弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人両名をそれぞれ無期懲役に処する。
被告人両名に対し,未決勾留日数中各300日を,それぞれその刑に算
入する。
被告人両名から押収してあるあいくち1本(平成13年押第42号の
1)及び包丁2丁(同号の2,3)を没収する。
理由
(犯行に至る経緯)
1被告人Aは,大分県内の高校を中退後,運転手や配管工等として職を転々とし
ていたが,平成12年2月ころ,知人の紹介を受けて愛知県内に本社を置くコン
サルタント会社の代理店として社会保険の加入代行業を始めることを決め,両親
から借りるなどして親会社への権利金200万円等を捻出し,大分市内のマンシ
ョンの1室を賃借し,同年6月,同所に事務所を置く有限会社Cを設立した。し
かし,同事業には税法上の問題等があったため,会社設立後も顧客を獲得できず,
収益を上げる見込みがない状態が続いた。しかも,被告人Aは,無収入であるに
もかかわらず,都町での飲食やフィリピン女性との交際に多額の金員を浪費する
生活を続けていたため,自己や同社の名義のほか,妻や実母の名義まで借りてサ
ラ金会社等から多額の金員を借り入れ,これを同社の運営資金,生活費,遊興費,
借入金の返済等に充てるようになった。
被告人Bは,大分県内の高校を卒業後,職を転々とし,平成12年2月から大
分市内の産業廃棄物処理会社でトラック運転手として稼働していたが,人身事故
を起こし運転免許停止処分を受け,同年12月18日に同社から休職処分を受け
た後は稼働することもなく漫然と生活していた。
被告人両名は,被告人Aが被告人Bの居住していた大分市内の県営団地に転居
したことから知り合い,同年末ころには2人でしばしば外出して飲酒するなど親
しく交際するようになったが,当時合計約1500万円以上の借金を抱え,その
返済にも窮するようになっていた被告人Aは,被告人Bを誘っていわゆるフィリ
ピンパブやホテトル業を始めて返済資金を稼ごうと考えるようになった。被告人
Bは,休職中の職場への不満から転職したいと考えていたものの,新たな稼働先
の当てもなかったため,被告人Aの誘いにすぐに賛同したが,両被告人ともまと
まった収入の当てがなかったことから,具体的な準備は進まなかった。
被告人Aは,平成13年1月中旬ころ,賃料の滞納を続けていた有限会社Cの
事務所の退去を迫られ,事務所がなくなれば事業を継続することができず,同社
の設立等に費やした多額の金員が全て無駄になって多額の借金だけが残ることに
なってしまうと思い,一刻でも早く滞納賃料を支払うためには,この際,多額の
金員を有している知人を脅して現金を奪い,更に同人の預金口座から現金を払い
戻させた上で同金員を奪うしかないと考えるに至った。被告人Aは,中学の先輩
であるスナック経営者のD(女)から150万円を借入すると共に同女の知人に
対する貸付金の取立てを依頼されていたため,同女であれば多額の金員を有して
いるであろうと考え,同女から所持金及びキャッシュカードを強取し,その暗証
番号を聞きだした上で同カードを使用して同女の銀行口座から現金を払い戻し,
口封じのために同女を殺害しようと計画し,同月18日ころ,被告人Bに対し,
知人の女性を脅して金を奪い,その後口封じのために同女を殺害し,遺体をばら
ばらにして海に捨てる,殺害や遺体の処理は自分がするから被告人Bは同女を脅
して金を奪うところまで手伝ってくれればよいなどと言って犯行に加わるよう誘
った。被告人Bは,同女を殺害することにはためらいを感じたものの,殺害や遺
体の処理については被告人Aが行うと言うので,従前被告人Aと話し合った風俗
店の開業資金を得るためには上記犯行に及ぶほかないと考え,犯行に加わること
を了承した。
被告人両名は,被告人Aにおいて犯行に必要な包丁,タオル,ガムテープ等を
準備した上で,同月21日午前零時ころ,Dを被告人Bの知っている大分市内の
人気のない空き地に呼び出すことを決め,その後同女を被告人Aの車のトランク
に詰めて被告人Aの地元である県北部まで連れて行くことにし,それぞれ自己の
自動車を運転して同空き地に赴いた。被告人Aは,同日午前1時ころ,Dの稼働
するスナックに電話をかけ,同女から依頼を受けていた貸付金を取り立てたと嘘
をついて同女と会う約束をし,同日午前2時ころ,同女を迎えに行き,西大分で
友人が現金を持って待っているなどと言って同女を自己の車に乗せ,前記空き地
に向かった。被告人Aは,その途中,被告人Bから後記資材置き場に移動すると
の連絡を受けたため,そのまま同所に向かい,同日午前3時ころ,同所に待機し
ていた被告人Bと合流した。
その後,被告人両名は,判示第1の犯行に及び,途中,被告人Aが被告人Bと
別れて同女を自己の出身地近くの山中に連れ込み,駐車中の車内で判示第2の犯
行に及んだものの,同女が被告人Bに対し,キャッシュカードは所持しておらず,
預金もないが,翌日の昼までには更に50万円を準備できるなどと言ったため,
同女を殺害するのをやめ,同女に50万円の支払を約束させた上で同女を解放し
た。
被告人Aは,翌日,再度同女を呼び出し,前記50万円の支払を要求したが,
その後同女との連絡が取れなくなり,結局同女から期待したほどの金員を強取す
ることができなかったため,更に別の人物から金員を強取しようと考え,以前,
実母から100万円を借りた際に同金員は親戚の夫婦(夫F・妻E)から借り受
けたものであり,両名は毎年何百万円もの恩給を受給していると聞いていたこと
から,両名であれば多額の現金や預金を有しているに違いないと考え,その自宅
に押し入り,現金,預金通帳等を強取した上でEを人質にしてFを金融機関まで
連れ出し,現金を払い戻させてこれを強取した後,口封じのため両名の顔面にガ
ムテープを巻き付けるなどして窒息させて殺害しようと考えた。
被告人Aは,同月29日に具体的な犯行の手順を計画書にまとめ,被告人Bに
対し,翌30日にこれを見せながら,F夫婦が少なくとも1000万円を持って
いる等と言って犯行に加わるよう誘ったところ,被告人Bは,既に休職前の給与
が尽きて生活費に窮するようになっていたため,すぐにこれに賛同し,共にF夫
婦の殺害を行うことについても了承した。被告人両名は,Dに対する前記犯行が
計画不足により失敗したことから,犯行計画について更に詳細な打合せを行い,
F夫婦をその自宅近くの山中に連れて行って殺害し,同所に死体を遺棄すること
を決め,同年2月1日早朝に殺害場所等の下見を行った。
(罪となるべき事実)
第1被告人両名は,共謀の上,前記D(当時34歳)から金員を強取しようと企
て,同女に対し,平成13年1月21日午前3時10分ころ,大分市大字a字
b所在の資材置場に駐車中の普通乗用自動車内において,被告人Bにおいて,
顔面に所携の包丁(刃体の長さ約16.9センチメートル,平成13年押第
42号の3)を突き付け,「静かにしろ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫
し,被告人Aにおいて,「静かにした方がいい。言われたとおりにした方が
いい。何されるか,わからん。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,被告人
Bにおいて,同女の口にタオルを押し込み,その上からタオル及びガムテー
プを巻き付けて緊縛し,被告人Aにおいて,ネクタイで目隠しをし,被告人
両名において,同女の両手首をロープで緊縛する各暴行を加え,その間,被
告人Aにおいて,「ヤクザの所に今から連れて行く。」などと語気鋭く申し
向けて脅迫し,同資材置場において,被告人両名において同女の両足首をロ
ープで緊縛して前記車両の後部トランクに押し込むなどの暴行を加え,その
反抗を抑圧して,被告人Aにおいて,同女から同女所有の現金5000円を
強取した上,自己が同女からキャッシュカード等を強取した後に被告人Bと
再度合流して同女の銀行口座から現金を払い戻すことを約束した上で被告人
Bと別れ,同所から前記車両を発進させ,同日午前5時ころ,大分県c郡d町
大字eまで疾走させ,同女を同車両のトランク内から脱出することを不能にし,
もって,同女を不法に逮捕・監禁し,さらに,同日午前8時ころ,前記車両
内において,自己が暴力団の命令で同女に金員を要求しているかのように装
い,「ヤクザが来たら,ただではすまん。金を出さないと何をされるか分か
らん。反抗的な態度をとらんで。最悪,何をされるか分からん。」,「帰さ
れん,今からヤクザが来るけん,打ち合わせをしよう。」,「騒いだり反抗
したりすると,向こうは切れて,何をするか分からん。」,「ヤクザは本当
に来る。」などと申し向けて脅迫し,その反抗を抑圧して,同日午前9時3
0分ころ,大分市大字a大分自動車道下りf起点125.5キロポスト付近を
走行中の前記車両内において,同女から同女所有の現金50万円を強取し,
その際,前記各暴行により,同女に加療約8日間を要する左前腕打撲・皮下
出血及び左手掌部擦過傷の傷害を負わせた。
第2被告人Aは,同日午前8時ころ,c郡d町大字eに駐車中の前記車両内におい
て,前記Dに対し,「俺がやっちょかんと,ヤクザからまわされる。」,
「殺されるよりはいいやろ,ヤクザからまわされるよりはいいやろ。」など
と語気鋭く申し向けて脅迫した上,同女の乳房を弄び,下着を脱がせてその
陰部にバイブレーターを当てるなどして弄び,もって,強いてわいせつな行
為をした。
第3被告人両名は,c郡d町大字g所在の前記F(当時75歳)方に侵入し,同人
及び同人の妻E(当時80歳)から金員等を強取するなどした上,両名を殺
害しようと企て,共謀の上,同年2月7日午前5時30分ころ,F方玄関か
ら同人方に侵入した上,寝室で就寝中の両名に対し,こもごも所携の文化包
丁(刃体の長さ約20.2センチメートル,同号の2)又はあいくち(刃渡
り約25.4センチメートル,同号の1)を突き付け,「静かにしろ。」,
「おとなしくしちょけ。」,「お金はどこにあるんか。」などと語気鋭く申
し向けて脅迫した上,布製ガムテープで両名の両腕を緊縛するなどの暴行を
加え,その反抗を抑圧してF又E所有に係る現金約2万2000円及びF所
有の軽四輪貨物自動車1台外10点(時価合計約3万円相当)を強取し,さ
らに,同日午前7時30分ころ,両腕を緊縛された両名を前記強取に係る車
両の後部座席に押し込め,同所から同車両を発進させて,d町大字e付近路上
まで疾走させ,両名を同車内から脱出することを不能にし,もって,両名を
不法に逮捕・監禁した上,同日午前8時30分ころから同日午前8時50分
ころまでの間,同路上において,殺意をもって,
1Fに対し,被告人Bにおいて,前記ガムテープを顔面に数重に巻き付け,
鼻口部を閉塞して呼吸不能な状態にし,被告人Aにおいて,Fを同所付近
斜面下に突き落とすなどし,よって,そのころ,同所において,同人を鼻
口部閉圧に基づく気道圧迫閉鎖による急性窒息により死亡させて殺害し,
2Eに対し,被告人Bにおいて,前記ガムテープを顔面に数重に巻き付け,
鼻口部を閉塞して呼吸不能な状態にし,被告人両名において,同女を同所
付近斜面下に突き落とすなどして,同女を殺害しようとしたが,同女が鼻
口部に巻き付けられたガムテープを除去するなどして同所から逃走したた
め,同女に全治約2週間を要する左下顎部打撲,左上腕打撲及び胸部打撲
等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げず,
さらに,同日午前10時45分ころ,前記F方玄関から同人方に侵入した上,
同所において,F又はE所有に係る現金合計約18万6150円及び灰皿1
個外23点(時価合計約4940円相当)を強取した。
第4被告人両名は,共謀の上,同日午前5時30分ころ,前記F方において,業
務その他正当な理由による場合でないのに前記文化包丁1丁を携帯するとと
もに,法定の除外事由がないのに前記あいくち1本を所持した。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為のうち
強盗致傷の点刑法60条,240条前段
逮捕監禁致傷の点刑法60条,221条,220条(204条)
判示第2の所為刑法176条前段
判示第3の所為のうち
住居侵入の点いずれも刑法60条,130条前段
Fに対する逮捕監禁の点包括して刑法60条,220条
Eに対する逮捕監禁の点包括して刑法60条,220条
強盗殺人の点刑法60条,240条後段
強盗殺人未遂の点刑法60条,243条,240条後段
判示第4の所為のうち
文化包丁携帯の点刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条
あいくち所持の点刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の16第1号,
3条1項
科刑上一罪の処理
判示第1の罪刑法54条1項前段,10条(1罪として重い強盗致傷罪の刑
により処断)
判示第3の罪刑法54条1項前段,後段,10条(各住居侵入と強盗殺人及
び強盗殺人未遂との間にはそれぞれ手段結果の関係があり,F
に対する逮捕監禁と強盗殺人及びEに対する逮捕監禁と強盗殺
人未遂はいずれもそれぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場
合であるから,結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重い強
盗殺人罪の刑で処断)
判示第4の罪刑法54条1項前段,10条(1罪として重いあいくち所持に
係る銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪の刑により処断)
刑種の選択
判示第1の罪有期懲役刑
判示第3の罪無期懲役刑
判示第4の罪懲役刑
併合罪の処理
被告人Aにつき(判示第1ないし第4の罪)
刑法45条前段,46条2項(判示第3の罪につき無期懲役刑に処すので
他の刑を科さない)
被告人Bにつき(判示第1,第3,第4の罪)
刑法45条前段,46条2項(判示第3の罪につき無期懲役刑に処すので
他の刑を科さない)
未決勾留日数算入刑法21条
没収いずれも刑法19条1項2号,2項本文(包丁1丁(平成1
3年押第42号の3)は判示第1の強盗致傷の供用物,包丁
1丁(同号の2)及びあいくち1本(同号の1)はいずれも
判示第3の強盗殺人及び強盗殺人未遂の供用物)
訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(被告人両名につき不負担)
(量刑の理由)
1本件は,金銭に窮していた被告人両名が,風俗店を共同経営するための事業資
金等を調達する目的で,被告人Aの知人である女性から金員を強取し,その際傷
害を負わせるなどした後,更に多額の金品を強取しようと被告人Aと親族関係に
ある老夫婦方を襲い,口封じのため,夫婦両名の殺害を図り,その夫を窒息死さ
せ,妻にも傷害を負わせるなどの犯行に及んだ強盗致傷,強盗殺人,強盗殺人未
遂等の事件である。
2判示のとおり,被告人らは,いずれの犯行においても,予め,口封じのために
金員等を強取した後に被害者を殺害することを計画し,被害者Dに対しては,計
画不足のため殺害を断念したものの,包丁を突き付けて脅し,手足の自由を奪っ
た上で車のトランクに押し込め,人気のない山中まで連行し合計約50万円を奪
い取るなどしたが,更に多額の金員を強取するため,より詳細な打ち合わせや準
備を行った上で次の犯行に及んでおり,被害者F及びEに対しては,刃物を突き
付け,仲間が子供達にまで危害を加えるなどと申し向けて脅迫し,財布等を奪っ
た後,両名が必死で命乞いをしても全く意に介さず,躊躇なく殺害行為に及んで
おり,両名を確実に殺害するため,両手の自由を奪った上で,その顔面に何重に
もガムテープを巻き付けて鼻口部を塞ぎ,呼吸ができない状態にして山中の斜面
下に突き落とし,一度は自力で斜面をはい上がってきた被害者Fに対し,腹部を
蹴りつけ,顔面に更にガムテープを巻き足した上で再び斜面の下に突き落とし,
その上から腹部に大きな石を投げつけるなどして同人の抵抗力を完全に奪い,窒
息死させたもので,犯行態様は極めて凶悪で残忍である。被告人らは,何ら非の
ない被害者らに対し,激しい肉体的・精神的苦痛を与え,被害者Dから合計約5
0万円,被害者F及びEから合計約20万円の現金等を強奪した上,被害者Fの
命を奪ったのであり,結果は極めて重大で,単なる金銭欲から短絡的にかかる犯
行に及ぶなど言語道断としかいいようがない。当時,被告人Aは,いわゆるネッ
トワーク商法まがいの事業に手を染めたことにより多額の借金を抱え,被告人B
も休職処分中で無収入の状態ではあったが,いずれも本件犯行に及ぶ以前に事業
の清算や他の稼働先を探すなど,一家の長として家族を養うためになすべき努力
を十分にしていたとは言い難く,本件各犯行は,自己が利益を得るためには他者
を犠牲にしてもよいという被告人らの歪んだ考えが如実に現れたものというべき
である。被告人両名は,被害者Fを殺害した後,犯行に使用した包丁等を投棄し,
アリバイについて口裏合わせを行うなどして追及を逃れようし,強奪した金員を
山分けして従前同様,稼働することなく無為徒食の遊興生活を続けており,犯行
後の情状も芳しくない。
被告人Aは,本件各犯行の主謀者であり,その責任が重いことはいうまでもな
いが,被告人Bも,被告人Aからの誘いを受け,直ちに本件各犯行に加わること
を了承しており,被害者Dに対する犯行の際には発覚に対する不安などから実行
をためらう場面もあったが,結局犯行による利益を当てにして同女に対する脅迫
や緊縛を行っており,F夫婦に対する犯行においては,自ら積極的に犯行計画の
策定に関与し,被害者らの顔面にガムテープを巻き付けるなど,極めて重要な役
割を果たしており,本件各犯行はいずれも被告人Bの関与なくしては実現し得な
かったといえるのであるから,被告人Bの責任は被告人Aに比しても決して軽い
ものとはいえない。
3被害者Fは,あまり豊かとは言えない家庭で必死に働きながら立派に子供を育
て上げ,ようやく妻Eと共に子や孫に囲まれた幸せな生活をすることができるよ
うになったところであったのに,親戚として金銭的な援助をするなど恩義をかけ
た被告人Aらからこのような仕打ちを受け,命を落とすことになったのであり,
その無念の気持ちはいかほどであったかと思われる。被害者Fは,被告人らによ
って顔面に凹凸がわからなくなるまで幾重にもガムテープを巻き付けられ,全く
呼吸することができない状態になった後も,必死で脱出を試みたが,前記のとお
り執拗な暴行を受けて抵抗する力を失い,山中に放置されて死亡したのであり,
死に至るまでに同人が受けた苦痛や恐怖,絶望感は筆舌に尽くし難いものであっ
たと思われる。被害者Eは,幸いにも自力で脱出し,殺害を免れたものの,面前
で夫が殺害されようとしているのを目撃しながら自身も顔面にガムテープを巻か
れ,どうすることもできないという無力感と共に自らも死の恐怖に直面し,長年
連れ添った最愛の夫を理不尽な凶行により失なったという衝撃から未だに立ち直
れず,夫の死を受け入れ難い心境にある。遺族の激しい怒りや悲しみのほどは察
するに余りあり,被告人らに対し,被害者Eが夫や自分が受けたのと同じ苦しい
目に合わせてやりたいなどと述べ,残された子供達が極刑を望んでいるのももっ
ともなことといえる。
被害者Dは,被告人らの計画がやや杜撰であったことなどから危うく難を逃れ
たものの,被告人らが当初自分も殺害するつもりであったと知って更に衝撃を受
けており,本件犯行により受けた恐怖や被告人Aによりわいせつ行為を受けた際
の屈辱感など,その精神的苦痛は容易に癒されるものではないのであり,同女も
被告人らに対して厳罰を望んでいる。
このように,被害者らの被害感情は極めて厳しいが,それに対して未だ十分な
慰謝の措置が取られているとはいえない。
5被告人らは,被害者Dに対する事件について逮捕された後,被害者F夫婦に対
する犯行についても素直に事実を認め,反省と謝罪の弁を述べており,被告人B
においては,捜査機関からの追及を受ける前に反省と悔悟の念から進んで同事実
を申告して自首しており,被告人Aにおいてもその両親が借入金の返済と謝罪の
意味を込めて所有不動産を被害者Eに贈与するなど慰謝のための努力をしている
ほか,被告人らはいずれも交通事件による罰金前科1犯を有するのみであるなど,
被告人らにとって酌むべき事情も認められる。
しかし,本件犯行の性質,凶悪性,被害の重大性等を考えれば,被告人らに対
しては,厳罰をもって臨む必要があり,主文のとおり無期懲役刑に処すのが相当
であると判断した。
(求刑被告人両名につき無期懲役,包丁,文化包丁及びあいくち各1丁没収)
平成14年5月23日
大分地方裁判所刑事部
裁判長裁判官久我泰博
裁判官金田洋一
裁判官餘多分亜紀

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