弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取消す。
     和歌山地方裁判所昭和三七年(ヨ)第一五九号仮差押命令申請事件の仮
差押命令に基づく執行処分を取消す。
     本件申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。
         理    由
 抗告人は主文同旨の裁判を求め、その理由として、別紙抗告の理由記載のとおり
主張した。これに対する当裁判所の判断はつぎのとおりである。
 <要旨>仮差押執行後に債権者が強制執行(以下仮差押の執行と区別するために本
執行と表示する)をすることができるようになつたときは、仮差押の執行は
本執行に移行し、仮差押手続上の既存の裁判、執行及び執行処分は可能な限りその
請求の本執行手続に関して行われたものと見做され、その限りにおいてそのまま本
執行手続の一部を構成することになるから、法律上本執行をすることができない場
合に誤つて本執行を開始続行したこと又は本執行の債務名義である仮執行宣言が取
消されたことに原因して、本執行の申立が撤回若くは取消されたり、又は本執行の
開始及びその後の執行処分が無効となつたり若くはこれを取消す裁判があつたりし
て本執行が失効したときは、仮差押執行の本執行への移行のみが失効したものとし
て仮差押手続上の裁判、執行及び執行処分は当然に本執行移行前の効力を回復する
けれども、そうでなくて木執行を開始し仮差押の執行を本執行に移行させたことが
違法であること以外の原因による本執行の終了(例えば、請求の満足、本執行手続
の完了、請求の放棄又は執行目的に対する強制執行の断念の意思をもつてする本執
行の取下、執行不能、執行目的達成不能等に原因する本執行の終了)は、本執行仮
差押の執行共通の終了原因によるものであるから、本執行開始前の仮差押の執行又
は執行処分で本執行に移行して本執行の一部になつたものは、当然に本執行とその
存続の運命を共にすべきものであつて、本執行の失効後に仮差押の執行としての努
力を回復する道理はない。
 記録によれば、本件の場合には、執行裁判所は、本件執行目的不動産の価額をも
つては、右不動産の換価代金につき本件執行債権よりも優先弁済を受けることがで
きる右不動産上のすべての負担及び手続費用を弁済して剰余がある見込みがないと
認めたので、本件債権者である相手方に対してその旨を通知して民訴法第六五六条
第二項所定の申立の機会を与えたが、その申立がなかつたので、本件の本執行手続
を取消し、本執行の申立を却下する旨の決定をなし、これによつて本件本執行手続
が終了したものであることを認めることができる。
 そうすれば、右本件本執行手続の終了原因は、本件執行目的不動産に関する限り
では本執行にも仮差押の執行にも共通してその執行の続行を無益のものとするもの
であつて、仮差押の執行を本執行に移行させたことが違法であること又は結果にお
いて違法に帰したことに由来するのではないこと明白であるから、本執行終了後に
仮差押の執行又は執行処分のみがその本執行への移行前の効力を回復する場合には
該当しないと言うべきである。原決定は、この場合においても本件債権者である相
手方の仮差押をする必要は解消されていないと言うけれども、本件仮差押決定は本
来の意味の仮差押命令即ち仮差押目的物件の特定のない仮差押の許容と仮差押命令
の執行としての裁判即ち特定の仮差押物件に対する仮差押の許容とを兼ね、両者不
可分の一体をなしその成否存否の運命を共にするものであるところ、本件執行目的
不動産に関する限りではもはや仮差押を継続することは無益となり存続の必要がな
いものとなつたのであるから、本件仮差押決定全体として仮差押をする必要を失つ
たものと言うことができるわけであつて、この点に関する原決定の見解はこれを採
用することができない。
 原決定が、この場合においても、その本執行開始前にあつた仮差押の執行又はそ
の執行処分は当然に右移行前の効力を回復すべきものであると判断して、本件の仮
差押命令(相手方を債権者、抗告人を債務者とする和歌山地方裁判所昭和三七年
(ヨ)第一五九号仮差押命令申請事件の仮差押命令)に基づく執行処分を取消す旨
の裁判を求めた抗告人の申立を却下し、右仮差押の執行処分を存続させる措置を採
つたのは、法律の解釈適用を誤つた不当な裁判であるから取消しを免れない。右仮
差押の執行処分は執行裁判所において職権をもつて、取消すべきものであつてその
取消を求める抗告人の原審における執行方法に関する異議は正当としてこれを認容
すべきものである。
 よつて、民訴法第九六条第八九条を適用して主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 乾久治 裁判官 長瀬清澄 裁判官 新居康志)

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