二点に対
する説明により、論旨第二の理由のないことは、前記上告趣意第四点に対する説明
により明らかである。
 よつて、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 以上は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 十藏寺宗雄関与
  昭和二六年二月二七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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