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裁判例


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主文
1(1)甲事件に関する控訴人組合の控訴並びに当審における請求の拡張及び減縮
に基づき,原判決主文第1ないし第4項を次のとおり変更する。
(2)被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,控訴人組合に対し,連帯し
て3789万2870円及びこれに対する平成13年5月24日から支払済
まで年5分の割合による金員を支払え。
(3)被控訴人会社は,控訴人組合に対し,3987万3180円及びこれに対
する平成13年5月24日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
(4)甲事件に関する被控訴人らの控訴をいずれも棄却する。
(5)甲事件及び当審における請求の拡張に伴う訴訟費用は,第1,2審を通じ
て,控訴人組合に生じた費用の2分の1を被控訴人A1,同A2,同A3及
び同A4の,同2分の1を被控訴人会社の各負担とし,その余を各自の負担
とする。
2(1)乙事件に関する被控訴人A3及び同A4の控訴をいずれも棄却する。
(2)乙事件の控訴費用は,同被控訴人らの負担とする。
3この判決の主文第1項(2)及び(3)は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判(以下,略称は,原則として原判決の表記に従う。)
1甲事件関係
(1)控訴人組合
ア原判決主文第2,4項を取り消す。
イ被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,控訴人組合に対し,連帯
して2439万2870円及びこれに対する平成13年5月24日から支
払済まで年5分の割合による金員を支払え。
ウ被控訴人会社は,控訴人組合に対し,3950万円及びこれに対する平
成13年5月24日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
エ甲事件に関する被控訴人らの控訴をいずれも棄却する。
オ甲事件の訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
カ仮執行宣言
(2)被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4
ア原判決主文第1項を取り消す。
イ控訴人組合の被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4に対する甲事件
請求をいずれも棄却する。
ウ甲事件に関する控訴人組合の被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4
に対する控訴及び当審における請求をいずれも棄却する。
エ甲事件の訴訟費用は,第1,2審とも控訴人組合の負担とする。
(3)被控訴人会社
ア原判決主文第3項を取り消す。
イ控訴人組合の被控訴人会社に対する甲事件請求を棄却する。
ウ甲事件に関する控訴人組合の被控訴人会社に対する控訴を棄却する。
エ甲事件の訴訟費用は,第1,2審とも控訴人組合の負担とする。
2乙事件関係
(1)被控訴人A3及び同A4
ア原判決主文第5項を取り消す。
イ控訴人組合は,被控訴人A3及び同A4に対し各200万円及びこれら
に対する平成13年5月16日から支払済まで年5分の割合による金員を
それぞれ支払え。
ウ乙事件の訴訟費用は,第1,2審とも控訴人組合の負担とする。
エ仮執行宣言
(2)控訴人組合
ア乙事件に関する被控訴人A3及び同A4の控訴をいずれも棄却する。
イ乙事件の控訴費用は,被控訴人A3及び同A4の負担とする。
3丙事件関係
丙事件原告ら(A1及び被控訴人会社)は控訴をしなかった。
第2事案の概要
1当事者の請求と原審の経過等
(1)甲事件請求
ア甲事件は,養鶉(ようじゅん)作業の共同化に関する施設等の事業を主
な目的とする農業協同組合である組合(以下,単に「組合員」というときは,
原則として当事者である組合の構成員を指す。これに対し,一般の農業協
同組合とその構成員を,それぞれ「農協」「農協組合員」という。)が,
①被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4が,組合から組合員を脱退さ
せる等して,組合を経営危機,解散に陥れようと企て,共謀して,組合の
信用を毀損する文書を発送し,新聞記事を利用して虚偽の風説を流布する
等して,組合に損害を与えたと主張して,同被控訴人らに対し,共同不法
行為,債務不履行又は不正競争防止法違反に基づく損害賠償を請求すると
ともに,②被控訴人会社が本件請負契約(原判決4頁)に基づき製作した
鶉卵加工システム(本件装置。同4頁)が保証された性能を有しておらず,
加えて瑕疵があると主張して,被控訴人会社に対し,債務不履行に基づく
損害賠償を請求する事案である(上記①②の請求を,以下,それぞれ「本
件不法行為に基づく損害賠償請求」「性能違反に基づく損害賠償請求」とい
う。)。
イ本件不法行為に基づく損害賠償請求に対し,被控訴人A1,同A2,同
A3及び同A4は,組合に対する信用毀損行為等を否認し,自分らの行為
と組合員の脱退との因果関係を争うとともに,組合の損害額を争った。ま
た,被控訴人A3及び同A4は,本件不法行為に基づく損害賠償請求は,
自分らと組合との別件仮処分事件(原判決10頁)における和解(以下
「別件和解」という。)の清算条項(同10頁)に抵触し,許されない旨の本
案前の抗弁を提出した。
ウ性能違反に基づく損害賠償請求に対し,被控訴人会社は,本件装置の性
能保証をしたことを否認し,同装置の性能の不足及び瑕疵の存在を争うと
ともに,除斥期間の経過を主張して,損害賠償責任を争い,組合の損害額
も争った。
(2)乙事件請求
乙事件は,被控訴人A3及び同A4が,組合に対し,本件不法行為に基づ
く損害賠償請求自体が別件和解の清算条項に抵触する不法行為であると主張
して,慰謝料を請求する事案である。
(3)原審の判断
原審は,(ア)本件不法行為に基づく損害賠償請求と別件和解の清算条項と
の抵触を認めず,同請求に対する被控訴人A3及び同A4の本案前の抗弁並
びに乙事件請求を排斥し,(イ)本件不法行為に基づく損害賠償請求の本案の
判断に基づき,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の組合に対する信
用毀損行為等を認定して,組合の売上減少と弁護士費用に対する損害賠償と
して合計1350万円及び遅延損害金の限度で同請求を認容し,(ウ)性能違
反に基づく損害賠償請求について,本件装置の性能保証を本件請負契約の内
容と認め,被控訴人会社の除斥期間の主張も退けたが,最大の争点である加
工卵の歩留率低下の瑕疵を認めず,1次ボイル槽から2次ボイル槽への鶉卵
の移送方法ほか1点の瑕疵の修補費用37万3180円及び遅延損害金の限
度で同請求を認容した。
(4)控訴の範囲・内容等
原判決に対しては,甲事件につき組合,被控訴人A1,同A2,同A3,
同A4及び同会社が,乙事件につき被控訴人A3及び同A4が,それぞれ控
訴をした。
なお,A1と被控訴人会社は,原審の丙事件において,組合による甲事件
の提起が不法行為に当たると主張して,組合に対し損害賠償を請求して棄却
されたが,これに対し控訴をせず,丙事件請求の当否は,当審の審理の対象
にならない。
また,組合は,当審において,本件不法行為に基づく損害賠償請求を14
00万円(元金部分。以下同じ)から3789万2870円に拡張するとと
もに,性能違反に基づく損害賠償請求を1億2000万円から3987万3
180円に減縮した(いずれも原審での認容額を含む。)。
2原判決の引用
事実関係,争点及びこれに関する当事者の主張は,下記3のとおり原判決を
補正し,同4ないし6のとおり当審における当事者の主張(原審における主張
の敷衍を含む。)を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2ないし
第4に記載のとおりであるから,これを引用する。
3原判決の補正
(1)基本的事実の補正
ア原判決5頁9行目の次に,改行して,以下のとおり加える。
「組合は,平成4年頃,経営危機に陥り,役員らの要請により,従前,直
接組合に関係のないA1,A6,A12(以下それぞれ「A6」「A12」
という。)が組合再建に協力することになった。
このうちA1は,下記(3)のとおり従前から被控訴人会社の代表取締役を
していた。A6は,株式会社B2の代表取締役で,愛知県豊橋地方では有
力な経済人であり,A12は,税理士である。
イ原判決5頁10行目から13行目までを,以下のとおり改める。
「(2)A1,A6,A12は,平成4年10月19日に養鶉業,養鶉用機器
の販売等を目的とするB1株式会社(以下「B1」という。)を設立し,
取締役に就任した。更に,A1は,同日から平成12年4月16日まで
同社の代表取締役の地位にあり,またこの間,組合の経営にも事実上関
与していた(甲1の1・2,10の1ないし3,58の2)。
ウ原判決5頁19行目の次に,改行して,以下のとおり加える。
「組合は,平成12年4月24日に臨時総会を開催して,B1の株式(以
下「B1株」という。)を買取る旨を決議し,大半のB1株は,同月,A
1等からA14(以下「A14」という。)等へと譲渡されて,B1は,
株主構成が大幅に変更された。また,組合は,同年6月30日に通常総会
を開催したが,同年5,6月頃,複数の組合員や生産協力農家が組合に退
会届,廃業届を提出した(ただし,上記通常総会や退会届等の法的効力に
争いがある。)。
(2)当事者の主張の補正
原判決10頁26行目の「(ア)被告A2ら4名は,」を,以下のとおり
改める。
「(ア)もともとA1は,平成4年に組合再建に関与するようになって以降,
同年4月24日のB1と組合との独占販売契約(以下「本件販売契約」と
いう。)により,組合員の生産物に対し独占販売権を有するB1の代表取
締役だった地位等を利用して,組合の経営を事実上支配していたが,平成
11年頃以降,組合員が結成した有志の会から経営の是正を求められたこ
と等に反発し,A2,A3,A4と共謀して,」
4本件不法行為に基づく損害賠償請求の本案前の抗弁及び乙事件に関する当事
者の当審における主張
(1)被控訴人A3及び同A4の主張
ア原判決は,本件不法行為に基づく損害賠償請求の訴訟物は別件仮処分事
件の被保全権利と異なるから,同請求は別件和解の清算条項に抵触しない
と判断した。
イしかし,和解は当事者がその間に存する争いを止める合意であるから,
法的構成を変更して再度争えるとすれば,紛争の蒸返しが許されることに
なり,紛争解決の一回性の要請は満たされない。
別件和解の清算条項の「本件に関し」の範囲は,旧訴訟物理論の狭い意
味の訴訟物に限定する必然性がなく,広く,当該紛争と社会的に同一の原
因事実に関する法律関係を指すと解すべきであるから,本件不法行為に基
づく損害賠償請求は,別件和解の清算条項に抵触し許されない。
ウまた,被控訴人A3及び同A4は,別件和解の成立によって,これ以降
は平穏な生活を送ることができるとの期待を持ったが,これは法的保護に
値する利益である。組合は,本件不法行為に基づく損害賠償請求によって
被控訴人A3及び同A4の正当な利益を侵害したのであるから,その精神
的苦痛を賠償する責任がある。
(2)組合の主張
上記主張は,否認ないし争う。
5本件不法行為に基づく損害賠償請求に関する当事者の当審における主張
(1)被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の共同不法行為の存否等
ア被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の主張
(ア)組合の組合員数と幽霊組合員の整理
a原判決は,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4が組合員を脱
退させ,定員割れで組合を解散に追い込もうとしたと認定し,東三河
事務所(原判決12頁)の担当者が幽霊組合員(名簿上だけの組合員)
の整理を指導した事実を認めなかった。
bしかし,農協組合員には正組合員と准組合員があり,農業協同組合
法64条4項の解散事由の農協組合員が15名未満になったときとは
正組合員の数を指すところ(上記の法定組合員数を,以下「法定数」と
いう。),平成10年当時の組合員名簿に正組合員と記載された15名
のうちA16(原判決18頁)は,組合職員であり,実際は養鶉農家
ではなく,正組合員でもなかった。したがって,組合の正組合員は当
時すでに14名と法定数を下回っており,平成11年も同様だったか
ら,そもそも被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4が組合員を法
定数未満にさせて組合を解散させようとしたという理屈は成立しない。
cまた,東三河事務所経済課のA17は,組合関係者に対し幽霊組合
員を整理した方がよいと指導した事実を認めており,この点に関する
原判決の認定も誤っている。
(イ)A18,A19,A8の脱退理由
a原判決は,A18,A19,A8の3名は被控訴人A1,同A2,
同A3及び同A4の働きかけにより退会届を作成したと認定したが,
同人らは,各自の判断で組合から脱退しており,被控訴人A1,同A
2,同A3及び同A4とは無関係である。
bすなわち,従前から組合では,A12がA1を追放して組合に対す
る「経営支配」を確立しようと目論み,一部の組合員らと有志の会を
名乗って,組合がB1株を買取るべきだと主張し,組合長のA2を非
難した。そのため,組合内部がゴタゴタし,良心的な組合員は,有志
の会の行動に不信感を募らせていた。
c他方,A6は,豊橋の有力な経済人であり,組合再建に協力して,
平成4年にB1の株主となり,同社の銀行借入の保証人になる等,組
合に大きな影響力を有しており,多くの組合員は,A6が背後につい
ているからこそ,組合は信頼できると感じていた。
dしかるに,A6は,平成12年5月31日の組合理事会で,自分の
保有するB1株を組合員らに譲渡し,同社や組合とは縁が切れるので,
銀行借入の保証人を抜いてほしいと発言した。そのため,組合員らは,
A6が組合から手を引き,保証人を降りると,自分らが銀行から借入
の返済を請求されるのではないかとの不安を感じた。
e更に,A18,A19,A8の3名は,A18が直接A6から保証
人を降りると聞いたこと,A19が次期組合長のA14の力量に不安
を感じていたこと等もあって,自分らの判断で退会届を作成し,次年
度(組合の年度は,毎年4月1日から翌年3月31日まで。以下,各
年度は期首の属する暦年で表示する。)は組合に籍を残さないように,
平成12年3月30日付で提出しただけであって,被控訴人A1,同
A2,同A3及び同A4は,これに関与していない。
(ウ)A21の脱退と不法行為の成否
A21は,准組合員で,かつ組合に鶉卵を出荷していない幽霊組合員
であり,上記(ア)のとおり,その脱退は,組合の定数不足とは無関係で,
組合の入荷卵数にも影響はないから,A2が組合長として同人の退会届
を受理した行為は,なんら不法行為を構成しない。
(エ)別件訴訟におけるA22(原判決11頁)の供述の信用性
a原判決は,A22が,名古屋地方裁判所豊橋支部平成●●年(ワ)第
●●●号地位確認等請求訴訟で,「A2から退会届の用紙を受け取り,
組合を存続できないようにする目的で退会届を提出した」旨供述した
ことを(以下,それぞれ「別件訴訟」「A22供述」という。),被控
訴人A1,同A2,同A3及び同A4の働きかけの根拠と認定した。
bしかし,A22は,准組合員であって,正組合員でないから,上記
(ア)のとおり,そもそも同人が組合を存続できないようにする目的で
退会届を提出したという論理は成り立たない。
cA22は,多くの組合員が組合から脱退しようとしていた当時の雰
囲気に飲まれて,軽率に退会届を書いただけであって,実際は組合を
脱退したり,解散に追い込む意思がなかったことは明らかであり,A
22供述は,書記官の調書作成ミスか,A22の発言ミスと思われる。
(オ)下記(オ)(共同不法行為の追加主張)について
同主張は,否認ないし争う。
イ組合の主張
(ア)上記ア(ア)(組合の組合員数等)について
a本件紛争のあった平成12年5月当時の正組合員は15名であり,
法定数を満たしていた。被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,
組合を定員割れによる解散のほか,入荷卵の減少で経営危機に陥れよ
うと目論み,組合員を脱退させるために,組合に対する信用毀損行為
等に出たのである。
bまた,正組合員及び准組合員の資格は,農業協同組合法12条及び
組合定款(甲6)のとおりであって,組合への鶉卵の出荷の有無は組
合員の資格要件ではない。そもそも農協組合員に農協への売渡義務を
課することは同法17条ないし19条によって禁止されており,東三
河事務所の関係者が組合に鶉卵を出荷していない組合員を幽霊組合員
としたり,その整理を指導するなどということはあり得ない。
(イ)上記ア(イ)(A18らの脱退理由)について
aA6がB1や組合との関係を解消したり,同社の銀行借入の保証人
を降りようとした事実はないし,それがA18,A19,A8の脱退
理由になったという事実も存在しない。
bすなわち,平成12年4月にB1株がA1等からA14等へと譲渡
されて,B1は,株主構成が大幅に変化したが,A6は,その後も発
行済のB1株200株中80株を保有しており,現在も株主である。
また,A6は,平成15年にB1の銀行借入が完済されるまで,同社
の保証人を続けた。もともとA6は,組合の経営が軌道に乗った暁に
は,保証人を降ろさせてほしいという意向を有していただけであり,
B1や組合と縁が切れるとか,保証人を降りるなどと確定的に発言を
したことはない。
cまた,A6は,B1の株主で,同社の保証人であって,組合の保証
人になったり,組合経営に関与したことはなかった。そのため,ほと
んどの組合員は,A6の存在を知らなかったのであり,同人の動向が
組合員の脱退のきっかけになったことはない。
dA18,A19,A8の陳述書には,A6が組合の債務を保証した
と,A3の供述と同じ内容の間違いが存在する。これは,上記陳述書
が被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の指示で作成されたこと
を示している。
(ウ)上記ア(ウ)(A21の脱退)について
A21は,組合に鶉卵を出荷しているし,そもそも上記(ア)のとおり
組合への出荷の有無は組合員資格と無関係である。また,平成12年6
月30日の通常総会では,A3がA21の委任状を取り,A19が同人
の代理人になっており,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4がA
21を資格のない幽霊組合員などと考えていなかったことは明らかであ
る。
(エ)上記ア(エ)(A22供述の信用性)について
同主張は,否認ないし争う。
(オ)被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の共同不法行為の追加
a組合が従前主張した以外にも,被控訴人A1,同A2,同A3及び
同A4は,以下のとおり組合員に働きかけて虚偽の廃業届を提出させ,
組合の業務を妨害し,解散に追い込もうとした不法行為が存在する。
bすなわち,真実は養鶉業を廃業していないにもかかわらず,A8が
平成12年6月12日付で,A19,A20,A23,A24が同月
30日付けでそれぞれ組合に廃業届を提出し,A2は,同月30日の
組合の通常総会の際,臨席した監督官庁の担当者にA24の廃業届を
示して,定足数不足で総会は開けないと訴えたが,却下されたため,
A3とともに退室するという示威行動に出た。
c実際には,その後A19は,A1の案内で韓国ウズラ生産協会の会
員に自分の鶉農場を見学させており,またA18とA8は,自分らの
陳述書で鶉卵の出荷先を他社に変更した旨述べているから,上記bが
虚偽の廃業届だったことは明らかである。
d被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,組合がB1株の買取
を決めた平成12年4月24日の臨時総会決議を無効にしようと,同
年5月頃,組合員らに日付を同年3月に遡らせた退会届を提出させた
が,組合の定款上,平成13年3月末まで脱退の効力が生じないこと
が判明したため,廃業届なら即時に脱退の効力が生じると考えて,平
成12年6月30日の通常総会の開催を不可能にするため,上記bの
廃業届を提出させたのである。
(2)組合の損害及び被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の行為との因果
関係
ア被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の主張
(ア)原判決は,A2の挨拶状送付その他の被控訴人A1,同A2,同A
3及び同A4の行為により,組合は取引先からの注文が減り,また組合
員の減少で入荷卵が減少して,平成13年8月まで売上が減少したと認
定した。
(イ)しかし,実際には,A2の挨拶状が原因で,組合が取引を打ち切ら
れたとか,減少したという取引先は1つも存在しない。
(ウ)そして,当時退会届を出した組合員のうちで,実際に組合に鶉卵を
出荷していたのは,A18,A19,A8の3名だけであるが,同人ら
は,上記(1)ア(イ)のとおり自分の意思で組合を脱退しているから,被控
訴人A1,同A2,同A3及び同A4の行為は,入荷卵の減少とは関係
がない。
(エ)また,本件の紛争から1年も経たない平成13年3月末に,准組合
員のA22が組合から追放されたが,その理由は,同人が組合に残ると
入荷卵数が多すぎるというものであった。したがって,仮に被控訴人A
1,同A2,同A3及び同A4の行為により組合の入荷卵が減少したと
しても,それは平成12年9月までのことであって,その後の売上減少
とは無関係である。
(オ)組合の売上は,平成9から11年度が10億円(年額。以下同じ)を
超えていたが,平成8年度以前は9億円であり,平成12年度以降は,
大体8億円で推移している。被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4
の行為によって平成12,13年度の売上が減少したなら,その後もと
の11億円に回復するはずであるが,実際は平成12から17年度まで
8億円前後で安定している。つまり,組合の売上は,本来8億円前後で,
平成9から11年度が好調すぎたのであり,平成12,13年度は,同
被控訴人らの行為により売上が減少したのではなく,本来の売上に戻っ
ただけであるから,組合に損害は発生していない。
(カ)組合は,その準備書面で,平成8年頃,A18,A8が出荷した鶉
卵を組合が転売して1卵当たり10銭の利益を得たと主張しており,被
控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の行為による組合の損害も同じ
割合で計算すべきである。
イ組合の主張
(ア)本件紛争以前の組合の売上は,平成7年度の6億円から,平成8年
度に9億円,平成9,10年度には11億円以上へと増加した。これは,
①組合員を募集して入荷卵の確保に努め,②平成9年にB7(B5)と取
引を開始する等の地道な経営努力が実った結果であり,この時期に,A
14やA20らのほか,本件で組合を脱退したA8,A18,A19ら
が組合に新加入した。
(イ)しかし,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の不法行為によ
り,平成12年に複数の組合員や生産協力農家が組合から脱退し,入荷
卵が減ったため,組合の売上は,平成11年度の10億円以上から,平
成12年度には約8億円へと減少し,B3,B4等の取引先を失った結
果,組合の鶉卵取引は,縮小均衡の状態に陥ってしまった。
(ウ)被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,平成13年3月当時,
組合にA22から鶉卵を購入する余力がなかったと指摘するが,これは,
上記のとおり同被控訴人らの不法行為で組合が取引先を失ったためであ
り,売上減少の損害が平成12年9月までに限定されるわけではない。
6性能違反に基づく損害賠償請求に関する当事者の当審における主張
(1)本件装置の性能について
ア組合の主張
(ア)本件装置の性能の不足
a組合は,歩留率90パーセント(平均値。歩留率及びこれに関連す
る各種数値に関して,原則として以下同じ。)を達成していた旧装置
(原判決7頁)の性能を処理数量を5割増強することにつき,被控訴
人会社と本件請負契約を締結した。また,被控訴人会社は,組合に対
し,本件装置は時間当たり4万ないし4万5000個の鶉卵の処理能
力を有すると約束していた。
したがって,被控訴人会社は,組合に対し,本件装置は,時間当た
り4万ないし4万5000個の鶉卵を連続投入した場合,旧装置と同
等以上(90パーセント以上)の歩留率を有していることを保証して
おり(以下「本件性能保証」という。),同装置は,上記性能を有して
いなければ,瑕疵があるというべきである(以下,上記4万ないし4
万5000個の鶉卵処理能力を「本件数量性能」といい,上記90パ
ーセント以上の歩留率を「本件歩留性能」という。更に,これらを一
括して「本件要求性能」という。)。
bしかるに,①平成10年8月下旬に本件装置が稼動開始後,処分卵
・消滅卵(下記(イ)b参照。以下,単に「消滅卵」ということがあ
る。)が極端に多くなり,平成8年度9.5パーセント,平成9年度8.
1パーセントだった消滅卵の割合は,平成10年度(ただし,本件装
置導入後の同年9月から翌年3月まで)19.7パーセント,平成1
1年度26.8パーセントと,従前の倍以上に増加し,②歩留率は,
平成10年9月から平成12年5月までで75.7パーセントと,旧
装置当時の90パーセントから14.3パーセントも悪化した。
cこのため,組合は,平成12年5月に2次ボイル槽の使用を停止し,
鶉卵の投入数を減らすなど改良を重ねた。その結果,平成12年6月
から平成13年3月までの歩留率は85.8パーセントに上昇したが,
これは時間当たり4万ないし4万5000個の鶉卵の処理という本件
数量性能を断念したものであって,本件歩留性能も達成しておらず,
組合は,多量の不良品等のためにB5及びB6との取引を実質的に喪
失する等の被害を被ったから,本件装置は瑕疵がある。
(イ)本件装置の歩留率の判定方法
a上記に対し,原判決は,上記(ア)aと同じく,本件請負契約に本件
装置の性能保証の合意があったことを認めながら,その内容を「正確
な意味での歩留率が旧装置と同等であること」と認定した。
しかし,これは,次項以下のとおり,組合と被控訴人会社が加工卵
出来高表(原判決28頁)を生産の指標として使用してきた経緯を無
視するものであって,不当である。
bすなわち,組合の鶉卵水煮加工場(以下「加工場」という。)の殻剥
機を通過したボイル卵は,粗選別されて大部分の不良品が廃棄され,
合格した鶉卵は更に仕上選別に回されて,製品化されない不良品と製
品化する合格品に分けられる。そして,選別された不良品は,合格品
のうち販売できなかった一部商品(下記(オ)b)とともに廃棄される。
このうち,①製品化された加工卵の等級は,(ア)1級(白ムキ1級
を含む。),1・2級,中1級と,(イ)殺菌処理しない白ムキ2級,白
ムキ2・3級,白ムキ3級,白ムキ中2・3級があり(上記(ア)(イ)
の製品をそれぞれ一括して,以下「1級品等」「白ムキ2・3級等」と
いう。),②不良品には,仕上選別までに発生した浮き玉,割れ玉,玉
子とじ卵,寄り玉,殻刺し,殻付き,キズ玉,ミンチ玉等がすべて含
まれている。
加工場では,毎日,製品化した加工卵を上記のとおり等級分けして
製造日報に計上し,製品にならない不良品は処分卵・消滅卵としてお
り,これに基づき,平成8年度から加工卵出来高表を作成しているが,
そこでは,下記cのとおり被控訴人会社の代表者が組合の経営を支配
する以前から,これを止めた後まで一貫して,同一の統計基準を採用
している。
cこれに対し,被控訴人会社は旧装置の納入業者であり,またその代
表者のA1は,B1の代表取締役だった平成4年10月から平成12
年4月頃まで,組合の経営を事実上支配していたが,この間,加工場
の記録内容を被控訴人会社宛にファクシミリ送信させて統計を取り,
加工卵実績を作成して,加工卵の歩留率向上のために組合関係者を指
導していた。その結果,組合も加工場の記録に基づき,平成8年から
加工卵出来高表を作成してきた。以上の経過から,組合の加工卵出来
高表と被控訴人会社の加工卵実績は,いずれも同じ統計基準を採用し
ていた。
d以上のとおり,組合と被控訴人会社にとって,歩留率を把握するに
は加工卵出来高表が最も合理的で現実的な統計であったから,本件請
負契約締結当時,両者間には,本件装置が旧装置と同等の性能を有し
ているか否かは加工卵出来高表によって判定する旨の黙示の合意が存
していたというべきである。
eしたがって,加工卵出来高表に基づき,本件装置導入前の平成8年
4月から平成10年7月までと,導入後の同年9月から平成13年3
月までの歩留率を比較することは,本件性能保証の趣旨に適い,合理
的である。上記(ア)b,cの歩留率は,こうして算出したものである。
fなお,組合では,平成11年1月まで,殻刺し及び浮き玉を他の不
良品と一括して扱っていたが,同年2月以降,新たに仕上選別段階で,
殻刺し及び浮き玉の統計を別に取るようにした。これは,本件装置の
導入後,粗選別までの工程で不良品が大量に発生し,分量が多すぎて
粗選別段階での計量が現実的に不可能だったからである。そのため,
同年2月以降,粗選別までの工程で発生した大量の殻刺し及び浮き玉
は計量されずに処分卵・消滅卵として扱われているが,これらは,仕
上選別で計った分の少なくとも10倍はあるはずである。
g以上に対し,原判決のいう「正確な意味での歩留率が旧装置と同等
であること」は,その内容が明らかでない。仮に加工卵を一つずつ数
えることをいうとすれば,零細企業の組合にとっては,統計作成の手
間が過度の負担となり,実行不可能である。
hまた,原判決は,①加工卵出来高表の加工卵数の算出方法が不明で,
②等級の混在した製品があるから,各等級の実際の数も不明である,
③取引先の注文で,1級品でない製品を1級品として出荷するなど,
等級も変えることがあると認定して,組合の主張を排斥した。しかし,
加工卵数は,上記bのとおり,旧装置の当時と同一の統計基準で算出
しているから,組合の主張が不合理ということにはならない。また,
2級品と3級品が混在する製品は全体の1パーセント台にすぎない。
更に,組合が1級品でない製品を1級品として出荷したのは,本件装
置の導入を見込んで取引先から加工卵の大量発注があったのに,各種
トラブルで欠品が発生しそうになった平成10年11月から翌年3月
までの半年間だけであり,これにより統計上は被控訴人会社に有利に
なっているのであるから,原判決の認定は不当である。
(ウ)本件装置の負荷について
a原判決は,組合主張の歩留率が本件装置への負荷を反映しておらず,
負荷を考慮する基準や裏付け資料も提出されていないから,問題があ
ると判示した。しかし,これは趣旨が不明であるだけでなく,事実に
基づかない推論であって不当である。
bすなわち,本件数量性能は,本件装置が時間当たり4万ないし4万
5000個の鶉卵処理能力を有するというもので,被控訴人会社の取
扱説明書記載の性能でも,同約4万6000個である。これに対し,
本件装置の稼動時間は,通常1日6時間,繁忙期は同7時間30分で
あるから,1か月のボイル量は720万個ないし1012万個となり,
これと比較して,過去の鶉卵投入量は本件装置への負荷に問題ない範
囲である。
(エ)下記イ(イ)(原料卵の品質の良否と歩留率との関係)について
a被控訴人会社は,原料卵の品質により加工卵の歩留率が変動する旨
主張するが,そのような事実はない。平成9年秋以降,新たに大口取
引先となるB5及びB7の強い指導があり,当時組合を支配していた
A1は,歩留率向上のため各種の指示を出して,組合は,本件装置導
入前に比べ,導入後の平成10年8月以降は,格段に衛生管理と原料
管理を厳しくしていた。
b被控訴人会社の主張は,原料の品質に差異のある加工用機械では,
機械の性能の高低を問題にする余地がなくなってしまうものであって,
極めて乱暴な主張である。統計理論によれば,対象期間が長くサンプ
ル量が多いほど,統計法則が明らかになる。組合が本件装置と旧装置
の歩留率を比較した期間の設定は,この意味からも合理的である。
(オ)下記イ(ウ)(歩留率の判定方法に関する被控訴人会社の反論)につ
いて
a被控訴人会社は,①組合の全商品について,販売された加工卵のみ
が加工卵出来高表に計上されるとか,②処分卵・消滅卵は,売残りで
廃棄処分した鶉卵を指すかのような主張をしているが,事実に反して
いる。
b上記(イ)のとおり,製品化された加工卵のうち1級品等は,すべて
の加工卵が販売され,廃棄されることはない。これに対し,白ムキ2
・3級等は,殺菌処理を施さないので,保存期間内(夏場は約1週間,
冬場は約10日間)に販売できれば,製造日報に当該等級品として計
上するが,販売できず廃棄されれば,製造日報に記載せず,処分卵・
消滅卵に計上している。
以上のとおり,一旦製品化された加工卵のうちで,廃棄される可能
性があるのは白ムキ2・3級等のみで,また実際の廃棄量はわずかで
あるから,この点が正確な歩留率の定義に反していても,加工卵出来
高表のデータの有用性が損なわれることはない。
cまた,月末に加工した白ムキ2・3級等が翌月初めに販売されると,
月毎の歩留率が変動する現象が生じることはあるが,対象期間を長期
に取れば,統計上変動は平準化されるから,上記(ア)(イ)のとおり,
平成8年4月から平成10年7月までと,同年9月から平成13年3
月までの歩留率を比較する場合に,上記の点が問題となることはない。
dもともと本件では,旧装置の歩留率と本件装置の歩留率という,客
観的に比較すべき実体が存在しており,かつ従前から使用されていた
加工卵出来高表という同一の統計基準に基づき,両者の歩留率を相対
的に比較するのであるから,仮に細かい点に問題があったとしても,
加工卵出来高表による歩留率の評価が有用なことは明らかである。
e現に,上記(イ)cのとおり組合の経営を支配していたA1及び被控
訴人会社は,上記のような統計上の問題点を認識していたが,歩留率
の把握には,加工卵出来高表が合理的で十分であると評価しており,
歩留率の正確性を高めようとしたことはないのであって,被控訴人会
社の主張は失当である。
fまた,加工場の等級選別は,等級区分の指標に従って実施しており,
取引先が商品を吟味することから,組合が一方的に恣意的な等級付け
を行なうことはできず,精密な等級選別が行なわれていないとしても,
加工卵出来高表の有用性が左右されるものではない。
イ被控訴人会社の主張
(ア)本件性能保証の存否
a原判決は,組合と被控訴人会社間で,本件装置が旧装置と同等の結
果を出せる性能を有していること(正確な意味での歩留率が同等であ
ること)につき合意がなされた旨認定し,組合も上記ア(ア)で類似の
主張をする。
bしかし,被控訴人会社は,本件装置が上記の性能を有することは肯
定するが,本件性能保証が合意された事実は争う。すなわち,下記
(イ)のとおり,原料卵の品質が異なれば加工卵の歩留率も異なるとこ
ろ,原判決の上記認定は,原料卵の品質が同じことを大前提としてお
り,正しくない。
(イ)原料卵の品質の良否と歩留率の関係
a原判決は,商品価値のない加工卵を製造しても販売できなければ,
鶉卵水煮加工に関する本件請負契約の目的は達成されないから,商品
価値のある加工卵の歩留率によって装置の性能を判断すべきであると
認定した。
bしかし,そもそも歩留率は,原料卵の品質によって左右され,品質
の良い原料卵からは1級品が多くできるし,品質の悪い原料卵からは
3級品以下の製品が多くできる。つまり,商品価値のある加工卵の歩
留率によって判断できるのは,投入された原料卵の品質の程度であり,
本件装置の性能ではない。
c乙21のとおり,歩留率は,養鶉農家毎に大きな差が生じており,
また同じ養鶉農家でも,悪い歩留率が出ると,次は極端に歩留率が向
上するが,これは,次の出荷時には綿密な検品を行なうためと考えら
れる。これも,歩留率が原料卵の品質に依存する一つの例である。
(ウ)上記ア(イ)(本件装置の歩留率の判定方法)について
a(a)上記ア(イ)dの主張は争う。厳密な意味の歩留率は,生産工程
において原料を100投入したら出来上がる製品はいくつかを示す
数値であり,純粋に生産ライン限り,工場内限りの数値である。
しかるに,加工卵出来高表は,工場内の出来高ではなく,外部へ
の販売高を把握するための営業上の資料であり,売れずに廃棄され
た商品は出来高に計上されていない。組合も,1級品等は,加工卵
が全部出荷されるが,2級,2・3級,3級及び浮玉殻刺し等は,
販売できた分だけが出来高に計上されることを認めている。
(b)このような加工卵出来高表から算出される歩留率は,たとえば,
原料を100投入し99の製品ができても,50しか売れず49を
廃棄した場合,歩留率50パーセントとなり,厳密な意味の歩留率
とはまったく異質である。
(c)現に,加工卵出来高表に記載された処分卵・消滅卵に注目する
と,処分卵・消滅卵により,平成11年7月から平成13年3月ま
での月別の歩留率が1.8から32.64パーセントまで激しく変
動しており,まさに加工卵出来高表による歩留率が真の歩留率とは
異質なものであることを示している。したがって,加工卵出来高表
により本件装置の瑕疵の有無を判断しようとすること自体が誤りで
ある。
b(a)上記ア(イ)eの主張は争う。組合は,歩留率の統計基準は平成
4年4月から平成13年3月まで同一であると主張しながら,旧装
置と本件装置の歩留率の比較では,旧装置のデータを平成8年4月
から平成10年7月までに限定している。
しかし,旧装置の平成4,5年度の歩留率は,75.1パーセン
トと77.3パーセントであり,平成10年も4月から7月だけな
ら73.3パーセントであるから,これらと比較すれば,本件装置
の平成10年の80.3パーセント,平成11年の73.2パーセ
ントという歩留率になんら問題はない。
(b)なお,同じ旧装置でも,平成3から5年頃と平成8から10年
頃とで歩留率に差があるのは,後者の時期の方が営業が順調で,廃
棄される鶉卵が少なくなって歩留率が上昇したからと考えられる。
c更に,加工卵製品の1級品,2級品等の等級自体が,客観的な指標
によるものではなく,曖昧模糊としているから,A25の証言のよう
に,品質の悪い加工卵を1級品として販売することも十分あり得る。
(エ)上記ア(ウ)(本件装置の負荷)について
a同主張は争う。なお,原判決は,負荷が軽くなれば,歩留率が高く
なると推認されると判示したが,一般論はともかく,本件装置では負
荷の軽重は特に問題にならない。
bすなわち,加工卵出来高表では,平成11年1月は,880万個の
鶉卵投入に対し,歩留率は89.1パーセントであり,組合のデータ
では,本件装置は月間900万個程度の投入なら,負荷が重くて歩留
率が下がるということはない。
c現に,鶉卵の投入量が前年より減少した平成11年度の歩留率は,
平成10年度より悪くなっているが,このことは,組合主張の歩留率
データが本来の正しい歩留率でないことを明確に示している。
(2)1次ボイル槽から2次ボイル槽への鶉卵の移送方法
ア被控訴人会社の主張
(ア)原判決は,鶉卵と一緒に湯を1次ボイル槽から2次ボイル槽に送る
方法を取ったことが瑕疵であると認定した。
(イ)しかし,本件装置は,当初,鶉卵を1次ボイル槽から2次ボイル槽
に移送するのに1次ボイル槽の湯を使用していたが,組合の要望で,平
成10年8,9月頃,1次ボイル槽の湯ではなく2次ボイル槽から循環
させた湯で鶉卵を押し出すようにした。したがって,この湯を鶉卵と一
緒に2次ボイル槽に送っても,1次ボイル槽の湯量は減少しないし,2
次ボイル槽の湯が溢れて無駄になることもない。
(ウ)2次ボイル槽の湯が溢れるのは,熱源としてボイラーから供給され
る水蒸気の分だけ湯量が増加して,オーバーフロー排水になるためであ
る。
(エ)本件装置は,鶉卵が1次ボイル槽から2次ボイル槽へと進む構造上,
2次ボイル槽の湯の汚濁度は1次ボイル槽より高く,その湯を1次ボイ
ル槽に戻すことは食品メーカーとして避けるべきである。他方,2次ボ
イル槽から溢れる湯は,本件装置の全使用水からみて多量でないから,
2次ボイル槽の湯を回収しない構造は,なんら瑕疵ではない。
イ組合の主張
(ア)本件装置の設計者のA26(原判決7頁)は,2次ボイル槽の湯は汚
物を多量に含んでおり,他に回すことは考えられない旨証言しており,
現に2次ボイル槽から1次ボイル槽に湯を循環させる配管は設置されて
いない。被控訴人会社の主張は,A26証言を理由もなく否定しており,
信用性がない。
(イ)また,2次ボイル槽で湯が溢れる原因が1次ボイル槽から2次ボイ
ル槽に湯が流れ込むためであることは,甲70を見れば明白である。現
に組合は,1次ボイル槽出口の構造を変更し,湯が2次ボイル槽に流れ
込まないようにして,瑕疵を修補した。
(3)殻剥装置のモーターのVベルトのスリップ
ア被控訴人会社の主張
(ア)原判決は,殻剥装置のモーターのVベルトが水に濡れてスリップす
ることが瑕疵に当たると認定したが,想定外の大量の水が使用されたた
めであって,機械に瑕疵はない。
(イ)すなわち,Vベルトはボックス中にあり,本来水が掛るとは考え難
い。他方,本件装置の殻剥工程には,殻剥用のシャワーパイプが設置さ
れていたが,被控訴人会社は,好意で,殻剥工程の回収水が再使用でき
るようにシャワーパイプを増設した。更に,組合が,被控訴人会社に相
談もなくシャワーパイプを増設したので,合計3本のシャワーパイプが
殻剥工程に取り付けられ,水量は標準量の最大3倍になったため,想定
外の水量でボックス内に水が伝わり,Vベルトが濡れたと考えられる
(ウ)原判決は,水の大量使用の原因は,殻剥きがうまくいかず,殻刺し
防止のため大量の水を投入したためと認定したが,殻剥きが不調だった
との点は事実に反する。ただ,組合が大量の水を使用したのは事実であ
り,想定の3倍もの水を使用すれば,水濡れの防止は困難である。
イ組合の主張
(ア)水がモーターのVベルトにかかることは予想できたから,滑り防止
のため,噛み合せ付タイミングベルトを使うべきで,滑り易いVベルト
を使用したこと自体が瑕疵である。現に,組合は,Vベルトからタイミ
ングベルトに変更して上記瑕疵を修補した。
(イ)組合の水道工事は平成10年10月上旬に完了し,通常の水量が確
保できていた。その後も,Vベルトが不適正なため,シャワーパイプ3
本分の水量を使用しても,通常の殻剥きさえできなかったが,Vベルト
が適正なら,稼動後に更にシャワーパイプを2本も増設して多量の水道
水を無駄にする必要はなく,上記部分の瑕疵は明白である。
第3本件不法行為に基づく損害賠償請求及び乙事件に関する当裁判所の判断
当裁判所は,組合の本件不法行為に基づく損害賠償請求(当審での拡張後のも
の)は,すべて理由があり,被控訴人A3及び同A4の乙事件請求は,原審と同
じく理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1本件紛争の経過
①前記引用に係る原判決「事実及び理由」欄の第2の2の各事実,②後記第
4の1(10)ないし(12)認定の事実,③甲1の1・2,2の1・2,5,6,7
の1・2,8,9の1ないし3,10の1ないし3,11,12の1ないし3,
13の1ないし16,14の1ないし3,15,16,17の1・2,18,
33の1ないし6,34ないし36,38,39,40の1ないし5,41の
1・2,42の1ないし3,48の1,55の1ないし3,56,57,58
の1・3,59,62,64ないし66,81の1ないし3,82,83,8
6,88の1ないし4,89,92,95の1ないし8,96,97の1ない
し4,100,101の1・2,102の1ないし8,104,105,10
6の1ないし15,110の1ないし8,111,112の1ないし6,11
3の1ないし3,④乙2ないし7,13ないし15,18,21の1ないし1
1,25ないし30,33ないし35,44,45,47,54ないし57,
60,61,66の1ないし13,69,72の1ないし3,91,98,1
02ないし104,108,⑤証人A16・A25・A12・A27の各証言,
組合代表者の尋問結果,⑥いずれも後記採用できない部分を除く甲58の2,
乙8ないし10,16,65,106,118と119,被控訴人A1,同A
2,同A3及び同A4の各本人尋問の結果,⑦いずれも後記採用できない部分
を除く甲99の1ないし4,乙11の1・2,31,73の各存在及び内容の
ほか,⑧甲19,20の1・2,21の各存在によれば,以下の事実が認めら
れる。
(1)組合は,昭和40年設立の日本で唯一の養鶉(ようじゅん)作業の共同化に
関する施設等の事業を主な目的とする農業協同組合であり,鶉(うずら)卵
の生卵パック工場,水煮加工を行なう加工場,鶉糞処理場等を運営し,組合
員や生産協力農家などの養鶉農家から鶉卵を買い受け,生卵や加工卵として
販売する事業や,鶉糞から肥料を製造し販売する事業等をしていた。
(2)農協組合員の資格は,農業協同組合法12条に基づき各農協の定款で定め
るとされており,組合の定款8条2項は,①正組合員は,(ア)5000羽以
上の鶉を飼育する農民又は,(イ)1年のうち90日以上養鶉業に従事する農
民で,組合の地区内に住所を有する者,②准組合員は,組合の地区内に住所
を有し,組合の施設を利用することが適当と認められる者と規定していた。
そして,行政解釈により,5000羽以上の鶉を飼育する養鶉農家の事業主
が組合員の場合は,その家族で1年のうち90日以上養鶉業に従事する農民
も,上記①(イ)の規定により,正組合員の資格を有するとされていた。
他方,組合の定款14条1項は,組合員の脱退は,書面でなすことを要し,
その効果は予告期間60日が経過後の事業年度の終りに生じると定めていた。
(3)被控訴人会社は,食品プラント機械の販売や飼肥料の販売等を主な目的と
する会社である。A1(昭和23年8月●日生)は,同社の代表取締役であ
り,農業用設備の製造・販売や養鶉業を主な目的とするB8株式会社(以下
「B8」という。)の代表取締役も務めていた。
A2(昭和29年10月●●日生)は,A12の高校の後輩で,従前板金
業を営んで,被控訴人会社から仕事を受注しており,結婚時にA1が仲人を
していた。
(4)A6は,ガソリンスタンド等を経営する株式会社B2の代表取締役で,愛
知県豊橋地方では有力な経済人であり,A1やA12その他の者から尊敬を
集め,金融機関等にも高い信用があった。
A12(昭和25年4月●●日生)は,税理士であり,父A13の税理士
事務所に勤務しており,A1と同じロータリークラブに所属していた。
A14は,養鶉農家であり,平成8年に正組合員として組合に加入した。
A16は,昭和56年に組合に入組した職員であり,組合の理事をしてい
た。
(5)ところで,組合は,平成4年頃,経営危機に陥り,監督官庁である愛知県
や金融機関から再建案の策定を迫られた。当時のA24組合長は,組合に殻
剥機等を納入していた被控訴人会社のA1に組合再建の協力を求め,更にA
1は,面識のあるA6とA12に協力を要請した。結局,A1,A6,A1
2は,組合役員らの求めで,組合の経営再建に協力することになったが,こ
れに関する同人らの基本的な方針等は,下記(6)(7)(8)のようなものであった。
(6)すなわちA6,A1,A12は,従前養鶉業と無関係で,組合員資格がな
く,組合経営に直接関与できないため,別会社を介して組合を支援すること
にし,平成4年10月19日,養鶉業,養鶉用機器販売を主な目的とするB
1を設立して,三者とも取締役に就任し,A1が代表取締役になった。そし
て,金融機関に信用のあるA6と,A1及びA12が連帯保証人になり,そ
の信用力を背景にB1がB16から1億円を借り入れて,組合に融資し,組
合は,これを運転資金や経営改善資金等に充てて,資金繰りを改善した。
上記融資の代償に,B1は,平成4年10月24日組合と,組合員の生産
する全商品(鶉卵,鶉卵加工品,肥料等)につきB1が独占販売権を取得す
る旨の本件販売契約を締結し,上記商品の販売代金の2パーセントの口銭を
取得して,B16に対する上記借入金の返済に充てた。
(7)こうして設立されたB1は,組合の建物の2階を賃借し,組合と同じ場所
に所在地があり,固有の資産は有していなかった。A1は,被控訴人会社の
仕入先の社員A28をスカウトして,B1の営業をさせたが,他に常勤社員
はおらず,同社の事務や日常の経理は組合職員がしていた。また,A28は,
組合の参事にも就任し,給料を受給していたが,A1,A6,A12の3名
は,非常勤,無報酬で職責を果たす建前であり,組合員にその旨説明されて
いた。
B1の資本金は1000万円で,発行済のB1株200株は,最初,A1
とその弟が計80株,A6とその妻子が計60株,A12が20株,A28
が20株,他の者が20株を保有していた。しかし,下記(11)のとおり,A
28が退社する等した結果,A1とその弟が計80株,A6とその妻子が計
60株,A12とその妻が計60株を保有することになった。
そして,A1,A6,A12の協議で,実際の役割分担は,A1が中心に
なって組合再建を指揮し,A12が資金管理と経営に対する助言を行なうが,
資金繰り等の重大な事項は,A6に承諾を求めることになった。別に,A1
2は,組合及びB1と顧問税理士契約を結び,決算,税務申告の手続をした。
(8)組合再建に当たっては,①規模の利益を追及するため鶉卵取扱量を増やす,
②人件費等のコストを削減する,③鶉卵製品の販売業務を組合から分離して,
B1の担当とし,組合員への鶉卵代金の安定支払を図る,④「生命卵」の名称
で,取扱鶉卵のブランド力を高める等の方針が取られ,上記①に基づき,新
入組合員を勧誘したところ,平成8年にA14,A20,A8,A18,平
成9年にA19,平成10年にA29,A30が組合に新加入し,入荷卵も
次第に増加していった。
他方,出荷卵の販路開拓で,平成9年にB7中央鶏卵センターを通じてB
5との大口取引が始まり,B6等の既存取引先の発注も増えた。
その結果,組合の売上は,平成7年度の6億1000万円(概数。以下同
じ)から,平成8年度は9億円,平成9年度は11億1000万円,平成1
0年度は11億4000万円,平成11年度は10億5000万円へと,大
きく増加していった。
そして,本件販売契約によりB1の取得する口銭も,取扱商品の販売代金
の2パーセントから3パーセントへと増額され,また平成9年からA1やA
12には年額300万円の報酬が支払われるようになった。
(9)更に,組合の入荷卵を確保し,組合員のモデルにする目的で,養鶉農家を
新規に育成することになり,A1の主導により,平成6年11月28日,B
1の子会社としてB18(原判決5頁24行目)を設立し,同日組合に新加
入したA2が代表取締役に就任して養鶉業を始めた。同社の資本金は300
万円で,B1が250万円を出資した(別にA2夫婦が30万円,A1の妻
とA12の妻が各10万円を出資)。更に,B1は,銀行から購入費用68
00万円を借り入れて,養鶉用の土地建物を取得し,B18に賃貸した。
また,従来,養鶉業には鶉糞の臭気で公害問題が付き物だったが,A1の
主導により,組合は,その解決策との触れ込みで,鶉糞を発酵させて肥料化
する新方式の堆肥場を建設し(以下「本件堆肥場」という。),平成9年4月
から稼動を開始した。組合は,その建設のため国と豊橋市から補助金約1億
4000万円を受給し,その他の建設資金は,A12の父のA13が担保を
提供し,組合がB19から約1億4000万円を借り入れて調達したが,A
1自身は,担保や資金を提供しなかった。
更に,組合は,鶉卵の加工能力を増強するため,平成10年にA1の経営
する被控訴人会社に水煮加工システムの製作を発注し,本件装置が導入され
た。
(10)しかし,上記(8)(9)のような成果の一方で,組合やB1には,下記(12)
までのような多様な問題が発生していた。
すなわち,組合は,上記のとおり売上は伸びたが,損益ベースで累積損失
の状態が続き,未処理損失は,平成10年度末で8800万円,平成11年
度末で8000万円に上り,特に本件堆肥場の建設後は,下記(11)の状況か
ら,パック場及び加工場で上げた利益を,本件堆肥場で失う状態が続いた。
また,A2は,上記(3)のとおり被控訴人会社やA1と関係が深く,その縁
でA1がB18の代表取締役に就任させた者であったが,養鶉業の経験はな
く,鶉に病気を発生させたりしたため,同社は設立以来,赤字続きの状態だ
った。その結果,B1は,上記(9)の設備資金6800万円を負担するほかに,
B18の毎期の赤字も補填せざるを得ず,同社に対するB1の債権は,平成
11年までに1億円以上に達し,不良債権化していた。
更に,B1自体も,平成8年度末(同社の年度は,毎年4月1日から翌年
3月31日まで。以下,各年度は期首の属する暦年で表示する。)に1億5
000万円,平成9年度末に1億円と,高水準の累積損失を計上した。
(11)そして,平成9年4月稼動した本件堆肥場は,A1の宣伝にもかかわら
ず,販売可能な品質の堆肥を製造することができず,処理の進まない鶉糞が
溢れ,生産された堆肥も販売不振で,大きな赤字を出した。更に,A1は,
未処理の鶉糞を愛知県c町の借地上に運んで,野積み状態で放置させた。
また,平成10年に導入した本件装置は,組合再建を指揮するA1が被控
訴人会社の経営者という関係から,被控訴人会社に発注したものであったが,
導入後,多数の殻刺し卵(後記第4の1(4)参照)が発生して,大口取引先の
B5から,このままでは組合と取引を継続できない等の通知を受けた。その
ため,組合は,経営上の危機に瀕したが,被控訴人会社は十分な修補をせず,
問題になった。
平成9年頃には,A1との意見の対立でA28が組合の参事とB1を辞め
たため,A1は,A12に組合の参事への就任を依頼し,A12は,平成9
年9月参事に就任し,また保有するB1株を妻に譲渡した。
(12)更に,以上のとおり実務面で組合再建を指揮していたA1は,組合に役
職等はないものの,組合の組織図にも記載されて,理事会に出席し,組合の
入出荷卵数,出来高等を毎月被控訴人会社宛に報告させるなど,事実上,組
合の経営に深く関与していた。すなわち,A1は,上記(9)のB18の設立や
本件堆肥場の建設を主導したほか,組合の設備投資や借入等につき報告を求
め,これらに自分の意見を反映させるようになり,職員人事や賞与の査定等
を通じて職員らにも影響力を持つに至った。また,A1が関与して以降,組
合が他社の相見積を取らないまま,被控訴人会社から本件装置その他の機材
を購入するケースが増えた。
これに対し,組合員や職員の一部には,A1が被控訴人会社の利益を優先
し,自分の意見に従わない職員等を排除しようとしていると考える者が出て
きた。
(13)そして,上記(11)のとおり,組合は,本件堆肥場の不調で損失を出し,
本件装置の性能不足で取引先との関係も危くなる等の状態に陥り,そのまま
だと平成10年9月末に約2000万円の資金ショートをきたす見込となっ
た。
そのため,組合参事に就任していたA12は,他の組合役員とともに,A
1や被控訴人会社に本件堆肥場の改善及び本件装置の修補等を要求し,資金
ショートの危険を連絡したが,A1は,本件装置の修補に関する打合せに欠
席し,資金ショートに対する対策を取ろうとしなかった。
そこで,A12は,A6と協議し,A6の指示で,組合はB16から新た
に3500万円を借り入れて,平成10年9月末の資金繰りをつけた(A6,
A12,A1は,この借入を連帯保証した。)。
(14)しかし,A1は,A12の上記行動を,自分をないがしろにするものと
捉えて不満を募らせ,平成10年10月21日A12に対し,要旨「今後の
組合の運営については,参事であるA12さんの下でやっていただくことが
一番だと思いますので,私は離れます」等と,A12が独自の行動を取るな
ら,自分は組合再建から手を引くとの旨を記したファクシミリを送り,その
後平成11年2月頃まで頻繁に,A12を非難するファクシミリを送付した。
これに対し,A12は,A1が一目置くA6に上記ファクシミリ文書を見
せて,父親のA13とともに状況を説明した結果,次第にA6も,A1の行
動を放置しておけないと考えるようになったが,結局,A12は,A1の言
動や本件堆肥場等の問題が改善されない状況に嫌気がさし,平成11年3月,
参事を辞任した(6月に退任手続が取られた。)。
(15)他方,A1は,職員に対し,「A12の税理士の資格を剥奪してやる。
ブタ箱へぶち込んでやる」等と発言しており,平成11年3月,中学時代か
らのA1の友人であるA3(昭和23年4月●日生)を職員として組合に入
組させて,経理担当とし,A12の経理処理を調査させたうえ,平成12年
には,A12に不正経理があったと主張して,東海税理士会に懲戒の申立を
し,警察に刑事告発した(いずれも懲戒や刑事処分はなされなかった。)。
そして,A1は,平成11年5月,上記(3)(9)のとおり自分と縁の深いA
2を組合の組合長に就任させ,組合員のA20とA18をそれぞれ理事と監
事の役職に就かせた。更に,A1は,平成11年7月に知合いのA4(昭和
38年7月●●日生)を職員として組合に入組させ,営業担当とした。
(16)しかし,A2は,非常勤の組合長で,B1から給料を受給していたため,
組合員や職員の中には,A2はA1のいいなりだとみる者がいた。また,A
1が未経験者のA3に組合の預金通帳等を管理させたことには反発が出た。
そして,上記(11)(12)のようなA1の組合経営への関与や,本件堆肥場等
の問題のほかに,上記(10)のとおり組合の累積損失が続いているのに,B1
に商品販売代金の3パーセントの口銭を支払うこと等を疑問視する声があが
り,A14,A31,A32,A29ら組合員6名は,平成11年頃,有志
の会を結成して,同年12月14日付のメモランダムを作成し,組合とB1
の問題点40点余りを指摘して,是正を求めるようになった。
更に,平成11年頃,組合員に鶉の飼料を販売していたB20からB1宛
に,組合員らに内密でリベートが支払われていることが発覚し,また無報酬
と言っていたA1が,上記(8)の報酬を受給していたことも判明して,組合員
や職員の反発を買った。
(17)一方,A12は,上記(14)のとおり参事を退いたが,その後もA1から
非難のファクシミリが続き,A6に相談していた。また,組合に補助金を出
していた東三河事務所と豊橋市役所農政部も,組合の混乱を懸念し,平成1
1年8月18日,同市農政部の関係者がA6に協議を申し入れた。
そのため,A6も,組合とB1に対するA1の干渉を阻止し,組合員らの
自主運営に戻す必要があると考えるようになった。
そして,A13がA6に対し,現状では,B1に対する債務保証の解除請
求や提訴も検討している旨を連絡したのに対し,A6は,平成11年9月2
7日付の手紙(甲110の8)で,要旨,「A1に組合やB1から手を引か
せ」「組合を傷つけずに,組合員に渡せるよう」自分なりに行動するつもりで
あると伝えた(A6は,平成12年5月19日付の手紙(甲96)でも,A1
君の暴走を止めるべく行動すると同様の趣旨を記載している。)。
(18)その方策として,A6は,上記(7)のとおり自分とA1,A12の3グル
ープの保有するB1株を組合に譲渡し,三者ともB1及び組合の経営等から
退くという案を出し,これに合せて有志の会は,平成11年12月22日付
で上記三者に譲渡申込書を送付し,同人らが保有するB1株の譲渡を求めた
(同会は豊橋市農政部にも上記申込を伝え,組合再生計画書を提出した。)。
前記のとおり,A6は,豊橋地方で有力な経済人で,A1もその意向を無
視することはできず,A12とともにB1株の譲渡の話に応じることになっ
た(以下「本件株式譲渡」という。)。
その構想は,まず有志の会のメンバーがB1株を買取り,組合の増資が成
功して買取代金ができた時点で,組合にB1株を譲渡するという2段階に分
けて株式譲渡を実施する方向で話が進み,平成12年4月16日,B1は,
A1,A6及びA12らからA14やA31らの有志の会メンバーへのB1
株の譲渡を承認する取締役会決議を行なった。同日,A1とA6,A12は,
取締役として上記決議に賛成して,取締役から退任し,A14が同社の代表
取締役に,A29とA33が取締役にそれぞれ就任した。
また,組合は,同年4月24日臨時総会を開き,組合がB1株を買取る旨
の決議をし(以下「本件決議」という。),A2を含む出席組合員は,全員上
記決議に賛成した。なお,このとき議長のA2は,同時点の組合の正会員が
17名いることを前提に定足数を確認したが,組合が正組合員15名という
農業協同組合法64条4項所定の法定数を欠いているとか,組合員の中に,
実体を欠くいわゆる幽霊組合員がいる等の話は出なかった(ただし,上記1
7名の中には,准組合員のA22が含まれているから,実際の正組合員は,
A2のほか,A14,A34,A15,A33,A32,A5,A31,A
29,A20,A9,A7,A21,A18,A19,A24がいて,全部
で合計16名である。)。
(19)しかし,A1は,B1の経営権を有志の会に渡すことを嫌い,土壇場に
なって,自分のグループのB1株は組合員らではなく,A6に売却すると言
い出し,A6がA1とその弟の保有するB1株を買取ることになった。
また,上記(10)のとおり,B1のB18に対する多額の債権が不良債権化
していたが,有志の会のメンバーは,両社の関係を切り離し,B18又は経
営者のA2が責任を取って,上記(10)の債権約1億円余りを買取るよう要求
していたため,買取価格の交渉が難航した。
そして,組合の増資実施と買取代金の捻出ができなかったこともあって,
本件株式譲渡の話は,有志の会のメンバーやA6から組合への譲渡が実現せ
ず,結局,本件株式譲渡後のB1の株主構成は,A6が80株,A14とA
32,A29が各40株という結果になった。
(20)このような状況下にあっても,A1は,実際には,組合に対する自己の
影響力を放棄する意思はなく,本件株式譲渡の交渉中にも,A2,A3,A
4とともに種々の行動に出た。
すなわち,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,本件決議に反し
て,A6から同人の有するB1株80株を譲り受けようと計画し,同決議後
の平成12年5月10日,A1の指示で,A3が他の職員等に無断でB16
における組合の預金600万円を払戻し,A2が,その資金で作った同額の
小切手をA6宅に持参して,上記株式の譲渡を申し込んだが,A6に拒否さ
れた。
また,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,A1に批判的な職員
理事のA16を排除しようと,従前からA2やA3が強圧的な言動をとり,
給料不払等の行動に出ていたが,平成12年5月26日,A2は,独断でA
16の解雇を通知した。
更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,同年2月以降,A2
やA3を通じて,「A1はB1の資金繰りをしないかもしれない」「A2,A1
9・A20親子,A18には鶉卵代金を支払うが,他の組合員には払えな
い」等と,組合員の不安を煽り,実際に,有志の会のA29には3か月分の
鶉卵代金を支払わなかった。
他方,A1は,平成12年4月頃,自分が保証していたB17からの借入
債務を解消するため,B1に2500万円を出させて,保証を解除する手続
をした。
(21)更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,①平成12年当時
の正組合員が16名と法定数をわずかに上回るだけであり,これを割り込む
と,組合に農業協同組合法所定の解散事由が生じること,②組合の経営上,
入荷卵は,生卵が日量約30万個,加工卵が同約15万個は最低必要であり,
これを下回ると,取引先への鶉卵供給に支障が出ることに目をつけて,組合
員や組合に鶉卵を出荷している生産協力農家を大量に組合から脱退,離反さ
せ,あるいは組合の信用不安を煽る等の方法によって,組合員の法定数不足
で組合を解散させるか,少なくとも入荷卵の欠乏等により組合の取引関係に
打撃を与えて,経営危機に追い込もうと企て,次項以下のような行動を取っ
た。
(22)まず,A1の指示で,A2とA3は,組合員や生産協力農家を訪問して,
組合は危機的状態にある,今脱退すればすぐに出資金を返還する等と述べて,
組合の退会届を書くよう求め,その結果,いずれも平成12年3月20日付,
30日付又は31日付で,①正組合員のA8,A18,A19,A21,②
准組合員のA22が退会届を作成したほか,③組合員ではない生産協力農家
のA35,A36,A10,A23,A11,A37も退会届を記載した
(甲13の1ないし3・5ないし8・10ないし15。以下,一括して「本
件退会届」という。)。
他方,上記(2)のとおり,組合の定款14条1項は,組合員の脱退の効力は
脱退の書面の提出から予告期間60日経過後の事業年度の終りに生じると定
めていたが,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,同規定の趣旨を,
平成11年度である平成12年3月末までの日付の退会届が提出されれば,
同年度の終りないしそれから60日経過後に組合員の脱退の効力が生じると
誤解していた。そこで,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,組合
員らに平成12年3月中の日付の退会届を書くよう求め,あるいは自分らで
直接同様の日付を書き込んだ結果,上記のとおり,本件退会届は被控訴人A
1,同A2,同A3及び同A4の意向に沿う日付となった(そのため,本件
退会届には日付だけ他の部分と筆跡の異なるものが存在する。また,下記(3
0)の別件訴訟で,A22は,退会届の日付部分は自らは記入した記憶がない
旨を供述している−甲33の3・42項)。
そして,A1の指示で,A2は,組合員等に対する上記説明どおり,A3
5,A36,A10の生産協力農家3名に,出資金各1万円を払い戻したが,
A21には払戻しの手続を怠った。そのため,後日,A21から組合に対し,
A3から上記のとおり言われて退会届を書いたのに,いつ出資が返還される
のかと問合せがあった(甲33の4・51項)。
(23)平成12年5月27日の理事・監事会で,上記(20)のA16に対する解
雇がA2の独断として批判されると,A1とA2は,組合員の不安を煽るた
め,協議して,いずれも同月31日付で,A2の組合長の辞任届,養鶉業の
廃業届,及び組合からの退会届を作成した。
そして,平成12年5月31日,B1株の買取について話し合う目的で,
大多数の組合員とA6等が出席して開かれた全員協議会の席上で,A2は,
突如,本件退会届の存在を明らかにするとともに,用意しておいた自分の上
記辞任届等を提出し,A20とA18も役員の辞任届を出したため,事情を
知らない組合員や理事は騒然となった。
更に,A1の指示で,A4は,組合には組合員が11名しかいない旨の組
合員名簿(乙31。以下「本件名簿」という。)を作成し,被控訴人A1,
同A2,同A3及び同A4は,これを組合やB1の取引先と,東三河事務所
等に示し,本件退会届により正組合員数が法定数を割り,組合は解散状態に
なった旨の説明をした。
実際は,上記(2)(22)のとおり,組合員らの本件退会届は,組合の定款14
条1項により,平成12年度が終わる平成13年3月末以前は効力が発生し
ないため,A2の廃業を前提としても,平成12年5月当時の正組合員は少
なくとも15名いたから,本件名簿記載の正組合員数や被控訴人A1,同A
2,同A3及び同A4の説明は,事実に反する内容であった。
(24)そして,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,更に組合の取引
先等の不安を煽ろうと考え,A1とA2が起案し,被控訴人会社の用紙を使
って同社で文書を印刷し,A4が宛名ラベルを購入するなど,互いに共同し
て,平成12年6月13日頃,「●●●●●●●●●●(控訴人組合)代表
理事A2」名義の同年5月末日付の挨拶状(乙11の1)と,「B18A2」
名義の「ご報告」と題する書面(乙11の2。以下,一括して「本件挨拶状
等」という。)を作成し,組合とB1の連名で,両者の取引先など約400名
に送付した。
本件挨拶状等には,有志の会との紛争や,A2の組合長辞任の経過のほか,
要旨「販売権等,組合の運営についても,関係がどうなるのかという不安で
組合の内部は大混乱し,A6からは『もう私には関係のない話だ』とまで言
われる始末です」「組合員の脱退等で,組合は総会すら開催できないありさま
です」「A1と相談をして出した結論が,B18の廃業です」等と,あたかも,
(ア)組合が最低限必要な総会も開催不可能な混乱状態にあって,支援者も見
放しており,倒産の危機に瀕しているかのような趣旨や,(イ)組合の混乱の
ため,B18も操業を止めるかのような趣旨の記載がなされていたが,この
ような内容は,いずれも事実ではなかった(A1も,あらかじめ上記文章を
見ていたことを認める−甲58の2・28頁以下。平成18年1月18日付
同本人調書22頁)。
(25)更に,上記(2)(22)のとおり組合員らの本件退会届が直ちに効力を生じな
いことから,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,養鶉業の廃業届
なら即時に脱退の効力が生じると考えて,平成12年6月30日開催予定の
組合の通常総会を阻止するため,①すでに本件退会届を出していた正組合員
のA8とA19,及び准組合員のA23に,改めて同月12日付又は同月3
0日付で廃業届を出させるとともに,②他の正組合員のA20とA24にも
働きかけて,同月30日付で廃業届を提出させた。
実際には,上記組合員らは,養鶉業を廃業しておらず,たとえばA19は,
A1の案内により韓国の養鶉農家に自分の鶉農場を見学させており,平成1
2年暮れには,養鶉業を目的とするA1経営のB8の役員に迎えられた。そ
の他の者も,取引先を組合以外に変更して鶉卵の生産,出荷を続けていた。
他方,これらの組合員は,A22を除き,本件退会届を出した上記(22)の
組合員や養鶉農家とともに,組合に対する鶉卵の出荷を中止していった。
(26)このような状況で,平成12年6月30日,組合の通常総会が開催され
た。
これには,上記(9)のとおり本件堆肥場建設に補助金を出していた関係で,
組合の混乱を懸念した東三河事務所と豊橋市の担当者が臨席しており,その
監視のもとで,当時の組合の正組合員が15名(上記(18)の16名から,廃
業したA2を控除した数)であり,そのうち12名(A14,A34,A1
5,A33,A32,A5,A31,A29,A20,A9,A7,A2
1)が出席(ただし最後の3名は委任状による出席)していることが確認さ
れて,同会は総会として有効に成立し,事業方針案,決算案の承認等の決議
がなされて,A14らが理事に選任された。
これに対し,A1の指示に基づき,A2とA3は,臨席した監督官庁の担
当者に本件名簿やA24の廃業届を示し,正組合員数が法定数を下回るから,
総会は開けないと訴えたが,容れられず,A19とともに退席した。
そして,総会を退席したA2とA3は,その足でB16に赴き,組合の関
係者に無断で上記(20)の小切手を組み戻し,できた組合の預金から500万
円を引き出し,うち360万円余りをB18宛に振り込んだ。
また,A4は,同日組合事務所でパソコンを操作し,被控訴人A1,同A
2,同A3及び同A4に不都合なデータを抹消し,取引先や顧客関係のファ
イル等も消去した。
(27)更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,マスコミを使って,
組合の信用不安を一層広く喧伝しようと考え,上記通常総会の開催とA14
の新組合長選任等を掲載した新聞記事に,「ウラには大きな問題がある総会
です」「農協は解散です!」「本当は15人いません」等と書き加えた文書
(甲19)を,B21新聞宛にファクシミリしたりして,新聞記者らに自分
達の一方的な情報を提供した。
その結果,平成15年8月21日付のB21新聞に,「特産のウズラが危
機,脱退,廃業相次ぐ,●●●●●●(控訴人組合)」との見出で,組合の
正組合員が12名と法定数を下回ったことを新組合長のA14が認めたと,
真実の発言とは異なる内容を載せた記事(乙16。以下「本件記事」とい
う。)が掲載された。
そして,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,本件記事を利用し
て,そのコピーの余白に,要旨「8月23日現在組合員8名非組合員3名
生産量卵40万弱(ピーク時80万個)年末にどうなるか」とか,「本当
は8人玉子も半分」と,明らかに事実に反する正組合員数を記載し,また
組合が年末までに倒産して,鶉卵供給が停止するおそれが高い旨の書込みを
して,匿名の怪文書(甲20の1・2,21。以下「本件怪文書」という。)
を作成し,組合とB1の取引先,少なくとも数十社以上にファクシミリで送
付した。
(28)上記(21)のとおり,平成12年当時,組合の経営を維持するには日量約
45万個(生卵約30万個,加工卵約15万個)の入荷卵が必要だったが,
上記(22)ないし(27)の被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の行為によ
り,組合から組合員や生産協力農家が大量に脱退,離反し,組合の入荷卵数
は,従前の約90万個から約30万個にまで激減した。また,組合の信用不
安を煽る上記(23)(24)(26)(27)のような被控訴人A1,同A2,同A3及び
同A4の宣伝行為により,組合の倒産と鶉卵の供給停止を懸念した取引先は,
組合からの仕入を抑制,回避した。
そのため,後記第4の1(10)ないし(12)のような本件装置の瑕疵ともあい
まって,組合は,B5その他との取引量が極端に落ち込み,B3,B4等と
の取引は途絶するに至り,その売上は大幅に減少した。
一方,組合員数については,上記(2)の行政解釈に従い,組合員の家族を新
たに正組合員として迎え入れた結果,組合は,本件退会届の効力が発効する
平成12年度末(平成13年3月31日)までに,法定数以上の正組合員を
確保して,解散を免れることができた。
(29)組合は,被控訴人A3及び同A4がA1,A2と結託し,被控訴人会社
等の利益を図り,組合を解散に追い込むため,内容虚偽の本件挨拶状等を発
送するほか,種々の職場秩序の紊乱行為をしたとして,通常総会の翌日の平
成12年7月1日に,同年6月30日付で被控訴人A3及び同A4を懲戒解
雇した。
これに対し,被控訴人A3及び同A4は,別件仮処分事件を提起して,仮
の地位の確認及び賃金の仮払を求め,平成12年10月16日,三者間に,
①組合が懲戒解雇を撤回し,三者は,普通解雇により労働契約が終了したこ
とを確認する,②組合は,和解金として,A3とA4にそれぞれ202万円
と188万円を支払う等の内容を骨子とする別件和解が成立した。
(30)もと准組合員のA22は,本件退会届を出した組合員や生産協力農家の
うち唯一人,退会届の提出後も組合に鶉卵を出荷していたが,上記(28)のと
おり,組合は,販売先を失い,鶉卵取引が縮小均衡したため,A22に対し,
平成13年4月以降の鶉卵の仕入を拒絶する旨を通知した。
A22は,自分は退会届を撤回したから,いまだ組合員であると主張して
地位確認を求める別件訴訟を提起した。同訴訟ではA22の尋問が行なわれ
たが,同人は,A2から退会届の用紙をもらい,組合を存続できないように
するために,本件退会届を提出したことを認める趣旨の供述をした(A22
供述)。なお,A22の代理人として別件訴訟を追行したのは,現在の被控
訴人ら代理人である。
(31)上記(6)(13)のとおり,A6は,A1,A12とともに,B1のB16か
らの借入債務1億円及び3500万円の連帯保証をしていたが,B1は,前
者の借入を平成14年2月13日までに,後者の借入を平成15年3月26
日までにそれぞれ完済した。この間,A6が上記保証契約の解除を金融機関
等に要請した事実はない。
また,A6は,上記(19)のとおり本件株式譲渡後も,B1株80株を保有
していたが,現在もその保有を続けており,A6がこれを組合員やA1その
他の第三者に譲渡しようとした事実はない。
一方,有志の会のメンバーだった上記(19)の組合員は,平成19年12月,
組合に対し,いずれも保有するB1株を譲渡した。
2本件不法行為に基づく損害賠償請求についての被控訴人A3及び同A4の本
案前の抗弁及び乙事件請求について
(1)乙30によれば,別件和解の清算条項は,「債権者らと債務者は,本件に
関し,右和解条項に定めたもののほか,何らの債権債務の存在しないことを
相互に確認する。」と,清算の対象を「本件」に関するものに限定している
と認められるところ,乙25によれば,別件仮処分事件は,被控訴人A3及
び同A4の雇用契約上の地位及び給料請求権を被保全権利とする保全事件で
あるから,特段の事情がない限り,当事者が別件和解の清算条項で清算の対
象としたのは,上記被保全権利ないしこれを論理的に前提とする法律関係の
範囲に限られると認めるのが相当である。
(2)これに対し,本件不法行為に基づく損害賠償請求の訴訟物は,被控訴人A
3及び同A4の不法行為,債務不履行ないし不正競争防止法に基づく損害賠
償請求権であって,上記被保全権利とは別個の法律関係であるから,本件不
法行為に基づく損害賠償請求の提起が,別件和解の清算条項によって妨げら
れるとか,違法性を帯びるとはいえず,上記(1)の特段の事情を認めるだけの
証拠はない。
したがって,本件不法行為に基づく損害賠償請求は蒸し返しであるから許
されないとの被控訴人A3及び同A4の本案前の抗弁は採用できず,また,
本件不法行為に基づく損害賠償請求自体が上記清算条項に反する不法行為で
あるとして損害賠償を求める同被控訴人らの乙事件請求は理由がないという
のが相当である。
(3)上記認定に対し,被控訴人A3及び同A4は,紛争解決の一回性の要請か
ら,別件和解の清算条項の「本件」の範囲は,別件仮処分事件の対象紛争と
社会的に同一の原因事実に関する法律関係を指すべきだと主張するが,これ
は,裁判上の和解の清算条項で使用される「本件に関し」の用語法の通常の
意味と異なる。
また,前記1(29)認定の別件仮処分事件の経過等を検討しても,組合と被控
訴人A3及び同A4が,同被控訴人ら主張の趣旨で「本件」の文言を使用し
たと認めるだけの証拠はなく,上記主張は採用できない。
(4)次に,被控訴人A3及び同A4は,別件和解の成立により,法的保護に値
する利益としての平穏な生活を送る期待を有するに至ったから,本件不法行
為に基づく損害賠償請求は当該利益の侵害に当たると主張するが,独自の見
解であって採用できない。
3被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の組合に対する信用毀損行為等の
有無
(1)前記1の事実に基づいて検討するに,同(21)ないし(27)認定のとおり,被
控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,組合を解散ないし経営危機に追
い込む目的で,共同して,①組合の経営不安等を言い立てて,組合員や生産
協力農家に本件退会届を提出させ,あるいは養鶉業を継続中の組合員に虚偽
の廃業届を出させて,組合から組合員や生産協力農家を大量に脱退,離反さ
せ,②更にこの事態を利用して,組合の正組合員数や解散事由の存否,及び
総会が開催できる状態だったか否か等に関して事実に反する内容を含む,本
件名簿,本件挨拶状等,本件怪文書を組合及びB1の取引先等に送付,提示
して,組合が解散状態にあり,通常総会も開けない等の趣旨を喧伝して,組
合の信用を毀損し,③実際に組合の通常総会の開催を妨害しようとしたほか,
④マスコミを利用して,虚偽の内容が記載された本件記事を新聞に掲載させ,
組合の信用不安を広く一般人に周知させようとしたのであるから,被控訴人
A1,同A2,同A3及び同A4の以上の行為は,組合に対する不法行為に
該当するというのが相当であり(上記④は,同被控訴人らにマスコミを利用
しようとする故意があるので,記事にした新聞社の責任の有無にかかわらず,
同被控訴人らに責任がある。),同被控訴人らは,連帯して,組合の被った
損害を賠償する責任があるといわなければならない。
(2)ア上記認定に対し,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,組合の
正組合員は,平成10,11年当時すでに14名と,法定数を下回ってい
たから,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4が組合員を法定数未満
にさせて組合を解散させようとしたという組合の主張はそもそも成り立た
ない旨を主張しており,乙115,116,120,123等には,従前
より東三河事務所から幽霊組合員を整理するよう言われていた等と,被控
訴人A1,同A2,同A3及び同A4の上記主張に沿う記載がある。
イしかし,組合は,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の不法行為
として,正組合員数を法定数未満にして組合を解散させようとしたという
点だけではなく,併せて,組合員等の脱退,離反により組合の入荷卵等を
不当に減少させようとする目的があった旨を主張しているのであるから,
被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の上記主張は,組合の主張を正
解しない言い分というべきである。
ウのみならず,本件紛争が発生した平成12年当時,組合の正組合員数が
法定数を満たしていたことは,たとえば前記1(26)のとおり,同年6月3
0日開催の組合の通常総会において,監督官庁担当者の監視の下で,組合
の正組合員数が15名と確認された事実からも客観的に裏付けられている
のであって,そのほかに前記1(18)認定の臨時総会時の組合員数の確認状
況も考慮すれば,この点に疑念を入れる余地はない。
また,東三河事務所から幽霊組合員に関する指導があったとする上記証
拠は,反対趣旨の甲104等に照らし採用できず,組合が職員理事のA1
6を正組合員として扱っていたと認めるだけの証拠もない。
エそして,上記ウの状態を前提として,被控訴人A1,同A2,同A3及
び同A4が,組合から正組合員を大量に脱退させて,組合を正組合員の法
定数不足で解散に追い込むことを企図していたことは前記1(21)認定のと
おりである。
しかし,現実には,前記1(2)(22)(23)(25)(28)の事実から明らかなとお
り,①平成12年5月に組合員が提出した本件退会届は,組合の定款14
条1項により,平成12年度の終りまで組合からの脱退の効力が生じず,
②同年5,6月に一部組合員の提出した廃業届も,A2を除き客観的に養
鶉業を廃業した事実がないため,脱退の効力はなく,結局,被控訴人A1,
同A2,同A3及び同A4の行為は,その目的を遂げなかったという経過
が認められるのであり,同被控訴人らの上記主張は,採用することができ
ない。
(3)ア次に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,①同被控訴人らが
組合に対し信用毀損行為等に出た事実を否認し,特にA1の関与を争うほ
か,②正組合員であるA18,A19,A8の脱退と同被控訴人らの行為
との因果関係を争っており,その根拠として,(ア)上記3名の脱退理由は,
組合に大きな影響力を有するA6が,平成12年5月31日の組合理事会
で,同人の保有するB1株を組合員らに譲渡する,自分をB1の銀行借入
の保証人から抜いてほしい等と発言したため,組合員である上記3名らが
銀行から借入の返済を請求されると不安を感じたことにある,(イ)本件退
会届の日付は,平成12年度には組合に籍を残さないように,平成11年
度中である平成12年3月30日等としただけであると主張する。
更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,③前記1(25)のA
24の廃業届は真実の内容であり,同(22)のA10及びA36は,すでに
従前,組合から脱退していた者で,A35,A38,A23,A11,A
37も養鶉業を営んでいなかったから,同人らの退会届の提出は,本件の
紛争とは無関係である旨を主張する。
イそして,甲58の2,乙8ないし10,16,62,65,70,77,
80,82,105,111ないし114,118ないし123,被控訴
人A1,同A2,同A3,同A4の各供述中には,①本件退会届の作成に
は関与していない旨の被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の供述等
や,②従前からA6を信頼していたことから,同人が保証人を降りると考
えて本件退会届を作成したとの当時の組合員の供述等,あるいは,③前記
1(25)の廃業届を作成した際,実際に養鶉業を廃業しようと考えていた旨
の当時の組合員の供述等がある。
また,(ア)A6の陳述書である乙106には,平成12年当時,A6は,
組合やB1から手を引くことを考えており,自分の手紙の「A1の暴走を
止めるべく」との部分は,組合経営に関するA1の問題点を指摘したもの
ではない旨の記載があり,(イ)外にA6の陳述書とされる乙122,13
0,131にも被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の主張に沿う部
分がある。
ウ(ア)そこで,まず上記ア①及び(イ)の点から検討するに,被控訴人A1,
同A2,同A3及び同A4が,組合を解散等に追い込む目的で,組合員
等に働きかけて本件退会届を作成させ,またその目的に合致するよう,
作成日付をわざわざ平成12年3月の日付に遡らせていたことは,①事
情を知るA22が,別件訴訟で同被控訴人らの上記目的を直接供述して
いるだけでなく,②前記1(22)第2段のとおり,被控訴人A1,同A2,
同A3及び同A4が,組合の定款14条1項を誤解して,組合員から平
成11年度中の平成12年3月末までの日付で退会届が出れば,同年度
の終り等に脱退の効力が生じる旨の規定と考えており(平成18年1月
25日付A3本人調書9,10頁),③係る被控訴人A1,同A2,同
A3及び同A4の認識に合せて,複数の組合員や生産協力農家の本件退
会届に,一致して平成12年3月中の日付が記入されていたこと,④こ
うして作成された本件退会届や廃業届を,同被控訴人らが,前記1(23)
(26)のとおり,平成12年6月30日の通常総会や同年5月31日の全
員協議会で自分たちの利益のために利用していたこと等から明らかであ
る。
(イ)また,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4が,それぞれ組合
への信用毀損行為に直接関与していた事実は,上記(ア)認定の事情のほ
か,前記1(23)(24)認定のとおり,①本件挨拶状等に関し,A1とA2
が起案し,被控訴人会社で印刷する等,被控訴人A1,同A2,同A3
及び同A4が共同して,その作成,送付を行なっていた事実が認められ
ること,②A4が,事実に反して正組合員数を11名とする本件名簿を
作成していたこと等からも十分裏付けられている。
(ウ)したがって,以上のほかに,前記1(3)(9)(15)のような,被控訴人
A1,同A2,同A3及び同A4同士の人的関係も考慮すれば,同被控
訴人らの上記ア①及び(イ)の主張は採用できず,上記(ア)や(イ)に直接
現れた以外の信用毀損行為等,すなわち,(a)本件名簿や本件怪文書を
利用してなされた組合への信用毀損行為は,いずれも被控訴人A1,同
A2,同A3及び同A4が共同して実行したと認めるのが相当であり,
(b)本件記事も,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の一方的な
情報提供の結果,新聞社が一部に事実に反する記載を行なったと認める
のが相当である。
エ(ア)次に,上記ア②及び(ア)の点について検討するに,前記1(31)のと
おり,A6は,B1がB16に対して借入債務を完済するまで,その連
帯保証人の地位から降りることはなく,また現在まで引き続きB1株8
0株を保有している事実が認められるから,平成12年当時,A6が組
合再建から手を引き,B1の保証人を降りる等と考えていたとか,その
意向を平成12年5月31日の全員協議会の席上やその他の機会に発言
したと考えることは困難である。
(イ)そして,前記1の事実,特に同(14)ないし(19)認定の紛争の経過を
みれば,本件株式譲渡の話が,組合やB1に対するA1の行動に問題が
あるとのA6の認識と発案に基づいて進行していたことも明らかであっ
て,同(17)認定のA6の手紙は,いずれも上記のような当時のA6の認
識を表すものと認めることができる。
(ウ)また,A6は,B1のB16からの借入の保証人にすぎなかったの
であるから,A6が保証人を降りることにより,同社とは別組織である
組合の組合員が,個人的に上記借入の返済を請求されると考えたという
のは,いかにも不合理な話である。
(エ)そのほか,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の主張中には,
有志の会が組合によるB1株の買取を主張して,組合内に紛争が起きた
ため,嫌気がさした組合員からの本件退会届の提出につながった旨の部
分があるが,前記1(17)(18)に認定のとおり,本件株式譲渡の話は,A
6の発案に基いて進行しており,また平成12年4月16日のB1の取
締役会決議でも,同年24日の組合の臨時総会の本件決議でも,参加者
の誰からも同譲渡の手続を進行させることに反対する意見は出なかった
のであるから,当時組合内外に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同
A4のほかに,本件株式譲渡に反対する者がいたとか,これが原因で一
般の組合員を巻き込む紛争が発生していたとは認められず,同被控訴人
らの上記主張も採用できない。
(オ)したがって,以上の事情に照らせば,被控訴人A1,同A2,同A
3及び同A4の上記ア①及び(イ)の主張は採用できず,これに関する上
記イ(ア)(イ)のA6の陳述書(乙122,130,131)の該当部分
も採用できないというべきであって,A6の保証人から降りたい旨の発
言など,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の働きかけ以外の出
来事が原因となって,A18,A19,A8や他の組合員,あるいは生
産協力農家が組合から脱退,離反したと認定することは困難である(な
お,A6名義の陳述書のうち上記イ(ア)の乙106はある程度中立的な
内容であり,一定の信用性が認められるが,それ以外の上記イ(イ)の陳
述書は,一方的な内容で,文書の形式も乙106と大幅に異なっており,
A6の真意を反映しているか疑問がある。)。
オ更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,上記ア③のとおり,
A24の廃業届が虚偽であることを争い,A10ら生産協力農家が提出し
た退会届の違法性等を争っているが,前記1(25)第2段認定の事実に照ら
し,上記廃業届は真実の内容とは認められない。また,組合員の脱退だけ
でなく,生産協力農家の離反も組合の入荷卵確保に影響を与えたことは,
前記1(22)(25)(28)認定のとおりであって,反対趣旨の甲65も考慮すれ
ば,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の上記主張は採用できない。
カ以上によれば,上記ア,イの被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4
の主張及びこれに沿う証拠等は,全体としても採用することができないと
いうべきである。
(4)また,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,本件挨拶状等は,A
2の組合長としての権限に基づき作成,送付したもので,正当な内容である
として,その違法性を争っているが,前記1(24)(ア)(イ)のとおり,本件挨
拶状等が事実に反する内容を含み,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A
4がこれを利用して組合の信用不安を煽ろうとしたことは明らかであって,
上記主張は理由がない。
(5)更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,A21は准組合員で,
鶉卵を出荷していない幽霊組合員だから,その脱退は組合の定数不足と無関
係であり,入荷卵数にも影響しないとして,同人の組合脱退に関する不法行
為の成立を争っているが,反対趣旨の甲65,乙34,35,91に照らし
採用することができない。前記1(26)のとおり,A21は,平成12年5,
6月当時,組合の正組合員であり,また不定期的に組合に鶉卵を出荷してい
たと認められる。
(6)そのほか,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,別件訴訟におけ
るA22供述の存在及び趣旨を争っているが,前記1(30)認定のとおり,A
22が,同人の退会届の作成にA2が関与した旨及び,同作成の目的が組合
を解散に追い込む点にあった旨を明確に供述している事実は,裁判所書記官
作成の本人調書である甲33の3によって優に認定することができる。当時
A22の代理人だった現在の被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の代
理人・A39弁護士の尋問によっても,A22供述を訂正・変更することが
できなかったという別件訴訟の経過は明らかであり,同被控訴人らの上記主
張は,到底採用できない。
4組合の損害
(1)前記1(28)のとおり,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の上記3
(1)の信用毀損行為等により,入荷卵の減少や取引先の仕入回避等の事態が発
生し,組合は,売上が大幅に減少したと認められるところ,これによって平
成12年6月から平成13年8月までの間に,合計3589万2870円の
得べかりし利益を喪失して,同額の損害を被ったと認めることができる。
その理由は,以下のとおり補正するほかには,原判決76頁16行目から
78頁21行目までのとおりであるから,これを引用する。
ア原判決76頁23,24行目の「平成12年10月5日に取引を打ち切
ったこと(甲54,22の6,72)」を,以下のとおり改める。
「,平成12年10月以降,取引量が極端に減少したこと(甲54,22の
の6,106の1ないし15)」
イ原判決78頁9行目の「取引を打ち切ったのは」を,「取引量を減らし
たり,取引を打ち切ったりしたのは」と改める。
(2)次に,組合の弁護士費用についてみるに,本件事案の性質・内容,本件訴
訟の経過,認容額等を勘案すれば,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A
4の行為と因果関係のある弁護士費用は,200万円をもって相当と認めら
れる。
(3)以上によれば,本件不法行為に基づく損害賠償請求については,被控訴人
A1,同A2,同A3及び同A4は,不法行為に基づく損害賠償として,組
合に対し,連帯して上記(1)(2)の損害合計3789万2870円及びこれに
対する不法行為の後である平成13年5月24日から支払済まで民法所定の
年5分の割合による遅延損害金の支払義務があるというのが相当であり,結
局,組合の上記請求は全部理由がある。
(4)ア上記認定に対し,まず被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,前
記第2の5(2)ア(イ)(ウ)のとおり,①本件挨拶状等の送付が原因で,取引
打切りや減少に至ったケースはなく,②本件退会届を出した組合員中,組
合に鶉卵を出荷していたのはA18,A19,A8の3名だけで,しかも
自分の意思で組合を脱退したから,被控訴人A1,同A2,同A3及び同
A4の行為は,入荷卵の減少と関係がないと主張して,組合の損害及びこ
れと自分らの行為との因果関係を争っている。
イしかしながら,本件挨拶状等の送付を含む被控訴人A1,同A2,同A
3及び同A4の信用毀損行為等により,組合が複数の取引先から取引を打
ち切られ,あるいは取引量が極端に減少したことは,前記1(28)に認定の
とおりであって,上記ア①の主張は採用することができない。
ウまた,前記1(25)(28)認定のとおり,被控訴人A1,同A2,同A3及
び同A4の信用毀損行為により,A18,A19及びA8の3名以外の組
合員や生産協力農家も組合への出荷を停止しており,組合は,これにより
損害を被ったと認められ,上記ア②の主張も採用できない。
(5)ア次に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,平成13年3月に
A22が入荷卵が多すぎるという理由で組合から追放されているから,同
被控訴人らの行為と平成12年10月以降の売上減少とは因果関係がない
旨を主張する。
イしかしながら,前記1(28)(30)認定のとおり,平成13年3月当時,組
合が大量の鶉卵を必要としなくなったのは,被控訴人A1,同A2,同A
3及び同A4の信用毀損行為等により,組合の鶉卵取引が縮小均衡したこ
とが要因になっていると認められるから,上記主張を採用して,平成12
年10月以降の売上減少と同被控訴人らの行為との因果関係を否定するこ
とはできない。
(6)ア更に,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4は,①組合の売上は,
平成8年度以前は9億円で,平成12年度以降は8億円で推移しているか
ら,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の行為があっても,組合に
損害はないし,②平成8年頃の鶉卵の転売利益は1卵当たり10銭である
から,同被控訴人らの行為による組合の損害も,同じ割合で計算すべきで
ある等と主張する。
イしかしながら,これらは,いずれも本件不法行為が行なわれた平成12
年当時とは,かけ離れた時点の事情に基づく主張であって失当である。
前記1(8)のとおり,従前,組合では,組合員を新規に募集して入荷卵の
増加に努め,出荷卵の販路開拓や本件装置の導入で取引量を増やした結果,
売上は,従来の6ないし8億円から,平成9ないし11年度には10億円
以上を計上し,特に本件装置のトラブルによる悪影響を受ける前の平成9,
10年度は11億円に達していたのであるから,これらの事実を無視して
組合の損害を算定することはできない。
(7)そのほか,平成12年6月ないし8月,組合及びB1が取引先等に送付し
た甲79,80には,一部組合員の脱退等があっても,組合に出荷していな
い組合員がほとんどだとか,組合経営に不安はない等の記載があるが,いず
れも,被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の信用毀損行為等によって
惹起された取引先の不信感を払拭,軽減するため,一部事実と異なる表現が
なされたことが窺われ,他に前記認定を左右するだけの証拠はない。
第4性能違反に基づく損害賠償請求に関する当裁判所の判断
当裁判所は,組合の債務不履行に基づく損害賠償請求(当審での減縮後のもの)
は,すべて理由があると判断する。その理由は,以下のとおりである。
1前提となる事実
①前記引用に係る原判決「事実及び理由」欄の第2の2の各事実,②前記第
3の1(1),(5)ないし(12),(23)ないし(28)の各事実,③甲3,4,22の1
ないし8,23の1ないし3,24の2ないし6,25,26,27の1ない
し3,28の1ないし40,29の1ないし9,30,31,32の1ないし
7,44,45,46の1ないし60,50,51,52の1・2,53,5
4,59,66,67の1ないし8,68,70ないし74,76,77,9
1の1・2,106の1ないし15,107の1・2,108,109の1・
2,④乙17の2,18,20,21の1ないし11,23,37,38,4
0,47,51,85,⑤証人A16・A25・A12・A27の各証言,組
合代表者の尋問結果,⑥いずれも後記採用できない部分を除く証人A26の証
言,A1の本人尋問の結果によれば,以下の事実が認められる。
(1)前記第3の1(1)のとおり,組合は,鶉卵の生卵パック工場及び,水煮加
工を行なう加工場を運営しており,生産する鶉卵と鶉卵製品の約7割が生卵
パック工場から生卵として,約3割が加工場から加工卵として出荷されてい
た。このうち,生卵の出荷は,利益率は高いが需要が不安定で,逆に加工卵
は,需要が安定的な代わりに利益率が低く,両者で組合の経営を支えていた。
(2)加工場では,入荷した鶉卵を検査して,予備ボイルしたうえ,本ボイルし,
これを冷却後,殻割機で鶉卵の殻にヒビを入れて,殻剥機で卵殻を取り除き,
ムキ卵の状態になった鶉卵を選別し,不良品を取り除くとともに,等級分け
を行なって製品化し,等級等に応じて所定の形態で出荷するという,一連の
作業を行なっており,これに使用する旧装置は,被控訴人会社が納入してい
た。
そして,製品化された加工卵の等級は,卵重と加工卵の仕上りによって,
①1級(白ムキ1級を含む。),1・2級,中1級(1級品等。前記第2の
6(1)ア(イ)b)と,②殺菌処理しない白ムキ2級,白ムキ2・3級,白ムキ
3級,白ムキ中2・3級(白ムキ2・3級等。前同)に等級分けされており,
そこでは,(ア)1級品は,卵殻や薄皮の除去が完全で,卵黄の片寄りがなく,
無傷か小さな傷が1,2カ所以下で,卵重(殻なし状態の重量。加工卵につ
き,以下同じ。)8.5グラム以上の正卵,(イ)中1級品は,品質は1級品
と同等だが,卵重が7.5から8.5グラムの小玉(販売上の呼称は「中
玉」),(ウ)2級品は,殻の除去が完全で,傷は1級品より大きいが卵黄が露
出していないもの,卵黄が片寄り外部から透けて見えるもの,又は気室の大
きさが鶉卵の20パーセント以上のもの,(エ)3級品は,傷が2級品より大
きく,直接卵黄の見えているものとされる等,仕分の基準が決まっており,
以上のような等級区分や仕分の基準は,取引先との関係もあって,従前から
ほぼ一定しており,大きく変更されたことはなかった。
なお,組合の製品の形態には,上記等級品を単独で出荷するだけでなく,
1・2級品や2・3級品のように,取引先の要求等で,異なる等級の加工卵
を混合して出荷する場合もあった。
(3)上記(2)①の1級品等では,製品化された加工卵は,全量販売され,返品
や廃棄されることがないのに対し,同②の白ムキ2・3級等では,殺菌処理
をしないので,保存期間内(夏場は約1週間,冬場は約10日間)に販売で
きない商品は,廃棄処分されていた(なお,白ムキ1級品は,全部受注生産
であり,他にもOEM製品(相手方ブランド名で生産する製品)があったが,
これらの中には廃棄される製品はない。)。
そして,加工場では,製造日報をつけて,製品化した各種商品の等級,数
量を記録していたが,最終的な販売数量ベースでは,1級品等の方が,それ
以外の白ムキ2・3級等よりも圧倒的に数量が多く,従前の統計では,後者
は前者の数分の一から十分の一程度に止まっていた。
また,白ムキ2・3級等は,主にフライやオデン種に使用されていたが,
そのうち販売できず廃棄された商品は,製造日報に記載されず,下記(4)の処
分卵・消滅卵として扱われていた。ただし,製品化された各種商品のうちで,
販売できず廃棄される可能性があるのは白ムキ2・3級等のみであり,更に
実際に廃棄される商品も,白ムキ2・3級等全体の2,3割に止まっていた。
(4)加工卵の製造過程では,寄り玉,浮き玉,殻刺し,殻付き,割れ玉,玉子
とじ卵,キズ玉,ミンチ玉等,各種の不良品が発生する場合があり,加工場
では処分卵・消滅卵として扱われていた(ただし,程度が軽い場合,2級品,
3級品として出荷された。)。
このうち,寄り玉は,卵黄が片寄った状態で加熱されて固化する等して発
生するものである。
浮き玉は,入荷した鶉卵の比重が軽すぎる場合のほか(この場合,予備ボ
イル段階でボイル槽上方に鶉卵が浮くので,生産ラインから除去する。),
種々の原因で,本ボイル段階でボイル槽上方に浮かんでくるもので,ボイル
槽の中で浮遊したままだと加熱時間が長くなり過ぎ,卵黄から出た硫化物の
作用で,できた加工卵が黒く変色する,色変わりの原因になることがある。
殻刺しは,殻割工程での卵殻へのヒビ入れの不足や,卵殻の強度が高い,
殻剥工程での殻の除去が不完全である等の理由で,除去できなかった卵殻が
ムキ卵に刺さったものである。殻刺しの傷は,カミソリの傷のようで選別時
に発見しづらく,他の不良品よりも見過ごされ易いため,そのような傷のあ
る卵は,そのまま出荷された後になって,卵黄から卵油が漏出して,製品で
ある水煮パックの汁を汚濁することがあった。その場合,卵油が漏出した鶉
卵は一部でも,消費者には水煮パック全体が腐っているのではないか等の不
安を与えることから,商品価値を大きく損ない,苦情や取引先とのトラブル
に発展することも少なくなかった。
割れ玉は,殻割の不完全のため,殻剥工程で鶉卵が割れて発生するもので
ある。
(5)上記のような不良品の発生率や,製造された加工卵の等級の高低は,加工
技術の適否のほかに,原料卵の品質によっても左右されるため,組合では,
良質卵の確保のため,色々な方策を講じていた。
組合は,前記第3の1(5)のとおり,平成4年頃は経営的に苦境にあって,
十分な入荷卵を確保できず,遠隔地の養鶉農家から相当量の鶉卵をスポット
購入していたため,長距離輸送による原料卵の劣化が避けられなかったが,
平成6年頃,組合員や生産協力農家等の地元の養鶉農家から鶉卵を購入する
態勢が確立し,これ以降,遠隔地からの原料卵購入はなくなった。
また,組合では,平成5年頃,養鶉農家と受入卵検査査定約定を結んで,
①卵重(殻付状態の重量。原料卵につき,以下同じ。)9.5から12グラ
ムの鶉卵は正卵とするが,同8.5から9.5グラムの小玉や,逆に卵重の
過大な大玉は正卵とせず,前者より購入価格を安くし,②規格外の破れ玉,
浮き玉等は入荷卵にはカウントしない等の基準を定めて,入荷卵の検品を行
なっており,更に,③生正卵が90パーセント以上の養鶉農家は,優良生産
者として認定し,基準に達しない農家より鶉卵の買取価格を高く設定して,
養鶉農家に良質の原料卵の出荷を奨励していた。
以上の方策により,組合の入荷卵の品質は次第に改善し,たとえば,入荷
卵に占める下記のハネ玉の割合は,平成5年当時,約18パーセントあった
のが,平成11年頃には10パーセントを若干上回る程度まで低下していた。
なお,加工用に加工場に入荷する鶉卵には,直接養鶉農家から加工場に出
荷されたものと,生卵パック工場向けに出荷された中で,同所の規格に合致
しないため加工場に回されてきた,いわゆるハネ玉があったが,すべての養
鶉農家が生卵パック工場向けの出荷を優先しているとは限らず,中には,加
工場向けの鶉卵だけを出荷する養鶉農家もあった。
(6)前記第3の1(5)以下のとおり,被控訴人会社の代表者A1は,平成4年
に,組合員の生産物の独占的販売権を持つB1の代表取締役に就任して,組
合の経営再建を主導しており,この頃から組合の具体的な業務にも事実上関
与していたが,その一環として,被控訴人会社納入の旧装置を使用していた
加工場の歩留の向上にも力を入れ,組合関係者らに種々の改善策を指示して
いた。
A1は,そのデータを取るため,毎日,上記(3)の加工場の製造日報の記録
を被控訴人会社宛に送信させ,過去の記録と合わせて,被控訴人会社の手で,
平成3年以降の加工場の実績をまとめた加工卵実績(乙20,38)を作成
し(少なくとも平成7年頃まで作成を継続したと考えられる。),これに基
づいて,歩留向上のために,上記(5)の受入卵検査査定約定の締結や優良生産
者の優遇策を推進し,あるいは養鶉農家毎にハネ玉の割合を算出して,比較
したデータを取る等の方策を立案していた。
そして,この加工卵実績では,加工場の入荷卵に対し,どれだけの加工卵
製品が製造されたかの割合を「製品歩留率」として計上していたが,そこでは,
(ア)組合の従来からの等級区分である上記(2)①②の等級を採用しており,ま
た,(イ)歩留率計算の分母には,上記(5)のハネ玉を算入していた。(ウ)他方,
上記(3)のとおり,白ムキ2・3級等のうち販売できなかった商品は,製品と
して計上しておらず,歩留率計算の分子には算入していなかった。
(7)従前,組合は,加工場のデータをまとめていなかったが,平成8年頃から,
被控訴人会社にならって加工卵出来高表を作成するようになり,これに基づ
き歩留率を算定していた。組合の歩留率の算出方法は,被控訴人会社の加工
卵実績の方法と同一で,上記(6)(ア)(イ)(ウ)の基準を採用して歩留率を計算
していた。
A1は,以上のような統計データに基づき,組合関係者への指示等を継続
していたが,関係者から,これらの統計資料には不備があるとか,不正確な
歩留率であって役立たない等の指摘は出なかった。
また,A1は,上記(4)のような不良品が発生し,取引先や消費者から苦情
が来ると,B1の代表者として,組合と連名で謝罪文を出していた。
そして,上記(5)のような原料卵の品質改善や,作業員が旧装置の運転に習
熟したことから,旧装置で製造した加工卵の歩留率は,次第に上昇し,上記
(6)の基準で測定すると,平成8年度90.5パーセント,平成9年度91.
9パーセントと,ほぼ90パーセントに達しており(いずれも加工卵出来高
表のデータによる。以下同じ。),他方,処分卵の割合は,平成8年度9.
5パーセント,平成9年度8.1パーセントに止まっていた。
(8)ところで,平成9年当時,組合は,以下のとおり,鶉卵の加工能力の大幅
増強を含む経営計画を立てた。
すなわち,組合は,平成9年11月から,B7の中央鶏卵センターを介し
て,B5株式会社に水煮鶉卵缶詰の供給取引を開始したが,B5(窓口のB
7を含む。以下同じ。)は,更に平成10年1月から,より高品質の鶉卵チ
ルド製品の取引を申し込んできた。これにより,組合は,非常に大口の取引
が見込める状況となったが,同社は,取引の条件として,従業員教育,衛生
管理の改善等のほかに,大量の加工卵の安定供給を図るため,当時,日量約
16万個の鶉卵処理能力があった加工場の50パーセントの能力増強を要求
してきた。
そこで,組合では,B5の要請に応え,加工場の旧装置を更新して,処理
能力を大幅に増強することにし,平成10年4月頃,被控訴人会社に新しい
水煮加工システムの製作を打診した。このときは,前記第3の1(5)ないし
(12)及び上記(6)(7)のとおり,A1が組合の経営に影響力を有し,旧装置の
歩留の改善策を推進していたことから,組合は,被控訴人会社以外の他社か
ら相見積を取らずに,被控訴人会社との交渉を進めた。また,A1及び被控
訴人会社も,組合がB5との上記取引のために,本件装置の導入を必要とし
ている事情を十分知っていた。
(9)被控訴人会社は,平成10年4月29日組合に対し,本件装置の見積書
(代金額3500万円。消費税抜き)を提出した。同見積書には,時間当た
り4万から4万5000個の鶉卵処理能力を有する旨の記載があり,同年5
月1日,上記金額で組合が発注して,本件請負契約が成立した。このとき,
契約書は作成されず,被控訴人会社から組合には,簡略なシステム図と取扱
説明書が交付されただけで,詳細な設計図面等は作成されず,また取扱説明
書に,鶉卵の投入量や季節・気温等に応じた具体的な設定温度の指示等はな
かった。
そして,平成10年8月1日の組合役員会では,加工場の能力を5割増強
するため,本件装置を導入することが確認され,またA1は,同月中旬頃,
組合とB7との打合せ資料に,要旨「最新設備で,能力は,時間当たり2万
5000個から4万5000個へ。チラーも品質向上が見込める」等と記入
したメモを,組合宛に送信した。
被控訴人会社は,平成10年8月12日から16日にかけて本件装置を設
置し,試運転して組合に引渡した。本件装置は,全体に旧装置と類似の構成
であったが,鶉卵を水煮する本ボイル槽が1次ボイル槽と2次ボイル槽に別
れ,卵殻にヒビを入れる殻割機が外側ドラム方式である等の点は,旧装置と
異なっていた(旧装置は本ボイル槽が1個で,殻割機は内側ドラム方式だっ
た。)
(10)こうして,本件装置は,平成10年8月17日から本稼動に入り,その
後1週間にわたり,設計者である被控訴人会社取締役のA26が運転に立ち
会った。
しかし,本稼動後,本件装置は,①殻刺し,割れ玉,傷玉が多数発生した
のを初めとして,②多数の寄り玉が発生し,③2次ボイル槽で多量の浮き玉
が生じて滞留し,加熱時間の超過により硫化黒変し,④以上の結果,不良品
が極めて多く,旧装置のときより歩留率が大きく低下したが,不良品が大量
で検品が間に合わないこともあって,殻刺しなど不良品の一部は,そのまま
出荷されてしまい,取引先,消費者から下記(13)のような苦情が出た。
ほかにも,本件装置については,⑤殻剥機のモーターのVベルトがスリッ
プし,殻剥作業ができない,⑥検品用のコンベアーローラーの間隔が広すぎ
て,鶉卵が回転しないため,卵の裏側が検査できず,逆に検査員の指が挟ま
れる,⑦2次ボイル槽から湯が溢れる,その他の問題が多発していた。
(11)そこで,組合は,本件装置の早急な修補を求め,被控訴人会社は,平成
10年9月,(ア)2次ボイル槽に浮き玉用のフィルターを設け,(イ)殻割機
の水流を強めて,殻割を完全にする目的で,本来の設計にあったシャワーパ
イプの外に新しいシャワーパイプ1本を増設し,(ウ)1次ボイル槽にボイル
卵の移送用のポンプを設置する等の対応を取ったが,本格的な修補にはほど
遠く,また組合からの歩留率の改善の要求に対して,被控訴人会社は,「とに
かくデータを出してほしい」等というばかりで,実質的な対応をとろうとしな
かった。
そのため,組合では,独自に本件装置を修補し,①1次ボイル槽の熱が予
備ボイル槽に伝わって寄り玉が発生するのを軽減するため,予備ボイル槽の
カバーを外し,②殻割作業が完全に行なわれるように,殻割機にシャワーパ
イプを更に1本増設して,水流を強化したほか,③入荷卵の鮮度が良すぎて
殻割がうまく行かないのではないかとのA1の発案に基づいて,逆に入荷か
ら時間の経過した鶉卵を使って操業を試みたほか,④選別作業員を増員した
が,いずれも十分な解決とはならず,殻刺し等の不良品の発生が続き,歩留
率は,平成10年9月から平成12年5月までで75.7パーセントと,旧
装置当時の90パーセントから約14パーセント悪化した。
(12)結局,組合では,平成12年5月に,本件装置の特徴だった2次ボイル
槽の使用を止め(その後,同槽は常温冷却の目的に使用されることになっ
た),原料卵の投入量を時間当たり2万から2万5000個程度に減らした。
その結果,平成12年6月から平成13年3月までの歩留率は,86.4
パーセントと一部改善したが,やはり旧装置の約90パーセントには及ばず,
また本件装置の導入後の平成10年9月から平成13年3月までの通算の歩
留率は78.1パーセントであった。
そのほか,組合では,1次ボイル槽の出口の形状を改める工事をして,同
槽からの湯の流出を押さえ,また殻割機のモーターのVベルトを他の形状の
に交換して,スリップを防止した。
(13)一方,この間,取引先や消費者から極めて多くの苦情が寄せられたため,
組合は,多数の謝罪文を出すとともに,B5やB7との打合せを重ね,改善
策を取る旨を約束した。また,必要な等級の製品が供給できないときは,本
来1級品に該当しない製品を1級品として引き取ってくれるよう,取引先に
依頼する等して,取引関係の維持を図った。
しかし,歩留率と製品の等級の低下で,製品の安定供給に支障を来たした
うえ,不良品の増加で客先からの苦情が収まらず,特に,検品で殻刺しが発
見できなかった製品が多数流通した結果,上記(4)のように,水煮汁の汚濁で,
消費者に腐っているのではないか等の印象を与えて,不安が強まった。
その結果,組合は,すでに平成10年中に,大口取引先のB5から,この
ままでは組合と取引を継続できない旨の通知を受けていたが,同社と組合と
の取引量は,平成11年4,5月頃から大幅に減少し,更に前記第3の1(2
2)ないし(27)認定の被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4による信用毀
損行為等の影響もあって,平成12年10月以降,B5向けの水煮加工卵取
引は,ほぼ全量近くが消滅した。
また,同様の経過で,B5と並ぶ組合の大口取引先だった,B6との取引
は,すでに平成11年中に打ち切られてしまった。
2本件性能保証の有無及び内容,並びに被控訴人会社の保証違反の責任の存否
(1)本件数量性能に関する約定の有無から検討する。
①前記1(9)の見積書に記載された本件装置の鶉卵処理能力の内容のほかに,
②同(8)(9)のとおり,組合がB5との大口取引を実現させるために本件装置
の導入を図ったという経緯があり,③これに対し,同(6)(9)認定のとおり,
組合経営に事実上深く関与していた被控訴人会社の代表者A1が上記経緯を
知悉しており,かつ組合に本件数量性能を確認する趣旨のメモを交付してい
たのであるから,これらの事情を総合すれば,上記見積書に記載された鶉卵
処理能力は,単なるカタログ性能その他の謳い文句等とは異なり,被控訴人
会社が組合に対し,加工場の実際の使用条件の下で,時間当たり4万ないし
4万5000個の投入量の鶉卵を加工できる性能を有していることを保証す
る趣旨の記載と認めるのが相当である。
(2)次に,本件歩留性能に関する約定の有無について検討する。
ア一般に水煮加工システムの製品歩留(以下,この用語は,原則として,
原材料の投入数量に対する製品の完成数量の割合,という一般的な意味で
使用する。)の高低は,製造過程における鶉卵加工業者の利益率を大きく
左右する重要な要素であり,また不良品の流通に伴って発生する製品回収
費や対策費等の二次的な経費の発生を防止する点でも,加工業者の経営に
大きな影響を与える重要な事項であると認められる。
イ更に,本件では,①前記1(5)(6)のとおり,従前,製品歩留の向上のた
め各種の改善策が取られており,その結果,本件装置の導入直前の平成8
年度及び平成9年度には,加工卵出来高表のデータによれば,旧装置の歩
留率は,ほぼ90パーセントという比較的良好な数値が達成されていたと
ころ,前記1(6)(8)のとおり,②組合経営に事実上深く関与していたA1
が,上記のような製品歩留の改善を推進しており,③このような立場のA
1が被控訴人会社を経営していたことから,組合は,他社から相見積を取
ることなしに,被控訴人会社と本件請負契約を締結した等の経過が認めら
れるから,これを考慮すれば,本件装置の導入に当たり,組合と被控訴人
会社の間では,実際の使用条件下で,本件装置が旧装置と同等の製品歩留
を達成できることが本件請負契約の前提となっており,かつ,これにつき
被控訴人会社から組合に対する黙示の性能保証がされたと認めるのが相当
である。
結局,これと上記(1)の内容とを合わせて,組合と被控訴人会社との間に
は,本件性能保証(数量処理能力と歩留率との両項目につき所定の水準を
満たすこと)の合意があると認めることができる。
ウまた,前記1(6)(7)認定のとおり,従前,組合と旧装置の納入業者であ
る被控訴人会社は,同一の統計基準に従って,加工卵出来高表ないし加工
卵実績を作成して,そこから得られる歩留率のデータを旧装置の製品歩留
の改善に使用しており,これ以外に,旧装置の製品歩留を把握する格別の
指標が存在していた形跡がないことを考慮すれば,両者の間では,本件装
置と旧装置の製品歩留の比較に当たり,加工卵出来高表から得られる歩留
率のデータによることが一応予定されていたと認められる。
(3)したがって,以上の事情を総合すれば,加工卵出来高表から得られるデー
タにより算出される本件装置導入前の相当期間の旧装置の歩留率と,同導入
後の相当期間の本件装置の歩留率を比較して,①後者が前者に劣っていたり,
②あるいはこれが同等であっても,同時に本件装置が本件数量性能を満足す
ることができない場合には,特段の事情が認められない限り,本件装置は,
本件性能保証に反し,瑕疵があるというのが相当である。
(4)しかるに,前記1(7)(11)(12)認定のとおり,加工卵出来高表から得られ
るデータによって算出すると,本件装置の歩留率は,旧装置当時の歩留率よ
り,約14パーセント(平成10年9月から平成12年5月まで),約4パ
ーセント(平成12年6月から平成13年3月まで),約12パーセント
(両期間の通算)悪化しており,またこの間,本件数量性能を満たしたこと
がなく,多量の殻刺し等の不良品が発生して,消費者や取引先から強い苦情
を受けていたのであるから,これらの実績は,少なくとも形式的に本件性能
保証に反しているということができる(最終的な被控訴人会社の責任の存否
は,下記3において検討する。)。
3被控訴人会社の主張に対する判断
(1)ア以上の認定に対し,まず被控訴人会社は,一般に水煮加工装置の製品歩
留は,原料卵の品質によって左右されるものであることを理由として,本
件性能保証の合意を否認するとともに,同様の内容を,上記2(3)の特段の
事情として主張しており,①乙53,63,79,証人A26の証言,被
控訴人会社代表者の供述中には,組合の原料卵は品質が劣悪であり,組合
主張の旧装置の歩留率算出の分母となる原料卵の中には,生卵パック工場
の検査ではねられた低品質のハネ玉が算入されていないから不当である等
の部分がある。
また,②被控訴人会社は,良質な原料卵を使用すれば,本件装置でも高
い製品歩留が達成できるとして,試運転の記録である乙19を提出してい
る。
イしかしながら,前記1(5)認定のとおり,組合は,平成6年頃以降,原料
卵の調達先を地元の養鶉農家に切り替えており,これ以降,調達状況に大
きな変化があった形跡は見当たらない。むしろ同認定のとおり,組合が良
質な原料卵確保のため各種の方策を取った結果,入荷卵に対するハネ玉の
比率が大きく低下する等,原料卵の品質が向上している傾向が認められる。
したがって,被控訴人会社の上記主張は,単純な一般論にすぎず,本件
装置導入当時の具体的状況を無視しており,適切でないというべきである。
ウまた,原料卵の低品質をいう上記ア①の内容を裏付ける客観的証拠はな
いし,被控訴人会社作成に係る加工卵実績の当時から,歩留率算定の前提
となる投入卵数の中にハネ玉が含まれていたことは,前記1(6)認定のとお
りである。
更に,乙19は,試運転時のものとされるにもかかわらず,組合の確認
を得ていないし,投入卵数も少なく,現実の運転状態を再現しているか疑
問があるから,その内容をそのまま採用することはできない。
エ以上の事情に照らせば,上記アの主張,証拠は採用することができず,
その他に,本件装置の導入後に,旧装置当時と比べて原料卵の品質が全般
的に低下したと認めるだけの証拠はない。
(2)アまた,被控訴人会社は,加工卵出来高表のデータは,①販売高を把握す
るための営業上の資料であり,販売できずに廃棄された商品は出来高に計
上されていないし,②処分卵,消滅卵により,月別の歩留率が激しく変動
するなど,厳密な意味の歩留率を示すものとはいえないから,加工卵出来
高表によって本件装置の瑕疵の有無を判断することはできない等と主張す
る。
イしかしながら,前記2(3)認定のとおり,本件では,本件性能保証の要件
が満たされているか否かを判断するため,旧装置の製品歩留と本件装置の
製品歩留との相対的な比較を行なうことが問題となっているのであるから,
これを実行することが可能な尺度であれば,それが厳密な意味での歩留率
に限定されると解する必要は認められない。
ウまた,前記1(3)認定の事実から明らかなとおり,加工場で製品化した加
工卵の中に販売できずに廃棄されたものがある場合において,加工卵出来
高表のデータに登載されない可能性があるのは,全商品の極一部である白
ムキ2・3級等に限られており,しかも実際に廃棄されるのは,更にその
2,3割前後だったのであるから,この点に関する被控訴人会社の主張は
誇張があるといわねばならない。
そして,これらの事情は,旧装置の当時と本件装置の導入後とで,大幅
に変化したとは認められないから,適切な対象期間を設定すれば,両方の
装置の歩留率の相対比較の場面では,統計上,偏差が打ち消し合い,ほと
んど問題にはならないと考えられる。
エ更に,加工卵出来高表によるデータでは,月毎の歩留率が大きく変動す
ることがあるとしても,対象期間を一定以上の長期間に取れば,統計上,
月毎の誤差等はならされてしまうことは明らかであるから,この点も上記
イのような,製品歩留の相対的な比較を行なう場合に,特に障害となると
は認められない。
オしたがって,以上の事情を総合すれば,加工卵出来高表によるデータか
ら算定される歩留率は,旧装置と本件装置の性能比較のために十分な性質
を備えていると認めるのが相当であって,被控訴人会社の上記主張は採用
することができない。
(3)ア更に,被控訴人会社は,①旧装置の平成4,5年度の歩留率,あるいは,
②平成10年でも4月から7月だけの歩留率は,いずれも70パーセント
台であるから,これらの数値と比較すれば,本件装置の歩留率はなんら問
題がない等として,組合主張の歩留率は,対象時期の選択が適切ではない
旨を主張する。
イしかしながら,前記1(5)(6)のとおり,組合では,平成6年頃から平成
10年の本件装置の導入までの間に,原料卵の品質確保のため種々の方策
を取り,それ以外にも加工卵の歩留率向上を図っていたのであるから,そ
れ以前の平成4,5年頃の歩留率をもって,本件請負契約に基づく本件装
置の性能の判定基準とするのは相当ではなく,上記ア①の主張は理由がな
い。
ウまた,甲72によれば,平成10年4月から7月の旧装置の歩留率が7
0パーセント台と,それまでに比べて低い数値である原因は,本件装置の
導入に伴う休業期間前に多量の原料卵を全部加工してしまう必要があった
等の短期間だけの特殊な条件に起因しているのではないかと推認されるか
ら,上記ア②の主張も採用できない。
(4)アまた,被控訴人会社は,自社は鶏卵や鶉卵の水煮加工システムでは世界
的なメーカーであり,他国でも実績があり,また組合が欠陥と主張する外
側ドラム方式殻割機は,業界の標準的な機械となっていると主張し,乙6
4,79,証人A26の証言,被控訴人会社代表者の供述中には,これに
沿う部分がある。
イしかし,前記1(9)のとおり,本件請負契約締結の際に,被控訴人会社か
らは,簡略なシステム図と取扱説明書が交付されただけで,詳細な設計図
面等は作成されず,また取扱説明書に,鶉卵の投入量や季節・気温等に応
じた具体的な設定温度の指示など,加工業者が操業に必要とする情報が盛
り込まれていなかった等の事情が認められるのであって,被控訴人会社が
本件装置の製作に当たり,十分な研究,実験等の検討を行なったといえる
かには疑問がある。
また,甲74,証人A26の証言によれば,現在被控訴人会社は,ホー
ムページに内側ドラム方式の殻割機を載せていることが認められるのであ
って,これらの事情も考慮すれば,上記証拠等を採用して,本件装置の性
能不足を否定することはできない。
(5)そのほか,被控訴人会社は,除斥期間の経過を主張して,自己の責任を争
っており,乙64,79,証人A26の証言,被控訴人会社代表者の供述中
には,本件装置の稼動後,組合から格別のクレームはなかった等として,被
控訴人会社の主張に沿う部分があるが,前記1(10)(11)のとおり,組合は,
本件装置の稼動後間もなく,歩留率の改善及び不良品の抑制,その他の点の
改修を被控訴人会社に求めている事実が認められるから,被控訴人会社の上
記主張は,採用することができない。
(6)以上によれば,上記2の認定に反する被控訴人会社の主張はいずれも採用
できず,また上記2(3)の特段の事情も認められないから,被控訴人会社は,
組合に対し,本件性能保証の違反により,組合が被った損害を賠償する責任
があるというのが相当である。
4組合の損害
(1)前記1(13)のとおり,組合は,本件装置の性能不足により,歩留率の低下
と,不良品の発生から,取引先への加工卵の安定供給に支障が出て,大口取
引先であるB5とB6(以下,一括して「取引先両社」という。)に対する
水煮鶉卵の取引を実質的に喪失した事実が認められ,これに上記2,3判示
の事情を総合すれば,平成11年度から平成14年度までの4年間にわたり,
売上の低下,喪失によって,得べかりし利益を失い,損害を被ったと認める
のが相当である。
(2)そこで,上記期間中の取引先両社に対する売上の低下状況,及び本件装置
の性能不足との因果関係の認められる具体的範囲について検討する。
アまず,B6からみるに,甲72によれば,同社に対する組合の売上は,
平成10年度5393万9375円だったのに対し,平成11年度は21
24万1820円と3269万7555円減少し,更に平成12年度はゼ
ロになって,平成10年度に対し5393万9375円減少していること
が認められるから,これらの数値に基づき,平成11ないし14年度の売
上低下額を推計すると,以下のとおり合計1億9451万5680円とな
るが,本件装置の瑕疵がなければ,上記4年の期間中,継続的に,平成1
0年度と同様の高水準の売上が確保できたか不明確である点も考慮すれば,
本件装置の性能不足との因果関係が肯定できる売上低下の範囲は,上記金
額の約8割に当たる1億5000万円と認めるのが相当である。
32,697,555+53,939,375×3=194,515,680
イ次に,B5についてみるに,甲72,106の1ないし15によれば,
同社に対する組合の売上は,平成10年度1億7001万4720円だっ
たのに対し,平成11年度は8550万2640円と8451万2080
円減少し,平成12年度は2639万6323円と,平成10年度に対し
1億4361万8397円減少していることが認められる。
一方,前記第3の4の引用に係る原判決の認定のとおり,組合のB5に
対する平成12年度中の売上減少の中には,同年度に被控訴人A1,同A
2,同A3及び同A4が行なった組合に対する信用毀損行為等に起因する
部分が含まれているから,その点及び同被控訴人らの責任の認められる範
囲(平成12年6月から平成13年8月までの間の全売上低下の5割分。
原判決78頁参照)も考慮して,平成12年度以降の本件性能不足に起因
する売上減少額については,これを上記1億4361万8397円の約4
割に相当する5700万円と見積もるのが相当である。
そこで,以上の数値に基づき,平成11ないし14年度の売上低下額を
推計すると,以下のとおり合計2億5551万2080円となるが,同じ
く,本件装置の瑕疵がなければ,上記4年の期間中,継続的に,平成10
年度と同様の高水準の売上が確保できたか不明確である点も考慮すれば,
本件装置の性能不足との因果関係が肯定できる売上低下の範囲は,上記金
額の約8割に当たる2億円と認めるのが相当である。
84,512,080+57,000,000×3=255,512,080
(3)上記(2)の本件装置の性能不足との因果関係が肯定される取引先両社に対
する売上低下額の合計は,3億5000万円(上記(2)ア,イの合計額)とな
るから,組合の失った利益を算定するには,これに組合の粗利益率を乗じ,
一方,売上の減少により支出を免れた変動経費率を控除して計算するのが相
当であるが,前記第3の4の引用に係る原判決の認定事実によれば,前者を
25パーセント,後者を11パーセントと推認することができる。
(4)そして,以上に基づき,本件装置の性能不足との因果関係が認められる組
合の喪失利益の金額を計算すると,以下のとおり,4900万円となって,
組合が請求をしている性能違反に基づく損害賠償請求の元金額3987万3
180円を上回るから,その余の点について検討するまでもなく,被控訴人
会社は,債務不履行に基づく損害賠償として,組合に対し,上記3987万
3180円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成13年5月24日か
ら支払済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務がある
というのが相当であり,結局,組合の上記請求は全部理由がある。
350,000,000×(0.25−0.11)=49,000,000
なお,鶉卵の1次ボイル槽から2次ボイル槽への移送方法についての瑕疵
及び,殻剥装置のモーターのVベルトのスリップに関する瑕疵が肯定される
ことについて,原判決87頁から89頁にかけてのイ,ウ記載のとおりであ
るが,上記のとおり,既に請求を上回る金額が認められるので,それについ
ての金額の検討は省略する。
第5結論
以上によれば,(ア)組合の本件不法行為に基づく損害賠償請求(当審での拡張
後のもの)及び組合の性能違反に基づく損害賠償請求(当審での減縮後のもの)
は,いずれもすべて理由があるから,組合の控訴並びに当審における請求の拡張
及び減縮に基づき,これと異なる原判決を変更するとともに,(イ)本件不法行為
に基づく損害賠償請求に関する被控訴人A1,同A2,同A3及び同A4の控訴
並びに,性能違反に基づく損害賠償請求に関する被控訴人会社の控訴をいずれも
棄却することとし,(ウ)被控訴人A3及び同A4の乙事件請求は理由がなく,こ
れを棄却した原判決は相当であるから,同事件に関する被控訴人A3及び同A4
の控訴を棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官岡光民雄
裁判官夏目明徳
裁判官山下美和子

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