弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
 昭和三五年審判第四三号事件について特許庁が昭和四〇年八月二〇日にした審決
を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
 原告ら訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、つぎのと
おり述べた。すなわち、
一 原告らは昭和三一年三月三一日出願にかかる特許第二三三、七四四号「基礎杭
打込による地盤改良方法」(以下「本件特許」という。)の特許権者であるが(右
特許権者はもと訴外Aであつたが、被告の後記審判請求後、原告らは、同訴外人よ
り右特許権の譲渡を受け、その登録をも受けた。)、被告は、昭和三五年一月二六
日、本件特許の無効審判を請求し(昭和三五年審判第四三号)、これに対し、特許
庁は、昭和四〇年八月二〇日、本件特許を無効とする旨の審決(以下「本件審決」
という。)をし、その謄本は、同年九月四日、原告らに送達された。
二 本件審決の要旨は、本件特許は昭和三一年三月三一日に出願されたものである
が、その特許発明は、被告が特許庁に提出した昭和一二年八月二〇日B発行の
「日、英、米、独、仏、加奈陀、伊、其他特許武智式基礎工に就て」と題する冊子
に記載されたものと同一発明たるをまぬがれず、したがつて、右特許発明は旧特許
法(大正一〇年法律第九六号)第四条第二号に該当し、新規の発明とは認められな
いので、本件特許は、同法第一条の規定に違反して与えられたものであるから、同
法第五七条第一項第一号に該当し、同規定によりこれを無効とすべきものである、
というのである。
三 本件審決は、つぎの理由により違法であつて、取り消されるべきものである。
すなわち、本件審決には、右のように本件特許発明が同一たるを免れぬとして前記
「日、英、米、独、仏、加奈陀、伊、其他特許武智式基礎工に就て」と題する冊子
の記載内容なるものを、同冊子の第一図、第二図、第七頁、第四図、第九頁、第一
〇頁、第一三頁、第七図、第八図、第一〇図、第三八頁および第一一図から認定し
た旨が明示されいる。ところが、前記無効審判事件において昭和三五年二月二六日
に被請求人に発送された審判請求書の副本には、同冊子の表紙、奥付、第一図、第
四図、第九図、第一〇図、第七頁、第一三頁、第七図、第八図、第一一図、第三八
頁および工事実施主要箇所を記載した第一頁ないし第一四頁の各葉合計二六枚が添
付されていただけであり、右のように審決に示された第二図、第九頁および第一〇
頁は被請求人に送られて来なかつたし、また、請求人である被告は審判請求書にお
いてーその後提出した書面においてもー右第二図、第九頁および第一〇頁について
具体的記載内容を明らかに示したり、これらの記載内容によることを明らかにした
主張をしていないので、被請求人は、審決謄本の送達を受けるまで、それらの記載
内容がいかなるものであるか、およびその記載内容も無効の理由として主張されて
いることについて何ら知ることができなかつた。したがつて本件審決は、同法第八
八条第一項の規定に違反した手続に基づいてなされたもので、取消しをまぬがれな
い。
 以上のように述べた。
 被告訴訟代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とす
る。」との判決を求め、原告ら主張の請求原因事実をすべて認めた。
(立証省略)
       理   由
一 原告らが本件特許の特許権者であること(その取得の経過をも含む。)、本件
審決がなされた経過および本件審決の要旨が原告ら主張のとおりであつて、審決
は、その理由に引用し本件特許発明と同じであるとした「日、英、米、独、仏、加
奈陀、伊、其他特許武智式基礎工に就て」と題する冊子の記載内容なるものを同冊
子の第一図、第二図、第七頁、第四図、第九頁、第一〇頁、第一三頁、第七図、第
八図、第一〇図、第三八頁および第一一図から認定した旨を明示していること、し
かるに前記無効審判事件において被請求人に発送された審判請求書の副本には原告
ら主張のもの二六枚が添付されていただけで、同冊子の第二図、第九頁および第一
〇頁は送られて来ず、また、請求人である被告は審判請求書においてーその後提出
した書面においてもー右第二図、第九頁および第一〇頁について具体的記載内容を
明らかに示すことも、これらの記載内容に基づくことを明らかにした主張をするこ
ともしなかつたこと、以上の事実は本件当事者間に争いがない。そして、成立に争
いのない甲第三号証の一によれば、前記無効審判の請求においては、その請求書
に、請求の理由として本件特許と同じ地盤改良法が出願前頒布された刊行物に掲載
されて公知であると主張して、前記冊子そのものを添付して提出したものである
が、右請求の理由中には、右冊子の他の数多の図面および頁における具体的記載は
摘記されているのに、当事者間に争いがないように、同冊子の前記第二図、第九頁
および第一〇頁については格別何らふれられていないことが認められる。
二 そして、いずれもその成立について争いのない甲第一号証(本件審決の謄
本)、甲第二号証(本件特許の特許公報)および甲第三号証の三の一ないし一二を
比照すれば、本件審決が、前記冊子の内容をなすものであるとし、本件特許の発明
がそれと同一であるとしたものの内容からすれば、右冊子の第二図、第九頁および
第一〇頁(とくに第九頁および第一〇頁)の各具体的記載内容が審決引用の技術思
想の一部をなすものとしてこれを無視しえないものであることは明らかであり、こ
れに反する資料はない。
三 以上の事実によれば、前記審判において右冊子の第二図、第九頁および第一〇
頁は実質上審判請求書の内容の一部をなすものであり、請求人引用の技術思想を特
定理解せしめるに必要な部分であるというべきであるのに、被請求人は、その送達
を受け、答弁書を提出する機会を与えられなかつたことになり、したがつて、本件
審決は、その手続において、特許法施行法第二〇条第二項、旧特許法第八八条第一
項所定の被請求人に対する適法な審判請求書副本の送達がなされなかつた瑕疵があ
るというべきであるから、違法としてこれを取り消すのが相当であり、原告の本訴
請求はその理由があるといわなければならない。
四 よつて、原告の請求を認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、
民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 古原勇雄 杉山克彦 楠賢二)

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