弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
       本件各上告を棄却する。
       上告費用は各上告人の負担とする。
         理    由
 平成12年(行ヒ)第76号上告代理人入澤洋一,同池田健司,平成12年(行
ヒ)第77号上告代理人古曳正夫,同田淵智久,同今村誠,同清水真,同緒方延泰
,平成12年(行ヒ)第79号上告代理人朝比奈新,同復代理人長堀靖,平成12
年(行ヒ)第80号上告代理人海老原元彦,同廣田寿徳,同島田邦雄,同谷健太郎
,同田子真也,同本村健,平成12年(行ヒ)第81号上告代理人田中圭助,同水
谷彌生,同喜多村勝徳,同奥村裕二,同本藤光隆,同吉村正貴,同奥原喜三郎,同
河合信義,同吉井直昭,平成12年(行ヒ)第82号上告代理人山近道宣,同矢作
健太郎,同熊谷光喜,同内田智,同和田一雄,同中尾正浩,平成12年(行ヒ)第
83号上告代理人狐塚鉄世,同成田茂,同成毛由和,同戸谷博史,平成12年(行
ヒ)第84号上告代理人田村公一,同小原健,同榎本哲也,同水上洋,平成12年
(行ヒ)第85号上告代理人西迪雄,同向井千杉,同富田美栄子の各上告受理申立
て理由について
 1 本件は,東京都町田市(以下「市」という。)の住民である被上告人らが,
市が日本下水道事業団(以下「事業団」という。)に委託した各下水道施設建設工
事(以下「本件各委託工事」という。)について,事業団が平成5年1月29日か
ら同6年2月18日までの間に上告人株式会社A1(以下「A1」という。)又は
同A2電機株式会社(以下「A2電機」という。)との間で請負契約を締結して発
注した各電気設備工事(以下「本件各発注工事」という。)に係る工事請負代金が
,談合によって不当につり上げられ,市がこれを負担することにより損害を被った
とし,市は,談合をした上告人ら及びこれに加功した事業団に対し,不法行為によ
る損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,その行使を違法に怠っているとし
て,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,市に代
位して,怠る事実に係る相手方である上告人らに対し,損害賠償を求めている事案
である。
 原審の適法に確定したところによれば,被上告人らは,平成7年11月27日,
市の監査委員に対して,本件各発注工事につき,上告人らが事業団から工事の件名
と発注予定金額の呈示を受けて談合を行ったのであり,業者間に公正な競争が確保
されていたなら,契約金額は少なくとも20%は低くなったはずであり,事業団及
び上告人らは,共同不法行為により契約金額を不当につり上げて,工事委託者とし
て最終的に契約金額を負担した市にその差額相当の損害を与えたのであるから,市
長は,損害賠償請求権を行使して,市の被った損害をてん補する措置を講ずべきで
あるのにこれを怠っているとして,その措置を講ずべきことを勧告することを求め
る本件監査請求をしたというのである。
 論旨は,いずれも,本件監査請求については,監査請求期間の制限を定めた法2
42条2項本文の規定(以下「本件規定」という。)の適用があるというべきであ
り,本件規定の適用がないとした原審の判断には,法令解釈の誤り,判例違反があ
る旨をいう。
 2 本件規定は,監査請求の対象事項のうち財務会計上の行為については,当該
行為があった日又は終わった日から1年を経過したときは監査請求をすることがで
きないものと規定しているが,上記の対象事項のうち怠る事実については,このよ
うな期間制限は規定されておらず,怠る事実が存在する限りはこれを制限しないこ
ととするものと解される。もっとも,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違
反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上
の請求権の行使を怠る事実を対象として監査請求がされた場合には,当該行為が違
法とされて初めて当該請求権が発生したと認められるのであるから,これについて
上記の期間制限が及ばないとすれば,本件規定の趣旨を没却することとなる。した
がって,このような場合には,当該行為のあった日又は終わった日を基準として本
件規定を適用すべきものである(最高裁昭和57年(行ツ)第164号同62年2
月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。しかし,怠る事実につ
いては監査請求期間の制限がないのが原則であることにかんがみれば,監査委員が
怠る事実の監査をするに当たり,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか
否かの判断をしなければならない関係にない場合には,当該怠る事実を対象として
された監査請求に上記の期間制限が及ばないものとすべきであり,そのように解し
ても,本件規定の趣旨を没却することにはならない(最高裁平成10年(行ヒ)第
51号同14年7月2日第三小法廷判決・裁判所時報1318号1頁〔編注:民集
56巻6号1049頁〕参照)。
 3 本件監査請求の対象事項は,市が事業団及び上告人らに対して有する損害賠
償請求権の行使を怠る事実であるところ,当該損害賠償請求権の発生原因は,上告
人らが事業団から工事の発注予定金額等の呈示を受けて談合をした結果に基づいて
,上告人A1及び同A2電機が事業団と不当に高額の工事請負代金で請負契約を締
結し,本件各委託工事の委託者として最終的に上記工事請負代金相当額を負担する
ことになる市に対し,公正な競争により形成されたであろう請負工事代金額と談合
によりつり上げられた請負工事代金額との差額相当の損害を与える不法行為を行っ
たというものである。これによれば,【要旨】本件監査請求について監査を遂げる
ためには,監査委員は,上記談合行為等があったか否か,これにより上記差額が生
じたか否かを検討するとともに,市が本件各委託工事を委託するために事業団との
間で締結した委託協定の内容,委託費用の支払経過等を明らかにして,市が本件各
発注工事の工事請負代金を最終的に負担させられ損害を被ったか否かを検討しなけ
ればならないこととなる。しかしながら,市と事業団との間における委託協定の締
結や委託費用の支払等の財務会計上の行為が財務会計法規に違反する違法なもので
あったとされて初めて市の事業団及び上告人らに対する損害賠償請求権が発生した
と認められるものではなく,監査委員は,上記のような談合行為等とこれに基づく
事業団と上告人A1及び同A2電機との請負契約の締結が不法行為法上違法の評価
を受けるものであること,これにより市に損害が発生したことなどを確定すれば足
りるのであるから,本件監査請求は市の財務会計上の行為を対象とする監査請求を
含むと解さなければならないものではない。したがって,本件監査請求を本件規定
の適用がない怠る事実に係るものと認めても,本件規定の趣旨が没却されるもので
はなく,本件監査請求については本件規定による監査請求期間の制限が及ばないも
のと解するのが相当である。前掲第二小法廷判決の示した法理は本件に及ぶもので
はない。
 4 以上によれば,本件監査請求に本件規定の適用がないとした原審の判断は,
結論において是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用する
ことができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第一小法廷
(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 井嶋一友 裁判官 町田 顯 裁判官 深澤
武久 裁判官 横尾和子)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛