弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士小野善雄の上告理由第一点について。
 しかし、原判決は、挙示の証拠により、判示公告には、判示のごとく赤松三五七
三本、予想石数約五千六百石、希望者には実地を熟覧させること等表示されている
こと、控訴会社(上告会社)は、判示のごとくパルプ材の買付を主たる事業とする
もので、入札期日前社員をして実地調査をさせたこと、本件売買の特約として材積
が五千六百石に充たないこと判明したときでも被控訴人(被上告人)はその不足石
数を補填する責任はなく、控訴会社も何等の異議を申入れることができない旨約定
していること、本件立木は双方立会の上一々その材積を計量することなく生立のま
ま一括して引渡されたこと等を認定した上、その認定した事実関係に基き、本件売
買は数量指示の売買に当らない旨判断しているのである。そして、その事実認定は
判示証拠関係に照し肯認することができ、その認定した事実関係の下における右判
断もこれを正当として是認することができる。されば、原判決には所論の違法は認
められない。
 同第二点について。
 しかし、原判決は、所論慣習の存することについては、これを認めるに足る証拠
はなく、却つて、この種取引においては、入札公告の数量に過不足があつても互に
異議を申し出でないことを約定して後日の紛争を妨止し取引の安全を確保している
のが一般の慣行であることを認めうるのみならず、控訴会社はパルプ材の売買を専
業とし且つ本件売買に先立ち本件立木を実地調査している旨認定している。そして、
その認定は挙示の証拠関係に照し是認できる。従つて、右の原判示事実関係の下で
は、本件売買が信義則に反するとも認められないから、所論は採るを得ない。
 同第三点について。
 しかし、原判決挙示の証拠関係に徴すれば、本件予備的請求に関する原判示事実
認定を肯認することができる。そして、その認定した事実関係の下において原判決
がDにおいて本件立木の石数が判示数量に過ぎなかつたことを知らず且つその知ら
なかつたことに過失がなかつたものとした判断を是認することができる。所論は、
結局原審が適法になした事実の認定、証拠の取捨判断を非難し、これを前提として
所論の違法あるがごとく主張するに帰し、採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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