弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2川崎南税務署長が被承継人株式会社Aに対して平成20年6月24日付けで
した,同社の平成17年4月1日から平成18年3月31日までの連結事業年
度の法人税の更正処分のうち連結所得の金額28億0479万4013円及び
納付すべき税額6億4881万2100円を超える部分並びに過少申告加算税
賦課決定処分をいずれも取り消す。
第2事案の概要
1本件は,株式会社A(以下「旧A」という。)が,平成17年4月1日から
平成18年3月31日までの連結事業年度(以下「本件連結事業年度」とい
う。)の法人税について連結確定申告をするに当たり,平成17年4月1日を
合併期日として吸収合併をしたB株式会社(以下「B」という。)の本件連結
事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額を
法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)81条
の9第2項に規定する連結欠損金額とみなされる金額として連結所得の金額の
計算において損金の額に算入したのに対し,川崎南税務署長がその算入を否認
して更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたことから,旧Aが同各処
分の取消しを求めた事案である。
控訴人は,原審係属中,旧Aを吸収合併し,その訴訟上の地位を承継した。
原審は,川崎南税務署長の上記各処分はいずれも適法であるとして,控訴人
の請求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴した。
2本件に関係する主な法令の定め,争いのない事実等及び上記各処分の根拠等
は,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1項から3項までに
記載されたとおり(ただし,原判決10頁1行目の「本件各更正処分」を「本
件更正処分等」に改める。)であるから,これを引用する。
3本件の争点及び争点に関する当事者の主張は,控訴人の当審における新たな
主張が後記第3の3項(1)記載のとおりであるほかは,原判決「事実及び理
由」欄の「第2事案の概要」の4項に記載されたとおりであるから,これを
引用する。ただし,原判決17頁25行目及び18頁14行目の各「第2号」
をいずれも「第2項2号」に改める。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の本件請求はいずれも理由がないと判断する。その理由
は,当審における控訴人の主張に対する判断を次項以下に付加するほかは,原
判決の「事実及び理由」欄の「第3争点についての判断」に記載のとおりで
あるから,これを引用する。ただし,原判決20頁11行目の「簡明であるこ
と,」の次に「税収減を防止することのほか,」を加える。
2争点1,2についての控訴人の主張に対する補足説明
(1)争点1(本件青色欠損金額は,法人税法81条の9第2項1号の規定に
より旧Aのみなし連結欠損金額に当たるといえるか否か)について
ア控訴人は,法人税法81条の9第2項1号は,同号の欠損金額について,
同法57条2項により欠損金額とみなされたものを含むと規定しており,
最初連結親法人事業年度開始の日に子会社が適格合併により合併されたと
きも,同条項により親会社の欠損金額とみなされると主張する。
しかしながら,法人税法81条の9第2項1号において連結欠損金額と
みなされる「第57条第1項…に規定する欠損金額」が,「最初連結親法
人事業年度…開始の日前7年以内に開始した当該連結親法人の各事業年度
において生じた」ものに限られ,最初連結親法人事業年度開始の日前にお
いて既に存する欠損金額に限定されていることからすると,これに含まれ
ることとなる,同法57条2項の規定により「欠損金額とみなされたも
の」は,最初連結親法人事業年度開始の日前の時点において,既に同法5
7条2項の適用により当該連結親法人の欠損金額とみなされたものに限ら
れると解するのが自然であり,最初連結親法人事業年度開始の日以後にお
いて当該連結親法人を合併法人等とする適格合併等が行われた場合はこれ
に含まれないものと解される。このことは,同法81条の9第2項3号に
おいて,連結親法人が完全支配関係を有しない法人との間で当該連結親法
人を合併法人等とする適格合併等を行った場合に,被合併法人等の未処理
欠損金額を連結欠損金額とみなす旨の規定を特に設けていることにも示さ
れており,同様に,同項2号に規定する連結子法人を被合併法人等とする
適格合併等が行われた場合についても同法施行令155条の19第3項,
4項の規定が特に設けられている。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
なお,控訴人は,最初連結親法人事業年度開始の日に合併が行われた場
合は,被合併法人は合併の日の前日をもって消滅し,合併により移転する
権利義務から生ずる所得の帰属は合併の日の零時をもって変更し,被合併
法人の欠損金額は合併法人に承継され,他方,連結納税の承認の効力発生
の日に合併により解散消滅する連結子法人となるべき法人は,その日に連
結納税の承認が取り消されたものとみなされ,連結納税の効果は生じなか
ったこととなると主張する。しかし,同法57条9項2号は,文理上,最
初連結親法人事業年度開始の日に合併が行われた場合も被合併法人が「連
結子法人」であることを前提としているから,この場合も被合併法人が連
結子法人であるものとして関係法令が適用されるというべきであるし,最
初連結親法人事業年度開始の日に適格合併が行われた場合に,被合併法人
の未処理欠損金額が同法81条の9第2項1号の規定により連結欠損金額
とみなされるものでないことは上記のとおりである。
イ控訴人は,同法57条9項2号イは,最初連結親法人事業年度開始の日
に合併が行われた場合は,被合併法人である子会社の欠損金額について,
ないものとされる欠損金額から除外しているから,欠損金額は存続し,子
会社が適格合併により合併されたときは,同条2項により親会社の欠損金
額とみなされると主張する。
しかしながら,同法57条9項2号イにおいて「最初連結親法人事業年
度開始の日に行う合併」が規定されたのは,この場合の「当該合併の日の
前日の属する事業年度」は最初連結親法人事業年度ではなく,当該内国法
人の単体納税下の事業年度であるから,これを含めて同項2号において欠
損金額を「ないもの」とするのは相当でないことから,同号イの規定を設
けて除外したものにすぎず,この結果,「当該事業年度前の各事業年度に
おいて生じた欠損金額」が「ないもの」とはされないからといって,これ
が同条2項により合併法人である連結親法人の欠損金額とみなされるので
ないことは上記アのとおりである。
ウ控訴人は,同法57条7項及び81条の9第2項3号は,連結法人に関
連した適格合併の場合,被合併法人の欠損金額の控除を広く認める規定で
あり,これとの整合性を確保するためにも最初連結親法人事業年度開始の
日に行う適格合併について未処理欠損金額の控除を認めるべきであると主
張する。
しかしながら,同法57条7項は,連結法人を被合併法人とする適格合
併を行った場合に,被合併法人の所定の連結事業年度において生じた連結
欠損金個別帰属額の限度で欠損金額とみなすものであって,単体納税下の
事業年度において生じた欠損金を引き継ぐものではないし,同法81条の
9第2項3号は,連結親法人が完全支配関係を有しない法人を被合併法人
とする適格合併を行った場合の規定であり,これらとは事情が異なる最初
連結親法人事業年度開始の日に行う適格合併の場合に,被合併法人の単体
納税下の事業年度において生じた欠損金額を合併法人が引き継がないと解
しても,制度において整合性を欠くとはいえない。
エ控訴人は,単体納税の下での適格合併では,被合併法人の未処理欠損金
額は合併法人に承継されて繰越控除の対象とされるが,これと実質的に同
一の実態にある最初連結親法人事業年度開始の日に行われた本件合併につ
いて,被合併法人の未処理欠損金額について欠損金控除を認めないのは,
その差異に適正かつ合理的な理由がなく,わずか1日の違いにより未処理
欠損金額の控除が否定されることの不合理,不平等は明白であり,租税法
律の内容の適正さを要請する租税法律主義に違背すると主張する。
しかしながら,本件合併が最初連結親法人事業年度開始の日の翌日以降
に行われた場合には,被合併法人であるBの未処理欠損金額は連結欠損金
額に算入されないところ,最初連結親法人事業年度開始の日を含むそれ以
後の日に行われる適格合併と単体納税の下で行われる適格合併とで被合併
法人の未処理欠損金額の取扱いを同じくするかどうか,また,最初連結親
法人事業年度開始の日のみを後者と同じ取扱いとするかどうかは,立法政
策にゆだねられるところであり,原判決説示のとおりの立法理由に照らせ
ば,最初連結親法人事業年度開始の日に行われたときを含め,最初連結親
法人事業年度において適格合併が行われた場合に,被合併法人の単体納税
下の事業年度で生じた未処理欠損金額を連結欠損金額とみなすものとしな
いことが不合理又は不平等であるとはいえず,この点についての法人税法
の規定が租税法律主義に反するとの上記主張は理由がない。
(2)争点2(法人税法施行令155条の19第5項が法人税法81条の9第
2項2号の委任の範囲を逸脱したものか否か)について
控訴人は,法人税法81条の9第2項2号が政令に定める法人を除くとし
た趣旨は,共同株式移転を用いた制限規定の潜脱や不整合の防止を図る点に
あり,この目的を達成するのに必要な範囲でのみ除外すべき連結法人を定め
ることを政令に委任したものであるところ,同法施行令155条の19第5
項の規定は,外国法人をも適用対象とする点で委任の範囲を超え,違法,無
効であり,租税法律主義にも違反すると主張する。
しかしながら,委任命令の内容が委任の範囲を超えるかどうかは,委任の
趣旨に従って解釈すべきところ,同法81条の9第2項2号は,政令に委任
するについて特に限定する規定を設けておらず,その委任の趣旨において控
訴人の上記主張の制限があると解すべき理由はなく,同法施行令155条の
19第5項において,連結子法人を定めるについて,連結法人となることが
できない外国法人を除外しなかったからといって,委任の範囲を超えるもの
でないことは原判決説示のとおりである。
3控訴人の当審における主張について
(1)控訴人は,仮に,本件更正処分が適法であるとしても,①毎年4月1日
から翌年3月31日までを事業年度とする事業会社が被合併法人として適格
合併をする場合には,4月1日に合併をすることが実務上最も合理的で簡便
であり,②最初連結親法人事業年度開始の日に合併を行う場合の欠損金の取
扱いを直接定める規定はなかったところ,課税庁は,この場合の取扱いにつ
いて内部資料を作成していたにもかかわらず,これを周知させる措置を講ず
ることはなかったから,旧Aが控訴人主張の法令解釈により本件連結確定申
告書を提出したとしても無理からぬところがあるとして,国税通則法65条
4項の「正当な理由」があり,本件賦課決定処分は違法であると主張する。
(2)しかしながら,上記①の事由は,Bを被合併法人とする本件合併におい
て合併の日を平成17年の4月1日とした理由,事情をいうものにすぎず,
本件青色欠損金額を連結欠損金額とみなして税額を計算したことについて国
税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるということはできない。
また,上記②については,証拠(甲26,27)によれば,国税庁調査課
が,最初連結親法人事業年度開始の日に連結子法人を被合併法人とする合併
を行った場合に,被合併法人の欠損金額は連結欠損金額とみなされないとす
る内部資料を作成したこと(その作成と本件連結確定申告書の提出の先後は
不明である。)が認められるにとどまり,税務当局が,上記とは反対に当該
連結子法人の欠損金を連結欠損金とみなすべきであるとの見解を公表し,又
はそのような取扱いをしていたなどの事情を認めるに足りる証拠はないから,
国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとはいうことはできない。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
第4結論
以上によれば,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを
棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第23民事部
裁判長裁判官鈴木健太
裁判官高野伸
裁判官中山幾次郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛