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平成19年12月11日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成18年(ワ)第14144号意匠権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成19年10月11日
判決
原告岡田装飾金物株式会社
訴訟代理人弁護士福原哲晃
中嶋勝規
補佐人弁理士鍬田充生
阪中浩
被告フェデポリマーブル株式会社
訴訟代理人弁護士久田原昭夫
久世勝之
訴訟代理人弁理士永田元昭
補佐人弁理士永田良昭
西原広徳
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1被告は,別紙被告製品目録記載の商品を製造し,譲渡し,輸入し,譲渡のた
めに展示してはならない。
2被告は,その占有する前項記載の各商品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,313万2000円及びこれに対する平成19年1月
16日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
4訴訟費用は被告の負担とする。
5仮執行宣言
第2事案の概要
本件は,カーテンランナーに関する後記意匠権を有して同商品を製造販売す
る原告が,①被告の製造販売するカーテンランナー(後記イ号製品)の意匠は
原告の前記意匠権に係る登録意匠に類似し,その製造販売は前記意匠権を侵害
する,②原告のカーテンランナー(後記原告商品1ないし3)の形態は原告の
商品等表示として周知性を有するところ,被告のカーテンランナー(後記イ号
ないしハ号製品)の形態は原告のカーテンランナーの形態と類似し,これと混
同を生じさせるおそれがあるから,その譲渡等は不正競争行為(不正競争防止
法2条1項1号)に該当する,③被告のカーテンランナー(後記イ号ないしハ
号製品)の形態は原告のカーテンランナー(後記原告商品1ないし3)の形態
を模倣したものであるから,その譲渡等は不正競争行為(同3号)に該当する
として,被告に対し,被告のカーテンランナーの製造譲渡等の差止め及びその
廃棄(意匠法37条1項及び2項,不正競争防止法3条1項及び2項)並びに
損害賠償(意匠権侵害につき民法709条,不正競争行為につき不正競争防止
法4条)を請求した事案である。
1前提事実(証拠の掲記がないものは争いがないか弁論の全趣旨により認めら
れる)。
(1)原告の意匠権(甲8,9)
原告は,次の意匠権を有している(以下,この意匠権を「本件意匠権」と
いい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。。)
出願日平成15年9月11日
出願番号意願2003−31098
登録日平成16年8月6日
登録番号第1218001号
意匠に係る物品カーテンランナー
登録意匠の内容別紙意匠公報記載のとおり
(2)原告によるカーテンランナーの製造販売
原告は,次の商品名に係るカーテンランナーを製造販売している。
アワンタッチランナーS(以下「原告商品1」という)。
イワンタッチランナーA(以下「原告商品2」という)。
ウD30ワンタッチランナー(以下「原告商品3」という)。
(3)被告によるカーテンランナーの製造販売
被告は,平成16年10月ころから,別紙被告製品目録記載のカーテンラ
ンナー(イ号ないしハ号製品)を製造販売している。
2争点
(1)意匠権侵害関係
アイ号製品の意匠は本件登録意匠に類似するか。
イ本件意匠権の意匠登録は無効審判により無効とされるべきものか。
(2)不正競争防止法2条1項1号違反関係
ア原告商品1ないし3の形態は原告の商品等表示として周知なものか。
イイ号ないしハ号製品の形態はそれぞれ原告商品1ないし3の形態に類似
し,混同のおそれがあるか。
(3)不正競争防止法2条1項3号違反関係
イ号ないしハ号製品の形態はそれぞれ原告商品1ないし3の形態を模倣し
たものか。
(4)全請求共通
損害額
第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)ア(イ号製品の意匠と本件登録意匠の類否)について
【原告の主張】
(1)基本的主張
ア本件登録意匠は,以下の構成を有する。
カーテンレール上を転動して走行可能なローラ部材,及びローラ部材を
支持し,平面形状が,長方形の角が丸まった四角枠状の帯状支持部を有す
る支持部を備えたローラ部(ランナー部)と;全体として縦長のリング状
であり,側部に開放部を有し,かつ丸棒状のC字状フック部本体,及び前
記開放部を開閉可能な開閉桿とを備え,カーテンを吊持するためのフック
部と;前記支持部と前記フック部とを連結するための円柱状連結部で構成
された連結部とを備えており,フック部が全体の長さの半分よりも若干大
きく形成されている。
本件登録意匠では,円柱状連結部が水平方向に360°にわたって回転
可能であり,フック部が連結部に対して揺動可能である。そのため,二条
のカーテンレールにローラ部(ランナー部)のローラ部材を掛け渡すとと
,,もにカーテンの装着孔に開閉部材を介してフック部を効率よく掛止でき
カーテンを吊すことができる。
イイ号製品は,以下の形態を有する。
カーテンレール上を転動して走行可能なローラ部材,及びローラ部材を
支持し,平面形状が長方形の角が面取りされた略八角枠状の帯状支持部を
有する支持部を備えたローラ部(ランナー部)と;全体として縦長のリン
グ状であり,側部に開放部を有し,かつ両側面に平面が形成された概略C
字状のフック部本体,及び前記開放部を開閉可能な開閉桿とを備え,カー
テンを吊持するためのフック部と;前記支持部と前記フック部とを連結す
るための円柱状連結部及び連結環で構成された連結部とを備えており,フ
ック部が全体の長さの半分よりも若干大きく形成されている。
イ号製品では,円柱状連結部が水平方向に360°にわたって回転可能
であり,連結環が円柱状連結部に対して揺動可能であり,フック部が連結
環に対して90°の角度で揺動可能である。そのため,二条のカーテンレ
ールにローラ部(ランナー部)のローラ部材を掛け渡すとともに,カーテ
ンの装着孔に開閉部材を介してフック部を効率よく掛止でき,カーテンを
吊すことができる。
ウ本件登録意匠とイ号製品の意匠とを対比すると,ランナー部(ローラ部
及び支持部)及び支軸部(円柱状連結部)の形態が共通し,(a)本件登録
意匠は円柱状連結部にフック部本体上部のU字状部が挿入されているのに
対して,イ号製品の意匠は円柱状連結部とフック部との間に連結環が介在
する点(連結環の有無,(b)本件登録意匠はフック部本体が丸棒状であ)
り,フック部の上部がU字状に湾曲し,一方の側部に開放部が形成されて
いるのに対して,イ号製品の意匠はフック部本体の両側面に平面が形成さ
れ,フック部の上部に直線状で扁平な水平部を有し,この水平部の自由端
から開放部が形成されている点(フック部の形状,(c)帯状支持部の平)
面形状が,本件登録意匠では角が丸まった略長方形の四角枠状であるのに
対して,イ号製品の意匠では長方形の角が面取りされた略八角枠状である
点で相違する(ランナー部の平面形状。)
しかし,本件登録意匠とイ号製品の意匠との共通点,すなわちランナー
部(ローラ部及び支持部,円柱状連結部,及び縦長リング状のフック部)
の構成とその形態は,実質的に同一といえるほど酷似している。しかも,
これらの共通点は,商品の形態全体に対して視覚的に大きな割合を占める
から,両意匠の類否判断に支配的な役割を果たす。
他方,相違点(a)については,イ号製品の意匠の連結環はサイズが小さ
く全体に占める割合が小さいから,商品全体に対して与える視覚的印象が
弱い。したがって,フック部に比べて面積又は容積的に小さい連結環の形
態について視覚的に看者の注意を惹く程度は小さい。また,相違点(b)に
ついては,イ号製品の意匠も開閉桿が延びて開放部を閉じて,全体として
は縦長の閉じた環状のフック部の形態であるため,全体としてC字状フッ
ク部の概略形状を呈する。しかも,前記共通する商品の形態による印象が
大きいから,全体としてみたとき,フック部の相違点も視覚的には弱い印
象しか与えない。さらに,相違点(c)については,本件登録意匠の平面形
状は,長方形状の四角枠状で角部が丸まっているから,イ号製品の意匠の
(),平面形状角が面取された八角形状と極めて類似していることに加えて
使用態様や取引の態様に鑑みても,平面形状は看者の注意を惹く部位では
ない。さらに,これらの相違点を考慮しても,商品全体としては,前記共
通点が圧倒的な印象又は共通感を生じさせるから,イ号製品の意匠が本件
登録意匠に対して非類似の意匠を形成することもない。
したがって,イ号製品の意匠は本件登録意匠と類似し,本件意匠権を侵
害する。
(2)被告の主張に対する反論
ア本件登録意匠の要部について
被告は「ステージランナー」の存在を主張する。しかし,本件登録意,
匠の意匠登録出願前に存していたカーテンランナーでは,フック部が存在
せず,需要者自らが別売りのS字状フックを選択・購入し,その上部の∩
字部をランナー部の連結環に引っ掛け,下部のU字部をカーテンの挿入孔
に通して使用されていたのであって,S字状フックに挿通孔を形成し,こ
の挿通孔に連結環を挿通していたのではない。それに対して本件登録意匠
は,初めてランナー部に対してフック部を回動及び揺動可能に挿通した点
に留意すべきである。また,本件登録意匠において,ランナー部とフック
部とは,ほぼ同等の大きさであり,上下にバランスよく配置されている。
そして,本件登録意匠は,このようなランナー部とフック部との組合せに
より,意匠的に優れるだけでなく,カーテンの挿入孔に対する装着性を大
きく改善し,使い勝手に極めて優れているという新たな価値を生み出して
いるのである。
このような点から,本件登録意匠の要部は,ランナー部とフック部との
組合せにおいて,ランナー部に対してフック部を回動及び揺動可能にバラ
ンスよく組み合わせた形態にある。
被告は,需要者がフックに注目することを前提にしてフック部の形状が
要部になると主張する。しかし,本件登録意匠ではフックが取替え不能で
あるから,フックを需要者が選定・購入することを理由に需要者がフック
に注目するとはいえない。また,カーテンランナーの使用時にはランナー
部はカーテンレールの内部に隠れるとしても,取引段階では,カーテンラ
ンナーは,通常,カーテンレールとは別個に単独で取引され,需要者は,
独立して販売されるカーテンランナー同士を比較して購入するのであるか
ら,カーテンランナーの実際の使用時を根拠に,フックに注目するとの被
告の主張は全く理由がない。
さらに被告は,原告が審査段階で提出した意見書の記載を指摘するが,
同意見書は,引用された意匠に対する類否を述べているにすぎず,イ号製
品との関係で意匠の類否を述べているのではないから,意見書での主張が
そのままイ号製品との類否判断に当てはまることはない。
イ類否について
イ号製品の意匠は,本件登録意匠と物品を同一とし,かつ本件登録意匠
と基本的構成態様が略同一であるため,イ号製品の意匠の要部もランナー
部とフック部との同様の組合せにあることは明らかである。さらに,両意
匠において,連結環の有無が意匠の要部に大きな影響を与えず,ランナー
部及びフック部の形態の差異も微差であるため,両意匠の要部は共通し,
かつ類似する。すなわち,両意匠を全体観察した場合において,両意匠で
共通するランナー部とフック部との組合せが意匠の形態全体に対して視覚
的に大きな割合を占めるのに対して,両意匠の差異点については視覚的に
弱い印象しか与えない。
したがって,イ号製品の意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意
匠の範囲に属する。
【被告の主張】
(1)本件登録意匠の構成態様は,以下のランナー部とフックとからなってい
る。
①カーテンレール上を走行する,ローラー,ローラー軸,及びローラー
支持体,同支持部の台部の装着孔に挿入された支軸とからなるランナー

②前記支軸にある装着孔に挿通されているフック
さらに,本件登録意匠のフックはいわゆる縦長のC字形状を有するCリ
ンク(カラビナ)の形状を有している。
()本件登録意匠の要部は次のとおりである。2
ア支軸の装着孔に直接フックを挿通する構成
,「」(,)本件登録意匠のランナー部は商品名ステージランナー乙23
として,遅くとも昭和59年にはエスエム工業株式会社によって製造販
売された,古くからある基本的な形状のカーテン用ランナーであり,カ
ーテン及びカーテンレールの設置をなす内装業者等の需要者にとり広く
知られたものとなっている。この「ステージランナー」は支軸にある装
着孔に連結環が挿通されている。同ランナーの購入者は,支軸の装着孔
に挿通された連結環に,購入者が選択したフックを付けて,そのフック
によりカーテンを吊持するのである。
本件登録意匠は,この従来からある「ステージランナー」と,ランナ
ー部の構成態様を共通にしている。そのため,本件登録意匠のランナー
部には新規な創作部分といえるものはなく,需要者の注意を惹くものと
いうことはできない。
本件登録意匠と「ステージランナー」との相違点は「ステージランナ,
ー」では,支軸の装着孔に挿通されているのが連結環であるのに対して,
本件登録意匠では,連結環でなくフックが直接支軸の装着孔に挿通され
ていることである。
したがって,本件登録意匠の新規な創作部分といえるのは,連結環を
廃して,支軸の装着孔に連結環に替えて直接フックが挿通されていると
いう構成態様である。
イCリンク型のフックの形状
また通常,ランナーにカーテンを吊持させるフックは,ランナーの購
入者が別の部品として購入し,連結環に装着するものである。本件登録
意匠では,連結環をなくして,フックが連結環の挿通されていた支軸に
直接装着されているのであり,カーテンランナーの用途,使用態様に照
らしても,支軸の装着孔に直接フックが挿通されているという構成は,
需要者の注意を惹くところである。
さらに,需要者は,カーテンを吊持するフックを自ら選定してきたの
であり,その選定に際しては,カーテンの形状,重量その他の要素を考
慮して決めることになる。したがって,需要者は,フックにどのような
形状のものを使用しているのかに当然のことながら着目し,フックの形
状も需要者の注意を惹くことになる。その上,カーテンランナーが実際
に使用された場合,原告カタログにも示されているように,ランナー部
はカーテンレールの内部に隠れており,実際に見える部分の大半はフッ
クなのであり,その点からもフックの形状に需要者は注目することにな
る。
また,本件登録意匠全体においても,フックが占める長さにおける割
合が大きく,実際にも目に付く部分となっている。
そして,本件登録意匠は,このフックにつき,いわゆる縦長のC字形
状を有するCリンク(カラビナ)の形状を有するものを使用しており,
この構成は本件登録意匠の要部をなしている。
このCリンクの形状について,原告は本件登録意匠にかかる出願につ
いての拒絶理由通知に対する平成16年5月14日付意見書(乙4)に
おいても,本件登録意匠に係る「カーテンランナー」の全体形状の美感
が,Cリンク型のフックの特異な形状,そしてそのフックが全体の下半
分を占めており,かつローラー部の下部支軸に挿通されていることによ
り生み出されているとしているのである。
ウ以上から,本件登録意匠の要部は,①ランナー部の支軸の装着孔に連
結環を介することなく直接フックが挿通されている形態,②そのフック
の形状が上下にU字形コーナー部を有する縦長のCリンクという形態に
あるというべきである。
()本件登録意匠とイ号製品の意匠との間の相違点は次のとおりである。3
ア支軸とフックにおける相違
イ号製品の意匠は,①カーテンレール上を走行する,ローラー,ロー
ラー軸,及びローラー支持体,同支持部の台部の装着孔に挿入された支
軸とからなるランナー部,②前記支軸の装着孔に挿通されている連結環,
③連結環に穿設されている装着孔に挿通されているフックからなってお
り,ランナー部が連結環を介してフックと繋がっているという形態をと
っている点で本件登録意匠と相違している。
イフックにおける構成態様の相違
本件登録意匠のフックは,丸棒体で上下にU字形コーナー部を有する
縦長のC字状に形成された形態であり,それが直接支軸の装着孔に挿入
されている。これに対し,イ号製品の意匠のフックは,断面扁平な棒体
で概略J字状に形成され,かつ連結環が挿通される装着孔がJ字の上部
にある他より更に扁平に加工されている水平部分に設けられている。
ウランナー部平面形状の相違
本件登録意匠は,ランナー部の平面形状が丸みを帯びた形状であるの
に対し,イ号製品の意匠は,ランナー部の平面形状は直線的なラインで
構成された八角形をなしている。
()本件登録意匠とイ号製品の意匠との類否は次のとおりである。4
前記()ア及びイの相違点はいずれも前述した本件登録意匠の要部に関す3
るものである。そして,本件登録意匠では,ランナー部とフックがダイレ
クトに繋げられた構成となっており,これによりランナー部とフックが近
接している。このため,本件登録意匠は,ランナー部とフックとの間の一
体的な堅固な印象を与える美感となっている。また,フックの形状が上下
対称で縦長のC字状であるため,フックがスマートな美感を与えるものと
なっている。
他方,イ号製品の意匠においては,ランナー部に連結環を繋げたありふ
れた形状に,フックが繋げられたという構成となっている。連結環の存在
により,ランナー部とフックが離間しており,フックがランナー部に対し
て自由に動作する軽快な印象を与える。また,フックそのものの形状も,
J字状で上部は∩字状ではなく水平となって上下非対称であり,本件登録
意匠よりも縦が短く横が広い形状である。このため,イ号製品の意匠のフ
ックは,ゆったりとした美感を与えるものとなっている。
以上のように,イ号製品の意匠は,本件登録意匠の要部において顕著な
相違点があり,美感を異にするので,本件登録意匠とは類似しない。
また,原告は本件登録意匠に関する前記意見書において,ランナー部の
支持部の形状を丸みのある曲線で形成することを強調している。したがっ
て,この点についても,原告の言うところに従えば,顕著な相違があると
いうべきであり,イ号製品の意匠は,本件登録意匠と類似していないとい
うことになる。
2争点()イ(登録無効)について1
【被告の主張】
本件登録意匠の「ランナー部」は,本件登録意匠の意匠登録出願前であ
る平成3年4月にエスエム工業株式会社が発行したカタログ(乙6)に掲
載されていた「ステージランナーS(以下「公知意匠1」という)の「ラ」。
ンナー部」と変わるところがない。また,本件登録意匠の「フック」は,
平成10年12月15日に公開された特開平10−331833号公報(乙
7)の図4(以下「公知意匠3」という)に掲載されている「Cリンク」。
(同公報には「連結環(所謂カラビナ」と記載されている)と変わるとこ)
ろがない。そうすると,本件登録意匠は,公知意匠1のステージランナー
Sにおける「連結環」を,用途に応じて公知意匠3の「Cリンク」に置換
したにすぎないものである。
そして,このように「ランナー部」を共通にして「フック」部分や「連
結環」部分を用途に応じて置換することは,当業者にとってありふれた手
法である。すなわち,公知意匠1の「支軸」及び「連結環」を「フック」
に置換したものについては,上記カタログに掲載されているステージHラ
ンナーが存在し,原告商品にも「ランナー部」が共通し「フック」の異な
る4種類の商品が存在している。さらに,原告カタログに,D40交叉ラ
ンナーロングの「ランナー部」をステージランナータイプに置換すること
が可能と記載されている(甲3。)
したがって,本件登録意匠は,公知意匠1,3に基づいて容易に創作で
きた意匠であるから,本件意匠権に係る意匠登録は無効にされるべきもの
であって,原告による権利行使は制限されるべきものである。
【原告の主張】
争う。
3争点()ア(原告商品1ないし3の形態の周知商品等表示性)について2
【原告の主張】
()原告商品1ないし3の商品形態は次のとおりである。1
ア原告商品1の形態は,別紙目録(一)の図面記載のとおりであり,カ
ーテンレール上を転動して走行可能なローラ部材,及びローラ部材を支
持する支持部を備えたローラ部(ランナー部)と;全体として縦長のリ
ング状であり,側部に開放部を有し,かつ両側面に平面が形成された円
柱状フック部本体,及び前記開放部を開閉可能な開閉桿とを備え,カー
テンを吊持するためのフック部と;前記支持部と前記フック部とを連結
するための円柱状連結部で構成された連結部とを備えており,フック部
が全体の長さの半分よりも若干大きく形成されている。
原告商品1は,円柱状連結部が水平方向に360°にわたって回転可
能であり,フック部が連結部に対して揺動可能である。そのため,二条
のカーテンレールにローラ部(ランナー部)のローラ部材を掛け渡すと
ともに,カーテンの装着孔に開閉部材を介してフック部を効率よく掛止
でき,カーテンを吊すことができる。
イ原告商品2の形態は,別紙目録(二)の図面記載のとおりであり,カ
ーテンレール上を転動して走行可能な一対のローラ部材,及びローラ部
材を支持する支持部を備えたローラ部(ランナー部)と;全体として縦
長のリング状であり,側部に開放部を有し,かつ両側面に平面が形成さ
れた概略C字状のフック部本体,及び前記開放部を開閉可能な開閉桿と
を備え,カーテンを吊持するためのフック部と;前記支持部と前記フッ
ク部とを連結するための円柱状連結部で構成された連結部とを備えてお
り,フック部の幅が前記ローラ部(ランナー部)の幅よりも若干大きく,
フック部の長さが全体の半分よりも若干大きく形成されている。
原告商品2は,円柱状連結部が水平方向に360°にわたって回転可
能であり,フック部が連結部に対して揺動可能である。そのため,カー
テンレールにローラ部(ランナー部)のローラ部材を掛け渡すとともに,
カーテンの装着孔に開閉部材を介してフック部を効率よく掛止でき,カ
ーテンを吊すことができる。
ウ原告商品3の形態は,別紙目録(三)の図面記載のとおりであり,ロ
ーラ部(ランナー部)が原告商品2よりも小さい点を除いて,原告商品
2と同様の形態を備えている。
()原告商品1ないし3の形態は,次のとおり原告の商品等表示として周知2
性を有している。
ア原告商品1及び2は,平成15年11月以降の原告のカタログに掲載
されるとともに「ワンタッチランナーS「ワンタッチランナーA」の」,
商品名で製造販売されている。原告商品3は,平成16年3月頃以降の
カタログに掲載され「D30ワンタッチランナー」の商品名で販売され,
ている。
原告商品1ないし3を利用するのは,工場内や講堂,体育館等の施設
に緞帳や間仕切りを施工することとなるカーテン工事業者である。これ
ら施工を行うカーテン工事業者が,原告のようなカーテンランナーメー
カーのカタログを見た上で,当該設備に利用する商品の発注を行うので
ある。
原告商品1ないし3と競合する業務用のカーテンレール及びカーテン
ランナーの製造メーカーは,全国でわずか4社のみであり,そのうち原
告と被告の2社で7割から8割のシェアを占めている。また,原告商品
1ないし3のようなワンタッチ式カーテンランナーを製造するメーカー
は原告と被告の2社に過ぎない。
イ原告は,原告商品1及び2については平成15年11月以降,原告商
品3については平成16年3月以降,原告が発行するカタログに掲載し
て,これらカタログを全国の問屋やカーテン施工業者に配布している。
カタログの発行部数は,平成15年11月発行分が6000部,平成1
6年3月発行分が4000部,平成17年2月発行分が4000部,同
年7月発行分が8000部,平成18年1月発行分が8000部,同年
7月発行分が8000部,平成19年4月発行分が1万部である。
また原告は,原告商品1ないし3を発表するたびに,発行部数410
0部のテント工連新聞及び同3000部の産繊新聞といった業界紙に広
告宣伝を掲載し,以後毎号広告宣伝を掲載している。
さらに,原告は平成15年11月以降,多数の原告商品1ないし3を
継続的に販売してきている。
ウこのように,カーテンランナーの市場がかなり狭いという特殊な分野
の中で,原告の長年に亘る実績と継続的な宣伝広告活動に加えて,他の
カーテンランナーに比して独自で独特な形態的特徴により,原告商品1
ないし3の形態は商品表示性を取得するとともに,周知性を獲得してい
る。
【被告の主張】
(1)争点(1)アに関する被告の主張のとおり,原告商品1ないし3のランナー
部は従前より使用されていたありふれた形態のものである。そして,カーテ
ン用ランナーは,本来そこにフックを取り付けてカーテンを吊すものである
から,そこにフックが使用されることも当然の形態である。そして,そのフ
ックの形状もCリンク(カラビナ)形状であり,これまた何ら特別な形状の
ものではない。したがって,原告商品の商品形態は,何ら特異なものを含む
わけではなく,問屋を含む需要者にとってありふれたものであり,その形態
によって識別ができるものとは言い難い。
原告商品1ないし3によって,S字状フックを取り付ける面倒な施工業者
の作業をなくすことができるとしても,それは原告商品1ないし3の機能に
着目しているのであって,その形態に着目しているのではない。実際にエン
ドユーザーにとっては,その用途に応じたカーテン用ランナーの機能が重要
なのであり,その形態そのものは意味を持たない。このことから,原告商品
の形態には識別性がないことは明らかである。
(2)また,原告商品1ないし3のエンドユーザー及び問屋においては,原告
のカタログをみて,原告商品の発注を行なうのであり,原告はカタログにお
いて注文を必ず品番,品名で行うよう求めているのであるから,エンドユー
ザーにせよ問屋にせよ,原告の商品はカタログを通じて商品名や品番により
識別しているのであり,商品の形態に着目し原告商品を購入しているわけで
はない。
(3)さらに,原告の主張によれば,原告商品1及び2は平成15年11月,
同3は平成16年3月ころ製造販売を開始したとのことであり,他方イ号な
いしハ号製品は平成16年10月ころから製造販売していると主張してお
り,原告の主張によっても,被告が製造販売を開始したとされるまで1年に
満たない。したがって,原告商品1ないし3が日本全国の取引者や需要者に
広く認識されているということはできない。
(4)以上からすれば,原告商品1ないし3の商品形態は商品等表示性を有し
ないといわざるを得ないものである。
4争点(2)イ(類似性・混同のおそれ)について
【原告の主張】
(1)原告商品1の形態とイ号製品の形態との類似性
ア原告商品1の形態とイ号製品の形態とを対比すると,ランナー部(ロー
ラ部及び支持部)及び支軸部(円柱状連結部)の形態が共通し,(a)原告
商品1は円柱状連結部にフック部本体上部のU字状部が挿入されているの
に対して,イ号製品は円柱状連結部とフック部との間に連結環が介在する
点,(b)原告商品1はフック部の上部がU字状に湾曲し,一方の側部に開
放部が形成されているのに対して,イ号製品はフック部の上部に直線状で
扁平な水平部を有し,この水平部の自由端から開放部が形成されている点
で相違する。
しかし,原告商品1とイ号製品との共通点,すなわちランナー部(ロ
ーラ部及び支持部,円柱状連結部,及び縦長リング状のフック部の構成)
とその形態は,実質的に同一といえるほど酷似している。しかも,これ
らの共通点は,商品の形態全体に対して視覚的に大きな割合を占めるか
ら,両商品の類否判断に支配的な役割を果たす。
他方,相違点(a)については,イ号製品の連結環はサイズが小さく全体
に占める割合が小さいから,商品全体に対して与える視覚的印象が弱い。
したがって,連結環の形態が視覚的に看者の注意を惹く程度は小さく,
フック部に比べて面積又は容積的に小さい連結環により,イ号製品が原
告商品1と異なる商品として個別化できるものではないまた相違点(b)。,
については,イ号製品の販売形態も開閉桿が延びて開放部を閉じて,全
体としては縦長の閉じた環状のフック部の形態であるため,全体として
C字状フック部の概略形状を呈する。しかも,前記共通する商品の形態
による印象が大きいから,全体としてみたとき,フック部の相違点も視
覚的には弱い印象しか与えない。さらに,これらの相違点を考慮しても,
商品全体としては,前記共通点が圧倒的な印象又は共通感を生じさせる
から,イ号製品が原告商品1とは別異の商品として個別化できるもので
もない。
イさらに,原告商品1の形態は,従来のカーテンランナーにない形態で
あり,独特の形態的特徴を有している。すなわち,原告商品1が開発・
販売される以前は,ランナー部の連結環に需要者自らが選択した別売り
のS字状フックを付け,前記S字状フックの上部の∩字部を連結環に引
っ掛け,下部のU字部をカーテンの挿入孔に通して使用されていた。こ
れに対して,原告商品1はランナー部に対してフック部を回動及び揺動
可能に挿通した形態を備えたワンタッチ式カーテンランナーであり,当
業界において今まで全く存在しなかった商品である。
また,機能的にみると,連結環の有無に拘わらず,ランナー部に対し
てフック部があらゆる方向に自由に動作するのである。すなわち,原告
商品1は,フック部が水平方向に回動可能であるとともに左右(又は前
後)方向へも揺動可能であり,あらゆる方向に自由に向けることができ
る。一方,イ号製品において連結環は左右(又は前後)方向へ揺動させ
る機能しかないから,支軸とフック部との間に連結環が介在していたと
してもフック部の動作及び機能は同じである。
このように,原告商品1の形態的特徴は,ランナー部とフック部とを
組み合わせた形態にあり,イ号製品は,原告商品1において形態的又は
機能的に重要でない部材(連結環)を単に付加し,フック部のうち,形
態的特徴や機能に大きな影響を与えない部位に開放部や扁平部を形成す
るなどの微差に過ぎない改変を施しているに過ぎない。また,このよう
な相違点(ランナー部の支軸の装着孔に連結環を介することなく直接フ
ックが挿通されているか否か,開放部の位置や扁平部)は,商品の形態
的特徴及び機能の点から重要ではなく,原告商品1の類似の範囲を超え
てイ号製品を識別化又は個別化するものではなく,新たな商品価値を生
み出すものでもない。
ウしたがって,イ号製品の形態は原告商品1の形態と類似する。
(2)原告商品2の形態とロ号製品の形態との類似性
原告商品2の形態とロ号製品の形態とを対比すると,ランナー部(ロー
ラ部及び支持部)及び支軸部(円柱状連結部)の形態が共通し,(a)原告商
品2は円柱状連結部にフック部本体上部のU字状部が挿入されているのに
対して,ロ号製品は円柱状連結部とフック部との間に連結環が介在する点,
(b)原告商品2はフック部の上部がU字状に湾曲し,一方の側部に開放部が
形成されているのに対して,ロ号製品はフック部の上部に直線状で扁平な
水平部を有し,この水平部の自由端から開放部が形成されている点で相違
する。
しかし,上記共通点は商品の形態全体に対して視覚的に大きな割合を占
めるから,両商品の類否判断に支配的な役割を果たすのに対し,上記相違
点はいずれも商品全体に対して与える視覚的印象が弱く,また機能も実質
的に同一であることは,先に原告商品1とイ号製品との類似性について述
べたところと同様である。
したがって,ロ号製品の形態は原告商品2の形態と類似する。
(3)原告商品3の形態とハ号製品の形態との類似性
原告商品3の形態とハ号製品の形態とを対比すると,原告商品2の形態
とロ号製品の形態との間におけるのと同様の共通点と相違点がある。
したがって,ハ号製品の形態は原告商品3の形態と類似する。
(4)このようにイ号ないしハ号製品の形態は,原告の商品表示として業界内
で周知な原告商品1ないし3の形態と類似しており,またS字状フックの
取付けという従来の面倒な作業を排除してくれる点でも同様であるから,
需要者において混同のおそれがあるといえる。また実際にも,ハ号製品の
商品名で原告に対して発注がなされる等の混同事例も実在する。
【被告の主張】
(1)原告商品1ないし3のランナー部は,エスエム工業株式会社が遅くとも
昭和59年頃には既に製造販売をしていたステージランナー,ニューステ
ージランナーA,ニューステージランナーB,Qランナーのランナー部と
同一の形態を有している。このような従来から使用されてきた形態を有す
る部分によって商品の出所を需要者が判断することはないから,需要者は
原告商品1ないし3やイ号ないしハ号製品と同種の製品の取引において,
外観上の印象をフックの形状によって決定することになる。
以上からするならば,原告商品1ないし3の形態上の要部は,フックの
形状につき縦長のC字形状のCリンクで,Cリンクはランナー部とダイレ
クトに接続されているという点にあるというべきである。これに対して,
イ号ないしハ号製品では,フックはJ字状であってC字形状とは明らかに
異なっている。さらに,イ号ないしハ号製品のJ字状のフックはランナー
部の連結環を介して接続されており,原告商品においてフックはランナー
部の軸に直接接続されている点で異なっている。このような一見して明瞭
に相違する原告商品1ないし3とイ号ないしハ号製品の形態を類似のもの
とすることはできない。
(2)混同のおそれは争う。原告が指摘する混同事例は,原告の商品を被告の
商品と誤認したにすぎないし,問屋において形態が原因となって混同が生
じて誤発注に至ったとは考え難い。
5争点(3)(模倣性)について
【原告の主張】
争点(2)イに関する原告の主張のとおり,イ号ないしハ号製品の形態はそれ
ぞれ原告商品1ないし3の形態と酷似しており,それら商品の形態を模倣し
たものである。
【被告の主張】
争点(2)イに関する被告の主張のとおり,イ号ないしハ号製品の形態はそれ
ぞれ原告商品1ないし3の形態と類似しておらず,それら商品の形態を模倣
したものではない。
6争点(4)(損害額)について
【原告の主張】
(1)イ号製品について
ア被告は,平成16年10月から本訴提起(平成18年12月28日)
までにイ号製品を少なくとも3万個製造販売した。
イ第一次的主張(意匠法39条1項・不正競争防止法5条1項)
原告は原告商品1をカタログ価格(480円)の45%で販売し,利
益率は販売価格の20%を下らないから,原告の損害額は129万60
00円となる(480×0.45×0.2×30000。)
ウ第二次的主張(意匠法39条2項・不正競争防止法5条2項)
被告はイ号製品の販売により1個当たり少なくとも40円の利益を得
ているから,イ号製品の製造販売により被告が得た利益の額は120万
円となり(40×30000,これが原告の受けた損害の額と推定される。)
エ第三次的主張(意匠法39条3項・不正競争防止法5条3項)
被告はイ号製品を1個当たり198円で販売しているところ,原告が
本件意匠権の実施を許諾し,及び原告商品1の形態の使用を許諾する際
の許諾料は,販売価格の5%を下らないから,被告によるイ号製品の販
売について原告が受けるべき金銭の額は29万7000円を下らない(1
98×0.05×30000。)
(2)ロ号製品について
ア被告は,平成16年10月から本訴提起(平成18年12月28日)
までにロ号製品を少なくとも3万個製造販売した。
イ第一次的主張(不正競争防止法5条1項)
原告は原告商品2をカタログ価格(420円)の45%で販売し,利
益率は販売価格の20%を下らないから,原告の損害額は113万40
00円となる(420×0.45×0.2×30000。)
ウ第二次的主張(不正競争防止法5条2項)
被告はロ号製品の販売により1個当たり少なくとも34円の利益を得
ているから,ロ号製品の製造販売により被告が得た利益の額は102万
円となり(34×30000,これが原告の受けた損害の額と推定される。)
エ第三次的主張(不正競争防止法5条3項)
被告はロ号製品を1個当たり171円で販売しているところ,原告が
原告商品2の形態の使用を許諾する際の許諾料は,販売価格の5%を下
らないから,被告によるロ号製品の販売について原告が受けるべき金銭
の額は25万6500円を下らない(171×0.05×30000。)
(3)ハ号製品について
ア被告は,平成16年10月から本訴提起(平成18年12月28日)
までにハ号製品を少なくとも3万個製造販売した。
イ第一次的主張(不正競争防止法5条1項)
原告は原告商品3をカタログ価格(260円)の45%で販売し,利
益率は販売価格の20%を下らないから,原告の損害額は70万200
0円となる(260×0.45×0.2×30000。)
ウ第二次的主張(不正競争防止法5条2項)
被告はハ号製品の販売により1個当たり少なくとも23円の利益を得
ているから,ハ号製品の製造販売により被告が得た利益の額は69万円
となり(23×30000,これが原告の受けた損害の額と推定される。)
エ第三次的主張(不正競争防止法5条3項)
被告はハ号製品を1個当たり117円で販売しているところ,原告が
原告商品3の形態の使用を許諾する際の許諾料は,販売価格の5%を下
らないから,被告によるハ号製品の販売について原告が受けるべき金銭
の額は17万5500円を下らない(117×0.05×30000。)
【被告の主張】
争う。
第4当裁判所の判断
1争点(1)ア(イ号製品の意匠と本件登録意匠の類否)について
(1)証拠(甲8)によれば,本件登録意匠の構成態様は概ね次のとおりであ
ると認められる。
アランナー部は,(ア)カーテンレール上を転動可能な円柱状ローラーとロ
ーラー軸から成るローラー部と,(イ)ローラーを支持する,平面視で長方
形の角が丸まった四角枠状の帯状支持部と,帯状支持部の各短辺中央から
垂下して先端底面で連結する平板状湾曲支持部から成るローラー支持体
と,から成る。
イ支軸部は,円柱状の支軸がローラー支持体に下から装着されている。
ウフック部は,開放部を有する棒状体のC字状縦長フックが支軸部の装着
孔に挿通されており,全体の縦長さの半分よりも若干大きい。
,,(),(2)他方イ号製品の意匠は別紙被告製品目録の別紙図面1によれば
概ね次のとおりであると認められる。
,,アランナー部は帯状支持部が平面視で略八角形状になっている点以外は
本件登録意匠と同じである。
イ支軸部は,円柱がやや細い点以外,本件登録意匠と同じである。
ウフック部は,(ア)支軸部の装着孔に連結環の上側が挿通され,(イ)連結
環の下側がフックに挿通されており,(ウ)フックは,断面略四角状で,上
辺を水平状とし,側辺から上辺にかけてJ字状とし,J字状の先端と上辺
,。との間に開放部が設けられており全体の縦長さの半分よりも若干小さい
(3)以上によれば,本件登録意匠とイ号製品の意匠とは,ランナー部と支軸
部の構成はほぼ共通しているが,フック部の構成において相違していると認
められる。
(4)そこで,本件登録意匠とイ号製品の意匠との類否について検討する。
ア証拠(乙3)によれば,本件登録意匠の意匠登録出願の前である昭和5
9(1984)年10月に発行されたエスエム工業株式会社の「オートン
/工事用レールカタログ」に掲載されたカーテンランナーである「ステー
ジランナー」の意匠は,ア:本件登録意匠と同じ形態のランナー部と,イ
:本件登録意匠よりやや小さな支軸部と,ウ:支軸部の装着孔に挿通され
た連結環から成るものであることが認められる。そして,このうち支軸部
,,における大きさの相違は微差にすぎないから本件登録意匠の構成のうち
ランナー部と支軸部の構成は上記「ステージランナー」も具備する公知の
ものであったということができる。そして,このことに上記カタログの発
行時期を併せ考えると,本件登録意匠のランナー部及び支軸部の構成は,
本件登録意匠の意匠登録出願の前から,カーテンランナーが有するありふ
れたものであったと推認することができる。
そうすると,本件登録意匠のうちのランナー部及び支軸部の構成は,需
要者の注意を惹く特徴的部分(いわゆる要部)とはいえない。
イ証拠(甲10及び17,乙3,5の各号及び6)及び弁論の全趣旨によ
れば,本件登録意匠の意匠登録出願がされる前のカーテンランナーは,前
記「ステージランナー」のように,ランナー部とやや小さな支軸部と,支
軸部に挿通された連結環とから構成されており,カーテンランナーの需要
者であるカーテン工事業者は,カーテンをカーテンランナーに取り付ける
に当たって別売りのS字状フック(Sカン」と呼ばれる)を購入し,「。
その上端を連結環に係合させ,その下端をカーテンの挿入孔(ハトメ」「
と呼ばれる)に挿通していたが,本件登録意匠に係るカーテンランナー。
では,ランナー部とフック部とを組み合わせて一体としたことから,カー
テンの取付けがS字状フックを用いることなくワンタッチで行うことがで
き,取付作業の簡素化・効率化が図られたことが認められる。
このことからすると,本件登録意匠は,ランナー部・支軸部とフック部
とを組み合わせて一体とした点において,従前のカーテンランナーにない
構成を有すると認められる。しかしながら,ランナー部とフック部とを組
み合わせること自体は,カーテンの取付けをS字状フックを用いることな
くワンタッチで行うための技術思想にすぎず,意匠権によって保護される
ものではない。したがって,本件登録意匠の特徴的部分(いわゆる要部)
は,上記構成にあるとはいえず,ランナー部とフック部とを組み合わせる
上での具体的構成の点にあるというべきである。
ウ以上を踏まえて検討するに,まず本件登録意匠とイ号製品に係る意匠と
の共通点であるランナー部及び支軸部の構成は,前記のとおりありふれた
構成であって,特段需要者の注意を惹くとはいえない。
他方,相違点について見ると,まず本件登録意匠では,支軸部を従来の
カーテンランナーの支軸部よりも大きくして,そこに直接フックを挿通さ
せているのに対し,イ号製品の意匠では,支軸部に連結環を挿通させる点
は従来のカーテンランナーと同じであり,その連結環にフックを取り付け
ている。これにより,イ号製品の意匠は,従来のありふれたカーテンラン
ナーにフックを取り付けたものとの印象を生じるのに対し,本件登録意匠
では,フックが連結環を介さずに直接支軸部に挿通されていることから,
ランナー部とフック部との連結に,従来にない一体的な印象が生じると認
められる。
また,フックについて見ると,本件登録意匠のC字状縦長フックは,世
上一般に「カラビナ」として知られる連結具の周知の形態(本件登録意匠
の意匠登録出願前に発行された特開平10−331833号公開特許公報
[乙7]の図4)をフック部に用いたものであると看取されるのに対し,
イ号製品の意匠では,開放部を有するフックである点で本件登録意匠のC
字状縦長フックと共通するが,断面略四角状で,上辺を水平状とし,側辺
から上辺にかけてJ字状とし,J字状の先端と上辺との間に開放部が設け
られている点で相違している。この相違点は,フックの全体的形状に係る
ものであり,フックの大きさも相まって,一見して目に付くものであると
いえる。
以上のとおり,本件登録意匠とイ号製品の意匠とは,その共通する点は
,,,ありふれた構成で需要者の注意を惹かないのに対しその相違する点は
ランナー部とフック部とを組み合わせる上での具体的構成という,本件登
録意匠の特徴点に関するものであるから,全体として相違点が共通点を凌
駕し,イ号製品の意匠は,本件登録意匠とは美感を異にするというべきで
ある。
エ以上に対し原告は,本件登録意匠の要部は,ランナー部とフック部との
組合せにおいて,ランナー部に対してフック部を回動及び揺動可能にバラ
ンスよく組み合わせた点にあると主張する。
しかし,ランナー部とフック部とを組み合わせたこと自体が意匠権によ
って保護されるものでないことは前示のとおりであり,またランナー部に
対してフック部を回動及び揺動可能に組み合わせるという点も,それはカ
ーテンをカーテンランナーに取り付けるに当たって求められる性能にすぎ
ないから,やはりそのような組合せ自体が意匠権によって保護されるもの
でない。さらに,ランナー部とフック部とをバランスよく組み合わせたと
の点は,両者がほぼ同じ大きさであるということから見たバランスの良さ
を主張する趣旨と解されるところ,このような大小関係もフック部の具体
的構成の要素であるという点で本件登録意匠の特徴の一つであるとはいえ
るが,フック部の大きさは,カーテンの取り付け易さやカーテンレールと
カーテンとの隙間距離設定等に応じて適宜定められるものであるから,本
件登録意匠のフックの大きさがよほど特異なものであれば格別,ランナー
部とフック部の大きさがほぼ同じであるという程度では,その点が共通し
ているとしても,需要者から見た両者の美感に格別の影響を及ぼすもので
はないというべきである。
オまた原告は,イ号製品の意匠における連結環は意匠全体に占める割合が
小さいから意匠全体に占める視覚的印象が弱く,その有無は意匠の類否判
断に影響を及ぼさないと主張する。
しかし,イ号製品の意匠における連結環は,高さ全体の約15%を占め
ており,意匠全体に占める割合が小さいとはいえない。また,イ号製品の
意匠のフックを除いた構成は,連結環のある従来からあるありふれたカー
テンランナーによるものであるのに対し,本件登録意匠のフックを除いた
構成は,連結環がない点で,従来とは異なる新規な印象を与えることは前
示のとおりである。したがって,原告の上記主張は採用できない。
カまた原告は,イ号製品の意匠のフックも,本件登録意匠のフックと同様
に,開閉桿が延びて開放部を閉じて,全体として縦長の閉じた環状のフッ
,。クの形態であり全体としてC字状フックの概略形状を呈すると主張する
しかし,先に述べたとおり,本件登録意匠のフック部が周知のカラビナ
そのままの形状をしているのに対し,イ号製品の意匠のフック部はそうで
はなく,上辺を水平状とし,側辺から上辺にかけてJ字状とし,J字状の
先端と上辺との間に開放部が設けられている点で特殊な形状をしているか
ら,開閉桿を有する構成は共通しているとしても,なお両者の間には看過
し得ない相違があるというべきである。
(5)以上によれば,イ号製品の意匠は本件登録意匠に類似しないというべき
であるから,原告の本件意匠権に基づく請求は,その余の点について判断す
るまでもなく理由がない。
2争点(2)ア(原告商品1ないし3の形態の周知商品等表示性)について
(1)認定事実
後掲各書証及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告商品1ないし3の形態
原告商品1ないし3の形態はそれぞれ別紙目録(一)ないし(三)の図
面のとおりである(甲1及び2)が,この構成態様は概ね次のとおりであ
る(ただし各部材の名称は必ずしもそれら図面にはよらない。。)
(ア)原告商品1(別紙目録(一))
aランナー部は,(a)カーテンレール上を転動可能な円柱状ローラー
とローラー軸から成るローラー部と,(b)ローラーを支持する,略四
角枠状の帯状支持部と,帯状支持部の各短辺中央から垂下して先端底
面で連結する平板状湾曲支持部から成るローラー支持体とから成る。
b支軸部は,円柱状の支軸が,ローラー支持体に下から装着されてい
る。
cフック部は,開放部を有する,断面が丸みを帯びた略四角形のC字
状縦長フックが,支軸部の装着孔に挿通されている。
(イ)原告商品2(別紙目録(二))
aランナー部は,(a)カーテンレール上を転動可能な一対のローラー
部材と軸部から成るローラー部と,(b)ローラー部材の軸部を回転可
能に支持する,縦長の略四角枠状支持部材とから成り,(c)略四角枠
状支持部材は,下部を残して両側部枠を覆う遮蔽域を備え,底部枠は
円盤状に形成されている。
b支軸部は,円柱状の支軸部が,環状リングによって略四角状支持部
材の円盤状底部枠に下から装着されている。
cフック部は,開放部を有する,断面が丸みを帯びた略四角形のC字
状縦長フックが,支軸部の装着孔に挿通されている。
(ウ)原告商品3(別紙目録(三))
原告商品2の形態とほぼ同様であるが,原告商品2に比べてランナー
部がやや小さい。
イ原告商品1ないし3の販売及び宣伝広告の状況
(ア)原告商品1及び2は,平成15年11月ころに発行された原告のカ
タログに掲載され,そのころに販売が開始された(甲1。)
この発売開始については,他の商品(天井ブラケット)の発売開始と
ともに,同月15日の産繊新聞の「新製品・新事業」欄に「岡田装飾,
金物ランナーとブラケットに新製品作業の簡素化狙い開発強度を
増し,劣悪な使用環境に対応」との見出しの下に,写真入りで記事とし
て掲載された(甲10。)
また同月10日のテント工連だよりにもOSカーテンレール岡,,「(
田装飾金物株式会社)から,D40型用の新型ランナーと新型ブラケッ
トが十一月一日より発売!」との見出しの下に,写真入りで記事として
掲載された(甲17。)
これらの記事では,原告商品1及び2の特徴として,先に本件登録意
匠について述べたのと同様に,ランナー部とフック部とを組み合わせて
構成したことから,カーテンの取付けがS字状フックを用いることなく
ワンタッチで行うことができ,取付作業の簡素化・効率化が図られたこ
とが記載されている。
なお原告商品1ないし3については,これ以外に,平成17年8月1
5日の産繊新聞において,他の商品の新規発売に付随して「ワンタッ,
チランナーが特許商品として登録された」と報じられた(甲12。)
(イ)原告商品3は,平成16年3月ころに発行された原告のカタログに
掲載され,そのころに販売が開始された(甲2。)
(ウ)原告のカタログは定期的に発行され,全国の問屋やカーテン施工業
者に配布されている。その発行部数は次のとおりである。
平成15年11月発行6000部(甲1)
平成16年3月発行4000部(甲2)
平成17年2月発行4000部(甲3)
平成17年7月発行8000部(甲4,7)
平成18年1月発行8000部(甲5)
平成18年7月発行8000部(甲6)
平成19年4月発行1万部(甲22)
原告のカタログには,原告商品1及び2が取付対象とするD40カー
テンレールについては計8種類の,原告商品3が取付対象とするD30
カーテンレールについては計3種類のカーテンランナーが掲載されてお
り,他にD40隙間カバーレール及びOSスライダーレールとそれら用
のカーテンランナーが掲載されている(甲1ないし7,22。)
(エ)原告は,業界紙である産繊新聞及びテント工連だよりに毎号広告を
掲載している(甲10ないし20)が,その広告中で原告商品1ないし
3も他の原告の商品と共に掲載されている。両紙はいずれも毎月1回発
行されるもので,発行部数は産繊新聞が3000部,テント工連だより
が4100部である。
もっとも上記広告においては,原告商品1ないし3が掲載されていな
いものもあり(証拠上認められるものとしては,甲10,11,14及
び15,原告商品1ないし3の広告が上記業界紙において毎号掲載さ)
れていたとは認められない。
ウその他の取引の実情
(ア)カーテンランナーを選定・購入するのは,工場や講堂等の施設に緞
帳や間仕切りを下請施工するカーテン工事業者である。原告は,問屋を
通じて,カーテン工事業者に原告商品1ないし3を販売している。
(イ)このような業務用のカーテンランナーを製造するメーカーは,国内
で原告及び被告を含めて4社あり,業務用帆布カーテンランナーについ
ては原告と被告とで大きなシェアを占めている。
(ウ)被告は,イ号製品ないしハ号製品を平成16年10月ころから製造
販売しているが,それ以前はランナー部とフック部とを組み合わせたワ
ンタッチタイプのカーテンランナーは,原告商品1ないし3以外に存し
なかった。
エ原告商品1ないし3の発売前のカーテンランナーの形態
昭和59年10月の時点で,エスエム工業株式会社から次のカーテンラ
ンナーが販売されていた(乙3。)
(ア)ステージランナー
この商品の形態は,先に争点(1)アについて述べたとおりであり,原
告商品1とほぼ同一の形態のランナー部及び支軸部を備え,支軸部の装
着孔に連結環を挿通した形態を有している。
(イ)ニューステージランナーA及びB
この商品の形態は,原告商品2とほぼ同一の形態のランナー部及び支
軸部を備え,支軸部の装着孔に連結環を挿通した形態を有している。
(2)商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的
を有するものではないが,商品の形態が同種商品とは異なる独自の特徴を有
しており,その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用されたり,
短期間であっても強力な宣伝広告がなされたり,大きな販売実績が上がる等
の事情により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所
を表示するものとして周知になる場合があり,そのような場合には,商品の
形態も不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商品等表示…として需要
者の間に広く認識されているもの」に該当するものと解される。以下,この
観点から検討する。
ア(ア)まず原告商品1ないし3の形態のうちランナー部及び支軸部の形態
は,従来から販売されていたステージランナーやニューステージランナ
ーA及びBにも備わっていたもので,ありふれた形態であるといえる。
,,「」また原告商品1ないし3のフック部の形態は従来からカラビナ
としてよく知られている連結具の形態である。
このように原告商品1ないし3の形態は,カーテンランナーとしてあ
りふれたランナー部及び支軸部の形態に,連結具として周知のカラビナ
の形態を組み合わせたものである。
(イ)ところで,原告商品1ないし3のようなランナー部とフック部とを
組み合わせたカーテンランナーは,原告商品1が発売される前には存在
しなかったのであり,このことからすると,原告商品1ないし3の形態
は,ランナー部とフック部とを組み合わせた基本的形態を備える点にお
いて,従来のカーテンランナーにはない新規な形態的特徴を有している
といえる。
しかしながら,このようにランナー部とフック部とを組み合わせた基
本的形態とすることは,カーテンランナーが,カーテンをカーテンレー
ルにS字状フックを用いることなくワンタッチで装着できるという機能
や効用を有するものとするために不可避的な形態であるといえる。そし
て,このように同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避の形態
をもって不正競争防止法2条1項1号の周知な商品表示とする場合に
は,同号が保護の目的とする出所表示機能の保護を超えて,当該種類の
商品の機能や効用を独占することを認めることとなるから,そのような
同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避の形態については,同
「」。,号にいう商品等表示に該当しないと解するべきであるそうすると
本件においては,原告商品1ないし3の形態のうちランナー部とフック
,,部とを組み合わせた基本的形態を備える点は上記の説示にかかわらず
同号の「商品等表示」たり得ないものというべきであり,原告商品1な
いし3の形態が周知な商品等表示といえるか否かは,ランナー部,支軸
部及びフック部のそれぞれの具体的形態及びそれらを組み合わせた具体
的形態について検討する必要がある。
(ウ)上記の観点からすると,原告商品1ないし3の形態のうち,ランナ
ー部及び支軸部の具体的形態は,従前から存したありふれた形態である
が,フック部の形態は,種々考えられる中から連結具として周知のカラ
ビナの形態をほぼそのまま流用した点において,なお同種の商品の機能
や効用を発揮するために不可避的とはいえない独自の形態的特徴を有す
ると認められるから,この点において,原告商品1ないし3の形態が,
全体として商品等表示性をおよそ認めることができない形態であるとは
いえない。
イしかし,このような原告商品1ないし3は,その発売以降,原告のカタ
ログに継続して掲載されているが,同じカタログには他の複数のカーテン
ランナーも掲載され,発売当初のカタログを除き,その中で特に原告商品
1ないし3のみが大きく取り上げられているということも見られない。
また,原告商品1ないし3が業界紙に記事として取り上げられたのも,
特許を取得したことを除けば発売当初の各1回のみであり,原告は同業界
紙に毎号広告を掲載しているが,それらにおいては他の原告の商品も同時
に広告の対象とされており,特に原告商品1ないし3が大々的に対象とな
っているものはなく,中には原告商品1ないし3が対象とされていないも
のも見られる。
さらに,原告商品1及び2が発売された平成15年11月から11か月
後の平成16年10月ころには,被告が同じくランナー部とフック部とを
組み合わせたワンタッチタイプのイ号ないしハ号製品を発売しており,原
告と被告とが国内のカーテンランナー業界において2社で大きなシェアを
有することからすると,被告のイ号ないしハ号製品の販売後は,単にラン
ナー部とフック部とを組み合わせたワンタッチタイプのカーテンランナー
というだけでは,原告の商品と被告の商品とを区別することは難しい状況
になったといえる。
そして,被告がイ号ないしハ号製品を発売するまでの間に,原告商品1
ないし3がどれほどの売れ行きを見せ,また需要者の注目を集めたのかに
ついては,これを認定できるだけの証拠が存しない。
ウ以上からすると,原告商品1ないし3は,その基本的形態には商品等表
示性を認めることができないものであり,加えて特段の強力な宣伝広告が
なされたともいえず,その販売量も明らかでないのであるから,カーテン
ランナーの需要者がカーテン工事業者という専門業者であることを踏まえ
ても,原告商品1ないし3の形態が,被告のイ号ないしハ号製品が発売さ
れるまでの間に,原告の出所を表示するものとして需要者の間に周知なも
のとなったとは認めることができず,イ号ないしハ号製品の発売から現在
までの間に周知性を獲得したとも認められない。
したがって,原告商品1ないし3の形態は,不正競争防止法2条1項1
号にいう「他人の商品等表示…として需要者の間に広く認識されているも
の」に該当しないから,すでにこの点において同号違反を理由とする原告
の請求は理由がない。
3争点(2)イ(類似性・混同のおそれ)について
(1)なお念のため,原告商品1ないし3の形態が原告の周知な商品等表示と
なったと仮定した場合について,原告商品1ないし3とイ号ないしハ号製品
との類似性について判断することとする。
(2)原告商品1の形態とイ号製品の形態の類似性について
アイ号製品の形態は,先に争点(1)アについて述べたとおりであり,両者
の形態は,ランナー部と支軸部の構成はほぼ共通しているが,フック部の
構成において相違していると認められる。
イところで,前記のとおり,原告商品1の形態のうち,ランナー部とフッ
ク部とを組み合わせた点は商品等表示たり得ないのであるから,イ号製品
の形態との類否の判断に当たっては,その部分以外の点で両者が類似する
か否かを検討する必要がある。
しかるところ,両商品はランナー部及び支軸部の形態を同じくしている
が,この点は従来のカーテンランナーも具備するありふれた形態にすぎな
いから,この点での類似性を重視することはできない。
他方,原告商品1とイ号製品とでは,ランナー部・支軸部とフック部と
の間に連結環を介在させている点とフックの形状において相違している。
この相違点は,先に争点(1)アについて述べたところと同様に,看過し得
ないものである。
したがって,原告商品1の形態とイ号製品の形態が類似するとはいえな
い。
(3)原告商品2の形態とロ号製品の形態の類似性について
先に原告商品1について述べたところからして,原告商品2の形態につい
ても,ランナー部とフック部とを組み合わせた点は商品等表示たり得ないの
であるから,ロ号製品の形態との類否の判断に当たっては,その部分以外の
点で両者が類似するか否かを検討する必要がある。
そして,ロ号製品の形態は,別紙被告製品目録中の別紙図面(2)記載の
とおりであると認められるところ,それによれば,原告商品2とロ号製品と
は,ランナー部と支軸部の構成はほぼ共通しているが,フック部の構成にお
,。いて原告商品1とイ号製品との相違点と同様の相違点があると認められる
そうすると,原告商品2とロ号製品の形態の類否についても,先に原告商
品1とイ号製品の形態の類否について述べたのと同様の趣旨で,両者が類似
するとはいえない。
(4)原告商品3の形態とハ号製品の形態の類似性について
原告商品3の形態は前記のとおりであり,また,ハ号製品の形態は,別紙
被告製品目録中の別紙図面(3)記載のとおりであると認められるところ,
両者の類否については,原告商品2とロ号製品の形態の類否について述べた
のと同様の理由により,両者が類似するとはいえない。
(5)以上より,イ号ないしハ号製品の形態は,原告商品1ないし3の形態に
類似しないから,この点でも不正競争防止法2条1項1号違反を理由とする
原告の請求は理由がない。
4争点(3)(模倣性)について
先に争点(1)ア及び争点(2)イについて述べたところからして,イ号ないしハ
号製品の形態は,原告商品1ないし3の形態と実質的に同一とはいえないこと
が明らかであるから,不正競争防止法2条1項3号違反を理由とする原告の請
求は理由がない。
5まとめ
以上によれば,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく
,,。いずれも理由がないからこれを棄却することとして主文のとおり判決する
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官田中俊次
裁判官高松宏之
裁判官西理香

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