弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     当審証人Aに支給した訴訟費用は、被告人Bの負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、被告人Bの弁護人島田武夫、同毛受信雄共同提出の控訴趣
意書及び補充控訴趣意書、同被告人の弁護人中村信敏提出の控訴趣意書並びに被告
人Cの弁護人海野普吉、同太田金次郎共同提出の控訴趣意書にそれぞれ記載してあ
るとおりであるから、これを茲に引用して次のとおり判断をする。
 被告人Bの弁護人島田武夫、同毛受信雄共同提出の控訴趣意書及び補充控訴趣意
書について、
 (但し、論旨第一点及び同第三点ないし第八点に対する次の各判断は、弁護人中
村信敏提出の控訴趣意書中の論旨第一点に対する判断を含むものとする。)
 論旨第一点。
 東京特別調達局が、国家行政組織法第三条の規定に基いて総理府の外局として設
置された特別調達庁の地方支分部局の一つであることは、同法第九条、特別調達庁
設置法第二条、第十三条ないし第十六条の規定によつて明らかである。而して、総
理府の外局たる特別調達庁部内の機関に属する官職についての任命権は、その長<要
旨>においてこれを有することは国家公務員法第五十五条第一項の明定するところで
ある。されば、記録ないし証拠によるときは、被告人Dは、昭和二十五年四
月一日右にいわゆる外局の長たる特別調達庁長官から東京特別調達局管財部長たる
官職の任命を受け、(なお、同被告人は、国家公務員法附則第九条、人事院規則八
―一一により同局管財部長に任用されたことも証拠上明らかである)爾来、同部長
として同部所属の不動産契約課、不動産評価課或は不動産調査課等の管掌する接収
不動産の借上契約、或は接収解除に伴う使用解除財産の補償並びに同部所属の解除
物件処理課外各課が管掌する解除物件売却の契約業務並びに解除物件の物品会計業
務等特別調達庁設置法、昭和二十四年六月一日総理府令第五号及び特別調達庁組織
規程(昭和二十五年四月一日特別調達訓令第二号)の定むる所掌事務を統轄、指
導、監督する公務に従事していたものであることが認められるから、同被告人が当
時法令により公務に従事する官吏であつて刑法第七条所定のいわゆる公務員であつ
たことは、これを否定し得べくもない。なるほど、所論にいうように、特別調達庁
設置法、特別調達庁組織規程によれば、当時東京特別調達局にはその所掌事務の配
分のため、経理部、契約部、技術部、促進監督部、管財部の五部を設け、更にその
各部に種々の課を設けてそれぞれの所掌事務の範囲を定めてはいるが、各部に部長
を置く旨の積極的な明文はこれを認め得るに由のないところではあるが、それにも
かかわらず、特別調達庁組織規程、は特に第六十九条を設けて、(1)東京特別調
達局契約部及び経理部に副長各一人を置く、(2)副長は、部長を補佐し、部務を
整理すると規定して、五部ある内特に契約部と経理部だけに部長の外に副長一人を
置く趣旨を宣明していることに徴するときは、右組織規程は、各部にその長として
各部の所掌事務を統轄、指導、監督する権限を有する部長たる官職を置くべきこと
は、所掌事務分配として各部を設けた本旨に照らし行政組織上当然なところとして
敢てこれを明文に示すことをせず、各部にその長たる部長一人を置くことを原則と
はするが、契約部と経理部の二部だけにはそれぞれ部長の外に副長を置くを必要と
したことから、右原則の例外事項として特にこの旨を明文上明らかにしたにすぎな
いものというべく、右設置法ないしは組織規程に、各部に部長を置く旨の明文を欠
いているからといつて、各部の長たる部長を置かない趣旨であるというを得ないば
かりか、各部の所掌事務の内容にして右法令上明らかなものがある以上、各部の長
たる部長が、他に別段の定めのないかぎり、部内各課の所掌事務を統轄、指導、監
督する等、部の長たる地位に添う一切の職務権限を有すべきこともまた事理の当然
とするところであるから、冒頭説示の如く、法令上の任命権を持つ外局の長たる特
別調達庁長官の任命にかかる東京特別調達局管財部部長は、すなわち、法令によつ
て公務に従事する官吏たる公務員であると言わざるを得ない。前段説示の如く東京
特別調達局の管財部長として公務に従事していた当時の被告人Dを刑法にいわゆる
公務員でなかつた旨主張し、これが主張を前提として、原審判決において、被告人
Dが管財部長として同部に属する各課の事務を統轄、指導、監督する職務に従事し
ていた旨判示したのは、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤を冒した
ものであるとの所論は採用するに由がない。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦)

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