弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人村上信金上告趣旨第一点について。
 所論は、原審において弁護人が主張した法律上犯罪の成立を阻すべき原由に対す
る判断が、原判決において示されていない違法があると主張する。原審第三回公判
調書には、「村上弁護人は弁論要旨に基き被告人の為め有利の陳述をし、被告人に
対して無罪の判決を求むと述べた」旨の記載があることは、所論の言うとおりであ
る。そして、右弁論要旨においては、被告人は激昂した二、三十名の朝鮮人を制止
しなかつたのではなく、制止ないし抑制については十分努力した、力の限り説得し
た、「幸にして被告が支部長であつたればこそ流血の惨を見なくて済んだのであり
ます」と述べている。そして、引続き「何人をこの場合被告の立場におきましても、
これ以上悪くなるとも決してよくはならなかつたのであります。換言すれば、被告
に是れ以上期待することはできなかつたのでありますから、……被告に刑事責任を
問うことは出来ないと固く信ずるものであります。即ち期待不可能性の理論よりい
たしまして被告は無罪ということに相成るのでございます」と結んでいる。所論は、
この点を捉えて刑訴三六〇条二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由
たる事実上の主張」に当ると言うのである。
 さて、原判決理由においては、「被告人は……右令状に捜索すべき場所として記
載された全部の場所にわたる捜索を拒否し、この間前記支部長室附近には、二、三
十名の支部員が群がり「生命にかけても見せるものか」などと口々に怒号し、その
一部の者は小児の頭ほどある大きな石塊をふり上げ「これで撲らなければ判らんだ」
と叫びながら、A警部補をめがけて投げつけるような態度を示したりしたのである
が、被告人はこのような情況を察知するや更に同警部補に対し「このとおり若い者
も絶対に承知しない、B事件やC事件の例もある、強いて捜索するなら実力をもつ
てこれを阻止するであろう」と腕をまくり拳を振つて高声に怒号して、あくまで令
状に示された捜索の実施を拒絶し、附近に群集している支部員の言動をあえて制止
することもなく、むしろその気勢に威力をかりてみずからもまた叙上の言辞を弄し
てA警部補らを脅迫し、もし強いて令状に記載された全部の場所にわたる捜索を強
行するときは、四囲の情況から判断して不測の流血事態を惹起すべきことを危倶さ
せた」旨を判示している。そこで、原審における弁護人の前記期待可能性の理論の
主張が、刑訴三六〇条第二項に該当するものとしてもこれに対する判断の判示方法
は、必ずしも常に弁護人の主張事実を掲げてこれに対し直接的に判断を示す方法を
採ることを要するものではなく、弁護人の主張する事実に関し却つて反対の事実を
認定して、間接的に主張否定の判断を示す方法を採ることも差支えがたいと言わね
ばならぬ。本件において原判決は、前述のごとく群集している部員の言動をあえて
制止することもなく、むしろその気勢に威力をかりてみずからも「強いて捜索する
なら実力をもつてこれを阻止するであろう」と腕をまくり拳を振つて高声に怒号し
て、あくまで令状に示された捜索の実施を拒絶した旨を判示しているのであるから、
間接的に弁護人の期待可能性の理論に基く事実の主張に対して否定の判断を示して
いるものと解するを相当とする。論旨は、それ故に理由がない。
 同第二点、第三点について。
 所論は、原審が判決をなすに当つて錯誤に陥つていたと主張するが錯誤に陥つた
と見るべき箇所の存しないことは前点における説明に照らしても明らかである。弁
護人は、原判決の認定しない事情を強調し独自の見解に立つて原判決を非難するに
過ぎないから、論旨は採ることを得ない。
 弁護人丹篤上告趣意について。
 所論は、判示の捜索令状の具体的内容は、原判決に挙げている証拠からは推知し
得ないから証拠説明はその理由を欠くものであると主張する。しかしながら、原審
において被告人に対して捜索令状の謄本は展示されているのであり、従つて原審公
判廷における被告人の供述中に現われる捜索令状は右捜索令状の謄本と同一内容の
ものを意味することは明白である。それ故判示の捜索令状の内容は、被告人の原審
公廷における供述を証拠として認められ得るわけである。されば、所論の証拠説明
を欠くことの非難は是認し難く、論旨は採るを得ない。
 同第二点について。
 原判決に挙げている証拠によつて、被告人が公務の執行たることを認識していた
ことは明瞭に認められるところであるから、これ以上証拠を掲げる必要はない。な
お捜索をする際には捜索令状の原本を示して若し公務執行の妨害をする者に対して
犯罪事実の認識をなさしめることは必要であり、現にそのとおり示されたのである
が、裁判所が証拠調をする際には必ずしも常に捜索令状の原本についてなすを要す
るものではない。その謄本もまた原本と内容を同じくする公正証書であるから、謄
本によつて令状の内容が判明し別段異議がない場合には原本を取寄せてこれについ
て取調をする必要はない。(所論原判決に被告事件とあるは被疑事件の誤りと認む
べきものである)論旨は、それ故に採ることができない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二四年九月一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    岩   松   三   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛