弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
     補助参加人の参加によつて生じた上告費用は補助参加人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士坂千秋の上告理由第一点について。
 原判決が「新村理一」(検甲第六号別紙写真第六)及び「シマムラリイチ」(検
甲第七号別紙写真第七)の両票は、判示のごとく候補者の姓と名を混記したもので
あつて、公職選挙法第六八条一項七号により無効とすべきものである旨判断したこ
とは、所論のとおりである。そして、経験則に照しかく混記したものと認めること
ができないわけのものではなく、従つて、右認定が所論のごとく合理的、実際的根
拠が皆無であるとはいえない。されば、同法の解釈、適用を誤つたとの所論は、採
ることができない。
 同第二点について。
 原判決が検甲第八号、別紙写真第八の投票を判示のごとく確認し難いから無効で
あるとし、また、検丙第一号、別紙写真第一三の投票を判示のように認め、原告(
被上告人)に対する有効投票と解したことは所論のとおりであつて、経験則に照し
かく認定することができないわけではないから、前者を候補者中何人に対してなさ
れたか確認し難いから無効とし、後者を原告(被上告人)の姓を表示したものとし
て有効としたからといつて、違法であるとはいえない。それ故、所論は、採るを得
ない。
 同第三点について。
 原判決が、検甲第二号、写真第二の投票につき、所論摘示の理由で結局「シンム
ラ」の誤記と認め、新村明治郎に対する有効投票とし、裁決が紫村理一に対する有
効投票と見たのは誤つたものとしたことは、所論のとおりである。そして、経験則
その他(ことに江戸川区選管の当選者決定において、候補者新村明治郎に対する有
効投票とされた中に票「シシムラ」検甲第一号別紙写真第一が存することは被告の
朗らかに争わないところである)に照しかく認定することができないわけではない
から、所論の違法は認められない。されば、本論旨も採るを得ない。
 上告人補助参加人代理人弁護士河本喜与之の上告理由について。
 所論(一)の採ることができないことは、坂代理人の上告理由第一点についての
説明によつて了解すべく、所論(二)及び(三)の採ることのできないことは、坂
代理人の上告理由第二点、第三点についての説明によつて了解すべきである。また、
原判決が票「シムフシン一チ」(検甲第九号、別紙写真第九)につき所論(四)の
ごとく「シムラ理一」と解しないで、判示のごとく「シンイチ」と解し、且つ、判
示のごとく紫村理一の姓と小山田真一の名とを混記したものとし、従つて、公職選
挙法六八条一項七号により無効としたことは正当であつて、経験則違反その他法令
の解釈を誤つた違法は認められない。
 上告人補助参加人代理人弁護士海野普吉、同坂上寿夫、同柳沼八郎の上告理由第
一点について。
 所論は、理由不備の違法をいうが、坂代理人の上告理由第三点、第二点、河本代
理人の上告理由(四)についての説明において示したとおり、原判決の認定は、経
験則その他に照し肯認できないわけではないから、原判決が所論一の投票を新村明
治郎に対する有効票とし、所論二、三の投票を無効としたからといつて、所論の違
法があるとはいえない。
 同第二点について。
 坂代理人の上告理由第一点、同第三点、同第二点後段についての説明において示
したとおり、原判決の認定は、経験則その他に照しこれを肯認することができない
わけではないし、また、所論引用の判例は、本件に適切でない。されば、原判決が、
所論一の両投票を無効とし、所論四、五の各投票を有効としたからといつて所論の
違法があるとはいえない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九四条後段に従い、裁判官全員の一致
で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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